平成24年度 第2回 線路及び設備管理

2020年6月19日作成,2021年1月4日更新

問1

(1) 光ファイバの分類と構造

光ファイバは、光をコアに閉じ込めて伝搬する導波原理の違いで分類すると、全反射によるものとブラッグ反射によるものに大別される。

全反射形光ファイバは、コアとクラッドの屈折率差を利用することによって光をコアに閉じ込めて伝搬する。コアとクラッドの屈折率差を実現する方法としては、添加剤(ドーパント)による屈折率制御があり、石英系光ファイバにおいてクラッドの屈折率を下げるドーパントの一つに、フッ素がある。

全反射の原理を用いた空孔アシスト光ファイバは、コアとクラッドをドーパントにより形成するとともに、クラッドの内部に空孔を設けることにより、伝搬光のクラッドへの広がりを制限しており、曲げ損失がほとんど発生せず、取扱いが容易である特徴を有している。

また、光ファイバの寸法、屈折率分布などの構造にかかわるパラメータは、構造パラメータといわれる。シングルモード光ファイバに特有の構造パラメータの一つとして、伝搬モードの電界分布の広がりを示すモードフィールド径があり、光強度分布がガウス分布で近似できるとき、屈折率分布の違いはモードフィールド径の違いとして表すことが可能である。

通信ケーブルの種類・特性及び適用」「光ファイバケーブルの伝送理論」参照

石英系光ファイバ
図 石英系光ファイバ

(2) 光ファイバケーブル及びメタリック平衡対ケーブルの構造、接続方法など

(ⅰ) 光ファイバケーブルの構造など

  1. 光ファイバケーブルに用いられるテープ形光ファイバ心線は、一般に、複数の光ファイバ素線を並列又は交差して配列し、さらに 2 次被覆を施した構造を有している。(
  2. 地下用多心光ファイバケーブルは、一般に、テンションメンバを中心に光ファイバテープ心線を収納したスロットロッド、外被などによって構成され、スロットロッドと外被の間にステンレステープを巻いた WB ケーブルや、機械的強度を高めた外被を施した FR ケーブルなどがある。(
  3. 架空用光ファイバケーブルのうち、ケーブル部と吊線部との間のスリットを大きくして首部に窓をあけた構造の自己支持形ケーブルは、スリットのない自己支持形ケーブルと比較して、強風によるダンシング現象が生じやすいが、軽量化されているため、布設作業などが容易である。(
  4. ドロップ光ファイバケーブルには、誘導防止対策としてテンションメンバに FRP などのノンメタリック材料を用いたものやクマゼミによる断線故障に対する対策として高強度外被を施したものがある。(

正しくは,1.「並列に配列」,2.「HS ケーブル」,3.「生じにくく」である。

(ⅱ) メタリック平衡対ケーブルの構造など

  1. 地下用メタリック平衡対ケーブルには、外被構造をアルミテープとポリエチレン(PE)外被を一体化した LAP 構造とし、心線絶縁材料として PE 内に気泡を含ませることにより誘電率を抑えた発泡 PE を用いた PEC ケーブルがある。(
  2. 地下用メタリック平衡対ケーブルと架空用メタリック平衡対ケーブルは、一般に、要求される伝送特性が同一であるため、心線径は、0.4 [mm],0.5 [mm],0.65 [mm] の 3 種類に統一されている。(
  3. CCP-JF ケーブルは、地下配線用に使用されており、ケーブル内に混和物が充塡され、外被に損傷を受けても浸水部分が広がりにくい構造となっている。(

心線径は 0.32 [mm],0.9 [mm] のものもある。

CCP ケーブルの CCP とは,Colour coded polyethylene の略称である。導体が着色ポリエチレンで被覆された市内電話線路用電線である。導体の全てが色分けされているため,加入者用の配線に便利である。ケーブルコアの間隙部に防水混和物を充てんした CCP-JF ケーブルが地下配線用に使用されている。

