専門的分野・水底線路 対策ノート

2020年5月2日作成,2023年12月27日更新

はじめに

水底線路(Underwater Cable)とは,水面に敷設した線路をいう。(一般財団法人情報通信振興会

はじめに

1. 水底線路設備

2. 水底線路設備設計

3. 通信線路伝送工学

付録

1. 水底線路設備 1-1. 水底線路中継伝送技術

1-1-1. 水底光ファイバケーブルの中継伝送技術

水底光ファイバケーブルの中継伝送システムの基本構成,多重化伝送技術(TDM,WDM 等),中継伝送技術,無中継伝送技術,伝送端局アップグレード技術

中継伝送技術

中継光海底ケーブルシステムの光ファイバペア数は,光海底中継器回路数により決まる。回線数は光増幅デバイスや電源回路の小型化及びケーブル構造の改良により増加しており,現在は 8 ファイバペアのものが採用されている。

無中継伝送技術

無中継光海底ケーブルシステムは,中継光海底ケーブルシステムと比較して多くの光ファイバペアを実装でき,無中継光海底ケーブルシステムには,光ファイバ実装数が 100 心の光海底ケーブルを適用したものがある。

無中継光海底ケーブルシステムでは,光海底中継器を使用しないため,給電を必要としないことから,光海底ケーブルは,銅や鉄などの金属を使用して,光ファイバ心線,プラスチック,ポリエチレンなどを保護している

1. 水底線路設備 1-2. 水底ケーブル

1-2-1. 水底ケーブルの種類・特性及び適用

光ファイバケーブルの種類(無外装・外装,MF,SMF,DSF,NZDSF 等),耐環境特性(水圧,張力,適用水深等)

光ファイバケーブルの種類(無外装・外装,MF,SMF,DSF,NZDSF 等)

無中継光海底ケーブルシステムでは,光海底中継器を使用しないため,給電を必要としないことから,光海底ケーブルは,銅や鉄などの金属を使用して,光ファイバ心線,プラスチック,ポリエチレンなどを保護している。

高い光信号パワーによる非線形光学効果の影響を抑圧するためにコア部分への光パワーの閉じ込めを弱くして実効断面積を拡大した光ファイバを用いた光海底ケーブルが導入されている。

光海底ケーブルシステムに用いられる光海底ケーブルの構造において,ルースタイプ構造は,タイトタイプ構造と比較して,光ファイバへのストレスを低減でき,偏波モード分散を小さく抑えることができる。

光海底ケーブルの構造

光海底ケーブルには、樹脂で被覆された光ファイバ心線を中心鋼線の周りに撚り合わせ、さらに、樹脂で充填された光ファイバユニットを実装したものがある。

光ファイバユニットの樹脂層には、温度変化による樹脂の収縮・膨張などによって生ずる光ファイバのマイクロベンドを抑制するために、内層と外層とでヤング率の異なる材料を使い分けているものがある。

光ファイバユニットは、抗張力及び耐水圧構造を有する複合金属体に収容されており、さらに、ケーブル切断時における海水の浸入を抑えるために、複合金属体内部の空隙及び複合金属体と光ファイバユニットとの空隙には水走り防止材が充填されている。

鉄 3 分割パイプ形 光海底ケーブル

図は、鉄 3 分割パイプ形光海底ケーブルの断面形状を示したものである。図に示す光海底ケーブルは、鉄 3 分割パイプの中に光ファイバを収容しているルースタイプのもので、鉄 3 分割パイプの周囲に鋼線が撚られており、図中の矢印 A で示す金属層は、電気抵抗がケーブル 1 [km] 当たり 0.7 ~ 1.0 [Ω] 程度の給電路を形成するとともに内部を密閉して光ファイバに有害な水素ガスの浸入を阻止する役割も担っている。

図中の矢印 B で示すポリエチレンを用いた絶縁層は金属層を被覆しており、図に示す光海底ケーブルは、LW(Light Weight)ケーブルといわれる無外装ケーブルに分類される。

