平成26年度 第1回 線路及び設備管理

2020年6月13日作成,2021年1月3日更新

問1

(1) 光ファイバの分散特性

光ファイバに入射された光パルスは、光ファイバ中を伝搬する間にその波形に時間的な広がりを生ずる。このように波形が時間的に広がる現象は分散といわれる。

光ファイバ中での分散には、幾つかの種類があり、その一つに、光ファイバに使用される材料の屈折率が波長に依存する特性を持つことに起因する材料分散がある。材料分散の単位としては、一般に、[ps/nm/km] が用いられ、1 [ps/nm/km] とは、スペクトル幅 1 [nm] の光が 1 [km] 伝搬したとき、パルス幅が 1 [ps] 広がることを意味する。

また、コアとクラッドの屈折率差が小さい場合は、その境界面での全反射現象は鏡面のようにはならず、クラッド部分へ一部がしみ出すように全反射が起こる。このしみ出しの割合は、波長によって異なるため、伝搬経路は波長依存性を持つことになり分散が生ずる。この分散は、構造分散といわれる。

波長によって伝搬速度が異なることにより生ずる分散は、一般に、波長分散といわれ、波長分散は、構造分散と材料分散のであることから、コアの屈折率分布形状を工夫することによって低分散の伝送媒体が実現されている。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

(2) アクセス系線路設備などの概要

(ⅰ) メタリック平衡対ケーブルの構造又は特性

  1. メタリック平衡対ケーブルの直流導体抵抗値は、導体の長さに比例し、心線径に反比例する。また、温度が高くなるほど直流導体抵抗値は低下する。(
  2. 地下用メタリック平衡対ケーブルと架空用メタリック平衡対ケーブルは、一般に、仕様をできるだけ同一にする必要があるため、心線径は、0.4 [mm]、0.5 [mm] 及び 0.65 [mm] の3種類に統一されている。(
  3. 地下用メタリック平衡対ケーブルには、外被構造をアルミテープとポリエチレン(PE)外被を一体化した LAP 構造とし、心線絶縁材料として PE 内に気泡を含ませることにより誘電率を抑えた発泡 PE を用いた PEC ケーブルがある。(
  4. 架空用メタリック平衡対ケーブルとしては、ケーブルと鋼撚り線が一体となった自己支持(SS)形ケーブルが施工面において優れていることから、広く用いられている。また、SS 形ケーブルは、断面形状がひょうたん形であることから、強風によるダンシング現象を抑制することができるため、強風地帯にも適している。(

正しくは,1.「心線径の 2 乗」「増加」,2.「0.9 [mm] もある」,4.「起こしやすいため,強風地帯には適さない」である。

(ⅱ) メタリック平衡対ケーブルの漏話など

  1. メタリック平衡対ケーブルの漏話には、同一カッド内のペア相互間の静電結合によって生ずるものがある。カッドくずれが起きた場合は、静電結合が大きくなるため、漏話も大きくなる。(
  2. メタリック平衡対ケーブルの漏話には、誘導回線の電流の方向と同じ方向へ誘起電流が伝搬される近端漏話と、逆方向へ伝搬される遠端漏話がある。ISDN 回線による ADSL 回線への漏話の影響については、一般に、近端漏話と比較して遠端漏話からの影響を強く受ける。(
  3. メタリック平衡対ケーブルにおける心線の撚り合わせ方法としては、一般に、心線収容効率、漏話特性などを考慮して 2 心線を撚り合わせたペアを、さらに、ペアどうしで撚り合わせた星形カッド撚りが用いられている。(

正しくは,B.「下線部が逆」「遠端漏話と比較して近端漏話からの影響を強く受ける」,C.「DM カッド」である。

近端漏話と遠端漏話
図 近端漏話(Near end crosstalk)と遠端漏話(Far end crosstalk)

