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2021年8月12日作成,2023年12月31日更新

令和3年度 問題1 エネルギーの使用の合理化等に関する法律及び命令

次の各文章は,「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」及びそれに関連した命令について述べたものである。ここで,法令は令和3年4月1日時点で施行されているものである。

これらの文章において,

と略記する。

(1) 「エネルギー統括管理者」及び「エネルギー管理企画推進者」に関する事項

1) 特定事業者として指定された事業者は,『』第8条により,次の 1. 及び 2. を統括管理するエネルギー管理統括者を選任しなければならない。

  1. 』第15条 第1項の中長期的な計画の作成事務
  2. その設置している工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関し,エネルギーを消費する設備の維持,エネルギーの使用方法の改善及び監視その他経済産業省令で定める業務

なお,『』では,2. の「その他経済産業省令で定める業務」の一つとして,「特定事業者が設置している工場等におけるエネルギーを消費する設備の新設,改造又は撤去に関すること」が規定されている。

2) 特定事業者は,エネルギー管理統括者の選任に加えて,『』第9条により,エネルギー管理推進者を選任しなければ,ならない。エネルギー管理企画推進者に関する次の 1. ~ 3. の記述のうち,『』,『』の規定に従って正しいものを全て挙げると 1. と 2. である。

  1. エネルギー管理企画推進者は,エネルギー管理統括者を補佐する。
  2. エネルギー管理企画推進者の選任に当たっては,選任すべき事由が生じた日から 6 ヶ月以内に選任しなければならない。
  3. エネルギー管理企画推進者は,エネルギー管理者又はエネルギー管理員の経験を有していなければならない。

3) 特定事業者は,『』第9条 第1項により,エネルギー管理企画推進者を次に掲げる者のうちから選任しなければならない。

  1. 経済産業大臣又は指定講習機関が経済産業省令で定めるところにより行うエネルギーの使用の合理化に関し必要な知識及び技能に関する講習の課程を修了した者
  2. エネルギー管理士免状の交付を受けている者

さらに,『』第9条 第2項では,『』で定められた期間ごとに,当該エネルギー管理企画推進者に資質の向上を図るための講習を受けさせなければならない場合を規定しているが,その対象者となるのは 1. から選任した場合のみである。

(2) エネルギーを使用する工場等における『』の適用に関する事項

(『』第2条,第7条~第14条及び関係する『』,『』の規定)

ある事業者が金属加工工場と,別の事業所として専ら事務所として使用されている本社事務所を有しており,これらがこの事業者の設置している施設の全てである。ここで,金属加工工場における前年度の燃料,電気などの使用量は,次の a ~ e,本社事務所における前年度の電気などの使用量は,次の f 及び g のとおりであり,この事業者はこれら以外のエネルギーは使用していなかった。なお,この事業者は連鎖化事業者,認定管理統括事業者又は管理関係事業者のいずれにも該当していない。

金属加工工場の燃料,電気などの使用量

  1. ボイラの燃料として都市ガスを使用した。その量を発熱量として換算した量が 11 万ギガジュールであった。また,そのボイラによる発生蒸気を利用した後の凝縮水の一部を回収してボイラ給水として使用した。その回収して使用した熱量が 4 千ギガジュールであった。
  2. 加熱炉の燃料として都市ガスを使用した。その量を発熱量として換算した値が 31 万ギガジュールであった。また,加熱炉の排熱を a のボイラの給水の昇温に利用した。その利用した排熱の熱量が 1 万ギガジュールであった。
  3. b. の加熱炉は,前年度の途中に断熱を強化する改造工事を実施した。この改造工事によって,b. の加熱炉の改造後の都市ガスの使用量は,改造前に対して 10 % 低減させることができていた。
  4. b. の加熱炉によって加熱した金属の冷却のために,工場内の排水処理場を経て循環利用している冷却水を使用している。この冷却水で金属を冷却した熱量は 3 万ギガジュールであった。
  5. 電気事業者から購入して使用した電気の量を熱量として換算した値が 42 万ギガジュールで,電気の購入先の電気事業者では,化石燃料によって発電された電気を販売していた。

本社事務所の電気などの使用量

  1. 電気事業者から購入して使用した電気の量を熱量として換算した量が 4 万 5 千ギガジュールで,電気の購入先の電気事業者では,化石燃料によって発電された電気を販売していた。
  2. 給湯には,電気を使用して加熱ヒーターとヒートポンプを稼働している。これらを稼働させるための電気は f. の電気の一部であり,ヒートポンプによる空気中の熱の利用によって得られた熱量は 2 千ギガジュールであった。

1) 前年度に使用した,『』で定めるエネルギーの使用量を原油の数量に換算した量は,金属加工工場では 21 672 キロリットル,本社事務所では 1 161 キロリットルである。

