平成24年度 第1回 線路及び設備管理

2020年6月20日作成,2021年1月4日更新

問1

(1) PON

1 心の光ファイバを光スプリッタなどの受動素子を用いて分岐し、複数のユーザを収容する構成である光アクセスネットワークは、PON といわれる。

PON は、ユーザから設備センタへ送信する上り光信号の帯域を複数のユーザで共有するので、複数の光信号を同時に光スプリッタで合波すると、光信号の衝突が生じて設備センタで正しく受信できなくなるため、設備センタに設置された OLT では、あらかじめ設備センタと各ユーザの ONU との間における光信号の伝送時間を測定するレンジングといわれる機能により各 ONU の信号送出タイミングを算出し、各 ONU へ信号送出許可を通知することで衝突を回避している。

また、PON では、伝送帯域を有効活用しており、一般に、上り光信号の帯域を動的に制御するため各 ONU が要求する帯域を OLT へ通知し、OLT が各 ONU に帯域を割り当てる DBA といわれる機能が用いられている。

PON では、設備センタから各ユーザまでの下り光信号は、同一光ファイバを使用しているすべてのユーザで受信可能な同報性を有するため、ONU では、信号のヘッダに書き込まれた宛先を読み取り、他ユーザ宛の信号を廃棄している。

アクセス系線路の光ファイバケーブル設計」参照

(2) 光通信システムに用いられる変調方式、光ファイバ心線など

(ⅰ) 変調方式の種類、光デバイスの特性など

  1. LD の出力光パワーの変化量が注入電流の変化量にほぼ比例する領域において、LD への入力信号に比例して注入電流量を変化させることで、入力信号にほぼ比例した光パワーを持つ変調光を得る方式は、直接変調方式といわれる。(
  2. 光通信システムに用いられている変調/復調方式には、送信側で光信号の強度を変化させ、受信側で PIN-PD、APD などの受光デバイスにて光信号を電気信号に変換する強度変調-直接検波(IM-DD)方式がある。(
  3. LD は誘導放出といわれる現象を利用しており、一般に、LED と比較して、出力光のスペクトル幅が狭く放射角も小さいため、群速度の波長特性の影響をほとんど受けないことから、変調周波数を上げることが可能である。(
  4. なだれ増倍作用を持つ受光デバイスは、なだれ増倍作用を持たない受光デバイスと比較して、高いバイアス電圧を必要とせず、応答速度が速く、受光感度が高いという特徴を有している。(

正しくは「数十 [V] 以上の高い逆バイアス電圧が必要となり」である。

(ⅱ) 光ファイバ心線などの構造及び特性

  1. 光ファイバ心線は、一般に、1 次被覆された光ファイバ素線を UV 硬化型樹脂、ポリアミド樹脂などにより 2 次被覆した構造を有している。(
  2. テープ形光ファイバ心線は、複数本の光ファイバ心線を整列し、UV 硬化型樹脂でテープ状に一括被覆したもので、2 心、4 心、8 心テープなどがあるが、融着接続により一括接続できる心線数は、最大 4 心である。(
  3. 光ファイバ素線の 1 次被覆の主な役割は、光ファイバの表面の保護であるが、側圧が加わった際に発生するひずみが光ファイバに及ぼす影響を軽減させる緩衝効果もある。(

正しくは「最大 12 心」である。

(3) 光中継伝送システムの構成、機能など

(ⅰ) 線形中継器を用いた光中継伝送システム(線形中継システム)の構成と機能

  1. 線形中継システムでは、一般に、線形中継器数の増加に伴って累積する光雑音と光ファイバの分散による波形劣化が、SN 比を低下させ、符号誤り率特性に影響を及ぼす支配的要因となる。(
  2. 線形中継システムに用いられる線形中継器は、一般に、再生中継器と異なり、タイミング抽出機能はなく、等化増幅機能及び識別再生機能を有する。(
  3. 線形中継器に用いられる光ファイバ増幅器において反転分布が完全に実現された理想的な場合、入力の SN 比を出力の SN 比で除した雑音指数は 3 [dB] である。(
  4. 線形中継システムでは、一般に、線形中継器の入出力光を監視することにより、励起用 LD を制御している。さらに、各線形中継器の状態に関する情報を主信号とは異なる波長を用いて転送することにより、線形中継システム全体の状態を監視している場合がある。(

