目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2019年8月31日作成,2023年12月31日更新

令和元年度 問題6 電気計測

(1) 各種の測定

工場等において,各種の測定を行うことはエネルギー使用状況の把握のために必要不可欠である。

1) JIS によると,測定とは「ある量を,基準として用いる量と比較し数値又は符号を用いて表すこと」であり,「計器又は測定系の示す値,若しくは実量器又は標準物質の表す値と,標準によって実現される値との間の関係を確定する一連の作業」を校正という。この校正に関して「不確かさがすべて表記された切れ目のない比較の連鎖によって,決められた基準(通常,国家標準又は国際標準)に結び付けられ得る測定結果又は標準の値の性質」のことをトレーサビリティという。

2) 計測の規格や法令で国際単位系(SI)に準ずることを要求していることが多い。この SI は,本年 5月 20 日の世界計量記念日から一部の単位の定義が改定されている。

ⅰ) 電流の単位であるアンペア [A] は,電流が流れている 2 本の電線間に作用する力で定義されていた。改定された SI では,アンペアの定義の直接的な土台となるのは電気素量であり,単位時間に移送する電子の数を用いてアンペアの標準を作ることができる。

ⅱ) 質量の単位であるキログラム [kg] については,従来は国際キログラム原器の質量で定義されていたが,改定された SI ではプランク定数を基に定義される。

ⅲ) これらを含む新しい定義への改定により,全ての SI 単位が基礎物理定数などの定義定数を基にすることとなった。

電流の定義(2019年5月20日現在)

アンペアは,電流の SI 単位である。これは,単位 C(A s に等しい)による表現において,電気素量 $e$ を正確に 1.602,176,634 × 10-19 と定めることによって設定される。

質量の定義(2019年5月20日現在)

キログラムは,質量の SI 単位である。これは,単位 Js(kg m2 s-1 に等しい)による表現において,プランク定数 $h$ を正確に 6.626,070,15 × 10-34 と定めることによって設定される。

(2) オペアンプ

オペアンプ(演算増幅器)は電気計測機器等のアナログ演算の構成部品として広く利用され,なくてはならない回路部品となっている。図 1 及び図 2 にオペアンプを利用した電圧増幅回路である,反転増幅回路と非反転増幅回路の回路図を示す。ここで,$V_{\text{in}}$ [V] は入力電圧,$V_{\text{out}}$ [V] は出力電圧,$R_1$ [Ω] 及び $R_2$ [Ω] は抵抗器の抵抗とする。

図 1 反転増幅回路
図 1 反転増幅回路
図 2 非反転増幅回路
図 2 非反転増幅回路

1) オペアンプは,理想的な増幅機能を持つことが特徴として挙げられるが,具体的には高い電圧利得,高い入力インピーダンス,広い周波数帯域を持つこと,などがその重要な要素である。

2) オペアンプが理想的なものであるとすると,図 1 及び図 2 に示す反転増幅回路と非反転増幅回路の電圧利得は,$R_1$,$R_2$ を用いて,反転増幅回路では $\displaystyle -\frac{R_2}{R_1}$,非反転増幅回路では $\displaystyle \frac{R_1 + R_2}{R_1}$ と表すことができる。また,反転増幅回路の場合にオペアンプの反転入力端子の電位が負帰還によって常に零になることを,仮想接地(imaginary earth)と呼ぶ。

ここで,図 1 の反転増幅回路の $R_1$ を 10 kΩ,$R_2$ を 20 kΩ としたとき,$V_{\text{in}}$ が -2 V であるとすると,$V_{\text{out}}$ の値は 4.0 [V] である。

オペアンプ(operational amplifier)は,非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)と,一つの出力端子を備えた増幅器の電子回路モジュールである。

理想オペアンプ(理想演算増幅器)

アナログ演算,またはアナログ信号処理を理想的に行うために,演算増幅器は理想的には次の 3 条件を備えることが求められる。

  1. 電圧利得が周波数に無関係に無限大である。
  2. 入力インピーダンスが無限大である。
  3. 出力インピーダンスが 0 である。

反転増幅器(inveting amplifier)

図 1 のように演算増幅器の非反転入力端子を接地し,反転入力端子に抵抗 $R_1$ を介して入力電圧 $v_\text{in}$ を加える。出力電圧 $v_\text{out}$ は帰還抵抗 $R_2$ を介して反転入力端子に帰還する。演算増幅器の入力インピーダンスは無限大,出力インピーダンスは 0 で,電圧利得は $A$ であると仮定すると,反転入力端子の電圧を $v_r$ とすれば,以下の 2 式が成り立つ。

\[ \frac{v_\text{in} - v_r}{R_1} = \frac{v_r - v_\text{out}}{R_2} \] \[ -v_r A = v_\text{out} \]

したがって,$v_\text{out}$ は次式で求められる。

\[ v_\text{out} = - \frac{v_\text{in}R_2}{R_1 + \frac{R_1 + R_2}{A}} \]

オペアンプが理想的なものであるとすると,電圧利得 $A$ が十分大きくて,$\displaystyle R_1 \gg \frac{R_1 + R_2}{A}$ とみなせば,電圧利得は次式となる。

\[ \frac{v_\text{out}}{v_\text{in}} = - \frac{R_2}{R_1} \]

非反転増幅器(noninverting amplifier)

図 2 において,演算増幅器の入力電圧を $v_\text{in}$,出力電圧を $v_\text{out}$ とすると,反転入力端子の電圧は $\displaystyle \frac{v_\text{out} R_2}{R_1 + R_2}$,非反転入力端子の電圧は $v_\text{in}$ である。仮想短絡の条件より,次式が成り立つ。

\[ \frac{v_\text{out} R_2}{R_1 + R_2} = v_\text{in} \]

したがって,電圧利得は次式となる。

\[ \frac{v_\text{out}}{v_{in}} = \frac{R_1 + R_2}{R_1} \]
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