(ⅲ) 光ファイバの接続方法

  1. コネクタ接続は、光コネクタを用いた着脱が容易な接続方法であり、光ファイバ接合面の開口数(NA)を高くするために、フェルール端面を直角研磨する方法が採られる。(
  2. 単心光ファイバ用のフェルール型光コネクタにおいて、フェルールは、光ファイバのコアの中心を光コネクタの中心に設定するための部品であり、フェルールどうしを突き合わせて接続するために割りスリーブがガイドとして用いられている。(
  3. 融着接続は、光ファイバ端面を溶融して接続する方法であり、光ファイバの融着接続部は、光ファイバ心線の被覆が完全に除去されており、機械的強度が低下しているため、一般に、アルミテープやステンレスラミネートテープで覆うことにより補強する方法が用いられている。(
  4. メカニカルスプライスは、V 溝を形成した接続部品を用いて機械的に光ファイバを固定・把持して接続する方法であり、対向する光ファイバ端面どうしを V 溝内で正確に突き合わせることができるため、光ファイバ端面間に屈折率整合剤を不要としている。(

正しくは,1.「凸球面状に研磨」,3.「熱収縮スリーブを用いた補強法」,4.「屈折率整合剤を用いる」である。

(ⅳ) 光クロージャの構造など

  1. 光クロージャは、自然環境において光ファイバ心線接続部の長期的な信頼性の確保が要求される。地下用光クロージャは機械的な組立て機構を持ち、ゴムパッキンなどにより防水性能が得られる構造を有しており、架空用光クロージャは紫外線劣化を受けにくい材料が用いられている。(
  2. 地下用光クロージャは、限られたスペース内での高密度な心線収納性が要求され、融着接続などによる光ファイバ心線接続部と必要な曲率半径に保持した状態での心線余長を収容できる構造となっており、1,000 心程度の光ファイバ心線を収容可能なものがある。(
  3. 架空用光クロージャの防水性能は、一般に、経済性などの観点から、JIS 規格の保護等級 IPX3 を満たすタイプが適用され、光スプリッタを収納する場合は、保護等級 IPX7 を満たすタイプが適用される。(
  4. 架空光ファイバケーブルとユーザ宅への引込み用のドロップ光ファイバケーブルとの接続箇所に用いられる架空用光クロージャは、心線を整理して収容するため、一般に、収納トレイを具備している。(

IPX7 は,一時的に水没しても内部に浸水しない保護機能であり,架空用光クロージャには過剰である。

表 第二特性数字で示される水に対する保護等級(JIS C 0920 : 2003)
第二特性数字 保護等級の要約 保護等級の定義
0 無保護
1 鉛直に落下する水滴に対して保護する。 鉛直に落下する水滴によっても有害な影響を及ぼしてはならない。
2 15 度以内で傾斜しても鉛直に落下する水滴に対して保護する。 外郭が鉛直に対して両側に 15 度以内で傾斜したとき,鉛直に落下する水滴によっても有害な影響を及ぼしてはならない。
3 散水 (spraying water) に対して保護する。 鉛直から両側に 60 度までの角度で噴霧した水によっても有害な影響を及ぼしてはならない。
4 水の飛まつ (splashing water) に対して保護する。 あらゆる方向からの水の飛まつによっても有害な影響を及ぼしてはならない。
5 噴流 (water jet) に対して保護する。 あらゆる方向からのノズルによる噴流水によっても有害な影響を及ぼしてはならない。
6 暴噴流 (powerfull jet) に対して保護する。 あらゆる方向からのノズルによる強力なジェット噴流水によっても有害な影響を及ぼしてはならない。
7 水に浸しても影響がないように保護する。 規定の圧力及び時間で外郭を一時的に水中に沈めたとき,有害な影響を生じる量の水の浸入があってはならない。
8 潜水状態での使用に対して保護する。 関係者間で取り決めた数字7より厳しい条件下で外郭を継続的に水中に沈めたとき,有害な影響を生じる量の水の浸入があってはならない。

問2

(1) 通信土木設備工事における管路の設置など

通信土木設備は、一般に、公共道路に設置されるため、通信土木設備工事を実施する場合、占用企業者は、道路法に基づく道路占用許可の取得が必要である。

通信土木設備である管路の線形は、道路形状、埋設物などに応じて曲線を設けることは避けられない。その場合、ケーブルの布設性などを考慮して曲線半径の許容範囲が設けられる。