正しくは「タイミング抽出機能及び識別再生機能はなく,等価増幅機能を有する」である。

(ⅱ) 光増幅器

  1. 光増幅器は、光ファイバ増幅器と半導体光増幅器に大別される。光ファイバ増幅器は半導体光増幅器と比較して、利得の偏波依存性があるが、高利得及び高出力で幅広い増幅波長域を持つ特徴を有している。(
  2. 光ファイバ増幅器には、クラッド部分に希土類イオンを添加したシングルモード光ファイバを用いた希土類添加光ファイバ増幅器と、光ファイバの非線形光学効果の一つである誘導ラマン散乱を利用した光ファイバラマン増幅器がある。(
  3. エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)は、誘導放出を利用した光ファイバ増幅器で、励起波長として 1.31 [μm] 及び 1.55 [μm] が用いられる。(
  4. EDFA は、一般に、エルビウム添加光ファイバ、励起光源、信号光と励起光を合分波する光合分波器、反射光を抑制する光アイソレータなどから構成される。(

正しくは,1.「利得の偏波依存性がない」,2.「コア部分」,3.「0.98 [μm] 及び 1.48 [μm]」である。

問2

(1) 通信土木設備の地中化方式の概要

通信土木設備の地中化方式の一つとして用いられる電線共同溝とは、道路の地下空間を活用して、電力線、通信線などをまとめて収容する施設であり、その整備の目的は、電線共同溝の整備等に関する特別措置法において、特定の道路について、電線共同溝の整備等を行うことにより、当該道路の構造の保全を図りつつ、安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備を図ることとされている。

電線共同溝以外の電線類地中化整備方式としては、自治体管路方式、単独地中化方式、要請者負担方式がある。

自治体管路方式は、地方自治体が管路設備を敷設する方式であり、敷設された管路などの施設は道路占用物件として地方自治体が管理する。

単独地中化方式は、電線管理者が自らの費用で、単独で地中化を行う方式であり、敷設された管路などの施設は道路占用物件として電線管理者が管理する。

要請者負担方式は、各地方での無電柱化協議会で優先度が低いとされた箇所において無電柱化の要請に基づいて実施する場合に採用される方式であり、原則として費用は、全額が要請者負担となる。この場合の敷設された管路などの施設の管理方法は多様である。

また、情報 BOX は、国土交通省又は地方自治体の道路管理者が道路高度情報サービスの基盤設備として道路管理用光ファイバケーブルを収容するもので、道路管理の高度化を図るとともに設備の余裕空間を民間事業者に開放している。

通信土木の概要」参照

(2) 通信土木設備の点検、補修など

(ⅰ) 管路の清掃、点検など

  1. 管路内に土砂などによる詰まりがある場合、高水圧ホース先端にノズルを取り付け、高圧のジェット水流で管路内の土砂などを除去し、管路内を洗浄する方法がある。(
  2. 管路への通線が何らかの理由で困難な場合、パイプカメラを管路内に挿入してモニタすることにより、不良箇所を調査・点検する方法がある。(
  3. 管路がケーブル布設に支障とならない曲率半径を維持しているか、また、所要の直径を有しているかを確認する場合、通線ひもを管路内に通して点検する方法がある。(

正しくは「マンドレル(通信管路通過試験用)」である。通線ひもは,埋設管設置後,ケーブル通線時に使用する。

電線共同溝のはなし|株式会社カナエ」参照

(ⅱ) マンホール鉄蓋の劣化診断、管路の補修など

  1. マンホール鉄蓋の劣化診断には、マンホール鉄蓋劣化診断器を用いて鉄蓋をハンマーで打撃したときの振動特性から鉄蓋の亀裂状況を検知し、鉄蓋の残存寿命を推定する方法がある。(
  2. マンホールの蓋鳴り防止には、マンホールの鉄蓋と受枠の隙間部に発泡した軟質ウレタンを充塡し、鉄蓋の移動や回転を抑制して蓋鳴りを防止する方法がある。(
  3. 硬質ビニル管の扁平を矯正する技術として、硬質ビニル管の扁平部を管路内から加熱軟化させた後、マンドレルを管路内にけん引して通過させることにより機械的に矯正する方法がある。(
  4. 負圧回転式ライニングは、管路内の空気を吸引・減圧することで空気の流れをつくり、これを利用して管路の内面に、樹脂を薄膜でライニングする技術である。(

