アクセス系線路の光ファイバケーブル設計

2019年6月17日作成,2023年7月1日更新

はじめに

アクセス系光ファイバケーブル設備の基本設計は、一般に、需要予測に基づき、配線方法の選定、光ファイバケーブルの布設ルートの選定、心線数の決定などの作業の流れで進められる。

光ファイバケーブルによる線路設備の設計は、需要動向や設備現況などを十分に精査して行わなければならない。また伝送品質を考慮して、適用するケーブル種類、最適なルート、中継区間数及びケーブルのピース割りなどを決定する必要がある。

実施設計では、現地調査により、布設するルートの道路形態や既存設備の現況確認はもとより、光ファイバケーブルの布設や接続作業を行う場所の作業環境、施工の安全性、法的規制の確認など、幅広い調査が行われる。

また、ユーザビルへ光ファイバケーブルを引き込む場合は、個々のユーザビルの既設ケーブルの引込み状況、引込み管路の空き状況、ビル内配管状況などを調査し、さらに、光ファイバケーブルを成端する構内光配線キャビネットを設置するスペースとして、一般に、ビルの MDF 室の状況を確認する必要がある。

光ファイバケーブルの選定

光ファイバケーブル基本構造の選定を次表に示す。

表 光ケーブル基本構造の選定(推奨構造)
用途 場所 推奨構造 注意点
FTTH 架空幹線 SZ 撚テープスロット型ケーブル ドロップケーブルは,加入者用途に限定した簡易な構造としており,スロット型ケーブルと比べて強度が不足するため,幹線での使用には適さない。
引き込み たるみ付き少心架空ケーブル,ドロップケーブル たるみ付き少心架空ケーブルは,径間渡し用としての使用が適している。
LAN 縦系配線 SZ 撚テープスロット型ケーブル,ディストリビューションケーブル,層撚型ケーブル 心線が多い場合は SZ 撚,少ない場合はディストリビューション型が適している。
横系配線 ディストリビューションケーブル,インドアケーブル,コード

なお,局内光ファイバケーブルには、局内設備の延焼防止及び安全性が要求されることから、PE ケーブルと比較して、難燃性、耐火性、耐熱性などに優れた PVC ケーブルのほか、燃焼時に有害ガスが発生せず、鉛化合物による環境汚染などのおそれがないノンハロゲンケーブルなども用いられる。

光ファイバケーブル

光ファイバケーブルの抗張力体の材料には、鋼線、FRP(繊維強化プラスチック,Fiber Reinforced Plastics)などが用いられており、鋼線は、FRP と比較して、ヤング率が大きい。

ケーブルのシース材料には,外的環境から光ファイバを守るために PE,PVC などが用いられる。PE は耐候性に優れていることから,主に,屋外ケーブルで使用され,PVC は,主に,屋内ケーブルで使用される。

光ファイバケーブルは、必要な心線数を束ねるとともに外部からの圧力や浸水などを防ぎ、光損失を長期にわたり安定に維持することが求められる。光ファイバケーブルの主な構成要素は、心線、複数の心線を束ねたユニット、布設などの際に加わる張力を分担する抗張力体、浸水や衝撃を防ぐ防水材及びケーブル外被である。

光ファイバケーブルには、単心の光ファイバ心線を束ねたユニット型ケーブル、テープ心線をスロットロッドに収納するテープスロット型ケーブル、光ファイバ心線をルースチューブに収納するルースチューブ型ケーブルなどがある。

アクセス系ネットワーク設備に用いられる光ファイバケーブル

アクセス系ネットワーク設備に用いられる光ファイバケーブルには、実装密度を高めるため、布設時の張力を分担する坑張力体の周囲にポリエチレンを押出成形して作成されるスロットロッドに光ファイバテープ心線を積層してケーブル化したものがある。また、FTTH における架空区間の配線では、光ファイバケーブルの分岐やユーザへのケーブル引込みのための接続作業が頻繁に発生する。そこで、光ファイバテープ心線を収容するスロッドロッドの撚り方向を一定の間隔で反転させる SZ 撚りの架空用光ファイバケーブルを用いることにより、光ファイバテープ心線の弛みを利用して中間後分岐作業を容易にしている。

アクセス系光ファイバケーブルの光ファイバ心線は,一般に,外径 0.25 [mm] のほかに撚り合わせを可能とした外径 0.5 [mm] のものが用いられている。外径 0.5 [mm] の光ファイバ心線は外径 0.25 [mm] の心線を被覆除去した状態(素線 0.125 [mm])と同じ状態に被覆除去できるため,外径 0.25 [mm] の光ファイバ心線用と同様の専用の接続用部材が用いられている。

アクセス系光ファイバケーブルは、使用環境によって構造や機能が異なり、スロットロッドと外被の間に吸水テープを巻いた WB ケーブル、難燃性のある外被を施した FR ケーブル、架空布設作業に適するよう支持線と一体化した SSケーブルなどがある。

SZ 型光ファイバケーブル

SZ型光ファイバケーブルは、スロットの撚り回転の方向が 1 回転ごとに反転しているよケーブルであり、ケーブル布設後でも、ケーブルの途中からケーブルを切断することなく、光テープ心線又は光ファイバ心線の取出しを容易に行うことができる。

SZ 型ケーブルは,スロットの撚り回転方向が 1 回転ごとに反転した構造であり,任意の位置でケーブルを切断することなく光ファイバ心線の取出しが可能なことから,ユーザへの分岐や引き込みが多い配線系区間などに使用される。

SZ 撚り
図 SZ 撚り

WB ケーブル(Water Block Cable)

