平成23年度 第1回 線路及び設備管理

2020年6月26日作成,2021年1月4日更新

問1

(1) 光ファイバの接続方法

光ファイバの接続方法は、利用形態や環境に応じて多様な方法が実用化されており、一般に、融着接続、メカニカルスプライス及びコネクタ接続の 3 種類に分類される。

融着接続は、光ファイバ端面を溶融して接続する方法で溶融には幾つかの手段があり、一般に、接続の容易さ、信頼性、経済性などの面からアーク放電による溶融が用いられている。また、光ファイバの融着接続部において、光ファイバ心線の被覆は完全に除去されており、機械的強度が低下しているため、一般に、熱収縮チューブにより被覆除去部を覆う補強方法が用いられている。

メカニカルスプライスは、V 溝などを形成した接続部品を用いて機械的に光ファイバを把持する接続方法である。メカニカルスプライスは、一般に、屈折率が石英系ガラスとほぼ同じ液体又はジェル状の屈折率整合材を接続部品の中に入れ、端面間の空気層を除去する方法が用いられている。

コネクタ接続は、着脱が容易なコネクタを用いる方法で、一般に、フェルール型光コネクタが用いられている。単心光ファイバ用の光コネクタの場合、フェルールは、光ファイバのコアの中心を光コネクタの中心に設定するための部品であり、このフェルールどうしを、割りスリーブをガイドにして精度良く突合せ接続することができる。一方、多心光ファイバ用の MT 光コネクタの場合、フェルールの突合せは、ガイドピンをガイドとしている。

通信ケーブルの敷設・接続方法」参照

(2) 光ファイバの伝送特性、光ファイバケーブルの構造など

(ⅰ) 光ファイバの伝送特性、損失要因など

  1. 光ファイバ伝送においては、光ファイバそのものの伝送損失、光ファイバ間の接続損失、分岐素子などのデバイスの挿入損失などが伝送距離を制限する要因となる。(
  2. 石英系光ファイバには、主成分である純粋な石英のほかに、屈折率を変化させるためのドーパントとしてゲルマニウム、ホウ素、フッ素などが添加されたものがある。(
  3. 光ファイバの伝搬モードがシングルモードになる最長の波長は、カットオフ波長といわれ、カットオフ波長より長い波長に対しては伝搬モードがマルチモードになる。(
  4. 吸収損失は、伝搬光が光ファイバ材料そのものにより吸収されて熱に変換される損失であり、石英系光ファイバでは、一般に、ガラスが本来持っている紫外吸収や赤外吸収に起因する固有の吸収によるものと、ガラス内に含まれる不純物に起因する吸収によるものとがある。(

正しくは「最短」「短い」である。

(ⅱ) 光ファイバケーブルの構造など

  1. 光ファイバは、光が伝搬するコアの屈折率をクラッドの屈折率より少し小さくし、コアとクラッドの境界で光を全反射させてコア内に閉じ込める構造を有している。(
  2. 光ファイバテープ心線は、ポリエチレンの被覆で保護した光ファイバ素線を 4 本、8 本などに束ねたもので、光ファイバ素線を平行に配列した形状や交差して配列した形状を有している。(
  3. 地下用多心光ファイバケーブルは、一般に、テンションメンバを中心に光ファイバテープ心線を収納したスロットロッドと外被などによって構成され、スロットロッドと外被の間に吸水テープを巻いた FR ケーブルや、難燃性外被を施した WB ケーブルなどがある。(
  4. FTTH サービスにおいて、ユーザ宅への引込みに用いられるドロップ光ファイバケーブルの心線構造としては、単心線型及びテープ心線型がある。また、クマゼミの産卵管による被害対策用として、外被を高強度化したドロップ光ファイバケーブルがある。(

