目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2021年8月13日作成,2023年12月31日更新

令和3年度 問題16 空気調和

(1) 空調設備における熱源機器についての省エネルギー

空調設備における熱源機器についての省エネルギーについて考える。

1) 熱源機器選定及び熱源システム構築における省エネルギー

ⅰ) 熱源の選定時には,成績係数が大きく,部分負荷効率も高く,年間を通して高効率を維持する機器を選定するのが基本である。例えば,ターボ冷凍機などでは,機関の成績係数を示す指標に IPLV があり,この指標を参考に選択することも考えられる。

ⅱ) 立地や負荷条件等に応じて,最適な機器やシステムを選択することも肝要である。例えば,冷暖房負荷が同時発生する頻度が高ければ,その条件を生かして成績係数の向上が期待できる熱回収ヒートポンプを熱源機器として採用することが考えられる。

ⅲ) 部分負荷時の効率低下を抑える対策としては,機器の台数分割によって部分負荷運転を極力少なくするのが効果的であり,同時に補機動力の削減効果も期待できる。蓄熱空調方式の採用により,熱源の部分負荷運転を少なくすることも考えられる。

2) 熱源機器の運転制御における省エネルギー

ⅰ) 冷凍機やヒートポンプでは,蒸発温度や凝縮温度によって成績係数が変わるので,成績係数を向上させるためには,求める負荷に対応できる範囲で次の 1. 及び 2. を検討することが望ましい。

  1. 冷房時の冷水(冷風)温度を上げること
  2. 暖房時の温水(温風)温度を下げること

ⅱ) 定流量で稼働する負荷変動が大きいターボ冷凍機の省エネルギー運転について,部分負荷時の蒸発温度を上げて年間の消費電力を小さくするための制御として,最も省エネルギーとなる制御は,冷凍機における冷水の入口温度一定制御,出口温度一定制御,出入口温度差一定制御のうち入口温度一定制御である。

IPLV (Integrated Part Load Value) の計算式を次式に示す。

IPLV = 0.01 × A + 0.42 × B + 0.45 × C + 0.12 × D

ただし,A は 100 % 負荷時の COP,B は 75 % 負荷時の COP,C は 50 % 負荷時の COP,D は 25 % 負荷時の COP である。意味としては、冷却運転時で 100 % 負荷時は年間の運転時間の 1 %,75 % 負荷時は年間の運転時間の 42 %,50 % 負荷時は年間の運転時間の 45 %,25 % 負荷時は年間の運転時間の 12 % となり、その合計を表している。この運転時間の率は米国の 29 都市のチラーが採用されている建物のデータから決められたものである。この期間成績係数により、年間での冷却運転効率が良いかどうかの指標となる。

(2) 空調設備の負荷及び空調方式についての省エネルギー

1) 空調設備の省エネルギーでは,まず空調負荷をできるだけ小さくすることから始める。空調室温の設定は負荷を左右する要素であり,環境に配慮した省エネルギー設定とすることが求められている。なお,建築物衛生法では,居室の環境基準の温度基準値を 17 ~ 28 °C と定めている。

2) 空調の対象エリアの状況に応じた空調方式の選択も省エネルギーのためには必要である。大空間のごく一部が居住域であるときの空調などでは放射型空気調和設備を選択することで省エネルギー効果が期待できるとされているが,採用の際には冷房時の結露防止について考慮する必要がある。

3) セントラル空調機方式において,風量制御により空調機ファンの動力を削減したい。風量制御方式のうちの回転速度制御,吸込みベーン制御及び吐出しダンパ制御を比較すると,一般に風量変化に対する動力削減効果が最も大きいのは回転速度制御である。

表 空気調和設備を設けている場合の空気環境の基準
浮遊粉じんの量 0.15 mg/m3
一酸化炭素の含有率 100 万分の 10 以下(= 10 ppm 以下)
※特例として外気がすでに 10 ppm 以上ある場合には 20 ppm 以下
二酸化炭素の含有率 100 万分の 1 000 以下(= 1 000 ppm 以下)
温度 (1) 17 °C 以上 28 °C 以下
(2) 居室における温度を外気の温度より低くする場合は,その差を著しくしないこと。
相対湿度 40 % 以上 70 % 以下
気流 0.5 m/秒 以下
ホルムアルデヒドの量 0.1 mg/m3 以下(= 0.08 ppm 以下)

(3) 換気の必要性と省エネルギー

換気とは,工場や業務施設等の室内環境を居住や生産等に適した状態に保つため,室内の空気を外気などの正常な空気に入れ替えることである。

1) 居室の室内環境基準の一つに CO2 濃度がある。CO2 濃度を法律で定める許容値以下に保つためには,外気導入による換気が必要不可欠であり,必要な外気導入量は次式で求められる。

1 人当たりの外気導入量 [m3/(h·人)] = 1 人当たりの CO2 発生量 [m3/(h·人)] / (室内の CO2 濃度許容値 [%] - 外気中の CO2 濃度 [%]) × 100

換気量は換気回数でも表され,例えば天井高さ 3 m で在室者密度が 0.2 人/m2 の居室において,30 m3/(h·人) の外気を導入しているときの外気量は,換気回数 2 [回/h] に相当する。

空調系統では,導入外気量に相当する量が外部に排気され,残った還気と外気が混合して系統を循環する。この循環風量は一般に外気量の 3 倍程度である。

一方,工場や研究所では,施設の機能上,汚染物質,燃焼ガス,臭気などの排出があり,業務施設などと比べて排気量が大きくなり,必然的に相当する外気導入量も多くなる傾向がある。

2) 外気は大きな空調負荷となるため,省エネルギー上は過剰な外気導入を抑制することが求められ,居室の室内環境維持のための外気導入では次のような対策が効果的である。

ⅰ) 居室等の外気導入量の実態を把握し,適正外気量となるよう調整又は制御を行う。

  1. 設計値に対して風量が過大,あるいは設計値自体が過大などの状況で,かつ必要外気量が概ね確定・予測できる場合は,外気取り入れダンパを手動操作して風量を絞る。
  2. 在室者が変動する場合などは,CO2 濃度制御の導入により自動で外気量の最適化を行う。

ⅱ) 支障が少ないと考えられる予冷予熱時は,外気導入を停止する。

ⅲ) 工場や研究所における汚染物質,臭気などの排出を目的とする換気においては,局所給排気の採用などによって給排気量を削減する。

3) 外気導入量を制御するときには,次の点に注意が必要である。

ⅰ) 室内におけるウイルス感染のリスク低減などを目的として,既存の制御に対して外気導入量を増加する必要性が生じる事態も出現している。例えば CO2 濃度制御を導入しているときには,室内の CO2 濃度設定値を下げることで,外気導入量を増加側にシフトすることができる。

ⅱ) 空調システムの風量制御に VAV 制御を用いる場合,外気量は制御単位ごとに送風量に比例して変動するが,必要外気量は必ずしも負荷と比例しないので,外気量不足のエリアが生じる恐れがある。そのような事態を回避するため,外気量補償の方法を考慮する必要がある。

VAV (Variable Air Volume)

可変風量(方式)

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