アクセス系線路設備における地下用光ファイバケーブルには,一般に,不織布に吸水材料が塗布してある WB テープを用いた WB ケーブル(水走り防止)がある。WB テープは,浸水すると吸水材料が吸水して膨張しながらゲル化してケーブルの隙間を埋め尽くし,止水ダムを形成することによりそれ以上の浸水を防止するものである。WB ケーブル適用区間では,マンホール内のケーブル接続箇所に浸水を検知するための浸水検知モジュールを設置することにより,ガス保守を不要としている。

浸水検知モジュールは,吸水膨張剤,可動体,曲げ付与部などから構成され,接続部に浸水が発生すると,吸水膨張剤が水を含むことにより膨張し,可動体を押し上げる。このとき,光ファイバは可動体の押上げにより,曲げ付与部に一定の曲げを与えられ曲げ損失が発生する。この曲げ損失を,OTDR により検出することで,浸水の発生及び浸水位置を検知することが可能となる。

写真 水走り防止(WB タイプ)
(出典)古河電工
図 WB ケーブル断面図

LAP シース型ケーブル

ポリエチレンの内面にアルミラミネートテープを接着したシース構造で,防水・防湿に優れる。

LAP シース型のケーブルでは,アルミシースの合わせ目に沿ってケーブルの長手方向に亀裂が発生する場合がある。これは,ケーブル内部へ浸入した水の凍結圧によって生ずる円周方向への応力がアルミシースの合わせ目部分に集中し,外被の肉厚の薄い部分が裂ける現象である。ケーブル内への水の浸入は,水が浸入するおそれがある部分,例えば,クロージャのノズルや蓋部,ケーブル外被の損傷痕などの点検,補修などによって防止することができる。

写真 アルミラミネート型(LAP タイプ)
(出典)古河電工
図 アルミラミネート型(LAP タイプ)ケーブル断面図
(出典)古河電工

FR ケーブル(Frame Retardant Cable)

地下用多心光ファイバケーブルは,一般に,抗張力体を中心に光ファイバテープ心線を収納したスロットロッドと外被などによって構成され,難燃性外被を施した FR ケーブルがある。

SS ケーブル(自己支持形光ファイバケーブル)

SS ケーブルにおいて,支持線の切裂き際でケーブルの円周方向に発生する外被の亀裂は,一般に,リングカットといわれる。リングカットは,ケーブルダンシングの発生により振動ひずみが支持線とケーブルとの切裂き際に集中し,ケーブル外被が徐々に裂けていく現象であり,対策として,HS(Hight Strength)ケーブルへの張り替え,縛り紐によるひずみ分散,リング掛けによるケーブル架渉などが有効とされている。

図 自己支持型ケーブル外観図
(出典)自己支持型ケーブル(SSWタイプ)|古河電気工業株式会社

山間地に架設された高圧電線に沿って、架設される光ケーブルのダンシング、ギャロッピング、スリートジャンプを防止し、禽獣の噛害がなく、架設作業の容易な自己支持形光ケーブルを提供する。

SS ケーブルは断面形状がひょうたん形であり,丸形ケーブルと比較して,受風面積が大きいため,強風にさらされるところではダンシングが起きやすい。ダンシングの発生は受風面積のほかに,ケーブル重量と架渉張力に関係があり,ケーブル重量が軽く弛度が大きいほどダンシングが起きやすい。

SS ケーブルのダンシング防止策として,ケーブルに捻回を入れる方法がある。捻回を入れると,上昇力が働く場所と下降力が働く場所ができ,1 スパン全体として上昇力と下降力が平衡し,ダンシングの発生を抑えることができ,また,ケーブルにかかる水平風圧荷重も減少させることができる。

SS ケーブルを架渉する際に自然捻回が入ってしまうと,各スパンの捻回数を均等にすることが困難になるため,ケーブルの架渉時には,一般に,先端に撚り返し金物・捻回防止器を取り付けることにより自然捻回が入ることを防止している。

自己支持形光ファイバケーブルは,光ケーブル部と吊り線が一体となっていることから,光ケーブル部は架渉後も常時伸びひずみを受け続けるため,光ファイバの破断確率が高くなる。このため,吊り線は,架渉張力,温度変化,風圧,着雪などによる光ファイバケーブルの伸びひずみを考慮したものが用いられる。

SS ケーブルには,支持線とケーブル本体を同一のシースで覆った SSD 型,支持線とケーブル本体をつなぐ首部に窓を開けた SSW 型などがある。SSW 型は,首部の窓から風を逃がすため,SSD 型と比較して,ダンシングが起きにくい。

SSD
ケーブル本体と支持線を全長に渡って一体化した構造。
SSW
首部に窓を開け,支持線に対し本体部にたるみをつけた SSD。中間後分岐後方に対応。

HS ケーブル(High Strength Cable)

光ファイバケーブルを波付ステンレスラミネートテープで補強・保護しているため,耐環境性に優れており,波付鋼管がい装に比べて,錆による破損の心配はなくケーブルの細径・軽量化が可能である。トラフでの鼠害対策,架空での鳥害対策に主に使用される。

キツツキ,リスなどの鳥虫獣類による外被損傷の防止対策に用いられる架空ケーブルとしては,ステンレステープで外被を補強・保護した HS ケーブルがある。HS ケーブルは,強風地域での外被亀裂に対する対策としても有効である。

