平成27年度 第1回 線路及び設備管理

2019年6月12日作成,2021年1月3日更新

問1

(1) 光通信における発光素子又は受光素子と光ファイバとの結合,発光素子の安定化など

光通信では,発光素子からの信号光を光ファイバに導くため,また,光ファイバからの信号光を受光素子に導くため,それぞれの素子と光ファイバの結合には,高い結合効率が求められる。

発光素子から出射される光は,屈折や回折によって広がってしまうことから,光ファイバのコアにその光を高精度で入射させるため,一般に,レンズを用いて光の絞込みを行うなどの工夫がなされている。

コアに光を入射させるためには,光ファイバの最大受光角より小さい範囲内の角度で光を入射させる必要があり,発光素子とレンズや光ファイバとの結合には μm 単位の精度で位置を調節する必要がある。

また,受光素子と光ファイバの結合においては,光ファイバ内を伝搬してきた光がその端面から空間に放射される際,光ファイバの開口数に依存して端面から広がって放射されるため,受講素子と光ファイバ端面の距離を近づける,受光素子の受光面積を大きくするなどの工夫が必要となる。

一方,光通信の高速・広帯域化を実現するには,発光素子の安定化が必要であり,発光素子と光ファイバとの結合部で生ずる反射光の帰還を阻止するために,一般に,ファラデー効果による偏光の回転を利用する光アイソレータが用いられている。光アイソレータの偏光方向は,発光素子の出力光の偏光方向と正確に合わせることが重要となる。

さらに,発光素子は高い信頼性を有しているものの,素子の経年劣化は避けられないため,光出力特性の補償が必要となる。その特性を補償するための機構の 1 つである APC(Automatic Power Control)は,発光素子の端面近傍に監視用の受光素子を配置して,その受光電流を発光素子の注入電流量にフィードバックさせることにより,光出力強度を一定に保つ機能を有している。

光通信用素子」「光ファイバケーブルの伝送理論」参照

(2) 光アクセス網形態の概要,光アクセスシステムの機能と特徴など

(ⅰ) 光アクセス網形態

  1. 光アクセス網形態の 1 つである DS(Double Star)は,光ファイバをユーザごとに割り当てる SS(Single Star)に迂回ルートを設定したもので,SS と比較して高信頼度を実現した光アクセス網形態である。(
  2. 設備センタとユーザ間に光/電気変換を行う能動素子を用いて,1 心の光ファイバに複数のユーザを収容する光アクセス網形態は,ADS といわれる。(
  3. 設備センタとユーザ間に受光素子である光スプリッタを用いて,1 心の光ファイバに複数のユーザを収容する光アクセス網形態は,PDS といわれる。(
  4. SS は,設備センタ側の装置とユーザ宅内側の装置を光ファイバで 1 対 1 にスター状に接続する構成であるため,OTDR を用いた設備センタ側からの各ユーザ区間における故障点探索は,PDS と比較して,一般に,容易である。(

アクセス系線路の光ファイバケーブル設計」参照

正しくは「信頼度は劣るが経済性に優れる」である。DS(Double Star)は,1 心の光ファイバを,中間に受動素子であるスプリッタを設けて複数に分岐し下部も光ファイバを使う形式(PDS : Passive Double Star)と,能動素子であるリモートターミナルを設け OE 変換し下部を複数のメタルケーブルとしたもの(ADS : Active Double Star)がある。どちらも高経済性を実現したものである。

(ⅱ) GE-PON システムに用いられている技術など

  1. GE-PON システムでは,OLT から ONU への下り信号の伝送には,複数のユーザの信号を時間的に重ならないように多重化するため,一般に,FDM 技術が用いられている。(
  2. GE-PON システムでは,ONU から OLT への上り信号の伝送には,OLT を共有するほかの ONU から送出される信号と衝突しないように,一般に,それぞれの信号の位相を変化させて返信する CDMA 技術が用いられている。(
  3. GE-PON システムでは,双方向通信を実現するための技術として,上り信号と下り信号の信号同士が干渉しないように,一般に,WDM 技術が用いられており,上り信号と下り信号には異なる波長が割り当てられている。(

GE-PON システムでは,OLT(Optical Line Terminal)から ONU(Optical Network Unit)への下り信号の伝送には,複数のユーザの信号を時間的に重ならないように多重化するため,一般に,TDM 技術が用いられている。

GE-PON システムでは,ONU から OLT への上り信号の伝送には,OLT を共有するほかの ONU から送出される信号と衝突しないように,一般に,それぞれの信号が時間的に重ならないように多重化するため TDMA(Time Division Multiplex Access)技術が用いられている。