正しくは,1.「下線部が逆」,2.「下線部は不要」,3.「下線部が逆」である。

(3) メタリック加入者線(ISDN 回線)、ADSL 回線の伝送方式など

ISDN 基本インタフェース用メタリック加入者線(ISDN 回線)、ADSL 回線の伝送方式など

(ⅰ) ISDN 回線に用いられる TCM 伝送方式など

  1. TCM 伝送方式は、ピンポン伝送方式ともいわれ、送信パルス列を時間圧縮し、2 倍以上の速度のバースト状のパルス列に変換し送出するとともに、この時間圧縮により生ずる空き時間に反対方向からのバースト状のパルス列を受信する方式である。(
  2. TCM 伝送方式を用いた ISDN 回線による ADSL 回線への漏話には、ユーザ宅への ISDN 回線の下り信号により生ずる遠端漏話と、ユーザ宅からの ISDN 回線の上り信号により生ずる近端漏話があり、遠端漏話は、一般に、近端漏話と比較して ADSL 回線に及ぼす影響が大きい。(
  3. TCM 伝送方式を用いた ISDN 回線において、線路損失は所定の規格値を満たす必要があるが、当該線路の直流ループ抵抗値による制限はない。(

正しくは,B.「下線部が逆」,C.「直流ループ抵抗値による制限はある」である。

近端漏話と遠端漏話
図 近端漏話(Near end crosstalk)と遠端漏話(Far end crosstalk)

(ⅱ) ADSL 回線の伝送特性など

  1. ADSL の規格である Annex C 方式は、ISDN の TCM 伝送方式に対応しており、送信データ量を TCM 伝送方式の伝送周期に同期して切り替えることにより、ADSL 回線における ISDN 回線からの影響を緩和することが可能である。(
  2. ADSL 回線の配線ルートである設備センタとユーザ間のメタリックケーブル区間にブリッジタップが存在すると、一般に、ブリッジタップの先端部分は短絡されているため、ループ抵抗が生じ、ADSL 回線の伝送損失が増加するおそれがある。(
  3. ADSL 回線において、プラスチック絶縁ケーブルは、紙絶縁ケーブルと比較して漏話雑音の影響を小さくできる。また、プラスチック絶縁ケーブルの半田づけ接続は、紙絶縁ケーブルの手ひねり接続と比較して接続部分の接触抵抗が大きくなり、伝送損失は劣化するが時々断を抑えることができる。(
  4. ADSL 回線と ISDN 回線の周波数帯が重なっているとき、ADSL 回線と ISDN 回線が同一カッド内で混在している場合、ADSL 回線の伝送特性が劣化するおそれがあるが、隣接カッドや一つ飛びカッドの場合は、伝送特性への影響はない。(

正しくは,2.「開放」「反射」,3.「小さくなり」,4.「」である。

問2

(1) 鉄 3 分割パイプ形光海底ケーブルの構造と特徴

鉄 3 分割パイプ形光海底ケーブルは、断面が扇形の 3 個の鉄個片を集合した耐水圧構造の鉄 3 分割パイプ、抗張力鋼線及び銅チューブで構成される複合金属体に光ファイバユニットを収容する構造であるため、光ファイバユニットに熱応力などがかからず、品質の安定した製造が可能で、 長尺ケーブルを製造する場合に適している。

また、鉄 3 分割パイプ形光海底ケーブルは、複合金属体内部の空隙に防水樹脂を充塡することにより、ケーブル切断時の海水の浸入を防止している。この複合金属体は、光海底中継器などへの給電線としても機能するため、ポリエチレンを用いた絶縁層により電気的に保護されている。

さらに、光ファイバの光損失が増加する要因の一つである水素ガスについては、製造工程において電気化学反応により 水素ガスの発生要因となりうる水分がケーブル内に浸入しないようにすることなどの対策が講じられている。

水底線路の概要」参照

(2) 通信土木設備の劣化など

(ⅰ) マンホール鉄蓋の蓋鳴りなど

  1. マンホール鉄蓋の蓋鳴りの原因は、防振用パッキングの摩耗又は外れ、鉄蓋と受枠の間への砂利などの浸入、受枠の摩耗などがある。(
  2. マンホール鉄蓋の蓋鳴りの防止には、一般に、鉄蓋と受枠の隙間などにエポキシ系樹脂を充塡する方法が用いられている。(
  3. 亀裂による鉄蓋の劣化の診断には、鉄蓋をハンマなどで打撃したときの振動特性から劣化度を求め、残存寿命の推定を行う方法がある。(

