平成27年度 第2回 線路及び設備管理

2019年6月11日作成,2021年1月3日更新

問1

(1) 光ファイバの光損失の種類と要因など

光損失はその発生メカニズムの違いにより,光ファイバ固有の損失と光ファイバを実際に通信システムに組み入れたときに生ずる損失とに大別される。前者には,吸収損失,レイリー散乱損失などがあり,後者には,曲げによる放射損失,接続損失などがある。

吸収損失には,石英系ガラスが本来持っている固有の吸収によるものと,石英系ガラス内に含まれている不純物によるものとがある。前者のうち,光のエネルギーが石英系ガラス分子の振動エネルギーとして吸収されることにより生ずる赤外吸収損失は,波長 10 [μm] 近傍にその損失ピークを持つ。

レイリー散乱損失は,光がその波長と比較してあまり大きくない物質に当たったときに,その光が様々な方向に進んでいく現象により生ずるものであり,波長の 4 乗に反比例する。

曲げによる放射損失は,曲げられた光ファイバ中において入射角が臨界角以上となる光が放射されるために生ずるものである。光ファイバの曲げによる放射損失を低減するには,一般に,コアとクラッドの比屈折率差を大きくすることが有効であり,これを実現した許容曲げ半径が 15 [mm] などの光ファイバ心線を用いた光ファイバケーブルがアクセス系の架空線路区間やユーザ引込み区間に導入されている。

接続損失には,接続する光ファイバのコアどうしの中心軸がずれている場合,一方のコアから出た光の一部が他方のコアに入射できず放射されて生ずる損失がある。

また,コアどうしの接続部に微小な空隙が存在する場合には反射が生ずる。この現象は,石英系ガラスと空気の屈折率の違いに起因するもので,一般に,フレネル反射といわれ,接続損失が生ずる要因の 1 つとなる。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

許容曲げ半径が 15 [mm] の光ファイバ心線は,R15 光ファイバ心線と呼ばれる。

(2) 光クロージャの構造,光ファイバの接続方法など

(ⅰ) 光クロージャ及び光成端箱の保護等級

  1. 光クロージャ及び光成端箱の防塵防水性能は,一般に,JIS で規定される IP コードで表され,外来固形物に対する保護等級は第一特性数字で,水の浸入に対する保護等級は第二特性数字で,それぞれ表示される。(
  2. 保護等級 IPX4 を満たしている光クロージャは,外来固形物に対する保護等級については規定されていない。(
  3. 保護等級 IPX3 を満たしている光成端箱は,屋外壁面への設置が可能な防雨構造であって,水の飛沫及び噴流に対する保護性能を有している。(
  4. 架空用光クロージャとしては,一般に,保護等級 IPX4 を満たしているものが用いられ,高気密性が要求される地下用光クロージャとしては,保護等級 IPX7 を満たしているものが用いられる。(

保護等級 IPX3 を満たしている光成端箱は,屋外壁面への設置が可能な防雨構造であって,水の散水に対する保護性能を有している。

表 第二特性数字で示される水に対する保護等級(JIS C 0920 : 2003)
第二特性数字 保護等級の要約 保護等級の定義
0 無保護
1 鉛直に落下する水滴に対して保護する。 鉛直に落下する水滴によっても有害な影響を及ぼしてはならない。
2 15 度以内で傾斜しても鉛直に落下する水滴に対して保護する。 外郭が鉛直に対して両側に 15 度以内で傾斜したとき,鉛直に落下する水滴によっても有害な影響を及ぼしてはならない。
3 散水 (spraying water) に対して保護する。 鉛直から両側に 60 度までの角度で噴霧した水によっても有害な影響を及ぼしてはならない。
4 水の飛まつ (splashing water) に対して保護する。 あらゆる方向からの水の飛まつによっても有害な影響を及ぼしてはならない。
5 噴流 (water jet) に対して保護する。 あらゆる方向からのノズルによる噴流水によっても有害な影響を及ぼしてはならない。
6 暴噴流 (powerfull jet) に対して保護する。 あらゆる方向からのノズルによる強力なジェット噴流水によっても有害な影響を及ぼしてはならない。
7 水に浸しても影響がないように保護する。 規定の圧力及び時間で外郭を一時的に水中に沈めたとき,有害な影響を生じる量の水の浸入があってはならない。
8 潜水状態での使用に対して保護する。 関係者間で取り決めた数字7より厳しい条件下で外郭を継続的に水中に沈めたとき,有害な影響を生じる量の水の浸入があってはならない。

