平成22年度 第1回 線路及び設備管理

2020年6月29日作成,2021年1月4日

問1

(1) アクセスネットワークにおける線路設備の概要

設備センタから複数のユーザへ光ブロードバンドサービスを提供する線路設備の形態には、1 本の光ファイバを光スプリッタにより分岐して複数ユーザで利用する PDS 方式や、設備センタとユーザ間に、O/E 変換及び信号多重・分離を行う多重化装置を設置し、設備センタから多重化装置までを光ファイバケーブル、多重化装置からユーザまでをメタリックケーブルで接続する ADS 方式などがある。

PDS 方式では、設備センタに設置される終端装置である OLT は、光ファイバケーブル及び光スプリッタを介してユーザ宅内に設置される ONU と接続される。ユーザ宅には、一般に、ドロップ光ファイバが引き込まれ、ドロップ光ファイバとユーザ宅内のインドア光ファイバを接続する場合は、再接続はできないがクランプスプリングなどを用いて簡便な接続作業が可能であるメカニカルスプライス接続などが適用される。

アクセス系線路の光ファイバケーブル設計」参照

(2) 通信ケーブル技術など

(ⅰ) 通信ケーブルの種別など

  1. メタリック平衡対ケーブルの外被構造には、アルミテープとポリエチレン外被を一体化した LAP 構造がある。(
  2. メタリック平衡対ケーブルの心線の集合構造には、S 撚り、Z 撚り及び SZ 撚りがあり、S 撚りが心線に最も大きなたるみを持たせることができる構造であるため、回線開通作業などで後から途中接続する場合に有効である。(
  3. 光ファイバケーブルには、単心の光ファイバ心線を束ねたユニット型ケーブル、テープ心線をスロットロッドに収納するテープスロット型ケーブル、光ファイバ心線をルースチューブに収納するルースチューブ型ケーブルなどがある。(
  4. アクセス用光ファイバケーブルには、FRP をテンションメンバに用いて誘導対策区間に適用可能とした IF ケーブルがある。(

正しくは「SZ 撚り」である。

(ⅱ) メタリック平衡対ケーブルの漏話など

  1. メタリック平衡対ケーブルの漏話には、同一カッド内のペア相互間の静電結合によって生ずるものがある。ペア違いなど誤接続した場合やカッドくずれが起きた場合は、静電結合が大きくなるため、漏話も大きくなる。(
  2. メタリック平衡対ケーブルの漏話には、誘導回線の電流の方向と同じ方向へ誘起電流が伝搬される近端漏話と、逆方向へ伝搬される遠端漏話がある。ISDN 回線による ADSL 回線への漏話の影響については、一般に、近端漏話と比較して遠端漏話からの影響を強く受ける。(
  3. メタリック平衡対ケーブルの心線撚りの種類には、対撚り、DM カッド撚り及び星形カッド撚りがあるが、一般に、星形カッド撚りと比較してケーブル外径を小さくできる DM カッド撚りが使用されている。(

正しくは,B.「下線部が逆」,C.「下線部が逆」である。

近端漏話と遠端漏話
図 近端漏話(Near end crosstalk)と遠端漏話(Far end crosstalk)

(ⅲ) 光ファイバ

  1. 光ファイバの屈折率分布の形状には、グレーデッドインデックス型(GI 型)、デュアルシェイプ型、ステップインデックス型(SI 型)などがあり、シングルモード光ファイバは GI 型である。(
  2. 光ファイバは、誘電体の材料により、石英系光ファイバ、多成分系酸化物光ファイバ、プラスチック光ファイバなどに分類され、ネットワーク設備に用いられる光ファイバは、一般に、石英系光ファイバと比較して伝送特性の長期安定性の面で優れており、かつ、低損失である多成分系酸化物光ファイバが使用されている。(
  3. シングルモード光ファイバは、マルチモード光ファイバと異なり、コア径ではなく、伝搬モードの光強度分布から決定されるモードフィールド径が、構造パラメータとして ITU-T 勧告で標準化されている。(
  4. 光ファイバの構造パラメータのうち、シングルモードとなる最短の波長を規定する構造パラメータは、開口数(NA)といわれる。NA で規定された波長より短い光は、マルチモードになる。(