写真 HS シース(一重)
(出典)古河電工
図 HS シース(一重)ケーブル断面図
(出典)古河電工

ドロップ光ファイバケーブル

クマゼミ対策として用いられるドロップ光ファイバケーブルは,外被が高強度化されているため,テンションメンバも備わっている

ノンメタリック型光ドロップケーブルは,一般に,支持線部には鋼線,ケーブル部のテンションメンバには FRP が用いられており,支持線部は引留具などに引き留められた後に切断されるため,落雷などによるサージ電流が宅内へ侵入することを防止できることから,ケーブル部を直接ユーザ宅内に引き込むことが可能である。

ノンメタリック系光ファイバケーブル

ノンメタリック光ファイバケーブルは無誘導な材料のみで構成されており、一般に、テンションメンバの材料としては FRP が用いられ、ケーブルシースの材料としては、PE が用いられている。誘導雷サージに対する光ファイバケーブルの対策として用いられる。

電力ケーブルへの並設やコンピュータなどの電子機器間の電位差が問題となるようなシステムでは、光ファイバケーブル内部に金属を含まないノンメタル光ファイバケーブルを適用することが有効である。

ノンメタリック型ケーブルは、抗張力体にも金属材料を全く使用しない構造であり、一般に、送電線、鉄道沿いなどの誘導が問題となる強電界地域で使用される。

IF ケーブル

アクセス用光ファイバケーブルには、FRP をテンションメンバに用いて誘導対策区間に適用可能とした IF ケーブル(Induction Free ケーブル)がある。

光ファイバケーブルでは,伝送媒体であるガラスが無誘導である特性を生かし,テンションメンバなどの構成材料を全てノンメタリック化した IF ケーブルが誘導対策用として用いられている。

ユニット型光ファイバケーブル

ユニット型は,ユニット中心部材の周囲に光ファイバ心線を 5 心 ~ 10 心程度撚り合わせ,これを緩衝材で覆ったものを 1 ユニットとし,複数ユニットをテンションメンバの周囲に撚り合わせた構造であり,一般に,数百心程度の光ファイバケーブルに適している。

テープスロット型光ファイバケーブル

テープスロット型光ファイバケーブルは、スロットロッドの螺旋状などに撚られた溝に光ファイバテープ心線を積層した構造であり、テープスロット型光ファイバケーブルには、高密度実装の多心光ファイバケーブルがある。スロットの構造を SZ 撚りとしたテープスロット型光ケーブルは,ケーブルの途中において,ケーブルを切断することなく,光テープ心線の取り出しや接続余長の確保が容易な構造であり,中間後分岐に適している。

1,000 心のテープスロット型光ファイバケーブルは,中心部に抗張力体を持ち,スロットロッドの周りに 13 個のスロットを有する構造であり,8 心テープ型光ファイバ心線が 12 個のスロットに 10 テープずつ,8 心テープ型光ファイバ心線が 1 個のスロットに 5 テープそれぞれ積層されている。

8 心 × 12 スロット × 10 テープ + 8 心 × 1 スロット × 5 テープ = 1,000 心

光ファイバケーブルのスロット内に収容されるテープ心線は,心線番号の識別のため,一般に,カラーコードに基づき色分けされている。スロット内のテープ番号は 1 番心線の色で識別でき,4 心テープの場合,2 番テープの 1 番心線の色はである。

ノンスロット構造の光ファイバケーブル

アクセス系線路設備に用いられる光ファイバケーブルでは、地下ルートや架空ルートの更なる有効活用を図り、細径・軽量化を可能とする高密度実装が求められており、間欠接着型光ファイバテープ心線を用いたノンスロット構造の光ファイバケーブルが導入されている。

タイト型光ファイバケーブル

タイト型光ファイバケーブルは,光ファイバ心線を抗張力体の周りに集合し,その上に側圧などの外力から光ファイバを保護するための緩衝層などを施した構造である。抗張力体は,布設後の温度変化による光ケーブルの伸縮を抑えて,損失増加防止の役割を果たしている。

コルゲートシースケーブル

コルゲートシースケーブルは、波付きシースを施して外力に強い構造を有しており、一般に、散弾、鳥獣類などからの被害が多い架空区間で使用される。

架空ドロップ光ファイバケーブル

架空ドロップ光ファイバケーブルは、一般住宅や小規模集合住宅へ光ファイバケーブルを引き込む際に用いられるケーブルであり、ケーブル本体に金属性のテンションメンバを配置したメタリックタイプと、落雷時などのサージ電流が宅内に流入しないようにテンションメンバを配置しないノンメタリックタイプがある。また,クマゼミによる断線故障に対する対策として高強度外被を施したものがある。

電柱から架空用クロージャを介して一般住宅へ引き込む際に用いられる。

インドア光ファイバケーブル

光キャビネットからの宅内配線などに用いられる。

光ファイバコード

光ファイバコードは、一般に、光ファイバ心線の周囲を抗張力繊維で補強し、さらに PVC 被覆を施して強度を高めたもので、1 心タイプ、2 心タイプなどがあり、機器内配線、屋内の機器間接続などに利用されている。

光ファイバコードは,一般に,光ファイバ心線の周囲に抗張力体としてポリアミド系繊維などを密着して配置し,さらに抗張力体上にビニルなどを被覆してシースとした構造であり,光伝送機器内配線,同一フロア内の機器間の接続などに使用される。

トポロジーの選定

光アクセスシステムのネットワークトポロジは,設備センタとユーザ間を 1 対 1 で結ぶ SS 方式,設備センタとユーザ間に光スプリッタを設置し,光ファイバを分岐することにより複数のユーザに接続する PDS 方式,及び光スプリッタの代わりに電気的手段によりユーザ信号を多重化する装置などを設置した ADS 方式に分類される。

