通信品質

2019年6月3日作成,2021年9月1日更新

伝送品質

通信品質には送受話者の特性も関係するが,これを実効的に標準化し,通信伝送系だけの品質を表示したものが伝送品質(Transmission Quality)である。

平均パケット遅延

TCP(Transmission Control Protocol)通信ではデータをパケットと呼ばれる最小単位に分割して送信しているが,確実にデータが届くことを保証するため,受信したパケットごとに ACK と呼ばれる応答を返す。送信側では ACK が戻ってくるまで次のパケットの送信を待つため,ここで待ち時間が発生する。往復遅延時間が大きくなると ACK が戻ってくるまでの時間も遅くなるので,この待ち時間が大きくなり,結果的に TCP 通信のスループットが低下する。

(参考)ACK(ACKnowledgement) 肯定応答/確認応答

ACK とは,二者間の通信で,相手方に何らかの肯定的な応答を返す際に送られる信号やデータ,パケットなどのこと。「接続要求を受理した」「データが正しく受信できた」といった内容を伝達するために用いられる。

(参考)スループット(throughput)

スループットとは,機器や通信路などの性能を表す特性の一つで,単位時間あたりに処理できる量のこと。IT の分野では,コンピュータシステムが単位時間に実行できる処理の件数や,通信回線の単位時間あたりの実行伝送量などを意味することが多い。

遅延時間測定

送受信間,あるいは中継器間で発生した遅延を測定することで,経路伝搬にかかる遅延を把握することが可能である。また,遅延には中継器上で処理に要した時間及び他のパケットの処理のために待機した(キューイングされた)時間も含まれるため,ネットワーク上の混雑状況を間接的に知ることができる。

測定する遅延の種類として代表的なものは,往復伝搬遅延時間(RTT : Round Trip Time),片方向伝搬遅延時間(one-way delay)がある。また,特にリアルタイム通信,ストリーミング配信,オンラインゲームなどでは,遅延の絶対値だけでなく,遅延揺らぎ(ジッタ)も重要な指標となる。

IP パケット損失率・誤り率

パケット損失(packet loss)とは,ある通信主体から発信されたパケットが,ネットワークの転送経路の途中で喪失し,宛先に指定された相手方まで届かないことをいう。

パケット消失率測定

パケット消失率はエンド間で送出したパケットに対するパケット消失の割合により導出される指標で,遅延時間とともにネットワークの混雑状況を把握する有用な指標である。

アクティブ計測によるパケット損失の計測は往復伝搬遅延時間と同様 ping を用いるのが一般的である。このため,ICMP(Internet Control Message Protocol)の制御による計測誤差についても考慮する必要がある。

パッシブ計測によるパケット損失の計測は,TCP であればパケットの再送回数をカウントすることで近似的に求めることができる。また,リアルタイムアプリケーションなどでは予めアプリケーションでパケットにシーケンス番号を付加し,受信側でシーケンス番号を確認することで,独自にパケットの消失を検出する。パケットの消失が多い場合は転送レートを下げるなどによりパケット消失を防ぐ。

線路損失等

伝送損失とは,通信線路上を流れる電気信号や光信号の劣化度合いのこと。単位はデシベル(dB)。

一般に送受信設備を設置するにあたり,伝送損失は小さいほうがよい。また,同じ通信線路でも,通過する信号(例えば,電気信号では周波数,光信号では波長など)によって伝送損失は変化する。そのため,低損失が求められる場合はそれらに適合した同軸ケーブル,導波管,光ケーブルなどを用いる。

光ファイバを伝搬する光の損失

光ファイバを伝搬する光の損失 $L$ [dB] は、光ファイバに入射した光強度と、光ファイバの出射端に到達した光強度の比で表され、光ファイバに入射した光強度を $P_\text{in}$ [mW]、出射端に到達した光強度を $P_\text{out}$ [mW] とすると、次式で表すことができる。

\[ L = 10\log_{10}\frac{P_\text{in}}{P_\text{out}} \text{ [dB]} \]
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