硬質ビニル管の偏平部を管路内から加熱軟化させるとともに,油圧を利用して機械的に矯正・強化する。

(3) 光海底ケーブルシステムの陸揚局で用いられる給電装置など

(ⅰ) 給電装置の機能と特徴

  1. 光海底ケーブルシステムでは、光海底中継器に必要な電力は、陸揚局に設置された給電装置から交流電流により供給される。(
  2. 給電装置に用いられるコンバータの出力制御は、一般に、スイッチング周波数を変化させることにより行われるが、海中分岐装置の給電切替回路の駆動時など、給電電流値が低い場合は、周波数制御とパルス幅制御を併用して行われる。(
  3. 給電装置は、給電前に光海底ケーブルが正常か否かを調べるため、一般に、微小電流を光海底ケーブルに供給する微小電流供給機能を有している。(
  4. 給電装置は、光海底中継器を保護するため、過電流又は過電圧を検出する機能を有しており、検出器の誤動作による給電停止を避けるため、一般に、検出は複数系統の回路で行われている。(

正しくは「直流電流」である。

(ⅱ) 光海底中継器への給電方法など

  1. 線形中継方式の光海底ケーブルシステムに用いられる光海底中継器は、光信号を電気信号に変換することなく直接増幅するため高圧給電の必要はなく、中継間隔が同じ場合、再生中継方式の光海底ケーブルシステムに用いられる光海底中継器の給電電圧の約 10 分の 1 の給電電圧で動作する。(
  2. 線形中継方式の光海底ケーブルシステムに用いられる光海底中継器は、再生中継方式の光海底ケーブルシステムに用いられる光海底中継器と同様に、過電流に対する保護回路を有している。(
  3. 光海底ケーブルシステムの給電線は、フィードスルーを介して光海底中継器の耐圧筐体に接続されるが、一般に、すべての光海底中継器が同じ電圧で動作するようにフィードスルー内にはコンデンサが内蔵されている。(
  4. 給電装置からの給電を開始する際、光海底中継器を安定動作させるため、瞬時に、給電電流が規定値に達するように設計されている。(

正しくは,1.「」,3.「陸揚局からの距離によって異なる電圧で動作する」,4.「約 2 分間で徐々に規定値に達する」である。

問3

(1) 光ファイバ通信システムにおける伝送品質の低下要因

光ファイバ通信システムにおける伝送品質の低下要因の一つである雑音には、光源で生ずる雑音と受光デバイスで生ずる雑音がある。

受光デバイスで生ずる本質的な雑音であるショット雑音は、光を一定のパワーで受光していても、光子としてとらえた場合にはその到着時間間隔が一定ではないために生ずる雑音である。ショット雑音の影響を少なくするため、光増幅器をプリアンプとして使用した場合は、自然放出光と信号光とによって生ずるビート雑音が支配的な要因となる。

また、信号波形の劣化要因としては、シングルモード光ファイバ内を伝搬する光信号の波長によって光ファイバの屈折率が異なることに起因する分散と光ファイバの構造に起因する分散を合わせた波長分散による波形ひずみがある。

さらに、四光波混合や相互位相変調などの非線形現象は、信号光パワーが大きくなると現れる光カー効果といわれる光ファイバの屈折率の光強度依存性による現象に起因し、高密度波長分割多重(DWDM)信号の波形劣化の支配的な要因となる。

光通信用素子」「光ファイバケーブルの伝送理論」参照

(2) 通信線(メタリックケーブル)における誘導

(ⅰ) 通信線が受ける誘導

  1. 高圧送電線などから通信線が受ける誘導には、静電誘導と電磁誘導の 2 種類がある。静電誘導は、電圧成分を誘導源とする現象であり、電磁誘導は、電流成分を誘導源とする現象である。(
  2. 電磁誘導を軽減するための対策の一つとして、誘導源となる高圧送電線などと通信線との離隔距離を十分にとる方法がある。また、やむを得ずお互いに交差する場合は、交差部をできる限り直角にすることが有効である。(
  3. 電磁誘導を軽減するための対策の一つとして、架空線路区間を地下化し、ケーブルを金属管路に収容することにより、遮蔽係数を大きくする方法がある。(
  4. 電磁誘導を軽減するための対策の一つとして、通信線にアルミ被誘導遮蔽ケーブルを用いる方法があり、アルミ被に巻かれる磁性体テープには、遮蔽効果を上げるために透磁率の高い磁性材料を用いることが有効である。(