正しくは「発泡した軟質ウレタン」である。

(ⅱ) マンホールの劣化など

  1. マンホールの壁が黒色に変色する原因としては、地下水に含まれている鉄やマンガンの酸化物、水酸化物などが挙げられる。(
  2. 硫化水素でコンクリートが浸食されるおそれがあるマンホールは、定期的にコンクリート壁の劣化、中性化などを調査する必要がある。(
  3. マンホール内の金物の腐食には、異なる種類の金属材料が電気的に接触して生ずる異種金属接触腐食、狭い隙間の内部に生ずる隙間腐食などがある。(
  4. マンホール内の金物のバクテリア腐食は、微生物の作用によるものであり、有機被覆による犠牲防食、又は流電陽極による絶縁防食、あるいはそれらを併用することにより金物の長寿命化・延命が可能である。(

下線部が逆である。

(ⅲ) 橋梁添架設備の腐食など

  1. 海岸地域では、橋梁添架設備の腐食が多く発生しやすく、その補修には塗装による方法が採られている。橋梁添架設備の塗装替えには、一般に、細部まで十分に塗装ができないといった問題がある。(
  2. 塗装替えに伴う塗装の耐久性については、素地調整(ケレン)の程度、塗り重ね回数、塗料の種類などが直接影響を及ぼすが、施工時の品質管理の良し悪しにより左右される度合が大きいといわれている。(
  3. 半割管を用いた橋梁添架管路の腐食補修は、腐食管の上から半割管を装着する工法であるため、ケーブルを布設替えすることがなく、簡易に補修できる方法である。(
  4. 半割管を用いたケーブル引上げ管の腐食補修は、腐食した引上げ管路を撤去した後に半割管を装着する工法であるため、ケーブルを布設替えすることがなく、簡易に補修できる方法である。(

半割管を用いたケーブル引上げ管の腐食補修は、腐食した引上げ管路を撤去した後に半割管を装着する工法であるため、ケーブルを布設替えすることがなく、簡易に補修できる方法である。

(ⅳ) とう道の劣化

  1. とう道の壁に生成される白色物質は、コンクリートの中の消石灰がコンクリートの亀裂から流出し、空気中の酸素と反応して生成される炭酸カルシウムである。(
  2. コンクリートの中の消石灰がコンクリートの亀裂から流出し、地中水に置き換わると、コンクリートの中は次第にアルカリ化し、鉄筋は腐食しやすくなる。(
  3. とう道の鉄筋の腐食は、鉄筋かぶりが極端に深い場合に発生しやすい。(
  4. とう道の鉄筋を腐食しにくくするには、浸透性防錆材をコンクリート表面に塗布し、鉄筋まで浸透させ、防錆被膜を形成することにより、錆の発生を抑制する方法がある。(

正しくは,1.「二酸化炭素」,2.「炭酸カルシウム」「中性化」,3.「浅い」である。

問3

(1) 光ファイバケーブルの保守

光ファイバケーブルの保守には、大別して、故障前の保守と故障後の保守とがあり、故障前の保守は、一般に、予防保全といわれ、故障が起きる前に事前に必要な対策を講ずることにより、運用中での故障が起きないようにすることである。

予防保全として、光ファイバケーブルの外被の劣化箇所を事前に補修する場合、メタリックケーブルの外被補修技術であるテーピングによる方法を適用している。ただし、メタリックケーブルの外被補修には、PE テープを融着した後にテーピングする方法もあるが、この方法による光ファイバケーブルの外被補修では、熱により光ファイバ心線が劣化することから、適用できない。

故障後の保守として、光ファイバケーブルの故障位置を探索する場合は、光パルス試験器の測定データにより光配線盤から故障位置までの距離を算出し、故障位置が端末設備側かケーブル側かの判断をする。ケーブル側の接続用クロージャ内で心線が断線している場合は、可視光源を用いて漏れ光を目視することにより故障位置を確認することができる。

予防保全」参照

(2) 線路及び土木設備の工事並びに保守作業において遵守すべき事項などの概要

(ⅰ) 高所作業を行う場合の安全を確保するために、労働安全衛生法に定める内容など

  1. 高所作業車を使用して行う作業は、作業床の高さが 2 [m] 以上 10 [m] 未満の場合には高所作業車運転特別教育を受けた者、10 [m] 以上の場合には高所作業車運転技能講習を修了した者により実施されなければならない。(
  2. 電柱における登り幅とは、架設物を取り付けない空間であり、安全に電柱昇降したり、作業するために設けられた空間である。(
  3. つり足場などの足場の組立て等作業主任者は、足場の組立て等の特別教育を受けた者のうちから、選任されなければならない。(
  4. 高さ 2 [m] 以上で保守作業を行う場合、墜落により危険を及ぼすおそれがあるときは、作業床を設けなければならない。作業床を設けることができないときは安全帯を使用するなど、作業者の安全を確保しなければならない。(