正しくは,1.「SI 型」,2.「下線部が逆」,4.「カットオフ波長」である。

(ⅳ) 光クロージャ及び光キャビネット

  1. 光ファイバケーブルどうしを接続するために設置される光クロージャは、地下用と架空用に大別できる。地下用光クロージャは、一般に、光ファイバ心線の高密度収納が可能であるが、架空用光クロージャは、小型化されているため、光ファイバ心線の接続余長を収納することができない。(
  2. 水中における光ファイバは、空気中の光ファイバと比較して強度特性が著しく劣化することはないため、架空用光クロージャについては、一般に、経済性を踏まえ、防水性能は考慮されていない。(
  3. 地下用光クロージャは、光クロージャ内への浸水を防ぐために水密性を重視した構造となっており、地下用光ファイバケーブルとして防水構造を持つ光ファイバケーブルを使用する場合、地下用光クロージャの組立てや解体専用のかしめ工具などの特殊工具が必要である。(
  4. ビルや集合住宅などに屋外から引き込まれた屋外光ファイバケーブルと構内光ファイバケーブルとの接続点に設置される光キャビネットは、一般に、屋外光ファイバケーブルの成端機能及び光コネクタによる設備分界点の機能を有している。(

1. 架空用光クロージャは,心線を整理して収容するため、一般に、収納トレイを具備している。

2. 架空用光クロージャについても,防水性能は考慮される。

3. 特殊工具は不要である。

問2

(1) 光海底ケーブルの特性など

光海底ケーブルは、ケーブル敷設や修理回収に伴う曲げ、張力などの外力に加え、水深 8,000 [m] の深海に相当する約 80 [MPa] の水圧において、安定した特性を持つ仕様となっている。

また、光海底中継器を必要とする長距離光海底ケーブルシステムでは、光海底ケーブルは光海底中継器への給電路としての役割も担っているため、電気抵抗を低く抑え、海中では海水との間で十分な絶縁をとる構造となっている。

さらに、光海底ケーブルは、水深、海底地質などの使用環境を考慮し、ケーブル保護構造に幾つかの種類がある。

陸揚局近傍の浅海部では、漁労、錨などにより、光海底ケーブルが最も損傷を受けやすいことから、一般に、二重外装ケーブルが使用されている。さらに、最大水深 1,500 [m] 程度までは、同様の理由により損傷を受けるおそれがあるため、一重外装ケーブルが使用されている。

水底線路の概要」参照

(2) 通信土木設備

(ⅰ) 通信土木設備の道路占用

  1. 通信土木設備を道路下に建設する場合は、道路管理者からの道路の占用許可が必要である。(
  2. 通信土木設備が道路を占用する場合は、一般に、道路の占用料を支払う必要がある。(
  3. 通信土木設備は、風水害、地震などの自然災害及び公共土木工事などによる人為的災害に対するケーブルの防護機能を有している。(
  4. 新設する場合の管路条数は、一般に、管路を新設する年度の翌年度に必要なケーブル条数に見合った条数としている。(

管路を新設する年度の翌年度以降も必要なケーブル条数に見合うようにする必要がある。

(ⅱ) とう道設備

  1. とう道設備は、多条数の管路が収容できる空間を確保するとともに、ケーブルの布設及び接続、保守修理作業などができる空間を確保している。(
  2. シールドとう道設備とは、作業者が内部に入って建設及び保守作業ができる直径 2 [m] ~ 5 [m] 程度の通信ケーブル専用のトンネルである。(
  3. とう道設備の施工方法には、シールド工法及び開削工法があり、とう道の断面形状は、一般に、シールド工法では円形、開削工法では矩形である。(