(ⅱ) 光クロージャの構造など

  1. 光クロージャは,一般に,光ファイバケーブルの心線接続点に設置され,光ファイバの接続部や心線余長を収納するもので,マンホール内などに設置される地下用と,電柱に架設された架空光ファイバケーブル区間に設置される架空用に大別できる。(
  2. 光クロージャには,設置される自然環境下における光ファイバ心線接続部の長期的な信頼性の確保が要求される。地下用光クロージャは,機械的な組立て機構を持ち,ゴムパッキンなどにより優れた防水性能が得られる構造を有しており,また,架空用光クロージャは,紫外線劣化を受けにくい材料を用いている。(
  3. 架空光ファイバケーブルとユーザ宅への引込み用ドロップ光ファイバケーブルとの接続箇所に用いられる架空用光クロージャは,光ファイバ心線を整理して収容するため,一般に,収納トレイを具備している。(
  4. 非ガス保守方式では,マンホール内などに浸水検知モジュールが設置される。1,000 心程度の多心光ファイバケーブル区間に用いられる地下用光クロージャは,一般に,浸水検知モジュールの収納スペースを有していないため,浸水検知モジュールは,地下用光クロージャとは別の専用の収容箱に収納される。(

非ガス保守方式では,地下用光クロージャに浸水検知モジュールが設置される。

(ⅲ) 光ファイバの融着接続

  1. 融着接続は,光ファイバ端面を溶融して接続する方法である。溶融には幾つかの方式があり,一般に,接続の容易さ及び信頼性などの面からガスバーナー方式が用いられている。(
  2. 光ファイバ融着接続部においては,光ファイバ心線の被覆は除去され機械的強度が低下しているため,一般に,熱収縮チューブにより被覆除去部を覆う補強方法が採られている。(
  3. 多心融着接続機における光ファイバの調心方法としては,一般に,融着接続する光ファイバを V 溝上に整列させ,光ファイバ端面を加熱・溶融し,光ファイバの表面張力による自己調心作用を利用して軸合わせを行う外径調心法が用いられている。(

融着接続は,光ファイバ端面を溶融して接続する方法である。溶融には幾つかの方式があり,一般に,接続の容易さ及び信頼性などの面からアーク放電方式が用いられている。

(ⅳ) 光ファイバのコネクタ接続又はメカニカルスプライス

  1. コネクタ接続は,着脱が容易な光コネクタを用いる方法であり,一般に,フェルール型コネクタが用いられている。単心光ファイバ用のフェルール型コネクタは,割りスリーブをガイドにしてフェルールどうしを精度良く突合せ接続することができるようにしたものである。(
  2. MT コネクタは,光ファイバテープ心線相互の一括接続に用いられるネジ締め方式の光コネクタであり,クランプスプリングによってフェルールの外形を基準としてフェルールどうしを精度良く突合せ接続することができるようにしたものである。(
  3. メカニカルスプライスは,V 溝を形成した接続部品を用いて機械的に光ファイバを固定・把持して接続する方法であり,対向する光ファイバ端面どうしを V 溝内で正確に突き合わせることができるため,光ファイバ端面間に屈折率整合剤を不要としている。(
  4. メカニカルスプライスによる接続作業では,一般に,作業時間を短縮するため,光ファイバ被覆除去作業は省略され,また,光ファイバ端面を球面研磨することにより,低損失な光ファイバの接続が実現されている。(

MT コネクタは,光ファイバテープ心線相互の一括接続に用いられる。かん合するピンを基準として,クランプスプリング(MT コネクタクリップとも呼ばれる)によってフェルールどうしを精度良く突合せ接続することができるようにしたものである。

メカニカルスプライスは,V 溝を形成した接続部品を用いて機械的に光ファイバを固定・把持して接続する方法であり,対向する光ファイバ端面どうしを V 溝内で正確に突き合わせることができるが,空隙が生じるため光ファイバ端面間に屈折率整合剤を使用し空隙を埋める