(ⅲ) 光ファイバの種類、機能など

  1. 分散シフト光ファイバ(DSF)は、石英系光ファイバの伝送損失が最小となる 1.55 μm 帯で波長分散が最小となるように波長分散特性を調整した光ファイバであり、DSF の屈折率分布には、セグメントコア型などがある。(
  2. ノンゼロ分散シフト光ファイバは、コアの実効断面積を小さくすることにより 1.3 μm 帯よりわずかに短波長側にゼロ分散波長をシフトさせつつ、使用波長帯域内では波長分散をゼロとしないことを特徴とした光ファイバで、非線形現象の抑制に有効である。(
  3. テープスロット型光ファイバケーブルは、スロットロッドの螺旋状などの溝に光ファイバテープ心線を積層した構造であり、テープスロット型光ファイバケーブルには、高密度実装の多心光ファイバケーブルがある。(
  4. FTTH サービスにおいて、ユーザ宅への引込みに用いられるドロップ光ファイバケーブルには、クマゼミの産卵管による被害への対策用として外被を高強度化したものがある。(

正しくは「1.55 μm 帯」である。

(ⅱ) 光ファイバの屈折率分布など

  1. グレーデッドインデックス形光ファイバは、コア内の屈折率を連続的に変化させたものであり、コアの中心付近での光の伝搬速度は、クラッド付近の伝搬速度と比較して遅くなる特徴がある。(
  2. 石英系光ファイバには、コアやクラッドの屈折率を調整する方法として、コアにフッ素を添加してコアの屈折率を大きくする方法、クラッドにゲルマニウムを添加してクラッドの屈折率を小さくする方法などがある。(
  3. 光増幅用として用いられる希土類添加光ファイバには、クラッドに増幅動作のためのエルビウムイオンと増幅利得の波長特性平坦化のためのリンが添加されているものがある。(
  4. 光ファイバの構造を決定するパラメータとしては、マルチモード光ファイバの場合は、モードフィールド直径、開口数などがあり、シングルモード光ファイバの場合は、コア径、遮断波長などがある。(

正しくは,2.「下線部が逆」,3.「アルミニウム」,4.「下線部が逆」である。

石英系光ファイバ
図 石英系光ファイバ

問2

(1) 光海底ケーブルシステムの監視方式など

光海底ケーブルシステムの定期的な監視項目としては、光伝送端局装置間の符号誤り率、光海底中継器の入出力レベルなどがある。また、光増幅方式を用いた光海底ケーブルシステムにおいては、符号誤り率の測定による伝送品質の評価は、Q 値に換算して行われる場合が多く、一般に、Q 値が大きいほど伝送品質が良いとされている。

光海底ケーブルシステムでは、海中区間の故障時には、故障位置を1中継区間内に特定できるよう監視系が設計される。故障位置は、一般に、各光海底中継器の入出力レベルの変化から特定するが、入出力レベルが変化しない給電路短絡故障の場合は、関係陸揚局の給電装置の電流と電圧から推定する。

光海底ケーブルの光ファイバ断線故障の場合は、一般に、1 中継区間内に故障位置を特定でき、光増幅方式を用いた光海底ケーブルシステムでは、C-OTDR を用いることにより、故障位置を 100 [m] 以下の誤差で測定できる。

一方、光海底ケーブルの給電路開放故障の場合は、関係陸揚局での光海底ケーブル端から静電容量を測定し、故障位置を推定する。この方法は、精度が低いため、推定された位置付近でケーブル敷設船により光海底ケーブルを回収し、ケーブル敷設船から再度、光海底ケーブルの静電容量を測定して故障位置をより正確に推定する方法が採られる。

水底線路の概要」参照

(2) 通信土木設備

(ⅰ) マンホールの形状など

  1. マンホールには、一般に、躯体の寸法や形状を規格として定めた標準マンホールと個別に寸法や形状を検討して決める特殊マンホールがあり、標準マンホールの形状には、直線形と分岐形がある。(
  2. マンホールは、一般に、躯体、首部及び鉄蓋から構成されている。躯体の内側にはケーブルダクトが成形された額縁、外側には管路周辺からの浸水を防ぐ防水コンクリート、底部には排水用のピットなどが設けられている。(
  3. レジンコンクリート製ブロックマンホールは、複数に分割されたブロックで構成され、一般に、ブロック相互の接合にはアンカーボルトが使用されている。(
  4. マンホールは、一般に、き線ルート及び中継ルートにおいて、ケーブルや接続部である地下用クロージャを収容する設備とされており、作業者が中に入ってケーブルの建設保守作業を行うためのスペースが確保されている。(