正しくは「ケーブル」である。

(ⅲ) 管路設備

  1. 管路設備は、設備の形態により、一般に、一般管路設備、中口径管路設備及び地下配線管路設備に分けられ、地下配線管路設備には、1 条の管路に配線ケーブルと引込みケーブルを混在させて布設するフリーアクセス方式がある。(
  2. 一般管路設備は、一般に、呼び径 75 [mm] の管が多段多条に積まれ、地表面下 1 [m] ~ 2 [m] 程度に埋設されている。(
  3. 管種には、硬質塩化ビニル管、鋼管、鋳鉄管などがあり、管種の選択に当たっては、液状化の危険度、電磁誘導対策の要否などの埋設場所の環境に応じた最適な管種が決定される。(
  4. マンホールとマンホールとの間の径間長とは、マンホールのダクト壁の厚さの中心から隣接するマンホールのダクト壁の厚さの中心までの距離をいう。(

正しくは「マンホールの中心間の距離」である。

(ⅳ) 中口径管路設備の構造など

  1. 中口径管路設備には、一般に、呼び径 250 [mm] ~ 500 [mm] 程度の管路にあらかじめケーブル収容用スペーサ(インナパイプ)を多条数布設するパイプインパイプ方式及びケーブル需要の発生時にスペーサを布設するフリースペース方式がある。(
  2. 中口径管路設備は、一般に、非開削で施工されるが、埋設物との離隔が十分に確保できないなどの理由から開削で施工されることがある。開削施工には、吊降し工法及び元押し工法がある。(
  3. 中口径管路設備をマンホールへ取り付ける際には、耐震対策として、一般に、伸縮機能を有するダクトスリーブが使用される。(

問3

(1) ケーブルのクリーピング

ケーブルのクリーピングとは、管路に布設されたケーブルが、大型車両などの通過により起こる振動、ケーブルの温度伸縮などにより移動する現象である。

ケーブルが移動する方向は、管路の傾斜、管路とケーブル間での摩擦力、車両進行方向などの設置環境によって異なり、また、クリーピングは、ケーブルの種別によらず、すべてのケーブルに発生する可能性がある。

クリーピングが発生しやすい場所は、軟弱地盤で大型車両が通行するところ、傾斜地で車両の通行量が多いところ、走行車両のほぼ真下にケーブルが布設されているところなどである。

ケーブルの移動を防止する対策は、機械的にケーブル移動を止める方法、ケーブル移動量に見合ったケーブルのスラック部分を設ける方法などがあり、機械的にケーブル移動を止める方法は、移動防止金物によってケーブルを把持し、マンホール壁面によって支える方法である。

腐食・損傷対策」参照

(2) 安全、安全作業など

(ⅰ) 構造物の安全、安全作業など

  1. 「電気設備の技術基準の解釈」では、鉄筋コンクリート柱に対して、設計荷重の 2 倍の荷重を加えたとき、これに耐えることを求めている。(
  2. 電柱における登り幅とは、架設物を取り付けない空間を設け、安全に昇降したり作業するために設けられた空間である。(
  3. 「建設工事公衆災害防止対策要綱」では、道路の通行を制限する場合、道路管理者や所轄警察署長から特別に指示がない場合で、制限した後の道路の車線が1車線となる場合は、その車道幅員は 2.5 [m] 以上とし、2車線となる場合は、その車道幅員は 6.0 [m] 以上としている。(
  4. 高さ 2 [m] 以上で保守作業を行う場合、墜落により危険を及ぼすおそれがあるときは、作業床を設けなければならない。作業床を設けることができないときは安全帯を使用するなど、作業の安全を確保しなければならない。(

正しくは「3 [m] 以上」「5.5 [m] 以上」である。

(ⅱ) 労働安全衛生法の規定に基づく資格・特別教育など

線路設備などの屋外作業に従事する者は、その業務内容によって労働安全衛生法の規定に基づく資格・特別教育などが必要とされるが、業務内容、必要な資格などについて述べた次の文章