また、管路内の水の滞留による凍結のおそれがある区間における管路の縦断線形は、中だるみを避け、やむを得ない場合は、管路のダクト口に水、土砂などの流入を防ぐダクト止水栓を設置する。

管路の土被りは、国土交通省などの通達により、車道部では道路の舗装の厚さ(路面から路盤の最下面までの距離)に 0.3 [m] を加えた値(当該値が 0.6 [m] に満たない場合には 0.6 [m])以下としないこと、歩道部では 0.5 [m] の最低土被りを確保することとされている。

一方、橋梁に添架される管路の添架位置は、道路橋桁の両側又は道路橋の床板の下で、洪水時の流水などによる外力、直射日光などの影響を受けにくい箇所が選定されている。

通信土木の概要」参照

(2) 通信土木設備の腐食、非破壊探査方法など

(ⅰ) 通信土木設備の腐食など

  1. 半割管を用いた橋梁添架管路の腐食補修は、腐食管の上から半割管を装着する工法であるため、ケーブルを布設替えする必要がなく、簡易に補修できる方法である。(
  2. マンホール内の金物のバクテリア腐食は微生物の作用によるものであり、流電陽極による犠牲防食又は有機被覆による絶縁防食若しくはそれらを併用することにより金物の長寿命化・延命が可能である。(
  3. マンホール内の金物の腐食には、異なる種類の金属材料が電気的に接触して生ずる異種金属接触腐食、狭い隙間の内部に生ずる隙間腐食などがある。(
  4. とう道において、コンクリート中の消石灰がコンクリートの亀裂から流出し、地中水に置き換わると、コンクリートの内部が次第に中性化し、鉄筋が腐食しやすくなる。(

正しくは「腐食した引上げ管路を撤去した後に」である。

(ⅱ) 通信土木設備におけるコンクリート構造物の非破壊探査方法

  1. コンクリートの強度を推定する方法には反発硬度法がある。反発硬度法は、テストハンマを用いてコンクリートの表面を打撃したときのはね返った距離などからコンクリートの強度を推定する方法である。(
  2. コンクリート中の鉄筋探査法としては、電磁波レーダ法、電磁誘導法などがある。電磁波レーダ法は、電磁誘導法と異なり鉄筋径の推定が可能であり、コンクリートの内部に空隙があっても鉄筋位置の推定が可能であるなどの特徴がある。(
  3. コンクリートのひび割れ、剥離及び空洞を調査する方法には弾性波法がある。弾性波法は、利用周波数範囲や受信方法の違いなどによっていくつかの方法に分類され、一般に、20 [kHz] 以上の周波数帯を使用する方法は、超音波法といわれる。(

正しくは「下線部が逆」である。

(3) 光海底ケーブルの埋設工事など

(ⅰ) 光海底ケーブルの埋設工法

  1. 鋤式埋設工法は、外洋における長距離光海底ケーブルの敷設及び埋設が可能である。鋤式埋設機には、10 [m] のケーブル埋設深度を確保できるものが導入されており、適用水深も 2,000 [m] を超える深さまで可能なものがある。(
  2. 光海底ケーブルの埋設工事は、ケーブル敷設との関係から、ケーブル敷設後埋設工事とケーブル敷設同時埋設工事に大別できる。鋤式埋設工法は、ケーブル敷設後埋設工事に適しており、ケーブル敷設同時埋設工事には不適である。(
  3. ウォータジェット埋設工法は、埋設機の掘削部に配置したジェットノズルから加圧水を噴射し、溝を掘る方法で、掘削部にジェットノズルを追加することにより、掘削深度を深くすることが可能である。(
  4. ROV 埋設工法は、最終接続点などの光海底ケーブル屈曲点の後埋設に使用し、加圧水をノズルから噴射し、光海底ケーブルを埋設することができるが、光海底中継器、ジョイントボックスなどの接続箇所を埋設することはできない。(

