目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2020年9月10日作成,2023年12月31日更新

令和2年度 問題13 電気加熱

(1) 誘導加熱方式の加熱原理

1) 間接抵抗加熱方式は発熱体と呼ばれる熱源から主として放射,対流により被加熱物に伝熱させるもので,抵抗炉に広く使われている方式である。間接抵抗加熱方式に用いられる発熱体の素材として望まれる主な性質としては,抵抗率が大きいこと,高温での変形が少ないこと,加工が容易であること,高温で耐酸化性が高いこと,抵抗の温度係数が小さいことなどが挙げられる。

2) 直接抵抗加熱方式は被加熱物に直接ジュール熱を発生させるため,間接抵抗加熱方式と比べて急速加熱が可能であり,加熱効率も高い方式である。

3) アーク炉では,一般的に商用周波の電源が用いられるが,電極と被溶解材間で極めて不規則なアーク現象を伴うため,負荷電流の変動が激しく,電源電圧が動揺することで,フリッカ障害が発生する場合がある。

一方,直流を電源とするアーク炉は前者と比べるとアークが比較的安定していることから,フリッカの低減や電極損耗量の低減などの利点がある。

また,両者とも高調波障害の要因となるので注意を要する。

4) 赤外加熱に用いられる赤外放射は可視光より波長が長い電磁波であり,0.76 μm ~ 1 mm の波長領域にある。特に 4 μm 以上の波長は遠赤外と呼ばれ,食品や高分子化合物などの加熱に適しており,この熱源にはセラミックヒータが広く用いられている。

(2) 加熱炉

被加熱材を一定の速度で連続して搬送しながら,25 °C から 1 250 °C に加熱する加熱炉がある。加熱炉の入力端における電力は 315 kW で一定であり,1 時間当たり 855 kg の被加熱材が搬送されている。ここで,被加熱材の比熱は温度に関わらず一定とする。なお,加熱炉は熱的に安定した状態であり,熱損失は 62 kW で一定である。

1) この加熱炉の電力原単位は 0.37 [kW·h/kg] である。

2) 被加熱材の単位質量当たりの加熱正味熱量が 720 kJ/kg の場合,この加熱炉の全電気効率は 74 [%] である。

3) この加熱炉で,1 時間当たりの処理量を 900 kg に増加したい。ここでは,加熱炉の電力を増価する方法,及びこの加熱炉の前工程で加熱材を予熱する方法について考える。なお,被加熱材は 1 250 °C まで昇温するものとし,搬送速度が変化しても被加熱材の均熱には影響しないものとする。また,電気効率及び熱損失も変らないものとする。

ⅰ) 加熱炉の電力の増加が可能であれば処理量の増加ができる。被加熱材の初期温度が 25 °C で変わらないものとすれば,加熱炉の入力端における電力を 327 [kW] に増加すればよい。

ⅱ) 加熱炉の電力の増加ができないときは,被加熱材を予熱することができれば処理量の増加ができる。入力端における電力が 315 kW で一定であるとすれば,加熱炉に入れる被加熱材の初期温度を 86 [°C] に予熱すればよい。

1) 加熱炉の電力原単位は次式で求められる。

315 [kW] / 855 [kg/h] = 0.368 [kW·h/kg]
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