GE-PON システム
図 GE-PON システム

(ⅲ) GE-PON システムの機能と特徴

  1. GE-PON は,LAN で一般的に用いられている ATM 技術を利用しており,最大 1 [Gbit/s] の伝送速度で送受信することが可能である。(
  2. GE-PON では,1 心の光ファイバで双方向通信が行われ,上り信号には 1.49 μm 帯,下り信号には 1.31 μm 帯の波長帯域がそれぞれ割り当てられている。(
  3. GE-PON では,OLT から ONU 方向への下りフレームは,同一のものが OLT の同一送信ポート配下の全ての ONU に到達するため,各 ONU は,自分宛のフレームであるか否かを LLID といわれる識別子により判断して,他の ONU 宛のフレームを廃棄している。(
  4. GE-PON では,伝送帯域を有効利用するため,一般に,上り信号の帯域を動的に制御しており,各 ONU は要求する帯域を OLT へ通知し,OLT が各 ONU に帯域を割り当てるレンジングといわれる機能が用いられている。(

GE-PON は,LAN で一般的に用いられているイーサーネットフレーム技術を利用しており,最大 1 [Gbit/s] の伝送速度で送受信することが可能である。

GE-PON では,1 心の光ファイバで双方向通信が行われ,上り信号には 1.31 μm 帯,下り信号には 1.49 μm 帯の波長帯域がそれぞれ割り当てられている。

GE-PON では,伝送帯域を有効利用するため,一般に,上り信号の帯域を動的に制御しており,各 ONU は要求する帯域を OLT へ通知し,OLT が各 ONU に帯域を割り当てる DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)といわれる機能が用いられている。

(ⅳ) 光ファイバを用いた RF(Radio Frequency)方式による光映像配信システム

  1. 送信元のヘッドエンド設備からエンドユーザへ映像配信する CATV システムにおいて,ヘッドエンド設備からネットワークの途中の光ノードまで既設の同軸ケーブルを用いて映像を伝送し,光ノードからユーザ宅まで光ファイバを用いて映像を配信する形態は,一般に,HFC(Hybrid Fiber Coaxial)といわれる。(
  2. FTTH で光映像配信を行うための変調方式としては,一般に,強度変調方式と FM 一括変換方式が用いられ,FM 一括変換方式は,周波数多重された多チャンネル映像信号でそのまま光信号を強度変調するものである。(
  3. FM 一括変換方式を用いた光映像配信システムでは,強度変調方式を用いた光映像配信システムと比較して,伝送路途中にある光コネクタでのフレネル反射の影響を受けやすいため,反射減衰量を抑制できる APC(Angled Physical Contact)研磨の光コネクタを用いている。(
  4. 強度変調方式は,FM 一括変換方式で必要とされる FM 変復調部が不要であるため,光送受信器の構造が単純であるが,FM 一括変換方式と比較して,一般に,雑音の影響を受けやすい。(

送信元のヘッドエンド設備からエンドユーザへ映像配信する CATV システムにおいて,ヘッドエンド設備からネットワークの途中の光ノードまで光ファイバを用いて映像を伝送し,光ノードからユーザ宅まで(既設の)同軸ケーブルを用いて映像を配信する形態は,一般に,HFC(Hybrid Fiber Coaxial)といわれる。

FTTH で光映像配信を行うための変調方式としては,一般に,強度変調方式と FM 一括変換方式が用いられ,強度変調方式は,周波数多重された多チャンネル映像信号でそのまま光信号を強度変調するものである。

FM 一括変換方式を用いた光映像配信システムでは,強度変調方式を用いた光映像配信システムと比較して,伝送路途中にある光コネクタでのフレネル反射の影響を受けやすいため,反射減衰量が増加する APC(Angled Physical Contact)研磨の光コネクタを用いている。ちなみに,反射減衰量は,通常の PC は 25 dB 程度,APC は 60 dB 程度である。

問2

(1) 光海底ケーブル故障位置の測定など

光海底ケーブル故障は,その故障タイプにより故障位置測定方法や修理方法が異なることから,故障タイプを特定し,より正確な故障位置を陸揚局から測定することが重要となる。

光海底ケーブルの絶縁層などが損傷することにより給電路が海水に短絡した状態の故障は,一般に,絶縁故障(シャント故障)といわれ,光ファイバには異常がないため,光学的方法では故障位置を特定することはできない。両端給電方式の光増幅海底ケーブルシステムでは,シャント故障箇所が 1 中継区間内であるとき,各光海底中継器にはいずれかの陸揚局から給電され,電圧電流測定により,給電電位がゼロになる点をシャント故障箇所に合わせることで,故障位置を特定することができる。