正しくは「技能講習」 である。

(ⅱ) 「建設工事公衆災害防止対策要綱」の規定に基づいて道路の通行を制限する場合

  1. 土木工事などで車道幅員を制限する場合は、道路管理者及び所轄警察署長の指示に従わなければならない。(
  2. 道路管理者及び所轄警察署長から特別に指示がない場合で、制限した後の道路の車線が 1 車線となる場合は、その車道幅員は 2.5 [m] 以上とし、2 車線となる場合は、その車道幅員は 5.0 [m] 以上とする。(
  3. 道路管理者及び所轄警察署長から特別に指示がない場合で、制限した後の道路の車線が 1 車線で往復の交互交通にする場合は、その制限区間はできるだけ短くし、交通が渋滞しないよう措置を講ずる。(

正しくは「3 [m] 以上」「5.5 [m] 以上」である。

(3) 架空線路設備の劣化など

(ⅰ) コンクリート柱の劣化など

  1. コンクリート柱ののひび割れは、コンクリート柱がねじれによるせん断力を受けたときに生ずることが多く、斜めのひび割れと比較して、強度低下のおそれが高く、コンクリート柱の早急な取替えが必要である。(
  2. コンクリート柱ののひび割れは、支線の設計強度不足などでコンクリート柱に不平衡の過大な荷重を与えた場合に生ずることが多い。(
  3. コンクリート柱の製造は、通しの鉄筋に圧縮力を与え、生コンクリートを注入して高速回転による遠心力でコンクリートを締め固める。これにより、ひびが入りにくく耐久性の高いコンクリート柱になる。(

正しくは,A.「縦」,B.「横」である。

プレストレスコンクリートは,荷重を加えられると変形を起こし,ひび割れが発生するが,荷重を抜くとひび割れは塞がり,元の形状に戻る性質を有している。これはコンクリートにあらかじめ(プレ)圧縮応力(ストレス)を与えておき,外力による引張応力を打ち消すことによって,ひび割れの発生を防いでいる。

(ⅱ) 線路設備の腐食対策など

  1. 腐食対策には、腐食が著しい環境で使用している鋼管柱を腐食地用鋼管柱である AE 柱又は UC 柱へ更改する方法がある。(
  2. 張り紙防止シートや番号札の裏側の腐食に対しては、ニトリルゴム系接着剤と比較して腐食しにくい酢酸ビニル系接着剤を使用し、腐食対策を行う。(
  3. 架空ケーブルの外被損傷には、強風地域のケーブルダンシングによる外被亀裂(リングカット)や、高温環境下での張線器使用による外被破断などがある。(
  4. 高耐食鋼撚り線は、亜鉛-アルミニウム合金をめっきした鋼線を撚り合わせたものであるが、塩害環境の厳しいところでは赤錆などが発生して腐食するおそれがあるため、劣化限度見本などによる不良判定指標を用いた管理が有効である。(

下線部が逆である。

問4

(1) 通信土木設備の事故防止

通信土木設備の多くは、他のライフライン設備と同様に道路などを占用して構築されている。そのため、通信土木設備の近くで工事が実施される場合には、工事を実施する事業者からの工事通報で、道路管理者、警察などと協議を行い、設備状況、工事規模などに応じた立会・防護の実施により、設備事故を未然に防止し、通信サービスへの影響を回避している。

近接工事による設備事故の防止には、工事を実施する事業者の工事情報を把握することが重要である。工事を実施する事業者からの工事通報がない場合に工事情報を収集する方法としては、道路占用許可書又は道路使用許可書の閲覧、工事を実施する事業者との間で工事情報を記載した施工通知のルール化、パトロールなどがある。また、起業者が地下埋設物に近接して工事を実施する場合は、道路法、建設工事公衆災害防止対策要綱などで、起業者及び埋設物管理者による現場立会が義務付けられている。

近接工事による地下埋設物への影響の有無、立会・防護の必要性などについては、設計時の事前協議で、起業者、施工者、埋設物管理者などで確認するとともに、立会計画を作成することが大切である。