一方、外装ケーブルは、外装鋼線を一重又は二重に巻いて強固な保護構造としたものであり、海底面での外力などによる損傷を防止するとともに 300 [kN] ~ 800 [kN] の張力にも耐えられる高張力型ケーブルであり、一般に、ケーブルが損傷を受けやすい浅海域で使用される。

また、光海底ケーブルは、敷設及び引揚げの際に加わる張力に耐える特性が必要である。光海底ケーブルの破断強度が 10 [kN]、その水中重量が 0.5 [kN/km] である場合、光海底ケーブルの水中重量で規格化したモジュラスは 20 [km] である。これは、例えば、水深 8,000 [m] で光海底ケーブルの自重の2.5倍の重量に耐えることを意味しており、水深 8,000 [m] からのケーブル回収が可能であることの指標となる。

図 光海底ケーブル

鉄 3 分割パイプ形光海底ケーブルは、断面が扇形の 3 個の鉄個片を集合した耐水圧構造の鉄 3 割パイプ、抗張力鋼線及び銅チューブで構成される複合金属体に光ファイバユニットを収容する構造であるため、光ファイバユニットに熱応力などがかからず、品質の安定した製造が可能で、 長尺ケーブルを製造する場合に適している。

また、鉄 3 分割パイプ形光海底ケーブルは、複合金属体内部の空隙に防水樹脂を充塡することにより、ケーブル切断時の海水の浸入を防止している。この複合金属体は、光海底中継器などへの給電線としても機能するため、ポリエチレンを用いた絶縁層により電気的に保護されている。

さらに、光ファイバの光損失が増加する要因の一つである水素ガスについては、製造工程において電気化学反応により 水素ガスの発生要因となりうる水分がケーブル内に浸入しないようにすることなどの対策が講じられている。

耐環境特性(水圧,張力,適用水深等)

光海底ケーブルは、ケーブル敷設や修理回収に伴う曲げ、張力などの外力に加え、水深 8,000 [m] の深海に相当する約 80 [MPa] の水圧において、安定した特性を持つ仕様となっている。

また、光海底中継器を必要とする長距離光海底ケーブルシステムでは、光海底ケーブルは光海底中継器への給電路としての役割も担っているため、電気抵抗を低く抑え、海中では海水との間で十分な絶縁をとる構造となっている。

さらに、光海底ケーブルは、水深、海底地質などの使用環境を考慮し、ケーブル保護構造に幾つかの種類がある。

陸揚局近傍の浅海部では、漁労、錨などにより、光海底ケーブルが最も損傷を受けやすいことから、一般に、二重外装ケーブルが使用されている。さらに、最大水深 1,500 [m] 程度までは、同様の理由により損傷を受けるおそれがあるため、一重外装ケーブルが使用されている。

1-2-2. 水底ケーブルの接続方法

光ファイバケーブルの心線接続,水底ケーブルシステムの試験(ブロック試験,最終試験等)

1. 水底線路設備 1-3. 水底ケーブル装置

1-3-1. 水底ケーブル装置の特性及び適用

水底中継装置と水底分岐装置の光学的・電気的・耐環境特性及び適用,光端局装置とケーブル給電装置の構成・機能

給電装置に用いられるコンバータの出力制御は、一般に、スイッチング周波数を変化させることにより行われるが、海中分岐装置の給電切替回路の駆動時など、給電電流値が低い場合は、周波数制御とパルス幅制御を併用して行われる。

給電装置は、給電前に光海底ケーブルが正常か否かを調べるため、一般に、微小電流を光海底ケーブルに供給する微小電流供給機能を有している。

給電装置は、光海底中継器を保護するため、過電流又は過電圧を検出する機能を有しており、検出器の誤動作による給電停止を避けるため、一般に、検出は複数系統の回路で行われている。

両端給電の中継光海底ケーブルシステムでは、海中区間での光海底ケーブルの絶縁故障が複数箇所あっても絶縁故障箇所が1中継区間内であれば、すべての光海底中継器への給電が継続可能である。

1-3-2. 水底ケーブル装置の接続方法

水底中継装置の水底ケーブルとの接続技術(A-A 技術,T-T 技術)