下表に,SS 方式と PON 方式の比較を示す。アクセス区間における伝送媒体は,SS 方式ではそれぞれのユーザが専有しているのに対して,PON 方式では複数のユーザで共有している。そのため,PON 方式においては,上りデータが複数ユーザの間で衝突しないよう,また,全ユーザに一斉に送信される下りデータを特定のユーザだけ受信でき,他のユーザは受信できないような仕組みが実装されている。PON 方式は光ファイバ網構成から明らかなように,SS 方式に比べ光ファイバの量が少なくて済む。特に通信事業者から出る光ファイバ量が少ないことから,管路などの基盤設備に与える影響が少なく,一般ユーザ向け大量光開通時代に適した方式といえる。

表 SS 方式と PON 方式の比較
項目 SS 方式 PON 方式 備考
伝送媒体 専有 共有(一部専有)
アクセス区間での伝送帯域 専有 共用
ファイバ量 相対的な比較
装置構成 単純 複雑 相対的な比較
通信事業者ビル内の装置規模 相対的な比較

シングルスター

シングルスター(Single Star : SS)方式は,ユーザと通信事業者ビルを 1 対 1 でスター状に結ぶ方式で,アクセスシステムのトポロジーでは最もシンプルな構成である。

1 対 1 のシンプルな方式であるため,設備を構築するための設計,どのユーザがどの設備(光ケーブル,クロージャ,ファイバや接続部)を使っているのかという対照,遠隔試験や心線管理が容易であり,切り替え時のサービス断に関するユーザ折衝もユーザ単位で行えるなど,運用面においてメリットが大きい。また,心線の接続や切断などに対してもユーザへの影響が限定的であるため,作業上扱いやすい面もある。さらに,伝送特性上の制約が少なく,光ファイバケーブルの帯域特性や距離特性を生かしたサービスへの対応がしやすい。

しかし,ユーザの数だけ光ファイバや通信事業者側の設備(光モジュールやインターフェースなど)が必要となり,高コストとなる面もある。また,布設の側面からも,光ファイバの心線数がダブルスター方式よりも多く必要になるため,心線の切り替え時に作業量が多い,ケーブルが太く重くなるなど,光ファイバの設備量以外でのコスト高が懸念されるケースもある。

シングルスター方式の構成例
図 シングルスター方式の構成例

アクティブダブルスター

設備センタとユーザ間に、O/E 変換及び信号多重・分離を行う多重化装置を設置し、設備センタから多重化装置までを光ファイバケーブル、多重化装置からユーザまでをメタリックケーブルで接続する ADS 方式

アクティブダブルスター(Active Double Star : ADS)方式は,通信事業者ビル側の装置一つに対して,複数のユーザをアクティブな装置で集約し収容する方式であり,パッシブダブルスター方式とほぼ同じ構成である。アクティブな装置は,光電気変換機能及び信号の多重分離機能を有する装置であり,アクティブな装置からユーザの間はメタリックケーブルや同軸ケーブルなどが用いられる。

アクティブダブルスター方式では,アクティブな装置に関して,設置環境の整備,電源の確保,バックアップ電源の有無や故障対応などの光スプリッタにはない検討項目が必要になる。さらにアクティブな装置は屋外に設置される場合もあり,外部環境や雷害などの影響も受けやすく注意が必要である。

アクティブダブルスターの構成例
図 アクティブダブルスター方式の構成例

パッシブダブルスター

設備センタから複数のユーザへ光ブロードバンドサービスを提供する線路設備の形態には、1 本の光ファイバを光スプリッタにより分岐して複数ユーザで利用する PDS 方式

パッシブダブルスター(Passive Double Star : PDS)方式は,スター構成が 2 段になるダブルスター方式の一つであり,通信事業者ビル側の装置 1 つに対して,複数のユーザをパッシブな素子(光スプリッタ)で集約し収容する方式で,PON(Passive Optical Network)方式とも呼ばれる。

通信事業者ビルとユーザの間にパッシブな素子(光スプリッタ)を設置した形態であり,この素子が光信号の分岐・合成を行う。通信事業者ビルと光スプリッタの間(上部光ファイバケーブル)は,複数のユーザで共有する光線路となり,光スプリッタから各ユーザの間(下部光ファイバケーブル)は,シングルスター同様,ユーザごとの光線路となる。

複数のユーザを集約し収容するため,光ファイバや通信事業者ビル側の設備を共有することにより経済的な光ファイバのアクセスネットワークが構築できる。

しかし,ユーザを集約するための素子を用いるため,その素子の設置場所やどの範囲をどの素子でカバーするのか収容面積・収容ユーザ数などを,通信事業者ビルの設備,上部光ファイバケーブルや素子のユーザ収容率(分割損)を考慮したコストと下部光ファイバケーブルのコストなどを最適化したうえで決定しなければならず,その設計方法はシングルスター方式より複雑になる。

運用面においては,複数のユーザが 1 心の光ファイバを共有するため,上部光ファイバケーブルの事故などによる切断時の影響範囲は大きくなる。また,下部ケーブルの故障点探索のための通信事業者ビルからの遠隔試験などは技術的な難易度が高い。反面,ケーブルの切り替えなどの際は,切り替える光ファイバ心線数が少なく済むため,切り替え時間の短時間化などが図れる。