正しくは「小さくする」である。

遮蔽係数 = 遮蔽を施したときの誘導電圧 / 遮蔽していないときの誘導電圧

(ⅱ) 送電線からの静電誘導により通信線に発生する電圧

図に示すように、大地に対する電圧 $V_\text{E}$ の送電線の近くに通信線がある場合、送電線と大地間の静電容量を $C_1$、通信線と大地間の静電容量を $C_2$、送電線と通信線間の静電容量を $C_3$ とすると、送電線からの静電誘導により通信線に発生する電圧 $V_\text{C}$ の算出式について記した次の式のうち、正しいものは、$\displaystyle V_\text{C}=\frac{C_3 V_\text{E}}{C_2+C_3}$ である。

(3) 線路設備の損傷などとその対策

(ⅰ) 架空ケーブルの外被の損傷とその対策

  1. SS ケーブルのリングカットとは、クリーピングの発生によりひずみがケーブル支持線の切り裂き際に集中し、ケーブル長手方向への亀裂が成長する現象である。対策としては、リング掛けによるケーブル架渉などが有効である。(
  2. LAP シースのケーブルにおいて、ケーブル内部へ侵入した水の酸化反応により発生するケーブル長手方向への応力がアルミシースの合わせ目部分に集中し、ケーブル長手方向への亀裂が生ずる場合がある。(
  3. SS ケーブルの張線作業時において、一般に、外被温度が低温になるほど、かく線器の把持箇所においてケーブル外被部分にケーブル長手方向の力が働き、外被が損傷しやすい。対策としては、作業時に、ケーブルに捻回を挿入する方法などが有効である。(
  4. SS ケーブルのちょう架時において、支持線部とケーブル部の分離作業にナイフを用いると刃先がケーブル部に達して外被に損傷を与える場合がある。対策としては、作業時に、SS ケーブル切裂工具を用いることが有効である。(

正しくは,1.「ケーブルダンシング」,2.「凍結圧」,3.「外被温度が高温になるほど」である。

(ⅱ) 線路設備の腐食及び生物被害とその対策

  1. 亜鉛-アルミニウム合金をめっきした鋼線を撚りあわせた高耐食鋼より線は、塩害環境の厳しい場所では赤錆などが発生して腐食するおそれがあるため、劣化限度さび見本などによる不良判定指標を用いた管理が有効である。(
  2. マンホール内の金物腐食には、イオン化傾向が同じ金属材料の金物の接触による腐食、硫酸イオンを多く含む貯留水中でのバクテリアの作用による腐食などがあり、選択配流器を用いた防食、有機被覆による絶縁防食などの対策が有効である。(
  3. 昆虫類によるドロップ光ファイバケーブルの外被損傷としては、セミの幼虫によるかじり、ガの成虫の産卵管による損傷などがあり、ドロップ光ファイバケーブルと平行にピアノ線を張る対策が有効である。(
  4. キツツキ、リスなどの鳥虫獣類による外被損傷の防止対策に用いられる架空ケーブルとしては、アルミラミネートテープで外被を補強・保護した HS ケーブルがある。HS ケーブルは、強風地域での外被亀裂に対する対策としても有効である。(

正しくは,2.「イオン化傾向が異なる」,3.「にステンレス材を用いて保護する対策」,4.「ステンレステープ」である。

問4

(1) 電気通信設備工事における建設業法に定める内容に基づく施工管理など

電気通信を含めた建設工事は、一般に、各種専門工事の総合的組合せにより多様化し、かつ、重層下請構造で施工されている。このため、建設工事を適正に施工するためには、建設業法をはじめ関係法令を遵守して適正な施工体制を確保することが必要である。

建設業法は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的としており、電気通信を含む 28 業種において建設業を営もうとする者は、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者を除いて建設業の許可を受けなければならないとされている。

特定建設業の許可を受けた者は、建築一式工事を除いて、発注者から直接請け負った 1 件の建設工事につき 3,000 万円以上の下請契約を締結して、下請け建設業者に工事を施工させることができる。この場合、特定建設業の許可を受けた者は、当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理を行うため、監理技術者を配置しなければならない。

また、請負契約の適正化のため、発注者の承諾を得た場合を除き、建設業者が請け負った建設工事の全部又はその主たる部分を一括して他の業者に請け負わせるなどの一括下請負は、禁止されている