正しくは,1.「0.6 [m] のケーブル埋設深度」「適用水深も 200 [m] を超える深さ」,2.「下線部が逆」,4.「埋設することもできる」である。

(ⅱ) 光海底ケーブルを収容する管路及びトレンチの設置工事など

  1. 陸揚地点から陸揚局までの間に道路などがある場合は、管路を設置してケーブルを収容する。管路は、一般に、陸上線路設備用のものと同様の 75 mm 管を使用する。(
  2. 波浪の影響を受ける海中部では水中トレンチによりケーブルを防護する方法が有効であり、トレンチの深さはケーブルが隠れる程度であればよい。(
  3. 自然保護の観点から珊瑚礁、岩礁などを掘削してトレンチを構築することが困難な場合、弧状推進(HDD)工法により管路を直接海底に通す方法があるが、HDD 掘削による管路ルートは直線でなければならない。(
  4. 海岸から陸揚局までのケーブルを管路及びトレンチを用いて埋設する方法は、交通車両などの外力からケーブルを保護することができ、地上の温度変化によるケーブルへの影響を抑える効果もある。(

正しくは,1.「」,2.「トレンチの深さは 1 - 1.5 m 程度である。」,3.「曲線でもよい」である。

問3

(1) 通信線路設備の信頼性対策など

通信線路設備は、屋外環境で使用されることから、様々な外的要因に対応した長期信頼性を確保するための対策が講じられている。

管路に布設されたケーブルが、大型車両などの通過により生ずる振動、ケーブルの温度伸縮などにより移動する現象は、クリーピングといわれる。クリーピングは、ケーブルの種別によらず、すべてのケーブルに発生するおそれがある。

ケーブルの移動を防止する対策としては、機械的にケーブル移動を止める方法、ケーブル移動量に見合ったケーブルのスラック部分を設ける方法などがあり、機械的にケーブル移動を止める方法には、移動防止金物によってケーブルを把持し、マンホール壁面によって支える方法がある。

また、寒冷地において、ケーブル引上げ点、橋梁添架などの管路が大気中に露出している箇所で管路内の溜水が凍結すると、体積膨張によりケーブルに過大な力が働き、傷や座屈が発生することがある。対策としては、PE パイプを挿入することにより、凍結圧を PE パイプで吸収する方法がある。

一方、光ファイバケーブルに用いられる石英系光ファイバにおいては、引張応力が加わり、ある程度のひずみが発生すると、やがて光ファイバが破断する場合がある。対策としては、ブリルアン散乱光の周波数分布が光ファイバのひずみ量に比例してシフトする特性を利用することにより光ファイバに加わっているひずみの分布を測定し、ひずみの発生箇所を特定するとともに光ファイバの破断の発生を事前に推定する方法がある。

腐食・損傷対策」参照

(2) メタリックケーブル線路設備に用いられる材料の特性と劣化など

(ⅰ) プラスチック材料の特性と用途

  1. ポリエチレンは、耐薬品性及び高周波電気特性が良く、低温でも割れにくいため、CCP ケーブル、PEC ケーブルなどの外被や絶縁体などに用いられている。(
  2. 軟質ポリ塩化ビニルは、柔軟で電気絶縁性が良いため、屋外線や屋内線の外被やビニルテープなどに用いられている。(
  3. ポリプロピレンは、ポリエチレンと比較して機械的強度や耐熱性に劣るが、塗装や接着が容易であるため、クロージャなどに用いられている。(
  4. エポキシ樹脂は、常温で注型でき、機械的強度が高く、電気絶縁性が良いため、ガス隔壁用充塡剤、CCP ケーブルの端末スリーブなどに用いられている。(

正しくは「機械的強度や耐熱性に優れる」「塗装や接着は容易ではない」である。

(ⅱ) プラスチック材料の劣化など

  1. 屋外で使用される支線ガードなどの色つきのプラスチック物品は、紫外線に長時間さらされると、プラスチックの分子鎖の切断により強度劣化が生じ、割れやすくなるため、一般に、半透明な界面活性剤が混入されて強化されている。(
  2. プラスチックは、紫外線が存在しなくても酸素が存在する環境に置かれた場合、熱により劣化するため、気密性が十分でない架空用クロージャ内では心線絶縁体に亀裂などが生ずる場合がある。(
  3. 軟質ポリ塩化ビニルが用いられている屋外線の外被が鮫肌状になり、割れやすくなる主な要因として、柔軟性を与えるために添加した可塑剤が揮発したり、雨に流されたりして減少することにより屋外線の外被が硬く、もろくなることが挙げられる。(

