目指せ!エネルギー管理士 電気分野
令和3年度 問題13 電気加熱
(1) 各種の電気加熱方式の特徴
各種の電気加熱方式の特長について考える。
1) 発熱体からの伝熱を利用して被加熱材を加熱する間接抵抗加熱方式の炉は,他の電気加熱方式の炉に比べ,加熱雰囲気の温度管理がし易い。
2) アーク炉におけるアークの電圧・電流・長さの特性は,一般にエアトンの実験式で示すことができる。この実験式は,アーク電流の増大につれて,アーク電圧が低下する負特性を示す。
3) マイクロ波加熱や誘電加熱に用いられる電磁波の周波数帯は,電気通信以外の工業などの目的で使用するために国際的に定められた周波数帯である ISM バンドとして割り当てられている。
エアトンの実験式
アーク加熱は,電極間と被加熱材との間に発生するアーク熱を利用して加熱・溶解を行う。アーク電圧・電流・アーク長の特性は,エアトンの実験式で示される。
\[ E_a = a + bL + \frac{c + dL}{I} \]ここで,$E_a$ はアーク電圧,$L$ はアーク長,$a$,$b$,$c$,$d$ は電極材料で決まる定数,$I$ はアーク電流である。この式からアーク電圧の増加によって,アーク電流が低下する負性抵抗特性をしている。一般にアークは不安定となるため,リアクトルを挿入して安定化を図っている。
ISM バンド
ISM バンドは Industrial Scientific and Medical Band の略である。
医療用装置,アマチュア無線,電子レンジなどの機器が電磁波を使用できる,国際的に目的用途に割り振られた周波数帯域(900 MHz,2.4 GHz,5.7 GHz 帯)。(ASCII.jp デジタル用語辞典 一部改変)
(2) 電気加熱の制御
電気加熱の制御について考える。
1) 電気加熱の温度制御にとって温度計は必要不可欠な計測器である。温度計は,大きく接触式と非接触式に大別され,さらに,それぞれいくつかの種類に分かれている。接触式には,2 種類の異種金属導体の両端を接続した閉回路に温度差によって起電力が生じる原理によって温度を計測する熱電温度計などの温度計があり,非接触式には放射温度計などがある。放射温度計にもいくつかの種類があり,光高温計はその中の一つである。
2) 電気加熱設備のエネルギー原単位は,被加熱材の単位質量当たりの消費電力量で表される。加熱設備全体で消費されるエネルギーには,通常損失が含まれているが,損失は被加熱材の加熱に寄与しない。エネルギー原単位は消費されるエネルギーの計測点を入力端として,そこでの計測値により評価・管理するのが一般的である。
(3) 加熱設備の各種計算
加熱設備の各種計算を行う。
1) 質量 1 000 kg の鉄を,25 °C から溶解するために必要な熱量は,9.3 × 105 [kJ] である。ここで,鉄の融点は 1 535 °C,比熱は 0.435 kJ/(kg·K),溶解潜熱は 272 kJ/kg とする。
2) 30 分間の加熱時間に被加熱材に与える正味熱量が 200 kW·h の加熱設備がある。この加熱設備の熱損失が加熱時間の間に 20 kW·h あり,全電気効率が 98 % であるとき,この加熱設備の設備入力は 4.5 × 102 [kW] である。
3) 単相交流 220 V 給電の抵抗加熱装置がある。この装置は,抵抗値が $R$ [Ω] の発熱体と 5.0 Ω の配線リアクタンスの直列回路で構成されている。この装置の発熱量が最大となるのは,$R$ の値が 5.0 [Ω] のときであり,その発熱量は 4.8 [kW] である。ただし,電源のインピーダンス及び配線損失は無視できるものとする。
1) 加熱と溶解に必要な熱量
質量 1 000 kg の鉄を 25 °C から 1 535 °C に加熱するのに必要な熱量を求める。
質量 1 000 kg の鉄(温度 1 535 °C)を溶解するのに必要な熱量を求める。
加熱と溶解に必要な熱量の和を求める。
2) 加熱設備の設備入力
加熱設備の設備入力は,次式で求められる。
3) 抵抗加熱装置の発熱量
回路に流れる電流は,次式で求められる。
抵抗加熱装置の発熱量は,次式で求められる。