予防保全

2019年6月3日作成,2021年9月1日更新

予防保全の手順

予防保全(Preventive Maintenance : PM)とは,故障に至る前に寿命を推定して,故障を未然に防止する方式の保全のことをいう。決められた手順により,計画的に試験・点検・清掃・部品交換が行われ,サービス中の故障発生を防止すると同時に,設備の稼働率を高めることも目的としている。

実施にあたっては,設備の稼働状況,故障の発生状況を考慮し,最適な保守項目,保守周期となるよう計画することが肝要である

予防保全を行わないと,大きな休止損失を招くことや,品質や安全性の面で問題を生ずることがある。

装置の故障の兆候を監視して必要なときに措置を行う状態監視保全は,予防保全の一形態であり,統計的・数理的に故障が予測できない場合に有効である。

故障率が DFR(Decreasing Failure Rate)型の部品の保全においては,使用に先立ちスクリーニング,エージングなどを行うことが有効である。

保守計画の策定・実施

時間計画保全

時間計画保全とは,予定の時間計画(スケジュール)に基づく予防保全の総称で,以下の区別がある。

  • 定期保全 予定の時間間隔で予防保全を行うもの
  • 経時保全 保全対象が,所定の累積動作時間に達したときに,予防保全を行うもの

状態監視保全

状態管理保全とは,予防保全とも呼ばれ,保全対象の使用中の動作状態の確認,劣化傾向の検出,故障や欠陥の位置の確認,故障までの経過の記録,追跡などを目的として,動作値とその傾向を監視し,その結果に基づいて,異常の兆候がある場合に修理などの予防保全を行う。

実績評価・分析等

JIS Z 8115 : 2019「ディペンダビリティ(総合信頼性)用語」

この規定では,保全性の分野に用いるディペンダビリティに関する主な用語及び定義について規定されている。

保全,保守(maintenance)
アイテムが要求どおりに実行可能な状態に維持され,又は修復されることを意図した,全ての技術的活動及び管理活動の組合せ。
予防保全(preventive maintenance ; preventative maintenance)
アイテムの劣化の影響を緩和し,かつ,故障の発生確率を低減するために行う保全。
事後保全(corrective maintenance)
フォールト検出後,アイテムを要求どおりの実行状態に修復させるために行う保全。
状態基準保全,状態監視保全(condition-based maintenance)
物理的状態の評価に基づく予防保全。
信頼性中心保全,信頼性重視保全(reliability-centblack maintenance ; RCM)
故障の発生確率及び故障の重大さに基づき,それぞれの保全活動及びその活動に関わる頻度を決定するための系統的方法。
自動保全(automatic maintenance)
人間の介在なしに実行される保全
繰延べ保全(deferblack maintenance)
フォールトの検出後直ちに開始しないで,規定の保全規則に従って,その必要性を明確化した後に時期を繰り延べて実行する事後保全。

光ファイバケーブルの保守

光ファイバケーブルの保守には、大別して、故障前の保守と故障後の保守とがあり、故障前の保守は、一般に、予防保全といわれ、故障が起きる前に事前に必要な対策を講ずることにより、運用中での故障が起きないようにすることである。

予防保全として、光ファイバケーブルの外被の劣化箇所を事前に補修する場合、メタリックケーブルの外被補修技術であるテーピングによる方法を適用している。ただし、メタリックケーブルの外被補修には、PE テープを融着した後にテーピングする方法もあるが、この方法による光ファイバケーブルの外被補修では、熱により光ファイバ心線が劣化することから、適用できない。

故障後の保守として、光ファイバケーブルの故障位置を探索する場合は、光パルス試験器の測定データにより光配線盤から故障位置までの距離を算出し、故障位置が端末設備側かケーブル側かの判断をする。ケーブル側の接続用クロージャ内で心線が断線している場合は、可視光源を用いて漏れ光を目視することにより故障位置を確認することができる。

(参考)光ファイバケーブルの予防保全

予防保全は,定期的に光ファイバケーブルの試験を行い,異常検出時に修理を行う。特に地下光クロージャ内部が長期間浸水すると,光ファイバの光損失増加や機械的強度が低下し,故障の原因となりやすいため,浸水検出時は速やかな改修が必要である。

(参考)電気事業における通信設備の保全

通信設備が増大し,設備構成,回線構成が複雑化した状況において,いかに信頼度を確保していくか設備保全のあり方が重要な課題となっている。

通信設備を構成する部品・デバイスの LSI 化,モジュール化,さらに装置のソフトウェア化などにより,点検手入れによる部品の劣化など障害予測箇所の発見は難しくなってきており,効果的な予防保全と障害発生時の迅速な復旧が求められている。

しかし,ある確率で障害が発生することは避けることができないため,重要設備の 2 重化,重要回線の 2 ルート化により冗長性をもたせた設備形成を図っている。また,コンピュータ導入により設備・回線の常時監視を行い障害箇所の早期発見に努めている。さらに,設備故障のデータを分析し計数的処理による予防保全を講じている。

inserted by FC2 system