1. 水底線路設備 1-4. 敷設・埋設技術

1-4-1. 敷設技術

水底ケーブル敷設設備,敷設工法(水底ケーブル敷設理論,海中設備敷設工法等),陸揚げ工法

水底ケーブル敷設設備

ケーブル船

ケーブル敷設船は,一般の船舶が有している航海に必要な機能に加え,複雑なケーブル敷設工事に対応できる機能を装備している。

ケーブル敷設船の推進方式としては,船上でのケーブル接続作業への支障にならないように振動の少ない電気推進方式,前進全速から後進全速までの全範囲で任意の船速を無段階で得ることができる可変ピッチプロペラを用いた方式などが用いられている。

また,作業性を考慮して,ケーブル陸揚地での船固めや船上でのケーブル接続作業における自動定点保持を長時間可能とするために推進装置を制御する DPS(Dynamic Positioning System)を搭載するケーブル敷設船が導入されている。

ケーブル船には、一般に、DPS(Dynamic Positioning System)が備えられており、これに D-GPS 又は GPS からの位置情報をパラメータとして入力することにより、ケーブル船のスクリュー、舵及びスラスかじタを自動調整して、ルート上の各位置で計画された敷設方向や敷設速度を高い精度で実現することが可能となっている。

長距離連続敷設の場合、一般に、ケーブル敷設中のケーブル繰出速度の制御にはLCE(Linear Cable Engine)が用いられる。また、浅海部において、海底ケーブルを防護するための埋設工事を実施する場合に用いられる埋設機、ROV(Remotely Operated Vehicle)などは、ケーブル船に装備されているA フレームを使って吊り下げられ、海底に下ろされる。

さらに,ケーブル敷設船は,埋設機,ROV(Remotely Operated Vehicle)などを吊り下げるための A フレーム,大量の海底ケーブルを格納する複数のケーブルタンク,及び海底中継器を恒温で格納することができる海底中継器格納場所を有しており,ケーブル敷設・巻揚げのための DCE(Drum Cable Engine),高速敷設に適した LCE(Linear Cable Engine)などを装備している。

写真 フランステレコムの海底ケーブル敷設船
(出典)フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

敷設工法(水底ケーブル敷設理論,海中設備敷設工法等)

スラック計算

海底ケーブルの敷設においては、ケーブル故障を防止するために、サスペンションや過張力を生じないように海底面に沿って海底ケーブルを敷設することが重要である。海底面には陸上と同様に上り、下り及びそれらが複合した斜面があり、それぞれの場所に応じた適切な長さのケーブルを敷設する必要がある。そのため、それぞれの海底地形に基づく適切な敷設ケーブル長をあらかじめ計算しておくことが必要であり、この計算は、一般に、スラック計算といわれる。

このスラック計算の結果に基づきケーブルルート上のそれぞれの海底地形に応じたケーブル船の敷設速度、ケーブル繰出速度などについての詳細な計画が立てられる。敷設工事では予定のケーブルルートに従ってケーブル船の敷設方向を制御し、同時に、この計画に基づいて敷設速度及びケーブル繰出速度の制御を行いながら、ケーブルを敷設する。

ケーブル船による海底ケーブル敷設

図は,ケーブル船が海底ケーブルを保持している状態(A 点)から敷設を開始した直後の状態(B 点)までの敷設時の概念図である。図において,ケーブル船が A 点から B 点に移動する間にケーブル船が繰り出すケーブル長は,約 390 [m] である。ただし,必要に応じ,cos 10° = 0.98,cos 45° = 0.71,cos 80° = 0.17 及び tan 10° = 0.18 の値を用いること。

ケーブル船による海底ケーブル敷設
図 ケーブル船による海底ケーブル敷設

A 点におけるケーブル長を $L_1$ [m],B 点におけるケーブル長を $L_2$ [m] とすると,ケーブル船が A 点から B 点に移動する間にケーブル船が繰り出すケーブル長は次式で求められる。

\[ L_2 - L_1 = 1000/\cos{45\deg} - 1000/\cos{10\deg}=(1/0.71- 1/0.98) \times 1000 = (1.41 - 1.02) \times 1000 = 390 \text{ [m]} \]