メカニカルスプライスによる接続作業では,光ファイバ被覆除去作業を行い,軸を垂直にカットし V 溝において突合せ固定することにより,低損失な光ファイバの接続が実現されている。

問2

(1) 海底ケーブル敷設工事に用いられるケーブル敷設船の機能など

ケーブル敷設船は,一般の船舶が有している航海に必要な機能に加え,複雑なケーブル敷設工事に対応できる機能を装備している。

ケーブル敷設船の推進方式としては,船上でのケーブル接続作業などへの支障にならないように振動の少ない電気推進方式,前進全速から後進全速までの全範囲で任意の船速を無段階で得ることができる可変ピッチプロペラを用いた方式などがある。

また,作業性を考慮して,ケーブル陸揚地での船固めや船上でのケーブル接続作業における自動定点保持を長時間可能とするために推進装置を制御する DPS(Dynamic Positioning System)を搭載するケーブル敷設船が導入されている。

さらに,ケーブル敷設船は,埋設機,ROV(Remotely Operated Vehicle)などを吊り下げるための A フレーム,大量の海底ケーブルを収納する複数のケーブルタンク,海底中継器を恒温で格納することができる海底中継器格納場所を有しており,ケーブル敷設・巻揚げのための DCE(Drum Cable Engine),高速敷設に適した LCE(Linear Cable Engine)などを装備している。

水底線路の概要」参照

A フレームはクレーン,LCE はケーブルを繰り出すためのエンジンである。

(2) 電線共同溝及び情報 BOX の概要,通信土木設備の道路占用など

(ⅰ) 電線共同溝の概要

  1. 電線共同溝とは,電線共同溝の整備等に関する特別措置法に基づき,電線の設置及び管理を行う 2 以上の者の電線を収容するため,道路管理者が道路の地下に設ける施設をいう。(
  2. 電線共同溝は道路の地下空間を利用し,電力線,通信線などの電線類を,主に歩道下に共同収容することにより,道路の構造の保全を図りつつ,安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備を図ることを目的としている。(
  3. 電線共同溝には,電気事業者,電気通信事業者,CATV 事業者,有線ラジオ放送事業者など,電線管理者の電線を収容できるが,道路管理用のケーブルその他の行政用のケーブルを収容することはできない。(
  4. 電線共同溝の種類は,管路の設置位置や構造面から浅層埋設方式と従来方式に大別される。浅層埋設方式には,小型トラフの採用による浅層化,共用 FA 方式の採用及びボディ管の使用による集約化などを図ったものがある。(

電線共同溝には,電気事業者,電気通信事業者,CATV 事業者,有線ラジオ放送事業者など,電線管理者の電線を収容できるが,道路管理用のケーブルその他の行政用のケーブルも収容することもできる

(ⅱ) 情報 BOX の概要

  1. 情報 BOX は,道路高度情報サービスの基盤設備として,道路情報の提供や ITS(高度道路交通システム)推進などの目的で,道路管理用光ファイバケーブルを収容するために道路管理者が設置している。(
  2. 情報 BOX には,複数の光ファイバケーブルを布設することが可能なことから,道路管理者の占用許可を得れば,情報 BOX の空き管路は電気通信事業者なども利用することができる。(
  3. 情報 BOX へ入溝する事業者は,一般に,利用料として工事費のみを負担すればケーブルを入線することができるため,単独地中化の工事費と比較して,安価に管路ルートを確保することができる。(

情報 BOX へ入溝する事業者は,一般に,管路に余裕がある場合,占用許可を受け占用料を負担すればケーブルを入線することができるため,単独地中化の工事費と比較して,安価に管路ルートを確保することができる。

(ⅲ) 通信土木設備の道路占用

  1. 通信土木設備の工事は,そのほとんどが道路占用工事となり,道路占用工事を行う場合,道路法に基づく道路占用許可及び道路交通法に基づく道路使用許可の取得が必要である。(
  2. 道路占用工事においては,沿道住民への迷惑防止,公共事業の繰り返し工事防止などの観点から,一般に,工事計画段階で幹事企業が道路工事調整会議を主催して,必要により同一掘削溝内での共同施工などの調整が図られる。(
  3. 道路占用許可手続の標準的な期間は,受付から 2 ~ 3 週間以内と道路法に定められており,申請書類の不備などを補正するために必要とする期間及び申請途中で申請者が申請内容を変更するために必要とする期間も,標準的な期間に含まれる。(
  4. 共同溝工事及び各企業が競合する路線整備工事では,各企業からの道路占用許可の申請受付順に施工時期が優先されるため,早期に申請することが重要である。(