光スプリッタは,1 本の光ファイバから複数の光ファイバに光信号を分岐する部品である。

パッシブダブルスターの構成例
図 パッシブダブルスター方式の構成例

PDS 方式では、設備センタに設置される終端装置である OLT は、光ファイバケーブル及び光スプリッタを介してユーザ宅内に設置される ONU と接続される。ユーザ宅には、一般に、ドロップ光ファイバが引き込まれ、ドロップ光ファイバとユーザ宅内のインドア光ファイバを接続する場合は、再接続はできないがクランプスプリングなどを用いて簡便な接続作業が可能であるメカニカルスプライス接続などが適用される。

PDS 方式では、1 心の光ファイバで上りと下り方向の信号が同時に通信を行っているため、光信号どうしの干渉を避ける必要があり、一般に、上りと下り方向にそれぞれ別の光波長を割り当てる WDM 技術が用いられている。また、PDS 方式では、ユーザから設備センタに向けた上り方向の信号の多重化には TDMA 方式が用いられている。

TDMA 方式では、設備センタの OLT から各ユーザの ONU までの伝送距離が異なることによって生ずる伝送時間のずれを補正するために、OLT は各 ONU との間の伝送時間を測定して記憶し、上り信号が衝突しない送出タイミングを算出して各 ONU に通知する。この伝送時間を測定する処理はレンジングといわれ、レンジングによって OLT と ONU 間の最大論理距離が決定される。

PON(Passive Optical Network)

1 心の光ファイバを光スプリッタを用いて分岐することにより、1 心の光ファイバに複数のユーザを収容する光アクセスシステムは、PON システムといわれる。

PON システムは受動光ネットワーク(Passive Optical Network)システムの略で,1 台の局側装置と複数台のユーザ側装置とが受動(Passive)部品である光スプリッタと光ファイバとからなる伝送路を介して接続された,ツリー構造を持つポイント・ツゥ・マルチポイント型光アクセスシステムの一形態である。なお,日本では PON システムのことを SS(Single Star)に対して PDS(Passive Double Star)システムと呼ぶこともあるが,国際的には PON システムという呼称で統一されている。

PON システムの基本構成を下図に示す。通信事業者のビルに置かれる装置を OLT(Optical Line Termination)と呼び,ユーザ宅に置かれる装置を ONU(Optical Network Unit)あるいは ONT(Optical Network Termination)と呼ぶ。OLT に接続された 1 本の光ファイバは光スプリッタと接続される。光スプリッタは 1 本の光ファイバを複数本の光ファイバに分岐し,分岐した個々の光ファイバはそれぞれ 1 台の ONU に接続される。PON システムでは,OLT から ONU にいく光信号を下り信号,ONU から OLT に向かう信号を上り信号と呼ぶ。下り信号と上り信号はともにパケットあるいはセルと呼ばれるかたまりを単位として伝送され,必要に応じて PON システム専用のオーバーヘッドが付加される。

PON システムの基本構成
図 PON システムの基本構成

PON は、ユーザから設備センタへ送信する上り光信号の帯域を複数のユーザで共有するので、複数の光信号を同時に光スプリッタで合波すると、光信号の衝突が生じて設備センタで正しく受信できなくなるため、設備センタに設置された OLT(Optical Line Termination)では、あらかじめ設備センタと各ユーザの ONU(Oputical Network Unit)との間における光信号の伝送時間を測定するレンジングといわれる機能により各 ONU の信号送出タイミングを算出し、各 ONU へ信号送出許可を通知することで衝突を回避している。

レンジング

OLT から ONU までの伝送距離は同一ではなく,また,予め決めておくこともできない。このため OLT は,各 ONU と OLT 間の伝送時間を予め測定して記憶することにより,各 ONU からの上り信号が衝突しない送出タイミングを算出して各 ONU に通知する。この伝送時間を測定する処理をレンジングと呼ぶ。

また、PON では、伝送帯域を有効活用しており、一般に、上り光信号の帯域を動的に制御するため各 ONU が要求する帯域を OLT へ通知し、OLT が各 ONU に帯域を割り当てる DBA といわれる機能が用いられている。

DBA(Dynamic Bandwidth Allocation : 動的帯域割当)
一つの帯域を複数のユーザで共用することを帯域共用という。このとき,あるユーザが使っていない帯域を他のユーザに随時割り当てることを DBA と呼んでいる。

PON では、設備センタから各ユーザまでの下り光信号は、同一光ファイバを使用しているすべてのユーザで受信可能な 同報性 を有するため、ONU では、信号のヘッダに書き込まれた宛先を読み取り、他ユーザ宛の信号を廃棄している。

GE-PON(Gigabit Ethernet - Passive Optical Network)

POM システムは、データ転送の単位となるフレームの形式や速度などにより分類され、そのうちの一つである GE-PON システムは、1 心の光ファイバにより LAN で一般的に用いられているイーサネットフレームをそのままの形式で、最大 1 [Gbit/s] の伝送速度で送受信することが可能である。

GE-PON システムでは、WDM 方式による双方向多重伝送技術が用いられており、ユーザ宅の ONU から設備センタの OLT 方向への上り信号には 1.31 μm 帯の波長帯域が割り当てられている。

設備センタ側からユーザ側への下り方向の通信には TDM 方式(Time Division Multiplexing : 時分割多重化)が用いられ,ユーザ側から設備センタ側への上り方向の通信には TDMA 方式(Time Division Multiplex Access : 時分割多元接続)が用いられている。

GE-PON システム
図 GE-PON システム

また、設備センタの OLT からユーザ宅の ONU 方向への下りフレームは、同一のものがブロードキャスト配信されて OLT 配下のすべての ONU に到達するため、各 ONU は、自分宛のフレームであるか否かを LLID(Logical Link ID)といわれる識別子により判断して自分宛のフレームのみを受信し、他の ONU 宛のフレームを廃棄している。

