線路事故サージ

2019年9月15日作成,2022年7月10日更新

事故サージは線路事故に伴い発生するもので,事故直後に発生する事故サージと事故に伴う事故電流を遮断するときに発生する事故遮断サージ(fault clearing surge)とに分類される。線路事故のうち最も発生頻度が高いのは 1 線地絡であるので以下これについて説明する。

地絡サージ

地絡サージは線路地絡直後に同一線路内の健全相およびこれと接続されているほかの線路に発生するもので,その大きさは開閉サージに比べると一般に小さく,通常 1.7 p.u を超えることはない。

1 000 kV 設計送電線

送電線の体格・コストを決定付けるクリアランスは,一般的に開閉サージ絶縁レベルに基づいている。地絡サージによる過電圧は,送電線線路中央部などで抑制することが容易ではない。これらのことを考慮し,1 000 kV 設計送電線では,線路の絶縁レベルを地絡サージにより決定し,これ以外の開閉サージを抵抗投入・抵抗遮断にて地絡サージレベルまで抑制することで,合理的な絶縁設計としている。

地絡遮断サージ

地絡事故を遮断器により遮断した場合に生ずるサージで,一般に開閉サージよりは小さく,地絡サージよりは大きな過電圧を生ずる。

地絡サージの考え方

地絡サージ解析の場合は,主に,地絡事故の大多数を占める 1 線地絡を問題とするため,地絡を生じる電源電圧の位相を少しずつ変化させていき,過電圧の最大値を求める。落雷など,地絡を生じる事象が生じるタイミングは確率的ではあるものの,投入サージの場合の用に確率的に決まる複数のタイミングに依存する訳ではなく,1 線地絡が生じるタイミングのみに依存するため,過電圧の最大値を与える位相での地絡も十分にあり得ると考える。

参考文献

  1. 雨谷 昭弘 著,「分布定数回路論」,コロナ社,1990 年
  2. 非有効接地系統および UHV 系統の絶縁協調技術協同研究委員会 編,「非有効接地系統および UHV 系統の試験電圧の考え方 - JEC-0102-2010 技術解説 -」,電気学会技術報告,No. 1258(2012 年 8 月)
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