道路占用工事においては,沿道住民への迷惑防止,公共事業の繰り返し工事防止などの観点から,一般に,工事計画段階で道路管理者が道路工事調整会議を主催して,必要により同一掘削溝内での共同施工などの調整が図られる。

道路占用許可手続の標準的な期間は,受付から 2 ~ 3 週間以内と行政手続法に定められており,申請書類の不備などを補正するために必要とする期間及び申請途中で申請者が申請内容を変更するために必要とする期間は,標準的な期間に含まれない

共同溝工事及び各企業が競合する路線整備工事では,施行時期は,道路工事調整会議をもとに,最も車線規制時間が少なくなるように道路管理者が決定する。

(ⅳ) 通信土木設備の埋設物探査方法など

  1. 電磁誘導法は,周辺環境により 2 次誘導が発生する場合,2 次誘導による合成磁界を計測できるため,2 次誘導がない場合と比較して計測誤差を小さくすることができる。(
  2. 電磁誘導法による探査は,地中の金属媒体に誘導電流を流して金属媒体から発生する誘導磁界を地上から計測するため,一般に,地中の空洞は計測できない。(
  3. 電磁波レーダ法では,地表面に置かれた送信アンテナから地中に向けて電磁パルスを放射し,電気特性が異なる界面で発生する弾性波を受信アンテナでとらえることにより,弾性波の減衰量から埋設物の位置や深度を算出する。(
  4. 電磁波レーダ法は,一般に,口径 75 [mm] 以上の埋設管の探知に適用できる探査能力があり,土質,舗装条件などにかかわらず探査深度 15 [m] 程度までの探査が可能である。(

電磁誘導法は,周辺環境により 2 次誘導が発生する場合,2 次誘導による合成磁界を計測できるため,2 次誘導がない場合と比較して計測誤差が大きくなる

電磁波レーダ法では,地表面に置かれた送信アンテナから地中に向けて電磁パルスを放射し,電気特性が異なる界面で発生する反射波を受信アンテナでとらえることにより,反射波の伝搬時間から埋設物の位置や深度を算出する。

電磁波レーダ法は,一般に,口径 25 [mm] 以上の埋設管の探知に適用できる探査能力があり,土質,舗装条件,発信周波数などの影響を受けるが,探査深度 数 [m] 程度までの探査が可能である。

問3

(1) 光通信システムに用いられる光ファイバケーブルの機械的強度特性など

光ファイバに損傷を与えずに長距離布設を可能とするため,光ファイバケーブル内には,一般に,適切な機械的強度を保持する目的でテンションメンバが組み込まれている。

布設時などに生ずる光ファイバの伸び率は,一般に,0.2 [%] 程度までに抑える必要があることから,テンションメンバの部材としては,ヤング率が一定以上大きいものが必要であり,一般に,鋼線が用いられている。ただし,誘導対策を必要とする区間に適用される IF ケーブルでは,テンションメンバの部材として FRP などが用いられる。

また,光ファイバケーブルは,接続作業に適した構造を有しており,光ファイバテープ心線を収容するスロットロッドの撚り方向を反転させて撚りピッチを一定とした SZ 撚りの架空用光ファイバケーブルは,光ファイバテープ心線の弛みを利用することにより FTTH における架空区間での中間後分岐作業を可能としている。

通信ケーブルの種類・特性及び適用」参照

ヤング率は,縦弾性係数。IF ケーブルは,Induction Free ケーブルである。

(2) 光ファイバに対する光学測定方法など

(ⅰ) 光ファイバに対する光学測定方法

  1. 光ファイバ ID テスタを用いた心線対照において,現用通信光の波長が 1.55 [μm] の場合,一般に,心線対照光の波長としては,現用通信光より短い波長の 1.31 [μm] を適用する。(
  2. 中継系光ファイバケーブルの光ファイバ断線時には,一般に,OTDR に備わっている可視光源を用いて入射端から故障点までの距離を推定する。(
  3. 光ファイバの損失測定に用いられる光パワーメータは,一般に,受光部にホトダイオード(PD)を用いており,PD には波長依存性がないため,使用波長に応じて測定時の値を補正する必要はない。(
  4. 光ファイバの長さ方向に分布するひずみを測定する方法として,測定原理にブリルアン散乱光の光周波数シフトの変化量のひずみ依存性を利用した B-OTDR(光ファイバひずみ分布測定器)を用いる方法がある。(