  1. クレーンを使用して、5 トン以上の電柱を吊り、移動作業をする者は、当該作業に係るクレーンの運転技能講習を修了した者でなければならない。(
  2. マンホール内で作業を行う場合は、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者(旧第二種酸素欠乏危険作業主任者)特別教育を修了した者のうちから、酸素欠乏危険作業主任者を選任する。(
  3. クレーンを使用して、1 トン以上の電柱の玉掛け作業をする者は、玉掛け作業に係る特別教育を修了した者でなければならない。(
  4. 架空線路の保守作業では、作業床の高さが 2 [m] 以上 10 [m] 未満の高所作業車を運転(道路上を走行させる運転を除く。)する者は、高所作業車運転技能講習の修了者(修了証の交付を受けた者)又は、高所作業車運転業務の特別教育を修了した者でなければならない。(
  5. つり足場などの足場組立て等作業主任者は、足場組立て等作業主任者特別教育を修了した者のうちから、選任しなければならない。(

正しくは,1.「運転士免許を取得している者」,2.「技能講習」,3.「技能講習」,5.「技能講習」である。

(3) 設備投資における経済比較

(ⅰ) 経済比較の方法

  1. 設備の新設などで、幾つかの案を費用の面から比較し、経済性を判断する方法としては、年経費による比較方法と、現価による比較方法とがある。年経費は、設備投資を使用期間中の費用として割り付けた資本回収費と、設備を使用していくときに設備の維持運用などに必要な毎年支払われる稼働費などの合計である。(
  2. 資本回収費と稼働費などの年経費について比較期間に相当する分だけを現価に換算して比較を行う方法は、年経費現価比較法といわれ、設備の比較期間の使用終期が一致しない場合は比較ができない。(
  3. 残存価値とは、設備が使えなくなったり、使わなくなった場合、その設備に残されている価値をいう。経済比較では、一般に、残存価値は、残価ともいわれる。(
  4. 純残価とは、設備の寿命が到来した後、残価から撤去などに要する経費を差し引いた額をいう。(

正しくは「設備の比較期間の使用終期が一致しない場合も比較できる」

(ⅱ) 減価償却

  1. 減価償却は、設備を使用することによる価値の減少を、使用期間中の費用として割り付け、経済性を比較検討する場合は、新しい設備に更新するための準備資金とする考え方を採っている。(
  2. 減価償却法とは、減価償却費を各年度に割り付ける方法であり、定額法、定率法、減債基金法などがある。定額法及び減債基金法は、毎年の減価償却費が一定であり、定率法は、初年度の償却費が最小で、その後の年数が経過するほど高額になっていく方法である。(
  3. 設備の減価償却費は、一般に、創設費に相当する取得価格、寿命又は耐用年数に相当する使用期間、使用期間経過後におけるその設備の処分価値に相当する残存価値及び設備の維持運用などの費用に相当する年経費から算出される。(

正しくは,A.「修繕費とする考え方」,B.「初年度の償却費が最大で,その後の年数が経過するほど低額になっていく方法」,C.「」である。

問4

(1) 光ファイバケーブルの保守点検など

光ファイバケーブルの保守点検において、光線路損失などを測定する場合、一般的に用いられている光源は、赤外線領域であるが、測定光の通光状態を確認する目的で光ファイバのコネクタ端面を直視することは危険である。

高密度波長多重伝送などの光パワーが強い場合に、光ファイバ端面が汚れていると汚れの部分から発熱し、損傷することがある。コネクタ端面の清掃は、アルコールを染み込ませた不織布、コネクタクリーナなどにより、端面部に傷が付かないよう注意して行う。

一方、地下線路設備では、とう道やマンホール内の金物が腐食したり、コンクリート部分に白色のツララ状のものが生ずることがある。マンホール内の金物腐食には、金物の異種金属接触による腐食、硫酸イオンを多く含む貯留水中でのバクテリアの作用による腐食などがあり、流電陽極による犠牲防食や有機被覆による絶縁防食などの対策が有効である。また、コンクリートの亀裂から炭酸カルシウムが流出することにより、ツララ状のものが生じた場合は、コンクリートが中性化し、コンクリート内部の鉄筋に錆が発生しやすくなるため、コンクリートの亀裂を補修するなど対策が必要となる。

通信ケーブル監視技術」「通信土木の概要」参照

(2) ある装置の信頼性

装置は偶発故障期間にあるものとする。また、指数関数の値は、$e^{-0.8}=0.449$、$e^{-0.01}=0.990$、$e^{-0.0008}=0.999$、$e^{0.8}=2.23$ とし、$e$ は自然対数の底とする。