さらに,シャント故障箇所が陸揚局から第 1 光海底中継器までの区間であれば,陸揚局からの電気パルスエコー測定により故障位置を特定することができる。

また,光海底ケーブル内の給電用導体が,陸揚局からの給電に対して開放された状態の故障は,一般に,オープン故障といわれる。光海底ケーブルの故障箇所のケーブル両端がオープン故障となった場合,工場出荷時の各ケーブルセグメントの静電容量データと陸揚局からの静電容量測定結果を比較することにより,陸揚局から故障点までのおおよその距離を計算できる。

一方,光増幅海底ケーブルシステムにおいて,第 2 中継区間以降に光ファイバ破断故障が生じた場合は,C-OTDR を用いることにより,光ファイバの破断位置を 100 [m] 以下の精度で測定することができる。

水底線路の概要」参照

C-OTDRは,Coherent - Optical Time Domain Reflectomery の略で,コヒーレント光領域反射測定のことである。

(2) 通信土木設備の概要,劣化,補修方法など

(ⅰ) 管路設備

  1. 管路設備は,設備の形態により,一般に,一般管路設備,中口径管路設備及び地下配線管路設備に分けられ,一般管路設備では,1 条の管路にメタリックケーブルと比較して細径化された光ファイバケーブルを複数収納する場合もある。(
  2. 一般管路設備は,一般に,呼び径 75 mm 管が多条多段に積まれ,地表面下 1 [m] ~ 2 [m] 程度に埋設される。(
  3. 管種には,硬質ビニル管,鋼管,鋳鉄管などがあり,同一呼び径の場合,管種によらず,管の肉厚は同一である。(
  4. 盛土区間における管路の占用位置は,盛土崩壊のおそれが少ない位置を基本とし,管種は,一般に,金属管が使用される。(

管種には,硬質ビニル管,鋼管,鋳鉄管などがあり,同一呼び径の場合,管種によらず,管の肉厚は異なる

(ⅱ) マンホール及びハンドホール

  1. マンホールは,一般に,き線ルート及び中継ルートにおいてケーブルや地下用クロージャを収容する設備であり,作業者がその中に入ってケーブルの建設保守作業を行うためのスペースが確保されている。(
  2. レジンコンクリート製ブロックマンホールは,複数に分割されたブロックで構成され,ブロック相互の接合には接着剤が使用されている。(
  3. ハンドホールは,地下配線ルートにおいてケーブルや地下配線用クロージャを収容する設備であり,収容可能な管路条数は片側 2 条までである。(

ハンドホールは,地下配線ルートにおいてケーブルや地下配線用クロージャを収容する設備であり,収容可能な管路条数は片側 4 条までである。

(ⅲ) マンホールの劣化

  1. 地中水に鉄やマンガン成分を含む臨界埋立地に設置されるマンホールは,嫌気性バクテリアなどにより生成される硫化水素でコンクリート壁が浸食される場合がある。(
  2. マンホール内の金物の腐食には,異なる種類の金属材料が電気的に接触して生じる応力腐食割れ,狭い隙間の内部に生ずる孔食などがある。(
  3. マンホール内の金物のバクテリア腐食は,微生物の作用によるものであり,有機被覆による犠牲防食,又は流電陽極による絶縁防食,あるいはそれらを併用することにより金属の長寿命化・延命が可能である。(
  4. とう道壁に用いられるコンクリートの中の消石灰がコンクリートの亀裂から流出し,地中水に置き換わると,コンクリートの中は次第にアルカリ化し,鉄筋は腐食しやすくなる。(

マンホール内の金物の腐食には,異なる種類の金属材料が電気的に接触して生じる異種金属腐食,狭い隙間の内部に生ずる間隙腐食などがある。

マンホール内の金物のバクテリア腐食は,微生物の作用によるものであり,有機被覆による絶縁防食,又は流電陽極による犠牲防食,あるいはそれらを併用することにより金属の長寿命化・延命が可能である。