光ファイバ ID テスタを用いた心線対照において,現用通信光の波長が 1.55 [μm] の場合,一般に,心線対照光の波長としては,現用通信光より長い波長の 1.65 [μm] を適用する。

中継系光ファイバケーブルの光ファイバ断線時には,一般に,OTDR に備わっている非可視光源を用いて入射端から故障点までの距離を推定する。

光ファイバの損失測定に用いられる光パワーメータは,一般に,受光部にホトダイオード(PD)を用いており,PD には波長依存性があるため,使用波長に応じて測定時の値を補正する必要がある

(ⅱ) 接続損失

後方散乱係数の異なる光ファイバ A と光ファイバ B との接続構成における,OTDR による光ファイバ A からの測定波形及び光ファイバ B からの測定波形を,それぞれ図 1 及び 図 2 の太線で示す。図 1 及び 図 2 における接続点での測定波形の段差がそれぞれ 0.8 [dB],1.4 [dB] であるとき,接続損失は,0.3 [dB] と求められる。ただし,図 1 及び図 2 に示す $a$ は後方散乱係数の差によるレベル差を表し,図 1 に示す光ファイバ B の点線の波形及び図 2 に示す光ファイバ A の点線の波形は,光ファイバ A と光ファイバ B の後方散乱係数が同じ場合に想定される測定波形を表すものとする。

OTDR による光ファイバ A からの測定波形
図1 OTDR による光ファイバ A からの測定波形
OTDR による光ファイバ B からの測定波形
図2 OTDR による光ファイバ B からの測定波形

接続損失を $x$ [dB] とすると,図 1 および図 2 より,それぞれ次式が成り立つ。

\[ a - x = 0.8 \] \[ a + x = 1.4 \]

上記の 2 式より,$a$ = 1.1 [dB],$x$ = 0.3 [dB] を得る。

(3) 線路設備の劣化要因とその対策など

(ⅰ) 線路設備に用いられるプラスチック材料の特性と用途

  1. ポリエチレンは,耐薬品性及び高周波電気特性が良く,低温でも割れにくいため,ケーブルなどの外被や絶縁体などに用いられている。また,ポリエチレンは,耐熱温度が高く,100 [°C] 以上の高温でも適用可能である。(
  2. ポリプロピレンは,ポリエチレンと比較して機械的強度や耐熱性に劣るが,ポリエチレンと異なり塗装や接着が容易であるため,クロージャなどに用いられている。(
  3. 硬質ポリ塩化ビニルは,耐水性や有機溶剤などとの耐薬品性が良いため,ケーブル保護用硬質ビニル管,支線ガードなどに用いられている。(
  4. 硬質ポリ塩化ビニルは,電気絶縁性が良く,また,可塑剤の添加により柔軟性も良いため,屋外線や屋内線の外被,保護用ビニルテープなどに用いられている。(

ポリエチレンは,耐薬品性及び高周波電気特性が良く,低温でも割れにくいため,ケーブルなどの外被や絶縁体などに用いられている。また,ポリエチレンは,耐熱温度が低く,70 [°C] 以上の高温では適用できない

ポリプロピレンは,ポリエチレンと比較して機械的強度や耐熱性に優れるので,クロージャなどに用いられている。ただし,ポリエチレン同様に塗装や接着はできない

硬質ポリ塩化ビニルは,耐水性,耐酸性,耐アルカリ性に優れるが有機溶剤には弱い。そのため,ケーブル保護用硬質ビニル管などに用いられている。

(ⅱ) 金属を用いた線路設備の腐食の要因とその対策

  1. 金属は,一般に,イオン化傾向の大きいものほど腐食しやすく,鉄と比較してイオン化傾向の小さい亜鉛は,酸化しにくいため腐食速度は遅く,亜鉛めっきとして鋼材の防食に広く利用されている。(
  2. ステンレス鋼やマグネシウムのように不動態といわれる緻密な被膜を形成する高耐食性金属材料は,一般に,孔食などの局部的な腐食を防ぐために用いられる。(
  3. マンホール内の金物の腐食には,イオン化傾向が異なる金属材料の金物の接触による腐食,バクテリアの作用による腐食などがあり,流電陽極による犠牲防食などの対策が有効である。(