正しくは「接着剤」である。

(ⅱ) 管路設備の形態など

  1. 管路設備は、設備の形態により、一般に、一般管路設備、中口径管路設備及び地下配線管路設備に分けられ、地下配線管路設備には、1 条の管路に配線ケーブルと引込みケーブルを分離して収容するスペーサを敷設するパイプインパイプ方式が用いられる。(
  2. 一般管路設備は、一般に、呼び径 75 [mm] の管が多条多段に積まれ、地表面下 1 ~ 2 m 程度に埋設される。(
  3. 盛土区間における管路の占用位置は、盛土崩壊のおそれが少ない位置を基本とし、使用する管種は、一般に、硬質ビニル管である。(

正しくは,A.「通信ケーブルを多条数収容するフリーアクセス単管方式」,C.「金属管」である。

(ⅲ) マンホール及びハンドホールの耐震対策、補修工法など

  1. 地震により液状化が予想される箇所にマンホールを設置する場合は、一般に、セメントコンクリート製と比較して重量の大きいレジンコンクリート製が適している。(
  2. マンホールの劣化を放置すると、道路陥没などの事故につながるおそれがあるため適切な補修が必要であり、マンホール本体のひび割れ補修工法としては超薄膜ライニング工法が用いられる。(
  3. 液状化地域のマンホールに施されるグラベルドレーン工法は、地盤を締め固めることにより液状化による間隙水を遮断し、マンホールの浮き上がりを防止している。(
  4. ハンドホールからユーザビルへの引込部については、ユーザビルと歩道の不等沈下による相対変位を吸収するとともに地震時の相対変位を吸収するために、可とう管を用いたフレキシブル構造とする方法がある。(

正しくは,1.「下線部が逆」,2.「V 字形カット工法」,3.「マンホール周辺に砕石を配置することにより液状化による過剰間隙水圧を消散し」である。

(ⅱ) 管路設備の耐震対策

  1. 管路とマンホールの接続部においては、ダクトスリーブ構造とすることにより地震時に生ずる管路とマンホールの相対変位を吸収し、安全性の向上を図る方法がある。(
  2. 地盤が軟弱地盤から土質が異なる地盤に急変する箇所に管路を敷設する場合は、硬質ビニル管単独又は金属管単独とし、硬質ビニル管の場合は離脱防止継手を使用し、金属管の場合は短尺化した FRP 管を使用する。(
  3. 地震発生時に液状化が予想される地域において管路を設置する場合は、硬質ビニル管を使用し、マンホールからの第 1 接続点で管路と管路の接続部にねじ式継手を使用する。(
  4. 管路の継手構造については、差込式構造からねじ式構造に変更することにより、耐震性の向上と建設作業の効率化が図られる。(

正しくは,2.「金属管の場合は離脱防止継手を使用し,硬質ビニル管の場合は短尺化した管を使用する」,3.「金属管」「伸縮継手」,4.「伸縮接手」である。

問3

(1) 光ファイバ伝送システムにおける伝送品質の低下要因

光ファイバ伝送システムにおける伝送品質の低下要因となる雑音には、光源で生ずる雑音、受光デバイスで生ずる雑音などがある。

受光デバイスで生ずる本質的な雑音であるショット雑音は、光を一定のパワーで受光していても、光子としてとらえた場合にはその到着時間間隔が一定ではないために生ずる雑音である。ショット雑音の影響を少なくするため、光ファイバ増幅器をプリアンプとして使用した場合は、自然放出光と信号光とによって生ずるビート雑音が伝送品質を低下させる支配的な要因となる。

光ファイバ増幅器では、光増幅する際の自然放出に起因する雑音はゼロとすることはできず、反転分布が完全に実現された理想的な場合、入力の SN 比を出力の SN 比で除した雑音指数は 3 [dB] である。