とう道壁に用いられるコンクリートの中の消石灰がコンクリートの亀裂から流出し,地中水に置き換わると,コンクリートの中は次第に中性化し,鉄筋は腐食しやすくなる。

(ⅳ) 管路の補修工法

  1. 錆腐食により劣化した金属管路の内面に金属薄膜を形成し,補修する方法は,管内面ライニング工法といわれる。(
  2. スポンジ付きピグを用いることにより 0.3 [mm] 程度のライニング膜を形成し,補修する方法は,超薄膜ライニング工法といわれる。(
  3. 管路内の空気を吸引・減圧することで空気の流れを作り,その流れを利用してライニング材を含浸したホースを反転挿入させて 3 [mm] 程度のライニング膜を形成し,補修する方法は,負圧回転式ライニング工法といわれる。(
  4. 硬質ビニル管の扁平部を管路内から加熱溶融して除去するとともに,油圧を利用して熱硬化性樹脂の内管を管路内に引き込み,矯正・補強する方法は,ビニル管扁平矯正工法といわれる。(

錆腐食により劣化した金属管路の内面に樹脂薄膜を形成し,補修する方法は,管内面ライニング工法といわれる。

管路内の空気を吸引・減圧することで空気の流れを作り,その流れを利用してライニング材を含浸したホースを反転挿入させて 0.2 [mm] 程度のライニング膜を形成し,補修する方法は,負圧回転式ライニング工法といわれる。

硬質ビニル管の扁平部を管路内から加熱軟化させるとともに,油圧を利用して機械的に矯正・補強する方法は,ビニル管扁平矯正工法といわれる。

問3

(1) アクセス系線路設備におけるメタリックケーブル又は光ファイバケーブルの保守方法など

アクセス系線路設備における地下用メタリックケーブルには,き線系ケーブルと配線系ケーブルがある。

き線系ケーブルには,一般に,ケーブル内に乾燥空気を連続して供給するガス連続供給方式によるガス保守が適用され,ケーブル損傷などによりピンホールが発生した場合,ケーブル内に供給されているガスが漏洩して内圧が低下するので,それを監視・検出することにより,ピンホールを発見することが可能となる。

配線系ケーブルには,ケーブル内への浸水を防ぐために,ケーブル内にポリブデンを主成分とする混和物を充填した JF ケーブルがある。

一方,アクセス系線路設備における光ファイバケーブルには,一般に,不織布に吸水材料が塗布してある WB テープを用いた WB ケーブルがある。WB テープは,浸水すると吸水材料が吸水して膨張しながらゲル化してケーブルの隙間を埋め尽くし,止水ダムを形成することによりそれ以上の浸水を防止するものである。WB ケーブル適用区間では,マンホール内のケーブル接続箇所に浸水を検知するための浸水検知モジュールを設置することにより,ガス保守を不要としている。

浸水検知モジュールは,吸収膨張剤,可動体,曲げ付与部などから構成され,接続部に浸水が発生すると,吸収膨張剤が水を含むことにより膨張し,可動体を押し上げる。このとき,光ファイバの可動体の押上げにより,曲げ付与部に一定の曲げを与えられ曲げ損失が発生する。この曲げ損失を,OTDR により検出することで,浸水の発生及び浸水位置を検知することが可能となる。

通信ケーブル監視技術」参照

OTDR は,Optical Time Domain Reflectometer の略で,光パルス試験器のことである。

(2) 線路設備における劣化とその対策など

(ⅰ) 線路設備の劣化,生物被害などとそれらの対策

  1. プラスチック材料は紫外線に長期間さらされると,分子鎖の切断により強度劣化が生じ,割れやすくなる。これを防ぐため,屋外で使用するケーブル外被材料などには,紫外線領域の光を吸収するカーボンブラックなどが含有されている。(
  2. 架空線路設備の吊り線などに使用される鋼材は,鉄を主成分としているため,吊り線の防食対策として,亜鉛-アルミニウム合金をめっきした鋼線を撚り合わせた高耐食鋼撚り線を適用する方法が有効である。(
  3. 昆虫類によるドロップ光ファイバケーブルの外被損傷としては,クマゼミの幼虫によるかじり,クマゼミの成虫の産卵管による損傷などがあり,ドロップ光ファイバケーブルと平行にピアノ線を張る対策が有効である。(
  4. キツツキ,リスなどの鳥虫獣類による外被損傷の防止対策に用いられる架空ケーブルとしては,波付ステンレスラミネートテープで外被を補強・保護した HS ケーブルがある。HS ケーブルは,強風地域での外被亀裂に対する対策としても有効である。(

昆虫類によるドロップ光ファイバケーブルの外被損傷としては,クマゼミの幼虫によるかじり,クマゼミの成虫の産卵管による損傷などがあり,ドロップ光ファイバケーブルの被覆を硬質にする対策が有効である。

なお,架空ケーブルに平行にピアノ線を張る対策は鳥害に有効である。また,クマゼミの幼虫による害はない。コウモリガの幼虫が心線に体液を付着させて絶縁不良を起こすことがある。

