電気通信システム 対策ノート「線路の基礎」
線路の基礎
光ファイバの構造
光ファイバのパラメータには,光学系パラメータと構造パラメータがある。
光学系パラメータ
- 比屈折率差
- 受光角
- 開口数
- 屈折率分布係数
構造パラメータ
- コア径
- 外径
- コア非円率
- 外径非円率
- 偏心率
- モードフィールド径
- カットオフ波長
光ファイバの構造を決定するパラメータは次表のように整理される。
種類 | パラメータ |
---|---|
SM 光ファイバ | モードフィールド径,モードフィールド偏心量,カットオフ波長 |
MM 光ファイバ | コア径,外形,開口数,屈折率分布 |
コアの屈折率を大きくするためには,コアとなる石英ガラスにゲルマニウム,アルミニウム,チタンなどを添加し,クラッドには屈折率を小さくするためにフッ素やホウ素化合物を添加する。これらの添加物をドーバントという。
ファイバグレーティング
FG は、光ファイバのコアに周期的な屈折率変化を形成することで、特定の波長の伝搬光を選択的に反射又は阻止することのできる波長選択デバイスとして用いられ、同様の機能を有する光デバイスである多層膜光フィルタと比較して、伝送用光ファイバとの接続性に優れている。
FG の温度特性
FG の温度特性は、光路の温度変化による屈折率変化と熱膨張によって決まり、石英ガラスを用いた FG の場合は、屈折率変化が支配的要因となっている。短周期型 FG を波長選択デバイスとして用いる場合には、一般に、FG を固定する台座の温度特性を利用するなどして温度補償が行われている。
FG の作製方法
FG の作製方法には、2 光束干渉法、位相マスク法などがある。位相マスク法は使用する位相マスクによりグレーティング周期が定まり、2 光束干渉法と比較して、同一のグレーティング周期を持つ FG を安定的に量産することができる。
ファイバブラッググレーティング(FBG)の構造、特性
FBG とは、光ファイバのコアの屈折率に周期的な屈折率変化が形成されているファイバ型デバイスである。屈折率変化はグレーティングとして働き、グレーティングの周期が作るブラッグ反射条件を満たす波長の光のみを反射することができる。
FBG の透過率特性は、透過域での損失が極めて小さい、偏波依存性が少ないなどの特徴がある。一方、石英ガラスの屈折率の温度依存性による反射波長の変動を補償するため、一般に、温度調節素子とともに実装して定温に保つ、熱膨張係数差を利用した温度補償を行うなどの対策が必要である。
屈折率周期が数百 [μm] の長周期グレーティング(LPG)では、コアを伝搬してきた光の一部がクラッドモードと結合することにより減衰するため、LPG はクラッドモードとの結合条件を満たす波長領域のみに損失を与えるフィルタとして機能する。
光ファイバ中の光波伝搬(伝搬モード,損失,分散,非線形光学効果等)
スネルの法則において,2 つの媒質が平面で接している場合の光線の反射式は,下式で表される。
\[ n_1 \sin \theta = n_2 \sin \phi \]ここで,$n_1$ はコア,$n_2$ はクラッドの屈折率であり,$\theta$ は入射角,$\phi$ は屈折角である。
光パルス試験器を用いて光ファイバに光パルスを入射して伝搬させると,光ファイバの破断点では,急峻な屈折率変化によるフレネル反射光が発生し,この光が破断点までの距離に比例した時間を経過した後に入射端に戻ってくることを利用して,破断位置の測定を行うことができる。
フレネル反射(Fresnel reflection)とは,異なる屈折率を持つ物質どうしが接触する境界面に対し光が入射する際,その光の一部に対して生じる反射のことである。この反射は,屈折率の差と入射角の差に依存する。
シングルモード光ファイバを用いて光信号を伝送する場合,伝送帯域を制限する主な要因となる波長分散は,波長の違いによって発生する。これには構造分散と材料分散がある。
構造分散は,コアとクラッドの屈折率の差が小さいとき,パルス幅の広がりのあるパルスが入射すると波長の長い方がクラッドに染み出る現象がおきる。このため伝送路長の違いにより到達時間に差が生じ,パルス幅が広がる。
材料分散は,コア屈折率は伝搬する光の波長により異なる値をとるため,波長による光速の違いから到達時間に差を生じる現象をいう。
カットオフ波長 $\lambda_c$ とは SMF において,基本モード(LP01)のみを伝搬できる最短の波長であり,$\lambda_c$ より短い波長では高次モード(LP11)が伝搬し始める(マルチモード伝搬となる)。SMF のカットオフ(遮断)波長 $\lambda_c$ は次式で与えられ,屈折率分布やコア径で決まる。
\[ \lambda_c = \frac{2\pi a}{2.405}\sqrt{n_1^2 - n_2^2} \]ただし,$a$ はコアの半径,$n_1$ はコアの屈折率,$n_2$ はクラッドの屈折率である。
光ファイバは,伝搬可能なモード数を規格化周波数 $V$ で一意に決定され,$V \lt 2.405$ の場合に 1 つのモードのみ伝搬可能となる。
\[ V = \frac{2\pi a}{\lambda} \sqrt{n_1^2 - n_2^2} \]ここで,$a$ はコア半径,$\lambda$ は波長,$n_1$ はコアの屈折率,$n_2$ はクラッドの屈折率である。
マルチモード光ファイバにおいて,入射光は複数のモードで光ファイバを伝わる。そのため各モードで到達時間に差を生じ,出力側でパルス幅が広がる。この現象をモード分散という。
レイリー散乱(Rayleigh Scattering)損失は,波長に比べて十分に小さい粒子による散乱で,光ファイバの線引き時に高温から室温に一気に冷却されるため,高温の時の密度や組成のばらつきで生じる。レイリー散乱の損失の大きさは,波長の 4 乗に反比例する。