さらに、GE-PON システムでは、伝送帯域を有効活用するため、一般に、上り信号の帯域を動的に制御しており、各 ONU は要求する帯域を OLT へ通知し、OLT が各 ONU に帯域を割り当てる DBA といわれる機能が用いられている。

PDS 方式を用いた光アクセスネットワークの一つである GE-PON では、1 心の光ファイバから複数の光ファイバに光信号を分岐する光受動部品として、一般に、平面光導波路(PLC)型の光スプリッタが用いられている。4 分岐と 8 分岐の PLC 型光スプリッタを組み合わせて設備センタ内の 1 心の光ファイバで最大 32 ユーザを収容する構成では、1 ユーザの伝送路における分岐による原理的な光損失は約 15 [dB] となり、伝送距離を制限する要因となる。

1 つの分岐での損失は 1/2 で,32 ユーザ(25 ユーザ)を収容する構成の分岐による原理的な光損失は次式となる。

\[ 10 \log_{10}{(\frac{1}{2})^5} = -50 \log_{10}{2} = -50 \times 0.3 = -15 \text{ [dB]} \]

また、GE-PON では、WDM 方式による双方向多重伝送技術が用いられており、設備センタからの下り信号には 1.49 μm 帯の波長帯域が割り当てられている。さらに、光ネットワークを保守・監視するための試験光には信号光とは別の波長帯域が割り当てられており、一般に、通信に影響を及ぼすことなく試験を行うことができるようにユーザ宅内の ONU の直前にファイバグレーティングを利用して試験光を遮断する光フィルタが組み込まれている。ファイバグレーティングは紫外線照射によるガラスの屈折率の増加現象を利用して光ファイバの屈折率を周期的に変化させたものであり、光コネクタに内蔵されている場合もある。

ルート選定(自然環境による劣化有無,人為的事故影響回避等)

光線路設備は、既存のルート構成を考慮してルート案を選定し、施工時の道路占用の可否、経済性、適用技術、安全性、保守性などを総合的に検討して設計する。

架空区間では、施工作業や維持管理時における安全性確保、他施設への障害防止などのため、必要とされる地上高、他の架空配線及び建造物との離隔距離を確保する。

地下線路方式は、中継系区間、幹線系区間などで採用され、架空線路方式と比較して、光ファイバケーブルが風雨、氷雪などの気象条件の変動、地上建造物、樹木などからの損傷を受けにくいなど信頼性が高い。

強風地域では,ケーブルの振動によって吊り線が吊架部で繰り返し曲げられ,疲労破断することがある。対策としては,ラインガードやセパレータを用いる方法が有効である。

架空ケーブルのダンシング

架空ケーブルのダンシングとは,風によってケーブルに揚力が生じ,ケーブル自体のねじれ振動と相乗して一種の自励振動が発生する現象をいい,一般に,ケーブル部の外径が同じ場合,丸形ケーブルより,受風面積が大きい自己支持型ケーブルで発生しやすい。また,ダンシングは,ケーブルの形状のほか,重量と架渉張力にも関係があり,架渉されたケーブルが軽くて弛度が大きいほど発生しやすくなる。

ダンシングの防止策には,架渉したケーブルに捻回を入れる方法,ケーブルの支持間隔を短くする方法などがある。ケーブルに捻回を入れる方法では,約 10 [m] に 1 回の割合で捻回を入れることにより,風圧によるケーブルの上昇力と下降力が平衡してダンシングの発生を抑制できるとともに,ケーブルに働く水平風圧荷重も減少させることができる。

ダンシングは,ケーブルの構造を変えることによっても抑制することができ,自己支持型ケーブルの支持線部とケーブル部をつなぐ首部に窓を開けた,一般に,SSW 型といわれるケーブルは,開けた窓から風を逃がして風に対する抵抗を小さくすることでダンシングが起こりにくくしている。

配線法の選定

アクセス系における配線法は、需要動向、需要密度、管路設備の有無、保守性、信頼性、経済性などを総合的に勘案して決定され、一般に、放射状に構築された既設の管路設備を使用して配線する場合はスター配線法が、管路設備がメッシュ状に構築されているエリアではループ配線法が適しているとされている。

無逓減配線法が適用される場合には、一般に、後分岐接続工法を用いることにより、建設時にはケーブル接続点を少なくして長尺ケーブル布設を行うことが可能であるが、サービス開始後に後分岐接続工法を多用することはケーブル解体時に現用回線への影響が懸念される。このため、ルート決定の段階において、光ファイバアクセス設備の構成、使用する装置の特性などから決まる許容光損失値を考慮して分岐点を決定し、必要な分岐心線数のみを接続するポイントを設定しておくことが望ましい。

ループ無逓減配線法

ループ無逓減配線法は、一般に、高速、広帯域サービス需要が面的に発生し、かつ、急増している都市部のビジネスエリアなどに適しており、心線の後分岐が可能(ファイバケーブルルート上の任意の地点で任意の光ファイバ心線を選択できる)であることから、心線の融通性が高く、需要への即応と柔軟な対応が可能な配線法とされている。

アクセス系ネットワークのループ配線法において、き線ケーブルとビル引込みケーブルとの接続は、信頼性を確保するために、設備センタから時計回り方向と反時計回り方向に布設された心線に分散して接続する方法が有効である。

スター無逓減配線法

スター無逓減配線法は、一般に、通信土木設備の制約などによってループ無逓減配線法の適用が困難なエリアに適しており、設備センタから最遠端のユーザまで心線を逓減することなく配線していることから、ループ無逓減配線法と同様に、心線の融通性が高く、需要への即応と柔軟な対応が可能な配線法とされている。