さらに、四光波混合や相互位相変調などの非線形現象は、信号光パワーが大きくなると現れる光カー効果といわれる光ファイバの屈折率の光強度依存性による現象に起因し、高密度波長分割多重(DWDM)信号の波形劣化の支配的な要因となる。

光通信用素子」「光ファイバケーブルの伝送理論」参照

(2) 線路設備の劣化など

(ⅰ) 管柱、吊り線などの腐食とその対策に

  1. 鋼管柱において、張り紙防止シートや番号札が貼付された箇所が腐食性成分のある接着剤の影響により腐食する場合がある。対策としては、ニトリルゴム系接着剤と比較して腐食性成分の少ない酢酸ビニル系接着剤を用いる方法が有効である。(
  2. 著しく腐食しやすい環境で使用している鋼管柱の腐食対策としては、腐食地用鋼管柱である AE 柱又は UC 柱へ更改する方法がある。(
  3. 亜鉛-アルミニウム合金をめっきした鋼線を撚り合わせた高耐食鋼撚り線は、塩害環境の厳しい条件下では赤錆などが発生して腐食するおそれがあるため、劣化限度見本などによる不良判定指標を用いた管理が有効である。(
  4. 吊り線(アルミ防食鋼撚り線)とアースクランプの間に腐食生成物や異物が蓄積して電気的接続が不完全になると、表面に付着した水分を介して電流パスが形成され、陽極となった吊り線が電解腐食により溶出するなど腐食が進行する場合がある。(

正しくは「酢酸ビニル系接着剤と比較して腐食性成分の少ないニトリルゴム系接着剤を用いる方法が有効である」である。

(ⅱ) コンクリート柱の劣化など

  1. コンクリート柱では、コンクリート中に含まれる水分が凍結及び融解を繰り返すことでコンクリートが緩んで劣化し、表面に亀甲状のひびや縦ひび割れを生ずる場合がある。このような劣化現象は、一般に、凍害といわれる。(
  2. コンクリート柱に過大な不平衡荷重が加わると、横ひび割れ(円周方向のひび割れ)が発生することがある。横ひび割れが発生すると、条件によっては鉄筋が多数破断して折損に至ることがあるため、過大な不平衡荷重を除去するとともに適切な更改を行うことが必要である。(
  3. コンクリート柱の製造では、通しの鉄筋に圧縮力を与え、生コンクリートを注入して高速回転による遠心力でコンクリートを締め固める。これにより、ひびが入りにくく耐久性の高いコンクリート柱になる。(

プレストレスコンクリートは,荷重を加えられると変形を起こし,ひび割れが発生するが,荷重を抜くとひび割れは塞がり,元の形状に戻る性質を有している。これはコンクリートにあらかじめ(プレ)圧縮応力(ストレス)を与えておき,外力による引張応力を打ち消すことによって,ひび割れの発生を防いでいる。

(ⅲ) ケーブルなどの線路設備の劣化とその対策

  1. 管路に布設されたケーブルには、ケーブルの温度伸縮や車両の通過に起因する振動などによりケーブルが移動するクリーピングといわれる現象が発生することがある。対策としては、マンホール内で伸縮型のケーブル受け金物によりケーブルを受ける方法やケーブル移動量に見合ったスリーブサイズのクロージャを設ける方法が有効である。(
  2. 地下ケーブルのポリエチレン外被に生ずる環境応力亀裂(ESC)は、一般に、ケーブルの円周方向に発生する。ESC の発生要因としては、塩素イオンが挙げられる。対策としては、ケーブル布設時に外被を中性洗剤で洗浄する方法が有効である。(
  3. 寒冷地において、ケーブル引上げ点、橋梁添架などの管路が大気中に露出している箇所で管路内の溜水が凍結すると、体積膨張によりケーブルに過大な力が働き、傷や座屈が発生することがある。対策としては、PE パイプを挿入することにより、凍結圧を PE パイプで吸収する方法が有効である。(
  4. 石英系光ファイバは、引張応力が加わり、ひずみが生ずると、やがて破断する場合がある。対策としては、レイリー散乱光の周波数分布が光ファイバの光減衰量に比例してシフトする特性を利用してひずみの分布を測定することにより、ひずみの発生箇所を特定するとともに、これを除去する方法が有効である。(