正しくは「カーボンブラックが混入されて強化されている」である。

(ⅲ) 金属の腐食の原因とその対策

  1. 金属が腐食する条件としては、一般に、水と酸素が存在することが挙げられる。また、酸性の溶液中では水素イオンが酸素と同様の働きをすることから、酸性の溶液中の金属は酸素の有無に関係なく腐食しやすい。(
  2. 電気防食は、電流を金属から土壌中に流出させることにより当該金属の腐食を防止する方法であり、電流を流す方法は、専用の電源装置を用いる方法と、亜鉛やマグネシウムの流電陽極を取り付けて金属間の電気伝導率の差を利用して電流を流す方法に大別される。(
  3. ステンレス鋼やマグネシウムのように不働態といわれる緻密な被膜を形成する高耐食性金属材料は、一般に、孔食などの局部的な腐食を防ぐために用いられる。(
  4. 粉体塗装とは、有機溶剤などの溶媒を全く使用しない粉末状の塗料で塗装する方法であり、塗装方法には、流動浸漬法、静電塗装法などがある。亜鉛メッキ鋼材に粉体塗装する場合、一般に、プライマーを要するが工事現場でコーティング加工される。(

正しくは,2.「電位差」,3.「孔食などの局部的な腐食に注意する必要がある」,4.「工事現場ではコーティング加工できない」である。

(ⅳ) 鋼管柱、つり線などの腐食とその対策

  1. 鋼管柱は、一般に、湿った土壌中で腐食する。また、アスファルト路上で犬の尿などを浴びた地際部では、錆こぶが固着して変色する場合があるが、一般に、肉厚が減少して強度が低下するおそれはない。(
  2. 鋼管柱において、張り紙防止シートや番号札が貼付された箇所が、腐食性の酢酸ビニル系接着剤の影響により腐食する場合がある。対策としては、腐食成分を含まない補修塗料、ニトリルゴム系接着剤などを用いる方法がある。(
  3. アルミ防食鋼撚り線は、耐食性に優れており、一部分だけ極端に腐食が進むことはなく、錆びた金物が取り付けられていても、その部分だけ腐食することはない。(
  4. 高耐食鋼撚り線は、亜鉛-アルミニウム合金をメッキした鋼線を撚り合わせたもので、塩害地域であっても硫化水素が無ければ腐食することはなく、腐食に関してはメンテナンスフリーが実現されている。(

正しくは,1.「肉厚が減少して強度が低下するおそれがある」,3.「一部分だけ極端に腐食が進むことがあり,錆びた金物が取り付けられていれば,その部分だけ腐食することもある」,4.「塩害環境の厳しい場所では赤錆などが発生して腐食するおそれがあるため、劣化限度さび見本などによる不良判定指標を用いた管理が有効である」である。

問4

(1) 在庫管理

在庫管理とは、必要な資材を必要なときに必要な量を必要な場所へ供給できるように、各種品目の在庫を好ましい水準に維持するための諸活動をいい、在庫管理方式は、定期発注方式と定量発注方式に大別される。

定期発注方式は、あらかじめ定めた発注間隔で、発注量を発注ごとに決めて発注する在庫管理方式であり、JIS 規格において、発注量は次の式で表される。

発注量=(発注間隔+調達期間)中の需要推定量-発注残-手持ち在庫量+安全在庫量

一方、定量発注方式は、発注点方式ともいわれ、定期発注方式と比較して事務処理が簡単で、単価の安い品目に適している在庫管理方式である。また、一定期間の在庫関連費用を最小にする発注量は経済的発注量といわれ、一般に、発注費と保管費の和を最小にする発注量を指す。

在庫量を合理的に管理する手法としては、ABC 方式がある。ABC 方式は、在庫品目ごとに在庫費用の高い順に並べ、累積在庫費用などで管理方法を区分する手法であり、発注方法としては、一般に、累積在庫費用が最も高い区分の在庫品目には定期発注方式、累積在庫費用が 2 番目に高い区分の在庫品目には定量発注方式が適用される。