陸揚げ工法

光海底ケーブルの陸揚工事において,光海底ケーブルは浅海部から海岸に陸揚され,海浜部を通過し陸揚局に引き込まれる。この浅海部から海岸までの区間では,錨,波浪,漁労などによるケーブル被害を受けやすいため,一般に,外装ケーブルを用いたり,光海底ケーブルに半割構造の鋳鉄管を取り付けるケーブル保護工事などが行われる。

海岸から陸揚局までのケーブルを管路及びトレンチを用いて埋設する方法は、交通車両などの外力からケーブルを保護することができ、地上の温度変化によるケーブルへの影響を抑える効果もある。

また,光海底ケーブルを陸揚局に引き込む方法としては,一般に,陸揚局内に光海底ケーブルを直接引き込んで局内に設置された CTB(Cable Termination Box)において光ファイバと給電線を分離する方法と,陸揚地点付近のビーチマンホール内に設置された CTB においてそれらを分離して光ファイバケーブルと給電ケーブルを陸揚局まで施設する方法がある。

陸揚局には伝送端局装置,システム監視装置などの設備が収容されており,陸揚局の敷地内には,一般に,局舎内設備の接地のための局舎アース及び光海底ケーブルシステムへの給電のためのシーアースが設置される。シーアースの接地抵抗は,一般に 1 [Ω] 以下が目標とされており,これを満足するために多くのアース棒が地中に設置されている。

また,陸揚局に設置されている電源関連設備としては,AC/DC 電源設備,非常用発電機などがあり,陸揚局の端局設備への電源供給は,一般に,直流 -48 [V] で行われている。

1-4-2. 埋設技術

埋設機の適用(敷設同時/後埋設時,水深等),埋設機の種類(鋤式埋設機,ウォータジェット埋設機,ROV 等),埋設工法(鋤式,ウォータージェット,ROV 埋設等)

埋設機の適用(敷設同時/後埋設時,水深等)

光海底ケーブルの埋設工事は,ケーブル敷設との関係から,ケーブル敷設後埋設工事とケーブル敷設同時埋設工事に大別できる。

埋設機の種類(鋤式埋設機,ウォータジェット埋設機,ROV 等)

鋤式埋設機

鋤式埋設機には,0.6 [m] のケーブル埋設深度を確保できるものが導入されており,適用水深も 200 [m] を超える深さまで可能なものがある。

埋設工法(鋤式,ウォータージェット,ROV 埋設等)

沿岸部や漁場では,ケーブルを損傷から守るため,ケーブルを海底に埋設する。ケーブルを傷つける要因は,沿岸部では大型船の錨(いかり),漁場では底引き網などがある。これらの要因に合わせ,また,海底の地質や地形を考慮し,0.6 〜 2.0 m 程度の深さにケーブルを埋設する。

鋤式埋設工法

鋤式埋設工法は,外洋における長距離光海底ケーブルの施設及び埋設が可能である。

鋤式埋設工法は,ケーブル敷設後埋設工事に適していないが,ケーブル敷設同時埋設工事には適している。

ウォータジェット埋設工法

ウォータジェット埋設工法は,埋設機の掘削部に配置したジェットノズルから加圧水を噴射し,溝を掘る方法を用いており,掘削部にジェットノズルを縦に追加することにより,掘削深度を深くすることが可能である。

ROV 埋設工法

ROV(Remotely Operated Vehicle,遠隔操作の水中ロボット)埋設工法は,最終接続点などの光海底ケーブル屈曲点の後埋設に使用し,加圧水をノズルから噴射し,光海底ケーブルを埋設することができるが,光海底中継器,ジョイントボックスなどの接続箇所を埋設することもできる。

1. 水底線路設備 1-5. 水底線路設備保守技術

1-5-1. 水底ケーブル監視技術

水底ケーブル故障種別(電気的,光学的),故障検知・故障点探索方式(微小電流電圧測定,光パルス試験(OTDR,C-OTDR),静電特性,絶縁測定,ROV 等)

光海底ケーブルシステムにおいて、光海底ケーブルの断線などの故障が発生した場合、一般に、ケーブル船による修理を要することから、故障種別に合った適切な故障点判定方法を用いて正確に故障点を判定する必要がある。