(ⅰ) 1,000 時間使用時点における信頼度

装置 A を 2,500 時間使用したところ 2 回の故障が発生した。装置 A の 1,000 時間使用時点における信頼度は、0.449 である。

装置 A の故障率は次式で求められる。

故障率 $\lambda$ = 2 [回] / 2,500 [時間]

装置 A の 1,000 時間使用時点における信頼度は次式で求められる。

信頼度 $\displaystyle R=\exp(-\frac{2}{2500}\times1000)=\exp(-0.8)=0.449$

(ⅱ) 平均故障率

装置 B の稼動開始後 500 時間経過時点の信頼度を 0.99 以上に維持するためには、装置 B の平均故障率を 2 × 10-3 [%/時間] 以下にしなければならない。

求める装置 B の平均故障率を $\lambda$ とすると,与えられた条件より次式が成り立つ。

\[ R=\exp(-\lambda \times 500) \ge 0.99 \] \[ \exp(-500\lambda)\ge\exp(-0.01) \] \[ -500\lambda\ge -0.01 \] \[ \lambda \le 2\times 10^{-5} \]

よって,装置 B の平均故障率を 2 × 10-3 [%/時間] 以下にしなければならない。

(3) ある装置又はシステムの信頼性

(ⅰ) MTTR

装置 C の故障率が 0.2 [%/時間] であるとき、固有アベイラビリティが 0.98 であるためには MTTR は、10.20 [時間] でなければならない。ただし、答えは、四捨五入により小数第 2 位までとする。

装置 C の MTBF を求める。

\[ \text{MTBF}=\frac{1}{\lambda}=\frac{1}{0.2\times 10^{-2}}=500 \]

与えられた条件より,装置 C の MTTB を求める。

\[ A=0.98=\frac{\text{MTBF}}{\text{MTBF}+\text{MTTR}}=\frac{500}{500+\text{MTTR}} \] \[ \text{MTTR}=\frac{10}{0.98}=10.2040 \approx 10.2 \text{ [h]} \]

(ⅱ) 並列冗長システム

信頼度が 0.7 である装置 D が複数台並列に接続された並列冗長システムにおいて、システム全体の信頼度を 0.99 以上とするためには、装置 D を最低 4 台構成とする必要がある。ただし、必要に応じて、$\log_{10}{0.3}=-0.523$、$\log_{10}{0.7}=-0.155$ の数値を用いること。

必要な並列台数を $n$ とすると,システム全体の信頼度を 0.99 以上とするためには,次式が成り立つ。

\[ 1-(1-0.7)^n \ge 0.99 \] \[ 0.01 \ge 0.3^n \] \[ \log_{10}10^{-2} \ge n \log_{10}0.3 \] \[ -2 \ge n \times (-0.523) \] \[ 3.824 \le n \]

システム全体の信頼度を 0.99 以上とするためには、装置 D を最低 4 台構成とする必要がある。

問5 情報セキュリティ

(1) サーバに対する不正アクセスの概要

システムを利用する者が、その者に与えられた権限によって許された行為以外の行為をネットワークを介して意図的に行う行為は、一般に、不正アクセスといわれ、不正アクセスによるサーバへの攻撃に不正侵入がある。

侵入行為は、一般に、事前調査、権限取得、不正行為の実行、後処理の段階を経て行われるといわれている。このうち、事前調査によるシステム情報の収集では、不正アクセスの対象とするサーバの TCP ポート番号に対して順番にパケットを送信し、その応答パケットから、稼動しているサービスを調査するポートスキャンなどが行われる。次に、解読ツールなどを使用して、パスワードを強引に解読するパスワードクラッキングが行われる。パスワードクラッキングの手法としては、一致する文字列を総当たり的に調べるブルートフォース攻撃などがある。パスワードクラッキングにより、権限取得に成功した後、改ざん、破壊、不正プログラムの埋め込みなどの不正行為が実行される。不正行為が行われた後には、ログの消去などにより、侵入の形跡を消す証拠隠滅工作が行われる。

