目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2019年7月25日作成,2020年9月21日更新

平成25年度 問題6 電気計測

(1) アナログ/ディジタル変換器

1) ディジタル計器の特徴は,測定結果がディジタルで表示されるため,個人差を含めた読み取り誤差が少ないこと,高度な処理ができること,ディジタル処理装置とのインターフェースが容易であることなどである。さらに,入力部はアナログ信号を取り扱うが,入力インピーダンスの高い回路が用いられているため,被測定系への影響を少なくすることができ,また,入力部や電源部やインタフェース部などと電気的に絶縁することで,耐ノイズ性を高めることができる。

ディジタル計器にアナログ信号を取り込む場合の信号変換には,アナログ/ディジタル変換器が用いられる。アナログ/ディジタル変換器にはいろいろな種類があるが,図 1 に示すデュアルスロープ式アナログ/ディジタル変換器はその典型例である。この変換器は,内部に安定性の高い基準直流電圧発生器があり,この発生器の信号と,測定したい入力電圧を,適切な回路によってパルス数に変換して計数し,その比をとることで,入力電圧の大きさを求める。

2) 図 1 のアナログ/ディジタル変換器の動作原理に対するタイムチャートを図 2 に示す。

まず,スイッチが時間 0 から一定時間 $t_1$ [s] まで入力側に接続される。この $t_1$ は,周波数 $f$ [Hz] のクロックのパルスを,あらかじめ決められた数 $N_1 (= f \cdot t_1)$ だけカウンタで計数することで決まる。その間に,積分器の入力抵抗 $R$ [Ω] を介して,測定したい入力電圧 $V_x$ [V] に比例した電流 $\displaystyle \frac{V_x}{R}$ [A] が,キャパシタ(コンデンサ)$C$ [F] に流れ込んで積分される結果,時間 $t_1$ において積分器からコンパレータへ出力される電圧は $\displaystyle \frac{-t_1 V_x}{RC}$ [V] となる。

次に,制御回路からの指令により,スイッチが,$-\alpha$ の値の基準直流電圧発生器側に切替えられるとともに,カウンタが計数を開始する。積分器には一定の電流 $\displaystyle \frac{-\alpha}{R}$ [A] が流れ込み,積分器出力電圧が一定の割合で増加して 0 を通過する。この 0 を通過する時間 $t_2$ [s] をコンパレータで検出して,制御回路に信号を送る。それをきっかけに,$t_1$ から $t_2$ の間にカウンタが計数したパルス数 $N_2 = f \cdot(t_2 - t_1)$ が記憶される。その結果,測定したい入力電圧 $V_x$ は,次式を用いて算出することができる。

\[ V_x = \frac{N_2 \alpha}{N_1} \text{ [V]} \]

基準直流電圧発生器には,出力が比較的安定な素子であるツェナーダイオードを用いることが多い。

アナログ/ディジタル変換器
図 1
アナログ/ディジタル変換器の動作原理に対するタイムチャート
図 2

(2) 接地抵抗

1) 多くの計測器には接地端子が付属している。計測器の接地は,回路の電位の基準を設定するためにも重要であり,また,大電力を利用する装置の場合,感電防止の観点からも重要である。接地電流が大きくなると,接地極と大地の電位差が大きくなる。この電位差と接地電流の比を,その接地電極の接地抵抗という。

図 3 に示すように,一直線上にあって十分離れた地面 G1,G2,G3 の 3 箇所に,接地極が埋設されている。ここで,G1 と G2 の距離を $L_{12}$ [m],G2 と G3 の距離を $L_{23}$ [m],G1 と大地との間の抵抗を $R_1$ [Ω],G2 と大地との間の抵抗を $R_2$ [Ω],G3 と大地との間の抵抗を $R_3$ [Ω] とする。

これらの接地極に対し図 3 のとおり電源及び計測器を接続し,接地抵抗の測定を行ったところ,電源からの電流 $I$ [A] と,G1 と G2 の間の電圧 $V$ [V] が得られた。この回路で測定できるのは $R_1$,$R_2$,$R_3$ のうち $R_1$ であり,その値は,式 $\displaystyle \frac{V}{I}$ で求められる。

接地抵抗計は,原理的にはこのような手法や類似手法で接地抵抗を測定している。ここで,測定には交流の定電圧電源が用いられる。その理由は,分極作用によって生じる電位差による測定誤差を防止するためである。

接地抵抗の測定
図 3
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