工程管理」参照

(2) 信頼性など

(ⅰ) バスタブ曲線など

  1. アイテムの使用期間中における故障率の時間的変化を示したものは、一般に、故障曲線又は障害曲線といわれ、アイテムの拡張性を評価するために有効である。(
  2. 故障曲線の代表的なものにバスタブ曲線がある。バスタブ曲線は、一般に、修理系アイテムの故障曲線として用いられる。(
  3. バスタブ曲線の初期故障期間における故障率低減のための方策の一つにエージングがある。これは、アイテムを使用開始前、又は使用開始後の初期に動作させて、欠点を検出・除去し、是正することである。(
  4. バスタブ曲線の偶発故障期間は、故障率がほぼ一定とみなせる期間であり、アイテムの通常の使用期間に相当する。この期間の長さは、一般に、故障寿命といわれる。(
  5. バスタブ曲線の摩耗故障期間は、アイテムの老朽化による故障が多く発生する期間である。そのため、この期間においては予防保全によるアイテムの取替えが効果的である。(

正しくは,1.「下線部が不適」,2.「非修理系アイテム」,3.「デバギング」,4.「耐用寿命」である。

(ⅱ) 信頼性指標など

  1. アイテムの信頼度 $R(t)$ は時間 $t$ の関数であり、$R(0)=0$、$R(\infty)=1$ となる性質を持っている。(
  2. 修理系のアイテムにおいて、最初の故障が発生するまでの動作時間の平均値は、MTTF(故障までの平均時間)といわれる。(
  3. 修理系のアイテムにおいて、修復時間の平均値は、MTBF(平均故障間動作時間)といわれる。(
  4. アイテムがダウン状態にある期間の期待値は、MDT(平均ダウン時間)といわれる。(

正しくは,1.「$R(0)=1$、$R(\infty)=0$ となる性質」,2.「MTBF (mean operating time between failures : 平均故障間動作時間)」,3.「MTTR (mean time to restoration : 平均修復時間)」である。

(3) あるシステムの信頼性

それぞれの装置は、偶発故障期間にあるものとする。

(ⅰ) MTTR

装置 A の故障率が 0.4 [%/時間] であるとき、固有アベイラビリティが 98.0 [%] であるためには MTTR は、5.10 [時間] でなければならない。ただし、答えは、四捨五入により小数第 2 位までとする。

故障率 $\lambda$ は,0.4 [%/時間] = 0.004 [件/時間] であり,MTBF は次式で求める。

\[ \text{MTBF}=\frac{1}{\lambda}=\frac{1}{0.004}=250 \]

固有アベイラビリティが 98.0 [%] であるので,MTTR は次式で求められる。

\[ A=0.98=\frac{\text{MTBF}}{\text{MTBF}+\text{MTTR}}=\frac{250}{250+\text{MTTR}} \] \[ \text{MTTR}=5.102 \]

(ⅱ) 並列接続台数

信頼度 70 [%] である装置 B を複数台並列に接続し、信頼度を 99.9 [%] 以上とするためには、装置 B を少なくとも 6 台構成とする必要がある。ただし、必要に応じ $\log0.3 = -0.523$、$\log0.7=-0.155$の値を用いること。

並列台数を $n$ として,次式で求める。

\[ 1-(1-0.7)^{n} \gt 0.999 \] \[ 5.736 \lt n \]

よって,装置 B を少なくとも 6 台構成とする必要がある。

問5

(1) ISMS 適合性評価制

ISMS 適合性評価制度は、ISMS が基準に則り、適切に組織内に構築運用されていることを、正式に認定された審査登録機関と審査員が所定の判断基準により評価し、要求される規格、基準に適合していると認めた場合、認証を付与するとともに登録する制度である。適合性を評価するための基準は、国際標準 ISO/IEC 27001 が国内標準として規格化された JIS Q 27001 である。

この制度は、国際的にも整合性のとれた情報セキュリティマネジメントシステムに対する適合性評価制度であり、国の情報セキュリティレベル全体の向上に貢献するとともに、諸外国からも信頼が得られる情報セキュリティレベルを達成することを目的としている。国内では、この制度は、現在、JIPDEC一般財団法人 日本情報経済社会推進協会)を中心に運用されている。認証の有効期間は、3 年間であり、認証登録後は通常1年ごとに維持審査が行われ、有効期限が切れる年には更新審査を受ける必要がある。