工事計画」参照

定期発注方式 (periodic ordering system)
あらかじめ定めた発注間隔で,発注量を発注ごとに決めて発注する在庫管理方式。
定量発注方式 (fixed order quantity system)
発注時期になるとあらかじめ定められた一定量を発注する在庫管理方式。
ABC 分析 (ABC analysis)
多くの在庫品目を取り扱うときそれを品目の取り扱い金額又は量の大きい順に並べて,A,B,C の 3 種類に区分し,管理の重点を決めるのに用いる分析。

(2) 設備の故障率

(ⅰ) 故障率

  1. アイテムを使用する前には、バーンインなどスクリーニングを行うことにより、初期故障期の故障率を低減することができる。(
  2. 非修理系アイテムの偶発故障期における故障率は、一般に、減少傾向を示す。(
  3. 摩耗故障期にあるアイテムを用いたシステムの故障率を低減するためには、アイテムの定期取替えなどの予防保全が有効である。(

偶発故障期間は,故障率がほぼ一定とみなせる期間である。

(ⅱ) 非修理系の故障率のパターン

  1. DFR 型は、主にシステムの初期運用段階に現れ、故障しやすい欠陥を持った部品が故障を起こすパターンである。(
  2. IFR 型は、部品の摩耗など、システムの老朽化の兆候が現れる段階の故障率のパターンであり、故障を未然に防ぐための有効な手段としては、デバギングがある。(
  3. CFR 型は、経過時間にかかわらず故障率がほぼ一定の値となる故障率のパターンである。(
  4. 非修理系におけるシステムの故障率の推移をモデル化したものは、一般に、バスタブ曲線といわれる。(

デバギングは DFR 型に有効である。

(3) ある非修理系システムの故障率

ただし、システムは偶発故障期間にあり、$\log_{e}0.9=-0.105$ とし、$e$ は自然対数の底とする

(運用時間の単位:時間)
故障番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
運用時間 34 11 20 33 18 31 10 16 17 24 19 4 6 37

(ⅰ) システムの故障率

このシステムの故障率は,0.05 である。

運用時間の合計は,280 時間(34+11+20+33+18+31+10+16+17+24+19+4+6+37=280),故障件数は 14 件であるので,故障率は次式で求められる。

14 [件] ÷ 280 [時間] = 0.05 [件/時間]

(ⅱ) システムの信頼度

このシステムの稼働開始後 2.1 時間の信頼度は,0.9 である。

求める時間を $t$ として,以下の方程式を解く。

\[ \exp(-0.05t)=0.9 \] \[ -0.05t=\log_{e}0.9=-0.105 \] \[ t=2.1 \]

問5

(1) サーバの要塞化

サーバの要塞化の目的は、一般に、脆弱な部分や脆弱になるおそれのある部分を減らす又はぜいなくすことにより、セキュリティリスクを小さくすることとされている。

デフォルトの設定で OS をインストールすると、各種のサービスが稼働することがあるため、用途に応じてサービスの停止/無効化の設定を行うのが要塞化の第一歩となる。また、セキュリティパッチを随時適用することも、要塞化にとって極めて重要な作業となる。OS やアプリケーションの脆弱性は日々発見されており、脆弱性を狙う攻撃の手法やウイルスが増えている。そのほとんどは、セキュリティパッチを正しく適用していれば防ぐことが可能である。また、ユーザの階層などに応じて適切なアクセス権を設定することも重要である。アクセス権の設定により、不正な行為や人的ミスの発生などを軽減できる。

OS やアプリケーションをインストールすると、サンプルプログラムも一緒にインストールされることがある。サンプルプログラムの中には脆弱性が存在するものもあるため、攻撃の対象となってしまうおそれがある。このため、不要なファイルやプログラムは、削除するかユーザがアクセスできない場所に移動しておくことが望ましい。

また、ログの分析は、OS やアプリケーションの設定ミス、アクセス権の設定ミス、アプリケーションに対する攻撃などを発見するのに効果が見込めることから、サーバの要塞化として有効な方法である。

