目指せ!エネルギー管理士 電気分野
平成30年度 問題2 エネルギー情勢・政策,エネルギー概論
(1) 国際単位系(SI)
国際単位系(SI)では,長さ(メートル [m]),質量(キログラム [kg]),時間(秒 [s]),電流(アンペア [A]),熱力学温度(ケルビン [K]),光度(カンデラ [cd])及び物質量(モル [mol])の 7 個を基本単位としている。力やエネルギーなどの単位は基本単位にはなく,前述の 7 個の基本単位のうちのいくつかを組み合わせて表されるので,組立単位と呼ばれている。
組立単位の中には固有の名称を持つ単位もあり,例えば,エネルギーを表す組立単位の一つであるジュール [J] は,ある物を,ある力でその方向にある距離を動かしたときの仕事に相当するので,基本単位のみを用いると kg·m²/s² と表される。電荷を表す単位のクーロンは,その定義から同様に基本単位のみを用いると A·s と表される。さらに,基本単位や固有の名称を持つ組立単位を用いると,電圧 [V] はJ/C と表すことができ,熱力学で重要と成るエントロピーの単位は J/K と表すことができる。
ジュール
クーロン
電圧
エントロピー
エントロピーはエネルギーを温度で割った次元を持ち,SI における単位はジュール毎ケルビン(記号:J/K)である。
(2) 一次エネルギー供給源
我が国の一次エネルギー供給源としては,石油,天然ガスなどの化石燃料が全体の 90 % 以上を占めている。
石油については,エネルギー白書 2017(経済産業省編)によると,我が国は 2015 年度において原油のほぼ全てを輸入に依存しており,輸入原油の中東依存度は約 80 [%] である。このような背景から,安定供給のために国内に備蓄されている石油(石油製品を含む)の量は,2017 年 1 月時点で民間備蓄と国家備蓄を併せて約 半年 分が確保されている。
一方,液化天然ガスについても,同白書によれば,石油同様にほぼ全てを輸入に依存しており,その輸入元を国別に見ると,2015 年度の輸入量が最も多いのはオーストラリアで,マレーシアやカタールがそれに続いている。
エネルギー自給率(self-sufficiency of energy supply)
1 次エネルギー供給のうち,国内資源によるエネルギー供給が占める割合のこと。資源の乏しいわが国はエネルギー自給率が低く,2005年のエネルギー自給率は,準国産エネルギーと言われる原子力を含めても 19 % で,原子力を除けばわずか 4 % である。2011年以降,原子力発電所の多くは低下しており,わが国のエネルギー自給率は低く推移している。
参考
(3) 水と二次電池
熱を蓄える際に水は優れた媒体である。これは,冷熱を蓄熱する場合を考えたとき,液体の水を氷に相変化させるときの潜熱が「液体の水の温度変化 1 °C 当たりに要する顕熱」の約 80 倍であることが理由の一つである。
一方,電気を蓄える二次電池については,ナトリウム硫黄電池,ニッケル水素電池,リチウムイオン電池,鉛蓄電池が主なものである。これらの二次電池のうち,現在,動作温度は比較的高いが,単位質量当たりの蓄電量(エネルギー密度)が比較的高く,蓄電量当たりの設備費も比較的安価で,大規模な電力貯蔵用に最も実績があるのはナトリウム硫黄電池である。二次電池では,エネルギー密度として W·h/kg という単位が用いられ,例えば,質量 1 kg でエネルギー密度が 100 W·h/kg の二次電池があった場合,その電気エネルギーを自身の位置エネルギーに換算すると,3.7 × 104 [m] の高さ分に相当する。ただし,重力の加速度を 9.8 m/s² とする。
ナトリウム-硫黄電池(NAS 電池)
電力貯蔵用二次電池として開発されてきた新型電池の一つ。ナトリウム-硫黄電池は,陰極活物質に溶融ナトリウム,陽極活物質に溶融硫黄または多硫化ナトリウムを使用し,両者の間をナトリウムイオンに対し選択的に伝導性を持つ β アルミナ固体電解質により隔離したもの。作動温度は,陽極活物質の融点を考慮し,300 ~ 350 °C に維持する必要がある。開路電圧は 2.1 V,理論エネルギー密度は 780 Wh/kg で鉛蓄電池の約 4.7 倍である。