スター逓減配線法

スター逓減配線法は、一般に、需要が広範囲にわたって散在し、かつ、需要変動も小さく、需要が安定的に発生するエリアに適しており、スター無逓減配線法と比較して、突発的な需要の発生に対して心線の融通を図ることが難しく、即応性に欠ける配線法である。

心線数無逓減配線法

アクセス系ネットワークで心線数無逓減配線法が適用される場合は、建設時の接続点数を少なくすることが可能であるが、後分岐接続工法を多用することは現用回線への影響が懸念されることから、ルート決定の段階で分岐点と心線数をあらかじめ設定しておくことが望ましい。

光損失設計

光ファイバケーブルの光損失設計は、伝送路光損失 $L$ が許容光損失値 $L_\text{max}$ 以下であることを保証するため実施するものであり、許容光損失値 $L_\text{max}$ は、適用する伝送装置の送受光レベル差から規定される。ここで、伝送路光損失 $L$ は、アクセス設備の構成を踏まえて、一般に、設備センタ内の配線区間損失(以下、所内区間損失という。)を $X$、設備センタからユーザとの分界点までの配線区間損失(以下、所外区間損失という。)を $Y$、構内配線区間損失を $Z$ とすると、次式で表すことができる。

\[ L_\text{max} \ge L = X+Y+Z \]

つまり,光伝送システムの最大許容伝送損失は、基本的に、発光素子の出力レベルと受光素子の受光レベルの差に結合損失やシステムマージンなどを加えて算出され、光ファイバケーブルの長さや接続損失などから算出される伝送損失より大きくなければならない。

なお、上式における所外区間損失 $Y$ は、ユーザまでの距離や線路形態、接続点数などにより変動し、設計のためのパラメータとして光ファイバケーブルの損失、コネクト接続損失、融着接続損失及びマージンの関数で表され、一意的に決定される。

アクセス系光ファイバ通信システムの設計においては、光配線エリア内で最遠端となるユーザまでの光損失の合計が、許容光損失値を満足する必要がある。波長が 1.3 μm 帯を使用するシステムの許容光損失は、標準的に、22 ~ 24 [dB] とされており、10 [km] 以上のシステム設計が可能である。

ルート決定の段階において、光ファイバアクセス設備の構成、使用する装置の特性などから決まる許容光損失値を考慮して分岐点を決定し、必要な分岐心線数のみを接続するポイントを設定しておくことが望ましい。

張力設計(敷設,架渉)

光ファイバケーブルの布設・架渉技術は、基本的に、メタリックケーブルの当該技術と同様の考え方が適用されるが、光ファイバケーブルの特徴を生かし、長スパンを一括布設することにより、布設作業の効率化、接続コストの低減などを図ることができるものとなっている。このため、光ファイバケーブルは、長スパン布設に耐えるだけの強度を持たせるためテンションメンバを配する構造とし、光ファイバケーブル布設時の伸びが、一般に、0.2 [%] 以下となるように設計されている。

光ファイバケーブルの最小許容曲げ半径は、光ファイバ、テンションメンバ、ケーブルシースの材質や構造などによって異なるため、基本は、メーカ推奨値によるが、メーカ推奨値が不明な場合は、布設中はケーブル外径の 20 倍以上、布設後は 10 倍以上とする ANSI/TIA/EIA 規格を適用する方法がある。

光ファイバケーブルに許容される伸びは、光ファイバに許容される破断確率と使用する光ファイバのスクリーニング荷重を基に決定され、光ファイバの弾性限度以下の伸び率で布設できるようにケーブルの構造が設計される。光ファイバケーブルの許容張力は、ケーブルメーカの仕様書で規定されており、一般に、ケーブルの布設長の分布などを想定して500 [m] ~ 1 [km] の自重相当に設定されている。

テープスロット型光ファイバケーブル布設時においてケーブルに張力が加わると、光ファイバテープ心線は、牽引端でケーブル外被と一緒に固定されていない状態のとき、ケーブル内に引き込まれ、その後、張力が開放されてケーブル長が元に戻ると光ファイバテープ心線が細かく連続的に曲がる波打ち現象を生じて断線に至るおそれがある。

ピース割りの設計

光ファイバケーブルのピース割りの設計は、ケーブル布設作業、接続作業及び伝送品質に関わる重要な設計項目であり、ケーブル布設区間の直線部、屈曲部、曲線部、傾斜部などの各区間ごとの張力予測計算を行い、接続点となるマンホールなどの位置、ルート上の作業性、安全性などを考慮して実施する。

また、ケーブルピース長は、線路亘長マンホール内などでのケーブル必要長を加えた線路の実際の長さ、接続必要長、成端必要長、マージンなどの布設必要長を考慮して算出する。

光ファイバケーブルのピース割り案を決めた後、伝送路に許容される損失値に収まるかどうか損失値の計算を実施して、接続点数が適切かどうかの確認を行い、ピース割りを最終的に決定する。

アクセス系ネットワークにおいては、心線の融通性、心線切替の迅速性及び保守性を勘案して、極力、コネクタ接続を適用することとしている。ただし、管路区間においては、コネクタ部の大きさの問題、管路区間のケーブルピース長を高精度に算出することが困難であるなどの理由により両端コネクタ付ケーブルが適用できないことから、ケーブルの牽引側では融着接続を、繰出し側ではコネクタ接続を採用することとしている。

