目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2020年9月9日作成,2023年12月31日更新

令和2年度 問題6 電気計測

(1) 直流電力の測定

データセンターでは直流電力の利用が盛んである。また,電気自動車の普及などの後押しもあり,直流電力の測定ニーズは増えている。

直流電力の測定は,電圧計と電流計により負荷に印加されている電圧 $V$ [V] と負荷に流れる電流 $I$ [A] をそれぞれ測定し,$P=VI$ [W] で算出できる。ただし,電圧計,電流計の内部抵抗により誤差が発生する。

いま,図 1 及び図 2 における負荷の消費電力 $P$ の計測について考える。ここで,$r_\text{v}$ [Ω] は電圧計の内部抵抗,$r_\text{A}$ [Ω] は電流計の内部抵抗である。

図1
図1
図2
図2

1) 電圧計,電流計の内部抵抗による誤差を考慮すると,負荷の真の消費電力 $P$ は,図 1 では $\displaystyle VI-\frac{V^2}{r_\text{v}}$,図 2 では $VI-r_\text{A}I^2$ [W] となる。

この結果から,より正確な測定のためには電圧計の内部抵抗はできるだけ高いものを,電流計の内部抵抗はできるだけ低いものを選ぶ必要がある。

2) 内部抵抗 100 kΩ の電圧計と内部抵抗 10 mΩ の電流計を用いて,図 1 及び図 2 のそれぞれの接続で電圧と電流を測定したところ,$V$ = 10 V,$I$ = 0.4 A であった。負荷の真の消費電力に対する誤差は図 2 の接続の方が大きくなる

3) 電源として電池を用いる場合は,その内部特性を確認しておく必要がある。二次電池であるリチウムイオン電池などは,内部抵抗が大きい電池として電気自動車や工作機械など,高出力を必要とする機器の電源に用いられている。現在,様々な場面でこのような二次電池が利用されているが,同時に,劣化あるいは故障した二次電池による多くの事故も報告されている。二次電池の的確な特性評価は,電池の劣化診断や故障解析において重要であるとともに,電池の開発や性能評価にもなくてはならない手段である。

電池の特性評価には直流法と交流法があり,交流法で得られるのは電池の内部インピーダンスである。

図 1 における負荷の真の消費電力は,次式で求められる。

\[ P = VI-\frac{V^2}{r_\text{v}} = 10\times0.4 - \frac{10^2}{100\times10^3} = 4 - 0.001 = 3.999 \text{ [W]} \]

図 2 における負荷の真の消費電力は,次式で求められる。

\[ P = VI-r_\text{A}I^2 = 10\times0.4 - 10\times10^{-3}\times0.4^2=4-0.0016=3.9984 \text{ [W]} \]

よって,負荷の真の消費電力に対する誤差は図 2 の接続の方が大きくなる

(2) 湿度の測定

1) 湿度測定は家庭のみならず,食品工場や半導体工場での生産管理に欠かせない技術である。

湿度の表現方法には相対湿度と絶対湿度の二つがある。相対湿度は水蒸気量とそのときの温度における飽和水蒸気量との比率を百分率で示したものであり,一般的に湿度の指標としては相対湿度が利用されることが多い。一方,絶対湿度には容積絶対湿度と重量絶対湿度があるが,国際的には容積絶対湿度のことを指し,単位体積当たりに含まれる水蒸気量を示したものである。

2) 生産管理用として広く用いられている電子式湿度計は,主に多孔質セラミクスなどの吸湿・脱湿による電気抵抗変化あるいは静電容量変化を用いて湿度を検出するものである。多くの電子式湿度センサは相対湿度の算出のため温度計を内蔵している。

これらの湿度センサは原理的に校正が必要であるとともに,その構造から汚損などによる経時変化が避けられないため,定期的なリフレッシュが必要である。

3) 精密湿度測定には露点計を用いることも多い。例えば露点計が鏡面冷却式の場合は,鏡面(観測面)を冷却していき,結露を生じたときの温度を測定することにより湿度を求めるものである。高精度に測定するため自動平衡式などの方法がある。

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