正しくは,1.「マンホール内においてケーブル移動防止金物を用いて機械的にケーブル移動を止める方法が有効である」,2.「石鹸水などの界面活性剤のあるところで応力を受けること」「中性洗剤等の界面活性剤を使用しない,外被に損傷を与えないこと」,4.「ブリルアン散乱光」「ひずみ量」である。

クリーピングの対策として,ケーブル移動防止金物で機械的にケーブルの移動を止める方法,移動量に応じたスラックを設ける方法,ケーブルを細径化する方法などが有効である。

(ⅳ) 金属を用いた線路設備の腐食の原因とその対策

  1. 地下埋設物における電食は、一般に、直流電気鉄道からの漏れ電流と比較して電解の効率が高い交流電気鉄道からの漏れ電流に起因し、電食の防止対策としては、漏れ電流を地下埋設物から土壌中に流出させる方法が有効である。(
  2. 架空構造物の金属材料は、工場や自動車から排出される大気汚染物質が多量になると、大気腐食が著しく促進される。例えば、亜硫酸ガス、二酸化窒素、塩素などの可溶性ガス類は、一般に、金属表面上の水膜に溶け込んで腐食を促進する。(
  3. ステンレス鋼やマグネシウムのように不動態といわれる緻密な被膜を形成する高耐食性金属材料は、一般に、孔食などの局部的な腐食を防ぐために用いられる。(
  4. マンホール内の金物腐食には、イオン化傾向が同じ金属材料の金物の接触による腐食、硫酸イオンを多く含む貯留水中でのバクテリアの作用による腐食などがあり、選択排流器を用いた防食、有機被覆による絶縁防食などの対策が有効である。(

正しくは,1.「下線部が逆か」,3.「アルミニウム」,4.「異なる」である。

問4

(1) 電気通信に関する事故報告制度

電気通信サービスが利用できない事故が起きると、単に電気通信事業者が提供する役務の停止といった事象にとどまらず、そのサービスを利用することにより実現されている様々な社会・経済活動への影響も大きいものとなる。このため、一定規模以上の事故については、事故の状況把握やその後の再発防止に向けた施策に反映するため、電気通信事業法や関係規則などにおいて、総務省への報告が電気通信事業者に義務付けられている。

事業用電気通信設備の故障により、電気通信役務の提供を停止又は品質を低下させた事故のうち、その影響利用者数が 3 万以上で、かつ継続時間が 2 時間以上の事故などの場合は、重大な事故として報告が必要であることが電気通信事業法施行規則において規定されている。ただし、利用者端末設備のハードウェア故障による停止などについては報告の対象外となる。

電気通信事業者は、重大な事故が発生した場合には、速やかに発生日時などの事項について総務省へ報告を行う必要があり、また、詳細な報告を所定の様式にて、その重大な事故の発生した日から 30 日以内に提出する必要がある。

安全・信頼性対策」参照

(2) JIS Z8115 : 2000 ディペンダビリティ(信頼性)用語

(ⅰ) 保全性に関する用語

  1. 保全、保守とは、アイテムを使用及び運用可能状態に維持し、又は故障、欠点などを回復するためのすべての処置及び活動をいう。(
  2. 機能維持保全とは、アイテムの使用中の故障の発生を未然に防止するために、規定の間隔又は基準に従って遂行し、アイテムの機能劣化又は故障の確率を低減するために行う保全をいう。(
  3. 予防保全とは、フォールト是正後、アイテムが要求機能を遂行できるように回復したことを確認するための活動をいう。(
  4. 回復、修復とは、規定の要求仕様を満足しなくなったアイテムを修理作業によって、再び使えるようにする行為をいう。(