また、次回以降の不正侵入が容易に行えるように、設定の変更や、プログラムのインストールが行われて、侵入しやすくするために仕掛けられた侵入経路は、バックドアといわれる。

ネットワークセキュリティ対策」参照

(2) 暗号方式

  1. 共通鍵暗号方式において、暗号化通信を行う送信者と受信者は、通信を始めるに先立って、事前に安全な方法で秘密鍵を共有しておく必要がある。(
  2. 公開鍵暗号方式により、$N$ 人が相互間で通信を行う場合、異なる鍵の数は全体で $N^2$ 個である。(
  3. 共通鍵暗号方式は、主に、通信データの暗号化に用いられ、公開鍵暗号方式は、主に、認証と鍵配送に用いられる。(
  4. 共通鍵暗号方式は、公開鍵暗号方式と比較して、暗号化・復号の処理速度が速いことから、データ量の多い情報の秘匿に適している。(

正しくは「異なる鍵の数は全体で $2N$ 個」である。公開鍵暗号方式により暗号化を行うため,公開鍵秘密鍵のキーペアを作成する。公開鍵は他の人に公開し,秘密鍵は自分だけの秘密にしておく。よって,鍵の種類は人数分 × 2 を用意すればよい。

(3) コンピュータウイルス検出手法及びコンピュータウイルスに感染した場合の対処方法

  1. パターンマッチング方式は、既知のウイルスのパターンが登録されているウイルス定義ファイルと、検査の対象となるメモリやファイルなどを比較してウイルスを検出することが可能である。(
  2. チェックサム方式は、ハードディスク内にある実行可能ファイルが改変されていないかを検出し、ウイルス名を特定することが可能である。(
  3. コンピュータウイルスに感染したと思われる兆候が見られたら、コンピュータの異常な動作を止めるために再起動を行い、その後、コンピュータウイルスを駆除する。(

ハッシュ値やファイル容量などで簡便に変更をチェックするコンペア法を,特にチェックサム法ということもある。

コンピュータウイルスに感染したと思われる兆候が見られたら、コンピュータをネットワークから切り離す。

(4) ファイアウォールの静的パケットフィルタリング機能

  1. パケットフィルタリング機能では、一般に、IP パケットのヘッダに記録されている IP アドレスやポート番号などの情報を基に、通信の許可又は不許可を判断している。(
  2. パケットフィルタリング機能は、一般に、ネットワーク層及びトランスポート層レベルで動作し、基本的機能として、DoS 攻撃、コンピュータウイルス、メールの不正中継に対する防御機能などを有している。(
  3. パケットフィルタリング機能は、通過する IP パケットのヘッダ部及びデータ部について改ざんの有無を確認して、改ざんがあった場合には内部ネットワークへの通過を阻止することができる。(

IP パケットのヘッダに含まれている情報をもとに通信のアクセス制御を行なうファイアウォールのもっとも基本的な機能。IP ヘッダに書き込まれている送信元や宛先 IP アドレス、その他オプションの情報を読みとり、ユーザーが指定したルールに基づいてパケットを通過(遮断)させる。明示的に許可されているパケット以外はすべて拒否するというのが一般的で、ルールにあてはまらないパケットは破棄される。ブロードバンドルーターやファイアウォール専用機、パーソナルファイアウォールなど、幅広い機器やソフトウェアに実装されている。

(5) ISMS の要求事項

JIS Q 27001 : 2006 で規定されている ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の要求事項

  1. 情報セキュリティ基本方針文書は、経営陣によって承認されなければならず、また、全従業員及び関連する外部関係者に公表し、通知しなければならない。(
  2. すべての資産は、明確に識別しなければならない。また、重要な資産すべての目録を、作成し、維持しなければならない。(
  3. 経営陣は、組織の確立された方針及び手順に従ったセキュリティの適用を従業員、契約相手及び第三者の利用者に要求しなければならない。(
  4. 装置は、機密性及び安全性を継続的に維持することを確実とするために、正しく保守しなければならない。(
  5. 重要な記録は、法令、規制、契約及び事業上の要求事項に従って、消失、破壊及び改ざんから保護しなければならない。(

正しくは「可用性及び完全性」である。

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