目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2019年10月16日作成,2023年12月31日更新

令和元度 問題1 エネルギーの使用の合理化等に関する法律及び命令

法令は平成31年4月1日時点で施行されているものである。

以下の問題文では,次のように略記する。

  • エネルギーの使用の合理化等に関する法律を『法』
  • エネルギーの使用の合理化等に関する法律施行令を『令』
  • エネルギーの使用の合理化等に関する法律施行規則を『則』
  • エネルギーの使用の合理化等に関する基本方針を『基本方針』

(1)

1) 『法』の目的に関する事項

『法』第 1 条は,『法』の目的について次のように定めている。

「内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保に資するため,工場等,輸送,建築物及び機械器具等についてのエネルギーの使用の合理化に関する所要の措置,電気の需要の平準化に関する所要の措置その他エネルギーの使用の合理化等を総合的に進めるために必要な措置等を講じることとし,もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」

2) エネルギーの定義に関する事項

『法』第 2 条は,『法』における「エネルギー」とは,燃料並びに熱及び電気をいうとし,「燃料」とは,原油及び揮発油,重油その他経済産業省令で定める石油製品,可燃性天然ガス並びに石炭及びコークスその他経済産業省令で定める石炭製品であって,燃焼その他の経済産業省令で定める用途に供するものをいう,と定めている。

3) 特定事業者,特定連鎖化事業者及び認定管理統括事業者に関する事項

特定事業者,特定連鎖化事業者,及び平成 30 年 12 月施行の『法』改正によって新設された認定管理統括事業者については,それぞれ『法』第 8 条,第 19 条及び第 30 条において,中長期的な計画の作成事務,対象として定められている工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関し,エネルギーを消費する設備の維持,エネルギーの使用の方法の改善及び監視その他経済産業省令で定める業務を統括管理する者を選任しなければならない,と定められており,業務を統括管理する者を『法』ではエネルギー管理統括者という。

なお,対象として定められている工場等とは,特定事業者では「その設置している工場等」,特定連鎖化事業者では「その設置している工場等及び当該特定連鎖化事業者が行う連鎖化事業の加盟者が設置している当該連鎖化事業に係る工場等」,特定管理統括事業者では「その設置している工場等及びその管理関係事業者が設置している工場等」である。

(2)

『法』第 2 条,第 7 条,第 10 条,第 13 条,第 14 条,及びこれらに関する『令』及び『則』に関連する事項

ある事業者が食品加工工場と,別の事業所として本社事務所を所有しており,これらがこの事業者の設置している施設の全てである。ここで,食品加工工場における前年度の燃料,電気などの使用量は,次の a ~ e のとおり,本社事務所における前年度の電気などの使用量は,次の f 及び g のとおりであり,この事業者は a ~ g 以外のエネルギーは使用していなかった。また,本社事務所は,専ら事務所として使用されていた。

なお,この事業者は,連鎖化事業者,認定管理統括事業者又は管理関係事業者ではないものとする。

  1. 食品加工工場において,ボイラで使用した都市ガスの量を発熱量として換算した量が 3 万 5 千ギガジュールであった。
  2. 食品加工工場において,コージェネレーション設備を設置し,そこで使用した都市ガスの量を発熱量として換算した量が 2 万ギガジュールであった。
  3. 食品加工工場において,b のコージェネレーション設備で発電した電気を工場内で使用した。その電気の量を熱量として換算した量が 8 千ギガジュールであった。
  4. 食品加工工場において,b のコージェネレーション設備で発生させた蒸気を工場内で使用した。その蒸気の量を熱量として換算した量が 7 千ギガジュールであった。
  5. 食品加工工場において,小売電気事業者から購入して使用した電気の量を熱量として換算した量が 5 万ギガジュールで,その購入先の小売電気事業者が販売する電気は,化石燃料によって発電されたものであった。
  6. 本社事務所において,小売電気事業者から購入して使用した電気の量を熱量として換算した量が 1 万 8 千ギガジュールで,その小売電気事業者が販売する電気は,化石燃料及び太陽光発電によって発電されたものであった。
  7. 本社事務所において,熱供給事業者から購入して使用した温水及び冷水の熱量を燃料の発熱量に換算した量が 9 千ギガジュールで,その購入先の熱供給事業者では,都市ガス及び電気を用いて温水及び冷水を発生させていた。

1) 前年度に使用したエネルギー使用量を『法』で定めるところにより原油の数量に換算した値は,食品加工工場が 2 709 キロリットル,本社事務所が 697 キロリットルとなり,この事業者は特定事業者に該当し,工場等単位でも指定の有無が判定される。

なお,『則』第 4 条によれば,発熱量又は熱量 1 ギガジュールは原油 0.025 8 キロリットルとして換算することとされている。

2) 1) の『法』で定めるエネルギーの使用量によって当該の指定を受けた後,事業所について事業者が選任しなければならないのは,次に示す 1. から 4. のうちの 2. 食品加工工場のエネルギー管理員のみである。

  1. 食品加工工場のエネルギー管理者
  2. 食品加工工場のエネルギー管理員
  3. 本社事務所のエネルギー管理者
  4. 本社事務所のエネルギー管理員

3) この事業者の食品加工工場で,選任すべきエネルギー管理者又はエネルギー管理員に欠員が生じた場合,新たに選任しなければならない。このとき,選任すべき事由が生じた日以降,6 月以内に選任しなければならない。

食品加工工場のエネルギー使用量

食品加工工場のエネルギー使用量は,a. と b. と e. の合算であり,それを原油の数量に換算する。

\[ (35000 + 20000 + 50000) \times 0.0258 = 2709 \text{ [kL]} \]

本社事務所のエネルギー使用量

本社事務所のエネルギー使用量は,f. と g. の合算であり,それを原油の数量に換算する。

\[ (18000 + 9000) \times 0.0258 = 697 \text{ [kL]} \]

(3) 合理化計画に関する事項および中長期計画に関する事項

1) 合理化計画に関する事項

『法』第 17 条 第 1 項によれば,主務大臣は特定事業者が設置している工場等におけるエネルギーの使用の合理化の状況が第 5 条 第 1 項に規定する判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分であると認めるときは,当該特定事業者に対し,当該特定事業者のエネルギーを使用して行う事業に係る技術水準,第 5 条 第 2 項に規定する指針に従って講じた措置の状況その他の事情を勘案し,その判断の根拠を示して,エネルギーの使用の合理化に関する計画(合理化計画という。)を作成し,これを提出すべき旨の指示をすることができる,と定めている。

この合理化計画に関して『法』第 17 条 第 2 項で,主務大臣は,合理化計画が当該特定事業者が設置している工場等に係るエネルギーの使用の合理化の的確な実施を図る上で適切でないと認めるときは,当該特定事業者に対し,合理化計画を変更すべき旨の指示をすることができる,と定めている。

また,第 3 項では,主務大臣は,特定事業者が合理化計画を実施していないと認めるときは,当該特定事業者に対し,合理化計画を適切に実施すべき旨の指示をすることができる,と定めている。

さらに,第 4 項では,これら第 1 項から第 3 項に規定する指示を受けた特定事業者がその指示に従わなかったときはその旨を公表することができる,としている。

2) 中長期計画に関する事項

平成 30 年 12 月施行の『法』第 15 条では,従来どおり特定事業者は経済産業省令で定めるところにより,『法』第 5 条 第 1 項の規定に基づき定められたエネルギーの使用の合理化の目標に関し,その設置している工場等について,その達成のための中長期的な計画を作成し,主務大臣に提出しなければならない,とされている。ただし,計画の提出については,定期に提出,と改定された。

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