地下埋設物に近接して掘削が行われる場合の影響範囲は、掘削規模、土質、埋め戻し方法、土留材の撤去の有無などの条件により異なる。近接工事による管路設備への影響範囲は、一般に、掘削深さ、土の内部摩擦角、離隔距離などにより決まり、特に、開削工事の場合には、管路設備からの離隔距離により防護対策を変えるなどの検討が必要である。

工事計画」参照

(2) システムの信頼性

(ⅰ) 信頼度と MTBF との関係

システムの信頼度を $R$ とすると,$R$ と MTBF との関係は,$R=$$\displaystyle \exp(-\frac{t}{\text{MTBF}})$ である。

故障率を $\lambda$ とすると,信頼度 $R$ は次式で表される。

\[ R = \exp(-\lambda t) \]

MTBF と故障率の関係は次式で表される。

\[ \text{MTBF}=\frac{1}{\lambda} \]

(ⅱ) 1/2 冗長システムが 2 段直列に接続されたシステム

図 1 に示すシステム(1/2 冗長システムが 2 段直列に接続されたシステム)の 100 [時間] 後におけるシステム全体の信頼度は、0.994 となる。ただし、装置 A ~装置 D の MTBF は、下記の条件とする。

(条件)
  • 装置 A の MTBF = 1,000 [時間]
  • 装置 B の MTBF = 2,500 [時間]
  • 装置 C の MTBF = 1,000 [時間]
  • 装置 D の MTBF = 4,000 [時間]
図 1

100 [時間] 後における装置 A 〜 D の信頼度は,次式で求められる。

\[ R_\text{A}=\exp(-\frac{1}{1000}\times100)=\exp(-0.1)=0.905 \] \[ R_\text{B}=\exp(-\frac{1}{2500}\times100)=\exp(-0.04)=0.961 \] \[ R_\text{C}=\exp(-\frac{1}{1000}\times100)=\exp(-0.1)=0.905 \] \[ R_\text{D}=\exp(-\frac{1}{4000}\times100)=\exp(-0.025)=0.975 \]

1 段目(装置 A と装置 B が並列に接続)の信頼度は次式で求められる。

\[ R_1=1-(1-R_\text{A})(1-R_\text{B})=1-(1-0.905)(1-0.961)=0.996295 \]

2 段目(装置 C と装置 D が並列に接続)の信頼度は次式で求められる。

\[ R_2=1-(1-R_\text{C})(1-R_\text{C})=1-(1-0.905)(1-0.975)=0.997625 \]

システム全体の信頼度 $R$ は次式で求められる。

\[ R=R_1 \times R_2 = 0.996295 \times 0.997625 = 0.993928 \approx 0.994 \]

(ⅲ) 並列に接続されている $1/n$ 冗長システム

図 2 に示すように、信頼度 0.7 である装置 E が、E1 から En まで並列に接続されている $1/n$ 冗長システムにおいて、システム全体の信頼度を 0.999 以上にするためには、装置 E の台数である $n$ を少なくとも 6 以上とする必要がある。

図 2

必要な台数 $n$ は次式で求められる。

\[ 1-(1-0.7)^n \ge 0.999 \] \[ 5.736 \le n \]

よって,少なくとも 6 台以上とする必要がある。

(ⅳ) 故障率

あるシステムのアベイラビリティ及び MTTR について、ある運用期間内において調査したところ、アベイラビリティが 99.6 [%]、MTTR が 2 [時間] であった。このシステムの調査期間内の故障率は、2.01 × 10-3 [件/時間] である。

アベイラビリティ $A$ と MTTR および MTBF の関係は次式であり,与えられた数値を代入する。

\[ A=0.996=\frac{\text{MTBF}}{\text{MTBF}+\text{MTTR}}=\frac{\text{MTBF}}{\text{MTBF}+2} \] \[ \text{MTBF}=498 \]

システムの調査期間内の故障率 $\lambda$ は,次式で求められる。

\[ \lambda = \frac{1}{\text{MTBF}}=\frac{1}{498}=0.0020080 \approx 2.01 \times 10^{-3} \]

問5

(1) 不正行為に対するセキュリティ対策など

JIS Q 27001 : 2006 に規定されている、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の要求事項において、情報セキュリティは、