水底ケーブル故障種別(電気的,光学的)

電気的

光海底ケーブルの絶縁層などが損傷することにより給電路が海水に短絡した状態の故障は、一般に、絶縁故障(シャント故障)といわれ、光ファイバには異常がないため、光学的方法では故障位置を特定することはできない。

光海底ケーブル内の給電用導体が、陸揚局からの給電に対して開放された状態の故障は、一般に、オープン故障といわれる。光海底ケーブルの給電路開放故障の場合は、関係陸揚局での光海底ケーブル端から静電容量を測定し、故障位置を推定する。この方法は、精度が低いため、推定された位置付近でケーブル敷設船により光海底ケーブルを回収し、ケーブル敷設船から再度、光海底ケーブルの静電容量を測定して故障位置をより正確に推定する方法が採られる。

光海底ケーブルにシャント故障が発生した場合には、始めに給電装置から故障点に向けて給電し、海中機材監視装置を用いて故障被疑中継区間を判定する。次にそのときの給電装置の出力電圧値から故障点までの 直流抵抗を計算し、光海底ケーブル、光海底中継器などの製造時データから求められる直流抵抗の値と比較して、故障点を判定する。

光学的

陸揚局から第1光海底中継器までの第1中継区間では、漁労などの人為的作業によるケーブル故障が多いが、第1中継区間の故障の場合は陸揚局からの距離が短いため、一般に、陸揚局から OTDR を用いて、光ファイバの破断点からの光パルスの反射を測定することにより、故障点の判定が可能である。

光海底ケーブルシステムの定期的な監視項目としては,光伝送端局装置間の符号誤り率,光海底中継器での光入出力レベルなどがある。また,光増幅方式を用いた中継光海底ケーブルシステムにおいては,符号誤り率の測定による伝送品質の評価は,Q 値に換算して行われる場合が多く,一般に,Q 値が大きいほど伝送品質が良いとされている。

故障検知・故障点探索方式

光海底ケーブル故障は、その故障タイプにより故障位置測定方法や修理方法が異なることから、故障タイプを特定し、より正確な故障位置を陸揚局から測定することが重要となる。

また,光海底ケーブル,光海底中継器などの海中設備の故障時には,給電系か伝送系か,光海底ケーブルか光海底中継器かなどの切り分けを行い,速やかに故障位置を特定する必要がある。

微小電流電圧測定

両端給電方式の光増幅海底ケーブルシステムでは、シャント故障箇所が1中継区間内であるとき、各光海底中継器にはいずれかの陸揚局から給電されていることから、電圧電流測定により、給電電位がゼロになる点をシャント故障箇所に合わせることで、故障位置を特定することができる。

さらに、シャント故障箇所が陸揚局から第1光海底中継器までの区間であれば、陸揚局からの電気パルスエコー測定により故障位置を特定することができる。

光パルス試験(OTDR,C-OTDR)

光増幅海底ケーブルシステムにおいて、第 2 中継区間以降に光ファイバ破断故障が生じた場合は、C-OTDR を用いることにより、光ファイバの破断位置を 100 m 以下の精度で測定することができる。

静電特性

光海底ケーブルの故障箇所のケーブル両端がオープン故障となった場合、工場出荷時の各ケーブルセグメントの静電容量データと陸揚局からの静電容量測定結果を比較することにより、陸揚局から故障点までのおおよその距離を計算できる。

給電系の故障判定方法としては,直流抵抗測定及び静電容量測定が用いられる。陸揚局からの静電容量測定による故障点の位置判定は誤差が大きいため,ケーブル船で推定故障位置付近のケーブルを回収した後に,ケーブル船から静電容量測定を行い,故障位置を絞り込んでいく方法を採る場合がある。

絶縁測定
ROV

敷設状況,ケーブルの埋設,探査などに利用する。

1-5-2. 水底ケーブル維持管理技術

故障修理方法(ケーブル探査,ケーブル揚収,故障点確認,ケーブル接続・敷設等),給電安全手順(PSM 等),光ファイバケーブルの心線管理

故障修理方法(ケーブル探査,ケーブル揚収,故障点確認,ケーブル接続・敷設等)

