目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2019年7月23日作成,2019年7月26日更新

平成29年度 問題6 電気計測

(1) 抵抗測定

抵抗測定では,測定対象が高安定な抵抗器から不安定な絶縁抵抗など様々であり,目的,要求精度,測定条件などに応じた適切な測定方法を選択する必要がある。ここでは,その測定方法を大きく電流・電圧法とブリッジ法に分けて,その特徴を示す。

1) 電流・電圧法

電流・電圧法は,高精度の電圧計や電流計の出現に伴い,近年主流となっている方法であり,その原理はオームの法則を用いるものである。この方法を,回路構成によって更に 2 端子抵抗測定法と 4 端子抵抗測定法に分けて考える。

2 端子抵抗測定法では,測定した電圧と電流から抵抗値を求める際に,被測定抵抗に繋がる配線や接触抵抗を含んだ抵抗を測定することになるが,被測定抵抗が十分大きく,高精度を必要としない場合には,それらによる誤差は問題とならない場合が多い。簡易的なテスタや絶縁抵抗計などが該当する。

一方,4 端子抵抗測定法では電圧の抵抗を極めて大きくして,配線や接触抵抗の影響を受けない電圧が測定できる。

内部に定電流源や電圧増幅器,アナログ-デジタル変換器を備え,広い抵抗範囲や他の電気量も測定できる計測器としてデジタルマルチメータが多く用いられているが,4 端子抵抗測定法を用いたものであれば,被測定抵抗以外の抵抗の影響を受けない,より精密な測定が可能となる。

2) ブリッジ法

ブリッジ法は比較的古くからある抵抗測定法であるが,研究開発における精密測定での利用が主である。

ブリッジ法の中で,最も基本的で広く使われてきたのはホイートストンブリッジである。その原理は,三つの既知抵抗でその内の一つが可変な抵抗と,被測定抵抗を用いてブリッジ回路を構成し,可変抵抗の調整によって検流計の値が零となったときの各抵抗の関係から被測定抵抗の値を求めるものであり,精密測定が可能である。ただし,この方法ではリード線測定や接触抵抗の影響が誤差の要因となる。

被測定抵抗以外の抵抗の影響を除去したものがケルビンダブルブリッジである。これは,ブリッジ回路に改善を加えて測定対象外の抵抗が誤差要因とならないように工夫したもので,より低抵抗の精密測定が可能である。ただし,どちらもその他の誤差要因である,既知抵抗の校正値と公称値のずれ,回路中の熱起電力,通電による加熱や周囲の温度による影響などには注意が必要である。

2 端子抵抗測定法

電流 $I$ は被測定抵抗 $R_0$,配線抵抗 $r_1$,$r_2$ に流れる。よって,測定する電圧は,次式で求められ,配線抵抗 $r_1$,$r_2$ を含んだ値となる。

\[ E = (r_1 + R_0 + r_2)I \]
2 端子抵抗測定法
図 2 端子抵抗測定法

4 端子抵抗測定法

電流 $I$ はすべて被測定抵抗 $R_0$ に流れる。したがって,$r_3$,$r_4$ の電圧降下は 0 となり,測定する電圧 $E$ と被測定抵抗 $R_0$ の両端の電圧降下 $E_0$ は等しくなり,配線抵抗 $r_1$ ~ $r_4$ の影響を受けずに抵抗測定ができる。

4 端子抵抗測定法
図 4 端子抵抗測定法

(2) 電圧,電流,電力の測定

正弦波交流電源に抵抗のみの負荷を接続した回路があり,電源の電圧が $v = V_m \sin{\omega t}$ [V],回路に流れる電流が $i = I_m \sin{\omega t}$ [A] であるときの回路の電圧,電力の測定について考える。

1) 電圧及び電流の測定

ⅰ) 交流は一般に実効値を表すことが多く,通常の交流電圧計や交流電流計の値は実効値を示している。この回路の実効値の瞬時値の関係は,電圧の場合,振幅を $V_m$ [V],実効値を $V_e$ [V] とすると,次式で表すことができる。

\[ V_e = \frac{V_m}{\sqrt{2}} \text{ [V]} \]

この関係は,電流の振幅 $I_m$ [A] と実効値 $I_e$ [A] の関係においても同様である。

ⅱ) 一般に,電圧や電流の測定において測定計器の定格値より大きな値を計測するときは,計器用変成器を用いる。例えば電圧を測定する場合,一次コイルの巻数を $n_1$,二次コイルの巻数を $n_2$ とした計器用変圧器を用いると,その巻数比から,測定対象電圧 $v_1$ [V] の指示電圧 $v_2$ [V] との関係は,理論的には次式で表すことができる。

\[ v_1 = \frac{n_1}{n_2} v_2 \text{ [V]} \]

電力の測定

ⅰ) 瞬時電力は,電流の瞬時値と電圧の瞬時値の積である。この回路は,負荷が抵抗だけのため電流と電圧の位相が同じであるので,瞬時電力は $I^2_m R \frac{1}{2}(1 - \cos{2\omega t})$ [W] と表すことができる。これは周期関数であるので,平均電力は 1 周期分を積分し平均することにより求められ,$R(\frac{I_m}{\sqrt{2}})^2$ [W] となる。

ⅱ) 交流電力の測定においては,「$m$ 相 $m$ 線式の交流回路において,$m-1$ 台の単相電力計を用いれば全電力を測定できる」というブロンデルの定理によって測定することができる。すなわち,三相 3 線式交流電力は 2 台の単相電力計を用いる二電力計法で測定することができる。

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