目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2020年9月5日作成,2023年12月31日更新

令和2年度 問題1 エネルギーの使用の合理化等に関する法律及び命令

法令は令和2年4月1日時点で施行されているものである。

以下の問題文では,次のように略記する。

(1) 「事業者の判断基準」及び「連携省エネルギー計画」に関連する事項

1) 事業者の判断の基準に関する事項

』第5条第1項は次のように規定している。

「経済産業大臣は,工場等におけるエネルギーの使用の合理化の適切かつ有効な実施を図るため,次に掲げる事項並びにエネルギーの使用の合理化の目標及び当該目標を達成するために計画的に取り組むべき措置に関し,工場等においてエネルギーを使用して事業を行う者の判断の基準となるべき事項を定め,これを公表するものとする。(以下略)」

』第5条第2項は次のように規定している。

「経済産業大臣は,工場等において電気を使用して事業を行う者による電気の需要の平準化に資する措置の適切かつ有効な実施を図るため,次に掲げる事項その他当該者が取り組むべき措置に関する指針を定め,これを公表するものとする。(以下略)」

また,『』第5条第3項は次のように規定している。

「第1項に規定する判断の基準となるべき事項及び前項に規定する指針は,エネルギー需給の長期見通し,電気その他のエネルギーの需給を取り巻く環境,エネルギーの使用の合理化に関する技術水準,業種別のエネルギー使用の合理化の状況その他の事情を勘案して定めるものとし,これらの事情の変動に応じて必要な改定をするものとする。」

2) 連携省エネルギー計画に関する事項

』第46条は,複数の事業者が連携して省エネルギーを推進するときに,連携することで実現できる省エネルギー効果を適正に評価するための認定制度として,平成30年12月施行の『』改正によって新設されたものである。

ⅰ) 第1項では,連携する事業者が共同で連携省エネルギー計画を作成し経済産業大臣に提出し,その連携省エネルギー計画が適当である旨の認定を受けることができる,と規定されている。審査を経て認定を受けることができれば,『』第48条の特例によって,定期の報告において省エネルギー量を事業者間で分配して報告することができ,それぞれの事業者が公平に評価されることになる。

ⅱ) 第2項は,認定を受けるために作成する連携省エネルギー計画に記載しなければならない事項として,次の一~三号を掲げている。

  1. 連携省エネルギー措置の目標
  2. 連携省エネルギー措置の内容及び実施期間
  3. 連携省エネルギー措置を行う者が設置している工場等において当該連携省エネルギー措置に関してそれぞれ使用したこととされるエネルギーの量の算出の方法

(2) エネルギーを使用する工場等における『』の適用に関する事項

(『』第2条,第7条~第14条及び関係する『』,『』の規定)

ある事業者が化学工場と,別の事業所として本社事務所を所有しており,これらがこの事業者の設置している施設の全てである。ここで,化学工場における前年度の燃料,電気などの使用量は,次の a ~ e,本社事務所における前年度の電気の使用量は,次の f 及び g のとおりであり,この事業者はこれら以外のエネルギーを使用していなかった。

なお,本社事務所は専ら事務所として使用されており,また,この事業者は,連鎖化事業者,認定管理統括事業者又は管理関係事業者のいずれにも該当していない。

  1. 化学工場において,ボイラで使用した都市ガスの量を発熱量として換算した量が 9 万 6 千ギガジュールであった。
  2. 化学工場において,ボイラの燃料として,プラスチック廃棄物を使用した。その量を発熱量として換算した量が 5 千ギガジュールであった。
  3. 化学工場において,ボイラの発生蒸気を利用した後の凝縮水の一部から熱を回収して使用した。その回収して使用した熱量が 6 千ギガジュールであった。
  4. 化学工場において,地中熱を利用した電気式ヒートポンプを設置して空調に使用した。この電気式ヒートポンプによって地中から回収して使用した熱量は 3 千ギガジュールであった。
  5. 化学工場において,小売電気事業者から購入して使用した電気の量を熱量として換算した量が 53 万ギガジュールで,電気の購入先の小売電気事業者では,化石燃料によって発電された電気を販売していた。
  6. 本社事務所において,小売電気事業者から購入して使用した電気の量を熱量として換算した量が 2 万 2 千ギガジュールで,電気の購入先の小売電気事業者では,化石燃料によって発電された電気を販売していた。
  7. 本社事務所において,太陽光発電装置を設置して,そこで発電した電気を本社事務所内で使用した。その使用した電気の量を熱量として換算した量が 3 千ギガジュールであった。

1) 前年度に使用したエネルギー使用量を『』で定めるところにより原油の数量に換算した量は,化学工場が 16,151 キロリットルであり,本社事務所では 568 キロリットルである。この事業者のエネルギー使用量は,化学工場と本社事務所のエネルギー使用量の合計であり,その量から判断して,この事業者は特定事業者に該当する。