(ⅱ) 架空メタリック平衡対ケーブルの外被損傷の原因など

  1. LAP 外被を有するケーブルの内部へ水が浸入し,その凍結圧により円周方向への応力が発生した場合,その応力がアルミシースの合わせ目部分に集中し,ケーブル外被に長手方向への亀裂が発生するおそれがある。(
  2. 低温時の張線作業では,高温時の張線作業と比較して,かく線器のつかみ刃付近での外被部分に伸び方向の力が働きやすく,外被損傷が発生するおそれがある。かく線器にすべりが発生した場合は,すべりが無くなるまで張力をかけるなどの注意を払う必要がある。(
  3. 自己支持型(SS)ケーブルの吊架時において,ナイフを用いて支持線とケーブルの分離作業を行った場合,刃先がケーブル本体に達して外被に損傷を与えるおそれがあるため,専用工具である SS ケーブル切裂工具を用いるのが適切な作業方法である。(

高温時の張線作業では,低温時の張線作業と比較して,かく線器のつかみ刃付近での外被部分に伸び方向の力が働きやすく,外被損傷が発生するおそれがある。かく線器にすべりが発生した場合は,作業を中断する必要がある。

(3) ケーブルの架渉,布設方法など

(ⅰ) ケーブルの架渉方法など

  1. 架空用光ファイバケーブルのうち,ケーブル部と支持線との間のスリットを大きくして首部に窓をあけた構造の SS ケーブルは,スリットのない SS ケーブルと比較して,強風によるダンシング現象が生じやすいが,軽量化されているため,架渉作業などが容易である。(
  2. 丸型ケーブルを吊り線に吊架するためには,ケーブルリングなどが用いられ,傾斜地などで移動防止対策が必要な場合は,巻付けグリップが併用される。(
  3. SS ケーブルは,ケーブル部と支持線が一体となっており,丸型ケーブルと異なり,吊り線を必要としないため,架渉作業性に優れている。また,SS ケーブルと丸型ケーブルを平行架渉する場合,両ケーブルの接触による損傷を防止する対策として,ケーブル移動防止金物を用いる方法がある。(
  4. 一束化とは,電柱間にケーブルを架渉する際に複数のケーブルを束にすることであり,一束化する方法としては,吊架用線とスパイラル状のハンガを先に設置し,ケーブルを後から架渉する方法などがある。(

架空用光ファイバケーブルのうち,ケーブル部と支持線との間のスリットを大きくして首部に窓をあけた構造の SS ケーブルは,スリットのない SS ケーブルと比較して,強風によるダンシング現象が生じにくく,軽量化されているため,架渉作業などが容易である。

丸型ケーブルを吊り線に吊架するためには,ケーブルリングなどが用いられ,傾斜地などで移動防止対策が必要な場合は,ラッシングロッドなどが使用される。

SS ケーブルは,ケーブル部と支持線が一体となっており,丸型ケーブルと異なり,吊り線を必要としないため,架渉作業性に優れている。また,SS ケーブルと丸型ケーブルを平行架渉する場合,両ケーブルの接触による損傷を防止する対策として,セパレータを用いる方法がある。

(ⅱ) 地下管路区間におけるケーブル布設作業など

  1. 地下管路区間へケーブルを布設する前に,管路内に当該ケーブルを布設することが可能であるか否かを確認するために,円筒形のマンドレルを用いた管路の通過試験を行う場合がある。(
  2. 地下管路区間へのケーブル布設作業において,管路の両端に高低差がある場合は,布設張力を軽減する観点から,一般に,高い方のマンホールからケーブルを引き入れる。また,地下管路区間に屈曲点(水平曲がり)が 1 か所ある場合は,同様の観点から,一般に,当該屈曲点に遠い方のマンホールからケーブルを引き入れる。(
  3. 地下管路区間へのケーブル布設作業において,先端牽引工法で布設張力がケーブルの許容張力を超える場合には,中間牽引工法や布設ルートの中間での 8 の字取り工法などにより,布設張力を軽減する方法が用いられる。(
  4. 管路内の溜水が凍結するおそれのある地下管路区間において,凍結圧によりケーブルが圧壊し変形することを防ぐ対策として,凍結故障防止用の PE パイプを管路内に挿入し,管路内の凍結圧を吸収する方法がある。(