ISMS の一般要求事項は、ISMS の確立、ISMS の導入及び運用、ISMS の監視及びレビュー、ISMS の維持及び改善という PDCA サイクルに従いまとめられており、組織は、ISMS にかかわる方針や記録を文書として作成、保管することが求められる。

セキュリティ管理手法」参照

(2) コンピュータウイルス検出手法及びコンピュータウイルスに感染した場合の対処方法

  1. パターンマッチング方式では、既知のウイルスのパターンが登録されているウイルス定義ファイルと、検査の対象となるメモリやファイルなどを比較してウイルスを検出している。(
  2. チェックサム方式は、ハードディスク内にある実行可能ファイルが改変されていないかを検出し、ウイルス名を特定することが可能である。(
  3. コンピュータウイルスに感染したと思われる兆候がみられたら、コンピュータの異常な動作を止めるために再起動を行い、その後、コンピュータウイルスを駆除する。(

チェックサム法は,ハッシュ値やファイル容量などで簡便に変更をチェックするコンペア法である。

(3) パスワード解析手法など

  1. サーバにユーザ ID とパスワードを送信し、認証されるかどうかを確認することによりパスワードを解析する手法は、一般に、オフライン攻撃といわれる。また、パスワードファイルなどを入手してサーバとは別のコンピュータでパスワードを解析する手法は、一般に、オンライン攻撃といわれる。(
  2. あらゆる文字列の組合せを総当たりで試すことによりパスワードを解析する手法は、一般に、辞書攻撃といわれ、文字列が長い場合や文字の種類が多い場合には長時間を要するか又は高速処理が可能なコンピュータが必要となる。(
  3. パスワードによる認証には、固定パスワードやワンタイムパスワードなどを用いる方式がある。ワンタイムパスワードは、固定パスワードと比較して盗聴に対する耐性が低い。(
  4. ハッシュ化されたパスワード(ハッシュ値)からパスワードを求めることは、ハッシュ関数の一方向性から原理的に不可能であるため、適当なパスワード候補からハッシュ値を生成し、ハッシュ化されたパスワードと同一となるものを捜索することによりパスワードを解析する手法がある。(

正しくは,1.「下線部が逆」,2.「ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)」,3.「高い」である。

(4) 安全作業、有資格者配置など

線路設備工事などにおける労働安全衛生に関する法令に基づく安全作業、有資格者配置など

(ⅰ) 移動式クレーン作業において事業者に求められる事項

  1. つり上げ荷重が 5 トン以上の移動式クレーンの運転の業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、当該業務に関する安全のための移動式クレーンに関する知識、原動機及び電気に関する知識などの特別の教育を行わなければならない。(
  2. 移動式クレーンを用いて作業を行うときは、その作業を行う月の初めに、巻過防止装置、ブレーキ、クラッチ、コントローラの機能などについて点検を行わなければならない。(
  3. 移動式クレーンにより労働者を運搬し、又は労働者をつり上げて作業させてはならないが、作業の性質上やむを得ない場合又は安全な作業の遂行上必要な場合は、移動式クレーンのつり具に専用のとう乗設備を設けて、当該とう乗設備に労働者を乗せることができる。(
  4. 移動式クレーンの運転者を、荷をつり上げたままの状態で運転位置から離れさせてはならないが、つり上げ荷重が1トン未満の場合には、荷をつり上げたままの状態で運転位置から離れさせてもよい。(

正しくは,1.「当該作業に係る移動式クレーンの運転士免許を取得している者でなければならない」,2.「その日の作業を開始する前」(クレーン等安全規則),4.「下線部が不適」である。

(ⅱ) 玉掛け作業において事業者に求められる事項

  1. 移動式クレーンの玉掛用具であるワイヤロープなどを用いて玉掛けの作業を行うときは、毎月 1 回、当該ワイヤロープなどの異常の有無について点検を行わなければならない。(
  2. つり上げ荷重が 1 トン未満の移動式クレーンの玉掛けの業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、当該業務に関する安全のための特別の教育を行わなければならない。(
  3. 移動式クレーンの玉掛用具であるワイヤロープは、安全係数が 3 以上のものを使用しなければならない。(
  4. 移動式クレーンの玉掛用具であるワイヤロープは、1 よりの間において素線(フィラ線を除く。)の数の 6 [%] 以上の素線が切断しているものを使用してはならない。(

正しくは,1.「その日の作業を開始する前に」,3.「安全係数が 6 以上」,4.「10 [%] 以上」である。

inserted by FC2 system