正しくは,2.「アイテムのいずれの機能も停止又は低下させないで実行する保全」,3.「アイテムの劣化の影響を緩和し,かつ,故障の発生確率を低減するために行う保全」,4.「回復とは,事後保全のない修復,修復とは,故障の後,アップ状態が再び確立される事象」である。

(ⅱ) 試験・検査に関する用語

  1. 適合試験とは、アイテムの特性又は性質が規定の要求事項に合致するかどうかを判定するための試験をいう。(
  2. フィールド試験とは、試験時に動作、環境、保全及び測定の条件を記録するフィールドで行う適合試験又は決定試験をいう。(
  3. 加速試験とは、規定のストレス及びそれらの持続的又は反復的印加がアイテムの性質へ及ぼす影響を調査するため、ある期間にわたって行う試験をいう。(
  4. スクリーニング試験とは、不具合アイテム又は初期故障を起こしそうなアイテムの除去又は検出を意図する試験又は試験の組合せをいう。(

正しくは「耐久試験」である。

(3) ある装置の信頼性

装置は偶発故障期間にあり、$e^{-0.10}=0.90$,$e^{-0.08}=0.92$,$e^{-0.04}=0.96$ とし、$e$ は自然対数の底とする。また、答えは、小数点以下を切り捨てるものとする。

(ⅰ) MTBF

装置 A の総動作時間、総動作不能時間及び総保全時間の合計を 3,300 [時間]、総動作不能時間を 200 [時間]、総保全時間を 100 [時間]、故障回数を 5 回とするとき、装置 A の MTBFは、600 [時間] である。

総動作時間,総動作不能時間及び総保全時間の合計 3,300 [時間] ,総動作不能時間を 200 [時間]、総保全時間を 100 [時間]であるので,総動作時間は次式で求められる。

総動作時間 = 3,300 - 200 - 100 = 3,000 [時間]

総動作時間は 3,000 [時間],故障回数は 5 回であるので,MTBF は次式で求められる。

MTBF = 3,000 / 5 = 600 [時間]

(ⅱ) 信頼度

装置 B1 及び B2 の MTBF をそれぞれ 2,000 [時間] 及び 2,500 [時間] としたとき、装置 B1 及び B2 をそれぞれ一つ用いた並列冗長システムの 200 [時間] における信頼度は、99 [%] である。

装置 B1 及び B2 の故障率をそれぞれ $\lambda_{1}$,$\lambda_{2}$ とすると,それぞれ次式で求められる。

\[ \lambda_{1}=\frac{1}{2000} \] \[ \lambda_{2}=\frac{1}{2500} \]

装置 B1 及び B2 の 200 [時間] における信頼度をそれぞれ $R_1$,$R_2$ とすると,それぞれ次式で求められる。

\[ R_1=\exp(-200\times\frac{1}{2000})=\exp(-0.10)=0.90 \] \[ R_2=\exp(-200\times\frac{1}{2500})=\exp(-0.08)=0.92 \]

よって,装置 B1 及び B2 をそれぞれ一つ用いた並列冗長システムの 200 [時間] における信頼度は次式で求められる。

\[ 1-(1-0.90)\times(1-0.92)=0.992 = 99.2 \text{ [%]} \]
並列冗長システムの信頼度
図 並列冗長システムの信頼度

問5

(1) Web アプリケーションのセキュリティ

クライアント側で動作する Web アプリケーションは、Web ブラウザと Web サーバが緩く結合されたクライアント・サーバ構成で実行され、一般に、サーバから供給される HTML、XML などの記述に基づいて Web ブラウザが結果を表示する。また、Web ブラウザと Web サーバの間の通信はプロキシサーバなどのキャッシュ機能を持つ設備によって中継されることがある。

Web アプリケーションには幾つかの情報セキュリティ問題が生ずることがあり、一般に、情報暴露に関する問題、エコーバックに関する問題、入力に関する問題、セッションに関する問題、アクセス制御に関する問題などに分類される。