地下管路区間へのケーブル布設作業において,管路の両端に高低差がある場合は,布設張力を軽減する観点から,一般に,高い方のマンホールからケーブルを引き入れる。また,地下管路区間に屈曲点(水平曲がり)が 1 か所ある場合は,同様の観点から,一般に,当該屈曲点に近い方のマンホールからケーブルを引き入れる。

問4

建設業法に定める内容に基づく電気通信工事の施工管理など

建設業法は,建設業を営む者の資質の向上,建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって,建設工事の適正な施工を確保し,発注者を保護するとともに,建設業の健全な発達を促進し,もって公共の福祉の増進に寄与することを目的として定められており,電気通信を含む 28 業種において建設業の許可を受けた建設業者は,その請け負った建設工事を施工するときは,当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者を置かなければならない。

図は,電気通信事業者を発注者とした電気通信事業の用に供する電気通信線路設備の建設工事における請負契約に関する体系の例を示す。図に示す体系に基づき当該工事を施工する場合,A 社は専任の監理技術者を,B,C 及び D 社は専任の主任技術者を,工事現場ごとにそれぞれ配置しなければならない。

また,特定建設業者で元請負人である A 社の B 社との下請契約における下請代金の支払い期日は,B 社の引渡しの申出の日から起算して 50 日を経過する日以前において,かつ,できる限り短い期間内において定められなければならない。

請負契約に関する体系の例
請負契約に関する体系の例

工程管理」参照

(2) システムの信頼性

(ⅰ) 故障率分布の一般的な特徴など

  1. ある部品の故障率が CFR 型を示す期間内にあるとき,この部品の寿命分布は,正規分布に従う。(
  2. ある部品の故障率が CFR 型 を示す期間内にあるとき,この部品の時間当たりの故障の起こる割合は一定で,その故障発生の時期の予測が可能である。(
  3. ある部品の故障率が DFR 型 を示す期間内にあるとき,この部品はある時間帯で集中的に故障する傾向があり,故障が集中的に起こる直前に事前取替を行うことで未然に故障を防止できる。(
  4. ある部品の故障率が DFR 型を示す期間内にあるとき,この部品の使用に先立ち,バーンインなどによりスクリーニングを行うことで故障率の低い良品を選ぶことができる。(

ある部品の故障率が CFR(Constant Failure Rate : 故障率一定)型を示す期間内にあるとき,この部品の寿命分布は,指数分布に従う。

ある部品の故障率が CFR 型 を示す期間内にあるとき,この部品の時間当たりの故障の起こる割合は一定で,その故障発生の時期の予測は困難である。

ある部品の故障率が IFR 型(Increasing Failure Rate : 故障率増加)を示す期間内にあるとき,この部品はある時間帯で集中的に故障する傾向があり,故障が集中的に起こる直前に事前取替を行うことで未然に故障を防止できる。

CFR(Constant Failure Rate):故障率一定
DFR(Decreasing Failure Rate):故障率減少
IFR(Increasing Failure Rate):故障率増加

(ⅱ) MTTF,MTBF など

  1. ある装置の偶発故障期間中の故障率が,1 時間当たり 0.02 であるとき,MTBF は,50 [時間] である。(
  2. 装置を使用開始してから故障するまでの時間の平均である MTTF は,修理を前提としない装置で用いられる。(
  3. 装置を使用開始してから最初に故障するまでの時間は,MTBF を計算する際の稼働時間の和に含めない。(
  4. MTBF を求める方法として,偶発故障期間中のある期間を区切って数台の装置の動作を観測し,その期間中の延べ総動作時間を延べ総動作時間を延べ総故障数で除する方法がある。(

装置を使用開始してから最初に故障するまでの時間は,MTBF を計算する際の稼働時間の和に含める

(3) システムの信頼性

システムを構成する装置は偶発故障期間にあり,$\log_{10}{3} = 0.477$ とする。また,答えは四捨五入し有効数字 3 桁とする。

(ⅰ) $1/n$ 冗長システムの信頼度

図に示すように,信頼度 0.7 である装置 A が,$n$ 台並列に接続されている $1/n$ 冗長システムにおいて,システム全体の信頼度を 0.9999 以上にするためには,装置 A の台数である $n$ を少なくとも 8 台以上とする必要がある。

1/n 冗長システム
図 1/n 冗長システム

信頼度 0.7 である装置 A が,$n$ 台並列に接続されている $1/n$ 冗長システムにおいて,システム全体の信頼度を 0.9999 以上にするためには,次式が成り立てばよい。

\[ 0.9999 \le 1 - (1-0.7)^n \]

上式を整理する。

\[ -0.0001 \le -0.3^n \]