ケーブル接続点の決定に当たって留意すべき事項には、

  1. 多心線数を引き込む必要のあるユーザビル近傍やき線点近傍に接続点を設定する
  2. 管路区間におけるケーブル接続点は、建設作業及び保守運用作業の容易性を考慮し、環境条件の良好なマンホールに設定する
  3. ループ配線法を適用するエリアのき線ケーブルとビル引込みケーブル相互の心線接続は、信頼性確保の観点から、時計回り、反時計回りの心線に分散することを考慮して接続点を設定する

などがある。

敷設

光ファイバケーブルの建設工事では、一般に、メタリックケーブルと比較して長尺の光ファイバケーブルを布設することになるため、地下管路区間のマンホール内における光ファイバケーブルの屈曲角度や既存設備の状況を確認して、ケーブルけん引機や接続機の設置及び作業のスペースを確保する必要がある。

曲がりが多く複雑な形状のルートに光ファイバケーブルを布設する場合には、ケーブルの先端のみに力を加えて牽引したのではケーブルの許容張力を超えることがあるため、途中に中間牽引機を設置する方法などが用いられる。

地下管路区間へのケーブル布設作業において,管路の両端に高低差がある場合は,布設張力を軽減する観点から,一般に,高い方のマンホールからケーブルを引き入れる。また,地下管路区間に屈曲点(水平曲がり)が 1 か所ある場合は,同様の観点から,一般に,当該屈曲点に近い方のマンホールからケーブルを引き入れる。

光ファイバケーブル布設時の牽引張力は、線路形式(管路、とう道、架渉など)、布設形状(直線、曲線、屈曲など)、ケーブル種別などにより異なることから、それぞれの布設区間ごとに計算し、布設するケーブルの許容張力以下となるように設計する必要がある。光ファイバケーブルの牽引張力を $T$ [N] とすると、光ファイバケーブルを水平に布設する場合、布設区間ごとの牽引張力は以下の計算式で求めることができる。

直線区間 $T = T_0 + \mu g L W$
曲線区間 $T = (T_0 + \mu g L W)K$
屈曲部直後 $T=T_0 K$

ここで、$T_0$ [N] は布設対象区間直前の張力、$\mu$ は摩擦係数、$g$ [m/s2]は重力加速度、$W$ [kg/m] は単位長当たりのケーブル質量、$L$ [m] は布設対象区間の長さ、$K$ は張力増加率であり $K=e^{\mu\theta}$($e$ は自然対数の底、$\theta$ [rad] はケーブルの交角)である。

地下管路区間とケーブル布設では,光ファイバケーブルに捻回が生じないように,ケーブルとプーリングアイとの間に撚り返し金物を取付け,布設方法が先端牽引方法の場合であって布設張力がケーブルの許容張力を超えるときは,布設ルートの中間で中間牽引機などが用いられる。

ケーブル牽引時は、常にケーブルの許容張力以下で、ケーブルに急激な張力変化を与えないように滑らかに速度を調整しながら牽引する。

長スパンの光ケーブル布設などにおいて、布設ルートの途中でケーブルを引き出す必要がある場合は、曲げ半径などに注意して、ケーブルのキンクを防止するため 8 の字状にケーブルを整理する。

光ファイバケーブルの布設時に用いられるけん引方法には、先端けん引法、中間けん引法及び分散けん引法の 3 種類がある。

先端けん引法

先端けん引法は、けん引車だけでけん引する方法で、大部分の張力がテンションメンバに加わる。

中間けん引法

中間けん引法は、先端けん引法ではケーブルの許容張力を超える場合に用いられ、けん引車とけん引機を同時に使用する方法で、ケーブルの中間でケーブルけん引機にてケーブル外被を把持し、けん引することにより、テンションメンバに加わる張力を分散する。

分散けん引法

布設工法の一つである分散けん引方式は、牽引車と牽引機を同時に使用して、ケーブルの中間では牽引機によりケーブルのテンションメンバを把持し牽引する方法である。

架渉

架空光ファイバケーブルの長スパン架設工法では、牽引方向のケーブルの弛みを感知してケーブルの繰出し速度を自動制御するケーブル自動繰出装置、牽引ロープの巻取り速度を自動制御する牽引ロープ自動巻取機などの複数の装置が、制御線を用いることなく、連係して光ファイバケーブルの布設が行われる。

架空光ケーブルの布設時は、一般に、ケーブル繰出し点、ケーブル牽引点及び内角が 90 度以上 150 度以下の曲柱には、小型屈曲部用金車を用いる。

光ファイバケーブルに風圧荷重が作用すると,ケーブルの実効重量は自重と風圧荷重のベクトル和となる。ここで弛度 $d$ [m] は,実効重量を $W$ [N/m],スパン長を $S$ [m],張力を $T$ [N] とすると,$\displaystyle d = \frac{WS^2}{8T}$で表される。

弛度と張力の関係
図 弛度と張力の関係

また,ケーブルの伸び率 $\Sigma$ は,支持線の断面積を $A$ [mm2],支持線の弾性係数を $E$ [N/mm2] とすると,$\displaystyle \Sigma = \frac{T}{AE}$ で表され,ケーブルの伸び率 $\Sigma$ は許容伸び率より小さくすることが求められる。支持線は温度変化により伸縮するため,一般に,最低温度における張力で設計される。

丸型ケーブルを架渉する方法

丸型ケーブルを架渉する方法としては、あらかじめ吊り線を電柱間に架渉しておき、ケーブルリング、ケーブルハンガなどを用いて丸型ケーブルを吊り線に添架する方法がある。

本稿の参考文献

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