  1. 権限のある者のみが情報システムにアクセスでき、盗聴、不正アクセスなどにより情報が漏えいしない機密性を保持すること
  2. 情報システムが正確かつ、完全であり、それらが適正に維持されている完全性を保証すること
  3. 権限のあるものが情報システムに適時アクセスできる可用性を維持すること

の三つの要素を維持することと定義されている。

インターネットにおいて、機密性、完全性及び可用性を妨げる主な行為としては、盗聴、改ざん、なりすまし、システムやデータの破壊などがある。これらの不正行為への代表的な対策技術には、暗号、認証、ファイアウォールなどがある。

ファイアウォールは、組織の内部ネットワークとインターネットの間で許可する通信と禁止する通信を管理するものであり、一般に、パケットフィルタリング型とアプリケーションゲートウェイ型に大別される。このうち、アプリケーションゲートウェイ型は、パケットのペイロード部分をチェックし、アクセスの許可又は不許可を判別することが可能である。

ファイアウォールで実現可能な機能としては、一般に、アクセス制御、通信にかかわるログの取得などがある。また、ファイアウォールの付加機能として、コンテンツフィルタリング機能、NAT 機能、VPN 機能などがある。コンテンツフィルタリング機能は、不適切な Web サイトの閲覧を制限する手法として用いられることが多い。

セキュリティ管理手法」参照

(2) ISMS の要求事項を満たすための管理策

JIS Q 27001 : 2006 に規定されている、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の要求事項を満たすための管理策

  1. 情報セキュリティ基本方針文書は、監督官庁に届出を行った後、全従業員に公表し、通知しなければならない。(
  2. 情報及び情報処理施設と関連する資産のすべてについて、組織の中に、その管理責任者を指定しなければならない。(
  3. 経営陣は、組織の確立された方針及び手順に従ったセキュリティの適用を従業員、契約相手及び第三者の利用者に要求しなければならない。(
  4. 装置は、環境上の脅威及び災害からのリスク並びに認可されていないアクセスの機会を低減するように設置し、又は保護しなければならない。(

監督官庁への届け出は不要。情報セキュリティのための方針群は、これを定義し、管理層が承認し、発行し、従業員及び関連する外部関係者に通知しなければならない。

(3) ID やパスワードの運用方法

サーバを共同利用する際において、セキュリティ強化のために行うべき ID やパスワードの運用方法

  1. 特定グループで同じ権限を持たせるときは、そのグループで共通の ID を作り、できる限り発行する ID の数を少なくすることが望ましい。(
  2. 使用していない ID などの存在を避けるために、ID の管理を一元化し、定期的にこのような ID が存在していないかどうかをチェックすることが望ましい。(
  3. パスワードは利用者各自が秘密に保持する必要があり、秘密性を保持するためには定期的又は利用回数に基づいてパスワードを変更することは避けることが望ましい。(

A. は,1 人 1 アカウントの原則。C. は下線部が不要である。

(4) 建設業法及び労働安全衛生法に定める内容

線路設備工事の施工管理などにおいて必要となる、建設業法及び労働安全衛生法に定める内容

(ⅰ) 建設業法に定める建設業の許可など

  1. 建設業法において「建設工事」とは、土木建築に関する工事で、電気通信工事が含まれる。(
  2. 建設業を営もうとする者は、2 以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業をしようとする場合にあっては、関係する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業するものを除く。(
  3. 建設業の許可は、5 年ごとにその更新を受けなければ、その効力を失う。(

正しくは「国土交通大臣」である。

(ⅱ) 労働安全衛生法に定める安全衛生管理体制

  1. 統括安全衛生責任者は、「当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者」とされており、一般に、工事事務所の所長がその任に当たることが多い。(
  2. 工事事務所の所長は、工事事務所の最高責任者として安全衛生管理において、一般に、安全衛生委員会の設置と運営、安全衛生管理計画の作成と届出などの責任と権限を持っている。(
  3. 通信業で常時 300 人以上の労働者を使用する事業場における安全衛生管理体制は、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医などにより構成しなければならない。(
  4. 通信業で常時 30 人以上の労働者を使用する事業場では、事業場ごとに安全管理者を選任し、安全に係る技術的事項を管理させなければならない。(

正しくは「常時 50 人以上」である。

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