目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2020年9月7日作成,2023年12月31日更新

令和2年度 問題5 自動制御及び情報処理

(1) システムの周波数特性,時間応答

図 1 のブロック線図に示したシステムを考える。ここで,$G(s)$ はシステムの伝達関数,$U(s)$ は入力信号,$Y(s)$ は出力信号である。

ここで伝達関数 $G(s)$ が次の式 ① で与えられるとする。

\[ G(s)=\frac{2}{s^3+2s^2+2s+3} \]
・・・①
図 1 ブロック線図
図 1 ブロック線図

1) システム $G(s)$ の周波数特性を考える。

$G(s)$ において,$s=\text{j}\omega$($\text{j}$ は虚数単位,$\omega$ は角周波数)としてボード線図を描くと,十分低い周波数でのゲインは -3.5 [dB] となる。また,十分高い周波数でのボード線図のゲイン曲線の傾きは,-60 [dB/dec] となる。

なお,$\log{2}=0.301$,$\log{3}=0.477$ とする。

2) システム $G(s)$ の時間応答を考える。

入力信号として,大きさ 3 のステップ信号 $u(t)=3$($t\le0$)を加えたとする。十分に時間が経過したときの出力信号 $y(t)$ は 2 となる。

3) 2) と同様に時間応答を考える。ここで,入力信号として,正弦波信号 $u(t)=\sin(t)$ を加えて十分に時間が経過したときの出力信号 $y(t)$ を求めたい。

ⅰ) $s=\text{j}\omega$ として周波数伝達関数を計算する。ここで,入力信号 $u(t)$ の角周波数は $\omega=1$ [rad/s] であるから,周波数伝達関数 $G(\text{j}\omega)$ は,$1-\text{j}$ となる。

ⅱ) このとき,出力信号 $y(t)$ の振幅は $\sqrt{2}$ であり,角周波数は 1 [rad/s],位相は $\displaystyle -\frac{\pi}{4}$ [rad] と求められる。

1) システム $G(s)$ の周波数特性

$G(s)$ に $s=\text{j}\omega$ を代入して整理する。

\[ G(\text{j}\omega)=\frac{2}{(3-2\omega^2)+\text{j}(2\omega - \omega^3)} \]

十分低い周波数でのゲインを求める。

\[ \text{gain}=20\log{G(0)}=20\log{\frac{2}{3}}=20(\log{2}-\log{3})=20(0.301-0.477)=-3.52 \]

システム $G(s)$ のボード線図を描く。

図 システムのボード線図
図 システムのボード線図

2) システム $G(s)$ の時間応答

入力信号として,大きさ 3 のステップ信号 $u(t)=3$($t\le0$)を加えたとする。十分に時間が経過したときの出力信号 $y(t)$ は次式で求められる。

\[ \lim_{t\to\infty}=\lim_{s\to 0}{sG(s)\times\frac{3}{s}}=\lim_{s\to 0}{\frac{2}{s^3+2s^2+2s+3}\times3}=2 \]

3) 入力信号を正弦波信号としたときの出力信号

$G(\text{j}\omega)$ に $\omega = 1$ を代入する。

\[ G(\text{j}\omega)=\frac{2}{(3-2\omega^2)+\text{j}(2\omega - \omega^3)}=\frac{2}{1+\text{j}}=1-\text{j} \]

このとき,$y(t)$ の出力信号は,下図となる。

図 出力信号
図 $y(t)$ の出力信号

(2) RASIS

RASIS はコンピュータシステム等の信頼性評価を表し,五つの評価項目により構成されている。そのうち指標としてシステムや装置の稼働率が用いられるのは可用性の評価である。

システムの稼働率は一定時間中のシステムの稼働時間の比率で表され,稼働時間が長く故障時間が短いほど可用性が高いシステムといわれる。

図 2 と図 3 は,稼働率が 0.9 と 0.8 のシステムを直列に接続した場合と,並列に接続した場合のシステム構成図である。図 2 のシステム全体としての稼働率は 7.2 × 10-1 となり,図 3 のシステム全体としての稼働率は 9.8 × 10-1 となる。

図 2 直列に接続した場合
図 2 直列に接続した場合
図 3 並列に接続した場合
図 3 並列に接続した場合

RASIS

RASIS(Reliability Availability Serviceability Integrity Security)とは、コンピュータシステムが期待された機能・性能を安定して発揮できるか否かを示すのに用いられる代表的な5つの特性の頭文字を繋ぎ合わせた用語。

表 RASIS
特性 説明
信頼性(Reliability) 障害や不具合による停止や性能低下の発生しにくさを表す。稼働時間当たりの障害発生回数(MTBF:Mean Time Between Failures)などの指標で表すことが多い。
可用性(Availability) 稼働率の高さ、障害や保守による停止時間の短さを意味する。稼働が期待される時間に対する実際の稼働時間の割合(稼働率)などの指標で表す場合が多い。
保守性(Serviceability) 障害復旧やメンテナンスのしやすさを表す。障害発生から復旧までの平均時間(MTTR:Mean Time To Repair)などの指標で表すことが多い。
保全性(Integrity) 過負荷や障害、誤操作などによるデータの破壊や喪失、不整合などの起こりにくさを意味する。
機密性(Security) 外部の攻撃者による不正侵入や遠隔操作、データやプログラムの改竄や機密データの漏洩などの起こりにくさを表す。

可用性の指標「稼働率」

MTBF(Mean Time Between Failures : 平均故障間隔)とMTTR(Mean Time To Repair : 平均修理時間)より,システムにおける可用性の指標である稼働率が導かれる。

稼働率 = MTBF / (MTBF + MTTR)

直列に接続した場合のシステム全体としての稼働率

直列に接続した場合のシステム全体としての稼働率は,次式で求められる。

0.9 × 0.8 = 0.72

並列に接続した場合のシステム全体としての稼働率

並列に接続した場合のシステム全体としての稼働率は,次式で求められる。

1 - (1 - 0.9) × (1 - 0.8) = 1 - 0.02 = 0.98

(3) プログラミング

コンピュータに実行させる処理手順を記述することをプログラミングと呼ぶ。プログラミングには記述する人間にわかりやすく,コンピュータ処理の実行のための言語体系であるプログラミング言語が用いられ,その言語で記述されたものをソースコードと呼ぶ。

実行時に,記述内容を言語処理によって逐次解釈しながら実行するものをインタプリタ型言語と呼び,それに対して,機械が理解可能な機械語にあらかじめ翻訳しておき実行するものをコンパイラ型言語と呼ぶ。後者は,インタプリタ型言語と比べて実行速度が速くなる

ソースコード(source code)
ソースコードとは、プログラミング言語などの人間が理解・記述しやすい言語やデータ形式を用いて書き記されたコンピュータプログラムのこと。プログラムに限らず、人工言語や一定の規約・形式に基いて記述された複雑なデータ構造の定義・宣言などのこともソースコードと呼ぶ場合がある。
コンパイラ型言語(compiler language)
コンパイラ言語とは、高水準プログラミング言語の分類の一つで、公式の、あるいは主要な実行環境がコンパイラ(compiler)であるような言語のこと。
インタプリタ言語(interpretive language)
インタプリタ言語とは、高水準プログラミング言語の分類の一つで、公式の、あるいは主要な実行環境がインタプリタ(interpreter)であるような言語のこと。
参考
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