ネットワークセキュリティ対策」参照

第16回 サーバを要塞化する (1/4) - ITmedia エンタープライズ」参照

(2) 情報システムにおけるセキュリティインシデント

  1. インシデント対応は、拡大防止策と原因除去、回復にとどめず、再発防止まで徹底することが重要とされている。(
  2. インシデントの初期対応としては、システム状態の保全を念頭におき、対応組織への連絡、発生事実の確認、システムの隔離などを行う。(
  3. 各企業は、企業情報を守るため、インシデントの緊急度をレベル分けしておき、各レベルのインシデントが発生した場合、それにどのように対処するか決めておく必要があるとされている。このレベル分けは、一般に、企業の大小、業態にかかわらず、同一となる。(
  4. インシデントが発生した環境から、インシデントの原因及び犯人の特定などのために必要な電子データなどを収集、分析する技術や調査活動は、コンピュータフォレンジックなどといわれる。(

正しくは「企業の大小,業態により異なる」である。

(3) セキュリティホール

  1. CGI といわれる仕組みに従って作成された Web アプリケーションにセキュリティホールがあると、サーバ上のファイルを読まれる、悪意のあるプログラムを実行されるなどの被害を受けることがある。(
  2. ネットワークを通じてサーバに順次アクセスしてサーバ内で動作しているアプリケーションや OS の種類などを確認していく行為であるポートスキャンは、セキュリティホールを探す場合に利用されることがある。(
  3. セキュリティホールを利用して感染するタイプのコンピュータウイルスに対しては、一般に、ウイルス対策ソフトウェアのウイルス定義ファイルにより OS のバージョンアップを行い、セキュリティホールを塞ぐ方法が用いられている。(

IPA セキュリティセンターなどで発表される脆弱性情報を日々チェックし,必要な場合には OS のアップデートや脆弱性修正プログラムの適用を行う

(4) 安全作業、有資格者配置など

線路設備工事などにおける労働安全衛生に関する法令に基づく安全作業、有資格者配置など

(ⅰ) 高所作業などにおいて事業者に求められる事項に

  1. 事業者は、高さが 2 [m] 以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行う場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。(
  2. 事業者は、労働者に安全帯等を使用させるときは、安全帯等及びその取付け設備等の異常の有無について、随時点検しなければならない。(
  3. 事業者は、高さが 2 [m] 以上の箇所で作業を行う場合において、強風、大雨、大雪等の悪天候のため、当該作業の実施について危険が予想されるときは、労働者に安全帯などの保護具の使用、想定される事態への注意喚起等を行い、当該作業に従事させなければならない。(
  4. 事業者は、脚立については、丈夫な構造で、材料は著しい損傷、腐食等がなく、踏み面は作業を安全に行うために必要な面積を有し、脚と水平面の角度は 75 度以下で、折りたたみ式のものにあっては、脚と水平面との角度を確実に保つための金具等を備えたものを使用しなければならない。(

正しくは「作業を中止する」である。

(ⅱ) 酸素欠乏危険作業において事業者に求められる事項など

  1. 酸素欠乏等とは、空気中の酸素の濃度が 20 パーセント未満である状態、又は空気中の一酸化炭素の濃度が 100 万分の 10を超える状態をいう。(
  2. 事業者は、第一種酸素欠乏危険作業に係る酸素欠乏危険作業主任者に、その日の作業を開始する前、作業に従事するすべての労働者が作業を行う場所を離れた後再び作業を開始する前及び労働者の身体、換気装置等に異常があったときに、作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を測定させなければならない。(
  3. 事業者は、酸素欠乏危険作業については、第二種酸素欠乏危険作業にあっては酸素欠乏危険作業主任者技能講習を終了した者のうちから、酸素欠乏危険作業主任者を選定しなければならない。(
  4. 事業者は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合、作業の性質上換気することが著しく困難なときは、防塵マスクなどの濾過式の保護具を使用させなければならない。(

正しくは,1.「18 パーセント」「硫化水素」,3.「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」,4.「空気呼吸器等」である。

酸素欠乏等とは,空気中の酸素の濃度が 18 パーセント 未満である状態又は空気中の硫化水素の濃度が 100 万分の 10 を超える状態をいう。

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