目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2021年8月13日作成,2023年12月31日更新

令和3年度 問題6 電気計測

(1) 電圧波形の観測

電圧波形を観察する機器にディジタルオシロスコープがある。この機器は,入力電圧をサンプルホールドして量子化し,その電圧値をメモリに蓄えて,時間の関数として電圧値を描画するものである。

この機器を一般的なアナログ機器と比較したときの特徴的な利点は,単発現象の測定が容易なことである。一方,高速の波形観察は A/D 変換の速度で制限されてしまうことと,エイリアシングが生じることが欠点である。エイリアシングを防ぐため,サンプリング周波数を $f_\text{S}$ [Hz] とすると,再現可能な周波数は理論的には $\displaystyle \frac{f_\text{S}}{2}$ [Hz] より低い周波数に制限される。

また,この機器の多くは高速フーリエ変換機能を有しており,詳細な波形解析を可能としている。

通常のオシロスコープでは,単発現象や入力信号の繰り返し周波数が数 Hz 程度に低くなると,波形の時間経過が観測しにくくなる。このような低速現象を観測するには,ディジタルオシロスコープが使われる。

(2) サンプリングオシロスコープ

繰り返し波形の観察によく利用される機器にサンプリングオシロスコープがある。サンプリングオシロスコープでは,サンプルホールドするタイミングをトリガ時刻から徐々にずらして測定する。その結果,繰り返し波形のサンプルされる部分も多少遅い場合でも測定されることになる。サンプリングオシロスコープの利点は,増幅・A/D 変換回路の速度が多少遅い場合でも,高速な繰り返し波形の観察が可能であることである。

信号周波数が非常に高くなり,掃引信号の繰り返し周波数では追従できなくなるような場合には,サンプリングオシロスコープが有効である。

サンプリングオシロスコープは,周期 $T$ の信号波形に対して,それよりわずかに周期の長い時間間隔 $(T+\Delta t)$ で信号波形をサンプリングし,1 周期ごとに $\Delta t$ ずつずれた点のデータをサンプリングしてブラウン管の画面に表示する。

$T/\Delta t$ 回のサンプリングで 1 周期分のデータが得られるが,高速繰り返し現象を低速繰り返し現象に変換して波形表示するものである。通常のオシロスコープでは周波数上限が 400 ~ 500 MHz 程度であるのに対し,サンプリングオシロスコープでは 10 GHz 帯の周波数まで観測できる。

(3) 電気計測における誤差

電気計測における誤差について考える。

1) 測定範囲として 15/60/300 A の切り替えができるクランプ式電流計を使用して,ある交流電流を測定したとき,60 A レンジで 50 A が指示された。このクランプ式電流計の測定の許容誤差が ± 5.0 % である場合,真の電流値は A 47 [A] ~ B 53 [A] の範囲にあることになる。ただし,A < B とする。

2) JIS では,直動式の電流計及び電圧計は,0.05 から 5 の間の数値で表現される階級指数により精度が 11 に区分されている。

いま,フルスケール 100 V,階級指数が 1 の電圧計を使用して二種類の電圧を測定した。それぞれの読み取り値は,90 V 及び 50 V であった。このとき,読み取り値 90 V の相対誤差は 1.1 [%] 以下,読み取り値 50 V の相対誤差は 2.0 [%] 以下である。

1) 真の電流値

60 A レンジのクランプ式電流計の測定の許容誤差が ± 5.0 % である場合,指示値 ± 3.0 [A] となる。よって,指示値が 50 [A] の場合,真の電流値は 50 ± 3 [A](47 [A] ~ 53 [A])となる。

2) 相対誤差

フルスケール 100 V,階級指数が 1 の電圧計の許容誤差範囲は ± 1 [V] である。

読み取り値が 90 V の相対誤差は,次式で求められる。

1 [V] ÷ 90 [V] × 100 = 1.11... [%] ≈ 1.1 [%]

読み取り値が 50 V の相対誤差は,次式で求められる。

1 [V] ÷ 50 [V] × 100 = 2.0 [%]
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