この事業者のエネルギー使用量は,金属加工工場と本社事務所のエネルギー使用量の合計であり,その量から判断して,この事業者は特定事業者に該当する。

なお,『』によれば,発熱量又は熱量 1 ギガジュールは原油 0.025 8 キロリットルとして換算することとされている。

2) 1) から求めた「前年度に使用した,『』で定めるエネルギーの使用量」から判断して,この金属加工工場は,第一種エネルギー管理指定工場等に該当する。また,本社事務所は,エネルギー管理指定工場等に該当しない

3) 1) 及び 2) によって当該の指定を受けた後,この事業者が,事業者の単位で選任しなければならないのは,エネルギー管理統括者及びエネルギー管理企画推進者であり,工場等の単位で選任しなければならないのは,金属加工工場のエネルギー管理者 2 名である。

1) エネルギーの使用量を原油の数量に換算した量

金属加工工場

金属加工工場のエネルギー使用量は,a.,b.,e. の合算であり,それを原油の数量に換算する。

(110,000 [GJ] + 310,000 [GJ] + 420,000 [GJ]) × 0.0258 [kL/GJ] = 21,672 [kL]
本社事務所

本社事務所のエネルギー使用量は,f. であり,それを原油の数量に換算する。

45,000 [GJ] × 0.0258 [kL/GJ] = 1,161 [kL]

3) エネルギー管理者の選任

原油換算エネルギー使用量が 2 万 kL 以上 5 万 kL 未満であり,エネルギー管理者は 2 名選任する必要がある。

エネルギーの使用の合理化等に関する法律施行令 第四条(エネルギー管理者の選任基準)

法第十一条第一項の政令で定める基準は,次のとおりとする。

  1. コークス製造業,電気供給業,ガス供給業又は熱供給業に属する工場等(法第三条第一項に規定する工場等をいう。以下同じ。)については,次の表の上欄に掲げる前年度における原油換算エネルギー使用量の区分に応じ,同表の下欄に掲げる数のエネルギー管理者をエネルギー管理士免状の交付を受けている者のうちから選任すること。
    コークス製造業,電気供給業,ガス供給業又は熱供給業に属する工場等
    原油換算エネルギー使用量 エネルギー管理者
    10 万 kL 未満 1 人
    10 万 kL 以上 2 人
  2. 前号に規定する工場等以外の工場等については,次の表の上欄に掲げる前年度における原油換算エネルギー使用量の区分に応じ,同表の下欄に掲げる数のエネルギー管理者をエネルギー管理士免状の交付を受けている者のうちから選任すること。
    前号に規定する工場等以外の工場等
    原油換算エネルギー使用量 エネルギー管理者
    2 万 kL 未満 1 人
    2 万 kL 以上 5 万 kL 未満 2 人
    5 万 kL 以上 10 万 kL 未満 3 人
    10 万 kL 以上 4 人

(3) 「定期の報告」に関する事項

特定事業者は,『』第16条に基づいて,毎年度,『』で定めるところにより,その設置している工場等におけるエネルギーの使用量その他エネルギーの使用の状況並びにエネルギーを消費する設備及びエネルギーの使用の合理化に関する設備の設置及び改廃の状況に関し,『』で定める事項を主務大臣に報告しなければならない。これを定期の報告という。

ここで,前述のエネルギーの使用の状況には,エネルギーの使用の効率及びエネルギーの使用に伴って発生する二酸化炭素の排出量に係る事項を含むとされている。二酸化炭素の排出量が挙げられているのは,エネルギーの使用と地球環境との関係によるものである。

(4) 「機械器具に係る措置」及び「熱損失防止建築材料に係る措置」に関連する事項

』第145条では,経済産業大臣(自動車及びこれに係る特定関係機器にあっては,経済産業大臣及び国土交通大臣)は,特定エネルギー消費機器等ごとに,そのエネルギー消費性能又はエネルギー消費関係性能の向上に関しそのエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準となるべき事項を定め,これを公表するものとする,としている。

また,この判断の基準となるべき事項は,当該特定エネルギー消費機器等のうちエネルギー消費性能等が最も優れているもののそのエネルギー消費性能等,当該特定エネルギー消費機器等に関する技術開発の将来の見通しその他の事情を勘案して定めるものとし,これらの事情変動に応じて必要な改定をするものとする,としている。

』第150条では,熱損失防止建築材料のうち,我が国において大量に使用され,かつ,建築物において熱の損失が相当程度発生する部分に主として用いられるものであって,『』第149条に規定する性能の向上を図ることが特に必要なものとして『』で定める特定熱損失防止建築材料については,経済産業大臣は,特定熱損失防止建築材料ごとに,『』に規定する性能の向上に関し熱損失防止建築材料製造事業者等の判断の基準となるべき事項を定め,これを公表するものとする,としている。

3) 特定エネルギー消費機器等あるいは特定熱損失防止建築材料として『』の対象となっているものを,次の 1. ~ 4. のうちから二つ挙げると 1. と 3. である。

  1. 照明器具
  2. 熱交換器
  3. 複層ガラス
  4. 太陽光発電パネル
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