目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2019年7月21日作成,2019年7月21日更新

平成27年度 問題5 自動制御及び情報処理

(1) $RLC$ 回路

図 1 に示すように,電圧 $e(t)$ [V] の電源に,抵抗 $R$ [Ω],インダクタンス $L$ [H] 及びキャパシタンス $C$ [F] を直列に接続した電気回路がある。

この電気回路において,電流を $i(t)$ [A] とすると次のような微分方程式が成り立つ。

\[ Ri(t) + L \frac{\mathrm{d}i(t)}{\mathrm{d}t} + \frac{1}{C}\int^t_0 i(\tau)\mathrm{d}\tau = e(t) \]

この微分方程式について,ラプラス変換を用いて考える。

電気回路
図 1 電気回路

1) ① 式をラプラス変換し,$i(t)$ のラプラス変換を $I(s)$,$e(t)$ のラプラス変換を $E(s)$ で表すとき,すべての初期値を 0 とみなすと,

\[ RI(s) + L \times sI(s) + \frac{I(s)}{Cs} = E(s) \]

を得る。

2) ② 式より求められる $E(s)$ から $I(s)$ までの伝達関数 $G(s)$ は式 $\displaystyle \frac{C}{LCs^2 + RCs + 1}$ となる。この応答は,パラメータの大きさにもよるが,一般的な二次遅れ要素にインパルス入力を加えたときと同様の挙動となる。

(2) 定常特性

ある電気回路において,電圧 $e(t)$ のラプラス変換を $E(s)$,電流 $i(t)$ [A] のラプラス変換を $I(s)$ で表すとき,図 2 に示すように,$E(s)$ から $I(s)$ までの伝達関数を,$\displaystyle \frac{3s}{s^2 +9}$ で表すことができたとする。この電気回路の電圧 $e(t)$ として 1 V のステップ入力を加えたとき,十分な時間経過後,$i(t)$ は持続的に同じ振幅で振動する

ブロック線図
図 2 ブロック線図

この電気回路の電圧 $e(t)$ として 1 V のステップ入力を加えたとき,$I(s)$ は次式となる。

\[ I(s) = \frac{3s}{s^2 + 9} \cdot \frac{1}{s} = \frac{3}{s^2 + 3^2} \]

上式を逆ラプラス変換し,$i(t)$ を求める。

\[ i(t) = \sin 3t \]

よって,十分な時間経過後,$i(t)$ は持続的に同じ振幅で振動する。

(3) PID 制御

プロセス制御などでは,フィードバック制御の一つである PID 制御が多く用いられている。PID 制御の操作量 $u(t)$ は,一般に,

\[ u(t) = K_1 e(t) + K_2 \int^t_0 e(\tau) \mathrm{d}\tau + K_3 \frac{\mathrm{d}e(t)}{\mathrm{d}t} \]

と表される。ここで,$K_1$,$K_2$,$K_3$ はある定数であり,$e(t)$ は制御量の目標値と現在値との偏差である。④ 式の右辺の第一項は P 制御と呼ばれる動作による操作量である。しかし,この動作だけの場合,定常偏差が残ることもあるので,それを除去するために,I 動作と呼ばれる動作による操作量である第二項を加える。さらに,制御量の急激な変化に対応するために,第三項にあるように,変化の割合に対応した操作量を加えている。

(4) リレーシーケンス制御回路

図 3 は,システムの運転と停止の操作を示すリレーシーケンス制御回路である。押しボタン PS1 は起動ボタン,PS2 は停止ボタンであり,両方とも自動復帰接点を使用している。押しボタンの自動復帰接点は,人が指で押している間だけ働くもので,その間だけ a 接点(メーク接点)はオン,b 接点(ブレーク接点)はオフとなり,指を離すと押しボタンは元の位置に戻る。

この回路の動きとしては,PS2 が押されていない状態で PS1 を押すと,コイル R が励磁されてリレー接点 R がオンとなる。PS1 は元の位置に戻るが,コイルはリレー接点 R によって励磁されたままになる。このような働きの回路をリレー回路では自己保持回路という。また,PS2 を押せば,PS1 の状態にかかわらず,基本論理回路のうち AND 回路の原理により,コイルの励磁が解かれる。

表は,この回路の真理値表であり,表中の項目 A の状態から B の操作を行ったときの C の真理値を示したものである。ここで,「押」は「押しボタンを押す」,「×」は「押しボタンを押さない」操作を示す。

このとき,表中の項目 C の X,Y 及び Z の真理値は次のようになる。

X の真理値 = 1
Y の真理値 = 0
Z の真理値 = 1

電子回路において,これと同様な操作をする回路として,コンピュータの記憶装置や計数回路に用いられ,1 ビットの情報を記憶する回路はフリップフロップ回路として知られている。

リレーシーケンス制御回路
図 3 リレーシーケンス制御回路
表 真理値表
操作パターン
A 操作前のリレー R の真理値 0 1 0 1 0 1 0 1
B 操作 PS1 × × × ×
PS2 × × × ×
C 操作後のコイル R の真理値 0 X 0 Y Z 1 0 0

(5) エネルギー使用の合理化を図るシステム

1) 業務用ビル等において,室内環境・エネルギー使用状況を把握し,機器又は設備等の適正な運転管理によってエネルギー使用の合理化を図るためのシステムを BEMS といい,一般に計測・計量装置,制御装置,監視装置,データ保存装置,データ分析・診断装置などで構成される。

住宅において同様にエネルギー使用の合理化を図るシステムを HEMS といい,従来機器,太陽光発電などの創エネ機器,及び蓄電池,電気自動車などの蓄エネ機器のネットワーク化による管理機能や,居住者のためのデータの「見える化」などの機能も含まれる。

また,工場において同様にエネルギー使用の合理化を図るシステムを FEMS といい,生産設備のエネルギー使用状況・稼働状況を把握し,エネルギー使用の合理化や工場内設備・機器のトータルライフサイクル管理の最適化を図るためなどの目的で導入される。

2) エネルギー管理システムを構成する計測・計量装置でのデータ伝送において,1 回路当たり 8 バイトで構成される電力計測データを 60 回路分一括して,伝送速度 19 200 bps の回線で転送すると,転送にかかる時間は 6.7 × 10-1 [s] となる。ただし,伝送効率は 30 % とする。

BEMS(ベムス)とは,Building Energy Management System の略で,ビルエネルギー管理システムのことを指す。

HEMS(ヘムス)とは,Home Energy Management System の略で,家庭内エネルギー管理システムのことを指す。

FEMS(フェムス)とは,Factory Energy Management System の略で,工場内エネルギー管理システムのことを指す。

転送にかかる時間

転送にかかる時間は,次式で求められる。

8 [バイト/回路] × 60 [回路] × 8 [ビット/バイト] ÷ 19 200 [bps] ÷ 0.30 ≒ 6.7 × 10-1 [s]
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