両辺の対数をとり,整理する。

\[ - \log_{10}{10^{-4}} \le -n \log_{10}{\frac{3}{10}} \] \[ 4 \le -n(\log_{10}{3} - \log_{10}{10}) = -n(0.477 - 1) = n \times 0.523 \]

よって,$n \ge 7.65$ であればよいので,これを満たす最小の整数は,8 となる。

(ⅱ) あるシステムの故障率

あるシステムのアベイラビリティ及び MTTR について,ある運用期間内において調査したところ,アベイラビリティが 99.6 [%],MTTR が 1 [時間] であった。このシステムの調査期間内の故障率は,4.02 × 10-3 [件 / 時間] である。

アベイラビリティ A = MTBF / (MTBF + MTTR) で表される。与えられた値を代入すると次式となる。

0.096 = MTBF / (MTBF + 1)

上式より,MTBF = 249 となるので,故障率は次式で求められる。

故障率 $\lambda$ = 1/MTBF = 1/249 = 0.004016 = 4.02 × 10-3 [件 / 時間]

問5

(1) 情報セキュリティポリシー

情報セキュリティポリシーとは組織の情報セキュリティに関する方針などを示したものであり,情報セキュリティマネジメントを実践するための様々な取組みを集約し規定している。情報セキュリティポリシーの文書は,一般に,情報セキュリティ基本方針,情報セキュリティ対策基準及び情報セキュリティ実施手順の 3 階層で構成される。

情報セキュリティ基本方針には,情報セキュリティに関する組織の取組み姿勢及び組織全体に関することについて記述する。また,対策基準で規定されていないケースが生じた場合の判断のよりどころとなるのもこの基本方針である。

情報セキュリティ対策基準には,基本方針の内容を受けて具体的な管理策を記述する。管理策には多くのものがあり,技術的対策,物理的対策,人的対策及び組織的対策に大別される。対策基準を策定する際には,多くの管理策の中から自組織のリスクを低減するための管理策を選ぶ必要がある。JIS Q 27002 : 2014 は,情報セキュリティポリシーを策定する際のガイドラインとして利用されることがあり,様々な実践の模範となる管理策であるベストプラクティスが列挙されている。

セキュリティ管理手法」参照

(2) ファイアウォールの機能

  1. ファイアウォールのログ取得機能は,通信の許可状況と拒否状況,不正な通信の検出,ファイアウォールの動作状況などの記録を残すことができ,取得されたログはセキュリティインシデントの発見に際して重要な手がかりとなる場合がある。(
  2. ファイアウォールのパケットフィルタリング機能は,IP パケットに改ざんがあるかどうかをチェックし,改ざんがあった場合にはその IP パケットを除去することができる。(
  3. ファイアウォールポリシーは,ファイアウォールが通信を許可するかどうかを判断するための基準であり,フィルタリングルール,アクセスコントロールリストなどが含まれる。(

ファイアウォールのパケットフィルタリング機能は,IP パケットに改ざんがあるかどうかをチェックし,改ざんがあった場合にはその IP パケットを除去することができない。パケットフィルタリング機能は,あらかじめ設定した条件により,IP パケットを受け入れ,廃棄,拒否するが,IP パケットの改ざんを認識することはできない。

(3) パスワードの解析手法など

  1. サーバにユーザ ID とパスワードを送信し,認証されるかどうかを確認することによりパスワードを解析する手法は,一般に,オフライン攻撃といわれる。また,パスワードファイルなどを入手してサーバとは別のコンピュータでパスワードを解析する手法は,一般に,オンライン攻撃といわれる。(
  2. あらゆる文字列の組合せを総当たりで試すことによりパスワードを解析する手法は,一般に,辞書攻撃といわれ,文字列が長い場合や文字の種類が多い場合には長時間を要するか又は高速処理が可能なコンピュータが必要となる。(
  3. ハッシュ化されたパスワード(ハッシュ値)から元のパスワードを求めることは,ハッシュ関数の一方向性から現実的には不可能である。そのため,適当なパスワード候補からハッシュ値を生成し,ハッシュ化されたパスワードと同一となるものを探索することによりパスワードを解析する手法がある。(
  4. パスワードによる認証には,固定パスワード,ワンタイムパスワードなどを用いる方式がある。ワンタイムパスワードは,固定パスワードと比較して盗聴に対する耐性が低い。(

サーバにユーザ ID とパスワードを送信し,認証されるかどうかを確認することによりパスワードを解析する手法は,一般に,オンライン攻撃といわれる。また,パスワードファイルなどを入手してサーバとは別のコンピュータでパスワードを解析する手法は,一般に,オフライン攻撃といわれる。

