目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2019年7月21日作成,2019年7月22日更新

平成28年度 問題5 自動制御及び情報処理

(1) 倒立振子

図 1 に示すように,質量 $m$ [kg] の質点が長さ $l$ [m] の棒の先についている倒立振子を考える。

倒立振子の姿勢やトルクは時間 $t$ の関数で表され,電動機から棒へのトルク $T(t)$ [N·m] を与えることにより,倒立振子を制御する。鉛直上向き方向からの棒の角度を $\theta(t)$ [rad] とし,摩擦はないものとする。ここで,$g$ [m/s2] は重力の加速度とする。

倒立振子
図 1 倒立振子

1) 電動機から与えられるトルクと倒立振子の動きの関係は次の運動方程式で表される。

\[ J \ddot{\theta}(t) = mgl \sin\theta(t) + T(t) \]

ここで,$J$ は慣性モーメントである。$|\theta| \ll 1$ のとき,式 ① は,

\[ J \ddot{\theta}(t) = mgl \theta(t) + T(t) \]

と近似できるので,式 ② の両辺をラプラス変換し,$\theta(t)$ のラプラス変換を $\theta(s)$,$T(t)$ のラプラス変換を $T(s)$ で表すとき,すべての初期値を零とみなすと,

\[ s^2 J \theta(s) = mgl \theta(s) + T(s) \]

と表される。このとき,トルク $T(s)$ から $\theta(s)$ までの伝達関数 $G(s)$ は,式 $\displaystyle \frac{1}{Js^2 - mgl}$ と表される。

2) いま,$\theta$ の目標値 $\theta_0$ を設定し,速度目標値 $\dot{\theta}_0$ を零にするために,以下のフィードバック制御系が考えられる。

\[ T(s) = K_1 (\theta_0 - \theta(t)) -K_2 \dot{\theta}(t) \]

ここで,$K_1$ および $K_2$ はある正の定数である。式 ③ の右辺の二つの項のうち,第一項は P 動作と呼ばれる動作,第二項は D 動作と呼ばれる動作である。なお,このフィードバック制御を施した系は図 2 のように示すことができる。

フィードバック制御を施した系
図 2 フィードバック制御を施した系

3) 2) の図 2 に示す制御系の $\theta_0 (s)$ から $\theta(s)$ までの伝達関数を $\displaystyle \frac{K_1}{s^2 + 4s + K_1 -2}$ で表せるとすると,図 2 は図 3 のように示される。この系の特性方程式を考慮すると,この系が漸近安定となるための $K_1$ の条件は $0 \lt K_1 \lt 2$ である。

特性方程式
図 2 特性方程式

3) 漸近安定となるための $K_1$ の条件

以下の二次方程式の 2 根が負であればよい。

\[ s^2 + 4s + K_1 -2 = 0 \]

二次方程式の 2 根は次のように求まる。

\[ s = -2 \pm \sqrt{6 - K_1} \]

安定限界は,$s = -2 + \sqrt{6 - K_1} = 0$ であり,$K_1 = 2$ となる。よって,この系が漸近安定となるための $K_1$ の条件は $0 \lt K_1 \lt 2$($K_1$ は正の定数)である。

(2) 評価関数

1) 現代制御理論では,システムの制御において,内部情報を状態変数で表し,評価関数という関数を定義して,与えられた拘束条件のもとでそれを最小又は最大にする制御手法がある。このような制御を最適制御という。

軌道上の 2 点間を車両が移動する際に,必要な入力エネルギー量を評価関数とし,それを最小とするための最小エネルギー制御などがその例として挙げられる。

2) システムモデルに基づいた制御設計では,所望の制御性能が得られない場合がある。このようなときには,システムの動特性の変化に対して,制御パラメータの種類若しくは大きさ,又はその両方を変化させ,常に適切な状態で制御を行う。このような制御手法を適応制御という。この制御手法では,複雑な演算を行うが,システム内のあいまいさを同定し,パラメータ固定制御では扱えないような大きな特性変化に対しても用いられる。

最適制御(optimal control)は,評価指標を与え,それを最小化(または最大化)することで,最適な制御系を与えることを目的とした制御手法である。

適応制御(adaptive control)は,パラメータ(の一部)が未知である制御対象に対して,系を安定化しつつパラメータを推定する制御手法である。パラメータが変動するようなシステムで高い制御性能を発揮することを目指している。制御系設計の段階でシステム同定する必要がない。

(3) 不正接続に対する予防処置

近年,コンピュータウイルス感染による情報漏洩や,サイバー攻撃によるシステム停止が社会問題になっている。それら不正行為の目的の一つとして,標的とするネットワークシステムへの不正接続が挙げられる。

無線 LAN への不正侵入や傍受などの不正接続に対する予防処置の一つに,通信パケットの暗号化がある。その方式の一つである WEP - Ⅱ は秘密鍵暗号方式を使用し,SSID 及び WEP キーを使用するが,セキュリティ強度が弱く脆弱なため,最近ではユーザ認証機能を備えたWAP,WAP2 など,セキュリティ強度の高い方式が推奨されている。

SSID(Service Set Identifier)とは,無線 LAN(Wi-Fi)におけるアクセスポイントの識別名。混信を避けるために付けられる名前で,最大 32 文字までの英数字を任意に設定できる。

WEP(Wired Equivalent Privacy)とは,無線 LAN などの通信を暗号化する方式の一つ。無線通信は傍受が極めて容易であるため,送信されるパケットを暗号化して傍受者に内容を知られないようにすることで,有線通信と同様の安全性を持たせようとしている。

WAP(Wireless Application Protocol)は,携帯電話などのデバイスでインターネット閲覧などのサービルが行えるようにするための技術仕様である。

(4) 監視操作画面

エネルギー管理システムの監視操作画面には,インターネットのホームページなどと同じく Web ブラウザを使用するものがある。その画面は HTML という形式言語で書かれており,画面を表示する際に,Web サーバから画面や画像データを受信して表示する。また,画面表示の高速化やデータ通信量削減のため,表示したデータを Web ブラウザ側に保存するキャッシュ機能がある。

キャッシュとは,よく使うデータへのアクセスを速くするために,より高速な記憶装置に一時的に保存する仕組みである。Web ブラウザのキャッシュ機能では,一度表示したページの内容をファイルに保存することで,次回からは,そのページをすばやく表示できる。

(5) コンピュータのメモリ

コンピュータのメモリにデータを記憶する場合,8 ビットで記憶できる符号付き整数データは 10 進数で -128 から 127 である。負の値には 2 の補数表現を用い,最上位ビットが 1 となる。

メモリに,2 進数表現で (1111 1110)2 のデータが格納されている場合,このデータを符号付き整数データとして扱うとすると,その値は,10 進数において -2 である。

表 符号なし 2 進数と符号つき 2 進数
2 進数 10 進数(符号なし 2 進数の場合) 10 進数(符号つき 2 進数の場合)
0000 0000 0 0
0000 0001 1 1
0000 0010 2 2
・・・ ・・・ ・・・
0111 1101 125 125
0111 1110 126 126
0111 1111 127 127
1000 0000 128 -128
1000 0001 129 -127
1000 0010 130 -126
・・・ ・・・ ・・・
1111 1101 253 -3
1111 1110 254 -2
1111 1111 255 -1
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