科目Ⅲ:電気設備及び機器 平成24年度

問題10 電気機器

誘導電動機

誘導電動機の主要部分は固定子と回転子の二つである。両者とも各部分の磁界が周期的に変化するので,鉄損を軽減する目的でけい素鋼板を用いた積層鉄心構造となっている。

かご形誘導電動機の二次巻線は,回転子のスロット内に収められた多数の銅,アルミニウム又はそれらの合金の棒状の導体を,鉄心の外側でこれらを短絡する端絡環に接続したものである。

巻線形誘導電動機の回転子は,二次巻線が絶縁された三相巻線構成となっている。巻線のコイル終端部はリード線により,軸端に設けられたスリップリングを経て,外部抵抗器へ接続される。

誘導電動機では,回転子が同期速度n0[s-1]からの滑りsで回転しているとき,回転磁界の進む方向を正として,この磁界の上に立って回転子を眺めるとすると,sn0の速さで回転子が回転磁界と逆方向に回っているように見える。

同期電動機では,回転子が同期速度で回転しているときにのみ安定したトルクを発生する。大形の同期電動機では,始動時に通常の同期運転に引き入れるまでに次のような方法が用いられる。

表 同期電動機の始動法
始動法 概要
自己始動法 回転子磁極面に施した制動巻線を利用して,誘導電動機として始動し,同期速度付近で励磁を与えて,同期電動機としてのトルクを得て,同期速度に引き入れる方法
始動電動機法 同期電動機と機械的に結合した誘導電動機や直流電動機を始動用電動機として昇速し,運用回転速度付近で励磁を与えて同期速度に引き入れる方法
低周波始動法 同期電動機を,周波数が可変の別電源により低周波で同期化を行い,電源周波数及び電圧を上昇させ加速した後,主電源に接続する方法

同期電動機が一定電圧,一定周波数の電源母線に接続され,一定の負荷を負って運転しているとき,励磁電流を増加させると,電機子電流の誘導起電力に対する位相がこれまでよりも進み側に変化し,また,励磁電流を減少させると,位相はそれとは逆の方向に変化する挙動を示す。この特性を表したものを同期電動機のV曲線と呼んでいる。同期電動機を進み力率で運転して,同一母線に遅れ力率負荷を並列に接続すれば,母線の電圧変動が抑制されるとともに,電源から見た総合力率が改善されて省エネルギー効果が得られる。

一方,直流電動機では,半導体電力変換装置を用いたチョッパ制御で電動機に加える電圧を制御し,可変速駆動することができる。従来の抵抗法により界磁電流や電機子電流を制御する方法に比べると,抵抗損失が低減できるので省エネルギー効果が期待できる。ただし,直流電動機は構造上整流子とブラシを必要とするため保守が煩雑となる。

同期発電機

同一定格の同期発電機A及びBがあり,この2台の発電機を並行運転して遅れ力率0.85の負荷を接続したとき負荷電流が1200Aとなった。発電機A及びBが負荷電流を均等に分担しているとすると,発電機Aの電流IGA(=IGB)は510+j316[A]となる。次に,母線電圧及び負荷電流を一定に維持しながら,発電機A及びBの励磁電流を調整したところ,発電機Aの電流の大きさ|IGA|が650Aに増加した。負荷電流に変化がないことにより,両発電機の有効分電流は変化しない。

このとき,発電機Aの無効分電流の大きさは403[A]となり,励磁電流調整前と調整後の無効分電流値の差が両機の間の循環電流となる。この循環電流値を考慮すると,発電機Bの電流の大きさ|IGB|は559[A]となり,発電機Bの力率は91.2[%]となる。

IGAの有効分は,

IGAの無効分は,

励磁電流調整後の発電機Aの無効分電流の大きさは,

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