あらゆる文字列の組合せを総当たりで試すことによりパスワードを解析する手法は,一般に,ブルートフォース攻撃といわれ,文字列が長い場合や文字の種類が多い場合には長時間を要するか又は高速処理が可能なコンピュータが必要となる。

パスワードによる認証には,固定パスワード,ワンタイムパスワードなどを用いる方式がある。ワンタイムパスワードは,固定パスワードと比較して盗聴に対する耐性が高い

(4) 施工管理に用いられる工程表の種類,特徴など

  1. 縦軸に作業内容を置き,横軸に各作業の達成率をとるガントチャートは,一般に,各作業の所要日数は分からないが,作業の順序や工期に影響を及ぼす作業が明確に分かる。(
  2. バナナ曲線といわれる工程管理曲線において,実施工程曲線が下方許容限界曲線を下回るときは,工程が予定より進み過ぎており,一方,実施工程曲線が上方許容限界曲線を上回るときは,工程が予定より遅れていると判断できる。(
  3. 曲線式工程表の 1 つであるグラフ式工程表は,バーチャートと同様に,作業の順序は分かりやすく,ネットワーク式工程表と比較して重点管理作業が分かりにくい。(
  4. 縦軸に出来高累計(進捗度)を置き,横軸に日数をとって各作業の工程(進捗度合い)を矢線で示した工程表は,斜線式工程表といわれ,各作業の計画工程と実施工程が視覚的に対比でき,どの作業が全体工期に影響を及ぼすかが把握しやすい。(
  5. ネットワーク式工程表において,所要日数がゼロで作業相互間の関係を示すダミー作業は,2 つ以上あってもよい。また,クリティカルパスも 2 つ以上あってもよい。(

縦軸に作業内容を置き,横軸に各作業の達成率をとるガントチャートは,一般に,各作業の所要日数は分からず,作業の順序や工期に影響を及ぼす作業が分からない

バナナ曲線といわれる工程管理曲線において,実施工程曲線が下方許容限界曲線を下回るときは,工程が予定より遅れており,一方,実施工程曲線が上方許容限界曲線を上回るときは,工程が予定より進み過ぎていると判断できる。

曲線式工程表の 1 つであるグラフ式工程表は,バーチャートと同様に,作業の順序は分かりにくく,ネットワーク式工程表と比較して重点管理作業も分からない

縦軸に出来高累計(進捗度)を置き,横軸に日数をとって各作業の工程(進捗度合い)を S 字カーブ線で示した工程表は,出来高累計曲線式工程表といわれ,各作業の計画工程と実施工程が視覚的に対比でき,どの作業が全体工期に影響を及ぼすかが把握できない

(5) 線路設備工事における労働安全衛生に関する法令に基づく安全作業など

  1. 事業者は,第一種酸素欠乏危険作業に係る酸素欠乏危険作業主任者に,その日の作業を開始する前に作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を測定させた場合,作業に従事する全ての労働者が作業を行う場所を離れた後再び作業を開始する前には,酸素濃度の測定を省かせることができる。(
  2. 事業者は,マンホール設備内などでの第二種酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合は,当該作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を 18 [%] 以上,かつ,硫化水素の濃度を 100 [ppm] 以下に保つように換気しなければならない。(
  3. 事業者は,第二種酸素欠乏危険作業について,酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の特別の教育を修了した者のうちから,酸素欠乏危険作業主任者を選任しなければならない。(
  4. 事業者は,酸素欠乏危険作業に労働者を従事させるときは,常時作業の状況を監視し,異常があったときに直ちにその旨を酸素欠乏危険作業主任者及びその他の関係者に通報する者を置く等異常を早期に把握するために必要な措置を講じなければならない。(

事業者は,第一種酸素欠乏危険作業に係る酸素欠乏危険作業主任者に,その日の作業を開始する前に作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を測定させた場合,作業に従事する全ての労働者が作業を行う場所を離れた後再び作業を開始する前には,酸素濃度の測定を実施しなければならない

事業者は,マンホール設備内などでの第二種酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合は,当該作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を 18 [%] 以上,かつ,硫化水素の濃度を 10 [ppm] 以下に保つように換気しなければならない。

事業者は,第二種酸素欠乏危険作業について,酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の技能講習を修了した者のうちから,酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者を選任しなければならない。なお,第一種酸素欠乏危険作業は,酸素欠乏の危険のみの場合で,第二種は,酸素欠乏症かつ硫化水素中毒のおそれのある場所での作業を表す。

inserted by FC2 system