なお,『』第4条によれば,発熱量又は熱量 1 ギガジュールは原油 0.0258 キロリットルとして換算することとされている。

2) 1) より,前年度に使用した『』で定めるエネルギー使用量から判断して,この化学工場は,第一種エネルギー管理指定工場等に該当する

3) 1) 及び 2) によって当該の指定を受けた後,この事業者が選任しなければならないのは,事業者としてはエネルギー管理統括者及びエネルギー管理企画推進者である。一方,各工場等のエネルギー管理者あるいはエネルギー管理員の選任については,次に示す 1 ~ 4 のうちから選択すると,化学工場についてはエネルギー管理者 1 名の選任が必要であり,本社事務所についてはどちらも選任不要である。

化学工場のエネルギー使用量

化学工場のエネルギー使用量は,a. と e. の合算であり,それを原油の数量に換算する。

(96,000 [GJ] + 530,000 [GJ]) × 0.0258 [kL/GJ] = 16,150.8 [kL]

第一種エネルギー管理指定工場等の指定に係るエネルギーの使用量 3,000 kL 以上であり,第一種エネルギー指定管理工場等に該当する。

エネルギーの使用の合理化等に関する法律施行令 第三条(第一種エネルギー管理指定工場等の指定に係るエネルギーの使用量)

法第十条第一項のエネルギーの年度の使用量についての政令で定める数値は,原油換算エネルギー使用量の数値で 3,000 kL とする。

原油換算エネルギー使用量が 20,000 kL 未満であり,エネルギー管理者は 1 名選任する必要がある。

エネルギーの使用の合理化等に関する法律施行令 第四条(エネルギー管理者の選任基準)

法第十一条第一項の政令で定める基準は,次のとおりとする。

  1. コークス製造業,電気供給業,ガス供給業又は熱供給業に属する工場等(法第三条第一項に規定する工場等をいう。以下同じ。)については,次の表の上欄に掲げる前年度における原油換算エネルギー使用量の区分に応じ,同表の下欄に掲げる数のエネルギー管理者をエネルギー管理士免状の交付を受けている者のうちから選任すること。
    コークス製造業,電気供給業,ガス供給業又は熱供給業に属する工場等
    原油換算エネルギー使用量 エネルギー管理者
    10 万 kL 未満 1 人
    10 万 kL 以上 2 人
  2. 前号に規定する工場等以外の工場等については,次の表の上欄に掲げる前年度における原油換算エネルギー使用量の区分に応じ,同表の下欄に掲げる数のエネルギー管理者をエネルギー管理士免状の交付を受けている者のうちから選任すること。
    前号に規定する工場等以外の工場等
    原油換算エネルギー使用量 エネルギー管理者
    2 万 kL 未満 1 人
    2 万 kL 以上 5 万 kL 未満 2 人
    5 万 kL 以上 10 万 kL 未満 3 人
    10 万 kL 以上 4 人
本社事務所のエネルギー使用量

本社事務所のエネルギー使用量は,f. であり,それを原油の数量に換算する。

22,000 [GJ] × 0.0258 [kL/GJ] = 567.6 [kL]

(3) 「機械器具に係る措置」及び「報告及び立入検査」に関連する事項

1) 機械器具に係る措置に関連する事項

』第145条では,経済産業大臣(自動車及びこれに係る特定関係機器にあっては,経済産業大臣及び国土交通大臣)は,特定エネルギー消費機器及び特定関係機器(以下「特定エネルギー消費機器等」という。)ごとに,そのエネルギー消費性能又はエネルギー消費関係性能の向上に関しそのエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準となるべき事項を定め,これを公表するものとする,としている。

ⅰ) この判断の基準となるべき事項は,当該特定エネルギー消費機器等のうちエネルギー消費性能等が最も優れているもののそのエネルギー消費性能等,当該特定エネルギー消費機器等に関する技術開発の見通しその他の事情を勘案して定めるものとしている。

ⅱ) この特定エネルギー消費機器として,『』が規定している機器を,次の 1 ~ 4 のうちから挙げると 1 と 2 と 3 である。

  1. エアコンディショナー
  2. 複写機
  3. 交流電動機
  4. コンプレッサー

2) 報告及び立入検査に関連する事項

』第162条は報告及び立入検査についての規定であり,工場等に係る措置に関しては,第1項~第3項に規定されている。いずれも,各項の規定の施行に必要な限度において事業者が設置している工場等について,各項に規定されている報告及び立入検査をさせることができるとする規定である。

これら第1項~第3項における規定内容から判断して,次の 1 ~ 3 のうち,下線部分が正しいのは 2 である。

  1. 第1項は特定事業者等の指定等に関するものであり,報告及び立入検査の対象となるのは,当該の指定を受けた事業者のみである。
  2. 第2項は特定事業者等が選任しなければならない者に関するものであり,特定事業者等に対して報告及び立入検査をさせることができるのは,経済産業大臣である。
  3. 第3項は工場等に係る措置のうち,第1項及び第2項以外の措置に関するものであり,その措置の実施において,特定連鎖化事業者や連鎖化事業の加盟社に対して立入検査を行うとき,あらかじめ連鎖化事業の加盟者に承諾を得る必要はない

2) 報告及び立入検査に関連する事項

正しくは,1.「工場等においてエネルギーを使用して事業を行う者」,3.「あらかじめ、当該加盟者の承諾を得なければならない」である。

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