目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2020年9月22日作成,2021年8月13日更新

令和2年度 問題10 電気機器

(1) 三相誘導電動機の三つの特性曲線

1) 無負荷飽和曲線は,同期発電機を定格回転速度にして無負荷で運転し,界磁電流を零から徐々に増加させたときの端子電圧と界磁電流との関係を表したものである。端子電圧は,界磁電流が小さい範囲では界磁電流にほぼ比例するが,界磁電流がさらに増加すると,磁気飽和が生じて端子電圧は飽和特性を示す。

2) 三相短絡曲線は,同期発電機の電機子巻線の三相の出力端子を短絡し,定格回転速度で運転して,界磁電流を零から徐々に増加させたときの電機子電流と界磁電流との関係を表したものである。この関係は電機子反作用によって磁束が打ち消されるので飽和することなく,ほぼ直線となる。

3) 外部特性曲線は,同期発電機を定格回転速度で運転し,界磁電流を一定に保って,負荷力率を一定にして負荷電流を変化させた場合の端子電圧と負荷電流との関係を表したものである。この曲線は負荷力率によって形が変化する。

無負荷飽和曲線で無負荷定格電圧を発生するのに必要な界磁電流を $I_{f1}$,三相短絡曲線で定格電流に等しい電流を発生するのに必要な界磁電流を $I_{f2}$ とすると,両者の比 $K_{s}$($\displaystyle =\frac{I_{f1}}{I_{f2}}$)は短絡比となる。同期発電機の $K_\text{s}$ は,単位法で表した直軸同期インピーダンスの逆数となる。

(2) サイリスタを用いた三相ブリッジ整流回路

図はサイリスタを用いた三相ブリッジ整流回路である。交流電圧の相順は u-v-w である。

サイリスタを用いた三相ブリッジ整流回路
図 サイリスタを用いた三相ブリッジ整流回路

1) サイリスタ Th5 と Th6オン状態にあるときに,サイリスタ Th1 に点弧信号を与える場合,u 相電圧 $v_\text{u}$ の値が w 相電圧 $v_\text{w}$ の値より高くなる範囲であれば,Th1 がターンオンして転流が行われ,Th5 がターンオフする。

2) 横軸を位相角 $\theta$ とした三相ブリッジ整流動作波形において,$v_\text{u}$ と $v_\text{w}$ の波形が交わる点からサイリスタ Th1 に点弧信号を与えるまでの角度 $\alpha$ を制御遅れ角と呼ぶ。

3) 対称三相正弦波交流電源の線間電圧(実効値)を $V$ とし,転流リアクタンスによる電圧降下を無視した場合,直流電圧 $v_\text{d}$ の平均値 $V_\text{d}$(直流平均電圧)は次式で与えらえる。

\[ V_\text{d}=\frac{3\sqrt{2}}{\pi}V\times \cos\alpha \]
・・・・・・①

式 ① は,近似式 $V_\text{d}=1.35V\times \cos\alpha$ が汎用的に用いられる。

(3) 三相誘導電動機

定格出力 7.5 kW,定格出力 200 V,定格周波数 60 Hz,8 極の三相誘導電動機があり,83 N·m のトルク一定の負荷を負って定格出力で運転している。

1) この電動機の同期速度は 900 [min-1] であり,定格出力と負荷トルクの関係から,回転速度は 863 [min-1] となるので,滑りは 4.1 × 10-2 となる。

2) この三相誘導電動機のインバータにより $V/f$ 一定制御を行って,一次周波数を 40 Hz としたときの滑りは 6.1 × 10-2 となり,回転速度は 563 [min-1] となる。ただし,滑り周波数は一次周波数にかかわらず常に一定の値に維持するものとする。

A. 電動機の同期速度

電動機の同期速度 $N_0$ は,次式で求められる。

\[ \frac{120f}{p}=\frac{120\times60}{8}=900 \]
B. トルク一定の負荷を負っての回転速度

定格出力と負荷トルクの関係から,回転速度 $N$ は次式で求められる。

\[ N=\frac{P}{0.1047\times T}=\frac{7500}{0.1047\times83}=863 \]
C. 滑り

滑り $s$ は,次式で求められる。

\[ s=\frac{N_0-N}{N_0}=\frac{900-863}{900}=0.04105\approx4.1 \times 10^{-2} \]
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