目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2019年10月5日作成,2023年12月31日更新

令和元年度 問題10 電気機器

(1) 三相誘導電動機の制動方式

三相誘導電動機の制動方式について考える。

1) 三相誘導電動機において,滑り $s$ の大きさが $0 \lt s \lt 1$ の範囲では,電磁力の方向は常に回転磁界の方向と同じであり,この滑りの領域では,回転子の回転方向と電磁力の方向とは常に一致するので,トルクは駆動トルクとなる。一方,電動機の滑り $s$ の大きさが $-1 \lt s \lt 0$ の範囲では,回転磁界の方向は変わらず,電磁力の方向が逆転するため,この領域で生じるトルクは制動トルクとなる。

2) したがって,通常の三相誘導電動機は,同期速度以下では電動機運転,同期速度以上では回生制動運転が一般的な運転方法である。これに対し,巻線形誘導電動機を用いた二次励磁制御の一種である超同期セルビウス方式は,誘導電動機の二次側に交流電力変換装置を設けて,二次側の電力を電源側に送り返すだけでなく,逆に電源側から電動機に電力を送ることにより,同期速度の上下にわたって,それぞれの運転範囲で電動機運転及び回生制動運転を可能とする方式である。

(2) 三相同期発電機の星形 1 相分のベクトル図

図は三相同期発電機の星形 1 相分のベクトル図を示したものである。ここで,$\dot{I}_\text{a}$ は電機子電流であり,遅れ力率での運転状態を示している。

界磁起磁力 $\dot{F}_\text{f}$ により,$\displaystyle \frac{\pi}{2}$ 遅れて誘導起電力 $\dot{E}_0$ が発生する。界磁起磁力 $\dot{F}_\text{f}$ と電機子反作用起磁力 $\dot{F}_\text{a}$ の合成起磁力 $\dot{F}_1$ が,エアーギャップに作用する起磁力となる。これによって,誘導起電力が線分 $\bar{\text{OB}}$ で示される誘導起電力 $\dot{E}_1$ に変化する。$\dot{E}_0$ と $\dot{E}_1$ との差は電機子反作用リアクタンスによる電圧降下である。

誘導起電力 $\dot{E}_1$ から電機子漏れリアクタンスによる電圧降下及び電機子抵抗 $r_\text{a}$ による電圧降下($r_\text{a} \dot{I}_\text{a}$)をベクトル的に差し引いた,線分 $\bar{\text{OA}}$ が端子電圧 $\dot{V}$ となる。

ここで,∠AOE は力率角 $\phi$ に相当する。∠COA の作る角 $\delta$ は,内部相差角と呼ばれる。

三相同期発電機の星形 1 相分のベクトル図

(3) 三相同期電動機

電動機の端子電圧が 6.3 kV,入力電流が 96 A で運転されている三相同期電動機がある。運転時の効率が 95.6 %,同期リアクタンス $x_\text{s}$ が 38.6 Ω,機械損が 11 kW,鉄損が 9 kW,励磁回路損が 6 kW,漂遊負荷損が 4 kW であり,その他の損失について電機子回路損以外の損失は考えないものとする。

いま,この電動機が力率 1.0 で運転されている場合の諸量を計算する。

1) 運転時の効率が 95.6 % なので,この電動機の出力 $P_0$ は 1.00 × 103 [kW] である。

2) 運転時の電機子電流が 96 A なので,電機子回路損(三相分)$P_\text{a}$ は 16.1 [kW] であり,1 相分の電機子抵抗 $r_\text{a}$ は 5.82 × 10-1 [Ω] と計算される。

3) 電機子抵抗 $r_\text{a}$ は同期リアクタンス $x_\text{s}$ に比べて非常に小さい値となるので,電機子抵抗の影響を無視して,1 相分の誘導起電力 $E_0$ を求めると,5.19 [kV] となる。

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