水底ケーブルの修理方法は通常,1) ケーブル障害位置の特定,2) 障害ケーブルのケーブル湿布への引き揚げ,3) ケーブル障害箇所の切断・除去,4) ケーブルシップタンク内の予備ケーブルと引き揚げてきたケーブルとの接続,5) 確認試験,6) 再敷設 の手順からなる。

深海部における光海底ケーブルの故障修理では、故障点を除去した後に修理用予備ケーブルを割り入れる必要があり、その割入れケーブル長は、一般に、水深の 2 ~ 2.5 倍程度を必要とする。

給電安全手順(PSM 等)

光海底ケーブルの修理作業では,電気的・光学的試験のために陸揚局又はケーブル船上から海中設備へ給電が行われる。この際,ケーブル船上の作業者の陸揚局からの給電による感電などの防止,対向する相手側での事故の防止などのために適切な給電管理が必要となる。

給電管理において,給電時の作業者の勘違い,作業誤りなどを防ぐために,PSO(Power Safety Officer)が任命されている。

修理作業開始前には,修理作業に従事する陸揚局及びケーブル船上において,それぞれ 1 名の PSO が指名される。

修理作業中では,一般に,ケーブル船上の PSO を PCO(Power Control Officer)とし,PCO が給電に関する全ての管理を行い,試験のためのケーブル船側・陸揚局側のケーブル端のショート及びオープンを含む給電操作の指示を行う。

PCO からの命令をケーブル船と対向する陸揚局に伝え,それに対する回答をするために使われる文書は,PSM(Power Safty Message)といわれ,この文書のやり取りは原則として電子メールや FAX などの書面で行われる。PSM での命令は,できる限り単純に記載され,受理した命令内容の誤解を避けるため,必要な作業命令は,作業段階ごとに一つずつ確実に行われる。

分岐区間でのケーブル故障の場合,光海底分岐装置(BU)内のリレースイッチにより分岐故障区間を電気的に切り離して,故障区間以外のトラヒックを疎通させるために給電を継続しながら修理することから,船上作業者の安全を確保するために PGU(Power Grounding Unit)が必要とされる。PGU は,船上でのケーブル部分を船体アースに接続するものであり,ケーブル導体への接続器具,電流・電圧アラーム装置,ケーブル船へのアースラインなどから構成される。

2. 水底線路設備設計 2-1. 水底ケーブル設計

2-1-1. ルート選定

ルート選定の観点(水深,海底地形・地質,火山・地震活動,周辺漁業活動(利用漁具,漁法)等)

2-1-2. 水底光ファイバケーブル設計

システム長,中継間隔(ケーブル伝送損失等),中継器出力/利得特性,伝送速度,変調方式,光ファイバ分散マネジメント,無中継伝送システム設計,信頼性設計

3. 通信線路伝送工学 3-1. ケーブルの伝送理論

3-1-1. メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論

専門分野・通信線路 対策ノート「メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論」を参照

3-1-2. 光ファイバケーブルの伝送理論

専門分野・通信線路 対策ノート「光ファイバケーブルの伝送理論」を参照

付録

海底ケーブルの歴史

海底ケーブルの歴史は世界の覇権をめぐる歴史でもある。

1851 年,英仏海峡に初めての電信のケーブルを施設

海底ケーブルに最初に着手したのは,産業革命を成し遂げたイギリスだった。1851 年,英仏海峡に初めての電信のケーブルを施設した。そのわずか 15 年後には大西洋を横断し,アメリカに到達。インド,中国と,アジアへもケーブルを延ばし,1871 年には上海経由で日本の長崎へも到達している。

1956 年,音声通話のできる電話線で大西洋を結ぶ

第二次世界大戦後,派遣を奪ったのはアメリカだった。1956 年に初めて音声通話のできる電話線で大西洋を結んだのは,AT&T の技術力だった。また,「同軸」とよばれる 36 回線の多重通話方式を開発したのは,AT&T 社直属のベル研究所だった。

参考文献

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