Web アプリケーションが取り込むデータには、攻撃を意図した内容が含まれているおそれがあり、これは入力に関する問題に分類される。取り込むデータのチェックが不十分だと、OS コマンドインジェクションといわれる、OS に対する命令を紛れ込ませて不正に操作する攻撃や、SQL インジェクションといわれる、データベースを改ざんしたり不正に情報を入手したりする攻撃を許してしまうことがある。

また、Web アプリケーションがセッションを維持する仕組みは必ずしも堅固なものではないため、セッションハイジャックのおそれがあり、これはセッションに関する問題に分類される。

ネットワークセキュリティ対策」参照

Web アプリケーションの中には、セッション ID(利用者を識別するための情報)を発行し、セッション管理を行っているものがある。このセッション ID の発行や管理に不備がある場合、悪意のある人にログイン中の利用者のセッション ID を不正に取得され、その利用者になりすましてアクセスされてしまう可能性がある。この問題を悪用した攻撃手法をセッションハイジャックと呼ぶ。

(2) ISMS の要求事項を満たすための管理策

JIS Q 27001 : 2014 に規定されている、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の要求事項を満たすための管理策

  1. 装置は、可用性及び完全性を継続的に維持することを確実とするために、正しく保守しなければならない。(
  2. 情報の利用の許容範囲、並びに情報及び情報処理施設と関連する資産の利用の許容範囲に関する規則は、明確にし、文書化し、実施しなければならない。(
  3. 資産の取扱いに関する手順は、国が定めた情報分類体系に従って策定し、実施しなければならない。(
  4. 情報セキュリティのための方針群は、これを定義し、管理層が承認し、発行し、従業員及び関連する外部関係者に通知しなければならない。(

正しくは「組織が採用した」である。

(3) パーソナルコンピュータ(PC)のセキュリティ対策

  1. 専用ワイヤを用い、机など持ち運ぶことが難しいものと PC のセキュリティスロットとを結びつけるスクリーンロックによる対策は、PC の盗難を防ぐ効果が期待できる。(
  2. メモリロックによる対策は、一定時間操作が行われなかった場合に PC の画面を切り替えて、再び正しいパスワードが入力されるまで操作を禁止することができる。(
  3. PC 画面に貼付することにより、PC 画面の左右の視野角を狭めるプライバシーフィルタによる対策は、のぞき見を防ぐ効果が期待できる。(

正しくは,A.「セキュリティワイヤ」,B.「スクリーンロック」である。

(4) 工事管理における工事用材料の在庫管理など

  1. あらかじめ定めた発注間隔で、発注量を発注ごとに決めて発注する在庫管理方式は定量発注方式といわれ、発注点方式を指しており、需要変動の大きい品目に適している。(
  2. 多くの在庫品目を取り扱うとき、それを品目の取扱い金額又は量の大きい順に並べて、A、B 及び C の 3 種類に区分し、管理の重点を決めるのに用いる分析法は、ABC 分析といわれ、品目の代わりに欠点や不良項目をとった重点管理の分析法は、一般に、パレート分析といわれる。(
  3. 平均在庫量を一定期間の所要量で除した値は、在庫回転率といわれ、この値が低いほど運転資本の回収が早くなることから経営上望ましいとされている。(
  4. ダブルビン法といわれる発注方式において、多量の注文量を生産者の要請に基づき数回に分割して納入する方式は分納制度といわれ、生産の平準化は図られるが、在庫は増加する傾向がある。(

正しくは,1.「定期発注方式」,3.「高い」,4.「生産の平準化は図られるとともに、在庫を減らすことができる」である。

(5) クリティカルパスの所要日数

表に基づくネットワーク式工程表において、クリティカルパスの所要日数は、33 日である。

表 ネットワーク式工程表
作業名 所要日数 先行作業
A 5 なし
B 6 A
C 3 A
d(ダミー作業) 0 B
D 5 C, d
E 12 B
F 10 D
G 3 D
H 5 E, F
I 2 G, H

クリティカルパスは,A → B → d → D → F → H → I であり,所要日数は次式で求められる。

5 + 6 + 0 + 5 + 10 + 5 + 2 = 33 [日]
inserted by FC2 system