目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2020年7月19日作成,2020年7月23日更新

平成29年度 問題9 電気機器

(1) 変圧器の並行運転

2 台以上の変圧器を並列接続して負荷の電源とする並行運転においては,次の 1) 及び 2) の条件を考慮することが必要である。

1) 単相変圧器及び三相変圧器共に考慮すべきは次の条件である。

  1. 循環電流が発生しないこと。
  2. 負荷電流が変圧器の容量に比例して分流すること。
  3. 各変圧器に流れる電流が同相であること。

上記 1. の対策としては,各変圧器の一次,二次の定格電圧が等しく極性を合わせて接続すること,2. の対策としては,各変圧器の定格容量基準の短絡インピーダンスを等しくすること,3. の対策としては,各変圧器の抵抗とリアクタンスの比を等しくすることが挙げられる。

2) 三相変圧器の並行運転では,1) の条件に加えて,次の条件を満足させることが必要である。

  1. 一次,二次巻線間の位相変位が等しいこと。
  2. 相回転の方向が等しいこと。

並行運転する変圧器の負荷分担は,それぞれの変圧器の短絡インピーダンスによって決まる。

(2) 同期電動機

1) 同期電動機とは「定常運転時に,極数と交流周波数で定まる同期速度で回転する交流回転機をいう」と JEC 2130-2000 で定義されている。

2) 三相同期電動機の 3 相分の出力を $P_0$ [W],同期速度を $n_\text{s}$ [min-1] とすれば,トルク $T$ は,次式で示され,トルクを出力によって表すことができる。

\[ T=\frac{60}{2\pi n_\text{s}}P_0 \text{ [N·m]} \]

3) 回転界磁形の三相同期電動機について考える。この電動機の電機子巻線に三相交流電源を供給すると回転磁界が発生する。一方,界磁巻線に直流電流を供給すると,負荷角と呼ばれる角度 $\delta$ [rad] が生じる。$\delta$ によって,回転磁束と回転子磁極との間に吸引力が生じ,これが回転磁束と同方向の電動機トルクを作り,回転子は $\delta$ を保ったまま同期速度で回転を続ける。

4) 三相同期電動機では,Y 結線の 1 相分の供給電圧の大きさを $V$ [V],電機子巻線 Y 結線の 1 相分の誘導起電力の大きさを $E_0$ [V] とすれば,3 相分の出力 $P_0$ は次式で表される。ただし,同期リアクタンス $x_\text{s}$ [Ω] に比べて,電機子巻線抵抗 $r_\text{a}$ [Ω] は非常に小さいので,これを無視して考え,また,機械損,銅損及び鉄損も無視する。

\[ P_0 = \frac{3VE_0}{x_\text{s}}\sin\delta \text{ [W]} \]

よって,$\delta$ が零より大きくなるに従って電動機トルクも大きくなり,$\delta$ が $\displaystyle \frac{\pi}{2}$ [rad] のときに最大値 $T_\text{m}$ [N·m] となる。$\delta$ は負荷トルクが大きいほど大きくなるが,負荷トルクが $T_\text{m}$ を超えると,電動機トルクはかえって減少し,電動機は同期外れを起こす。

(3) 変圧器の等価回路

図は,定格容量 1 000 kVA,定格一次電圧 6 600 V,定格二次電圧 210 V,定格周波数 50 Hz の三相変圧器を,Y 結線に等価変換したときの 1 相分の一次換算の等価回路である。この図において,励磁コンダクタンス $g_0$ は 0.03 mS,巻線抵抗 $r$ は 0.249 Ω,漏れリアクタンス $x$ は 1.856 Ω である。なお,図中の $b_0$ [Ω] は励磁サセプタンス,$\dot{I}_1$ [A] は一次入力電流,$\dot{V}$ [V] は一次電圧,$\dot{I}_0$ [A] は励磁電流,$\dot{I}_2'$ [A] は二次電流を一次換算した電流を表している。

三相変圧器を Y 結線に等価変換したときの 1 相分の一次換算の等価回路
図 三相変圧器を Y 結線に等価変換したときの 1 相分の一次換算の等価回路

1) この変圧器の二次側に 1 000 kVA,力率 0.8(遅れ)の平衡三相負荷を接続した場合,一次換算した負荷電流 $|\dot{I}_2'|$ は 87.48 A となるので,この時の変圧器の負荷損は 5 717 [W] となる。

2) 一方,定格電圧時の無負荷損は 1 307 [W] であるので,この変圧器を前記 1) の条件で運転したときの効率は 99.13 [%] となる。

3) 基準容量 1 000 kVA の 6 600 V での基準インピーダンスは 43.6 [Ω] なので,この変圧器の短絡インピーダンスは 4.30 [%] である。

変圧器の定格容量を $P_\text{n}$,定格一次電圧を $V_\text{1n}$ とする。

1) 変圧器の負荷損

変圧器の負荷損は次式で求められる。

\[ 3 \times r \times |\dot{I}_2'|^2=3\times0.249\times87.48^2=5716.60\approx5717 \text{ [W]} \]

2) 変圧器の無負荷損と効率

変圧器の無負荷損は次式で求められる。

\[ g_0 {V_\text{1n}}^2=0.03 \times 10^{-3} \times 6600^2=1306.8\approx1307 \text{ [W]} \]

変圧器の効率は次式で求められる。

\[ \frac{1000\times10^{3}\times0.8}{1000\times10^{3}\times0.8+5716.6+1306.8}\times100=99.129\approx99.13 \text{ [%]} \]

3) 変圧器の基準インピーダンスと短絡インピーダンス

変圧器の基準インピーダンス $Z$ は,次式で求められる。

\[ Z=\frac{{V_\text{1n}}^2}{P_\text{n}}=\frac{6600^2}{1000\times1000}=43.56\approx43.6 \]

変圧器の短絡インピーダンス $\% Z$ は,次式で求められる。

\[ \% Z=\frac{\sqrt{r^2+x^2}}{Z}=\frac{\sqrt{0.249^2+1.856^2}}{43.56}=4.299\approx4.30 \text{ [%]} \]
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