金属は,一般に,イオン化傾向の大きいものほど腐食しやすく,鉄と比較してイオン化傾向の小さいは,酸化しにくいため腐食速度は遅く,めっきとして鋼材の防食に広く利用されている。

錫めっきがいったん破壊されると,鉄の腐食が進行する。

一方,線路設備の構造物には亜鉛めっきが多く使用されている。亜鉛は,鉄よりイオン化傾向が大きいが,緻密な腐食生成物の被膜を形成するため腐食速度は遅く,亜鉛めっきとして鋼材の防食効果がある。亜鉛めっき被膜が破壊され鉄素地が露出しても,犠牲防食作用により露出部は腐食されない。

ステンレス鋼やアルミニウムのように不動態といわれる緻密な被膜を形成する高耐食性金属材料は,一般に,耐食性はよいが,孔食などの局部的な腐食が発生するので注意が必要である

問4

(1) 防災に関する法令に基づく電気通信設備の災害対策など

災害対策基本法において,独立行政法人,日本銀行,日本赤十字社,日本放送協会その他の公共機関及び電気,ガス,輸送,通信その他の公益的事業を営む法人で,内閣総理大臣が指定するものは,指定公共機関といわれる。

指定公共機関は,内閣府に設置される中央防災会議が作成する防災に関する基本的な計画に基づき,その業務に関し,防災業務計画を作成し,及び毎年防災業務計画に検討を加え,必要があると認めるときは,これを修正しなければならない。

また,指定公共機関は,防災業務計画を作成し,又は修正したときは,速やかに所管する大臣を経由して内閣総理大臣に報告し,及び関係都道府県知事に通知するとともに,その要旨を公表しなければならない。

こうした法令の趣旨を踏まえ,電気通信事業者は,電気通信事業法に基づき災害に強い電気通信設備の構築を推進しており,重要伝送路の複数ルート化,通信ビルの停電対策などの災害対策を実施している。

さらに,電気通信事業者は,災害の救援,復旧や公共の秩序を維持するため,様々なサービスを提供しており,その 1 つとして,防災関係など各種機関に対して提供している災害時優先電話は,一般に,災害発生時などに行われる通信制限時でも優先電話からの発信を優先して扱うことにより,重要通信を確保するサービスである。

維持・運用」参照

(2) JIS Z 8115 : 2000 ディペンダビリティ(信頼性)用語

(ⅰ) 設計に関する用語

  1. 温予備とは,待機手段が作動状態にあるけれども,システムには機能的に接続されていない待機冗長の形式のことをいう。(
  2. 冷予備とは,待機手段が作動状態になくて,システムにも機能的に接続されていない常用冗長の形式のことをいう。(
  3. 多様性冗長とは,異なる手段によって,同一の機能を実現する冗長のことをいう。(
  4. $m/n$ 冗長とは,$m$ 個の同じ機能の構成要素中,少なくとも $n$ 個が正常に動作していれば,アイテムが正常に動作するように構成してある常用冗長のことをいう。(
  5. 部分冗長とは,可能な手段のうちの 1 つだけが要求機能を果たすのに必要である常用冗長の形式のことをいう。(

熱予備とは,待機手段が作動状態にあるけれども,システムには機能的に接続されていない待機冗長の形式のことをいう。なお,温予備とは,待機構成要素が,あらかじめ動作に必要なエネルギーの一部の供給を受けており,切換えのとき全エネルギーの供給を受け,動作状態になるものをいう。

冷予備とは,待機手段が作動状態になくて,システムにも機能的に接続されていない待機冗長の形式のことをいう。

$m/n$ 冗長とは,$n$ 個の同じ機能の構成要素中,少なくとも $m$ 個が正常に動作していれば,アイテムが正常に動作するように構成してある常用冗長のことをいう。

部分冗長とは,可能な手段のうちの 2 つ以上が要求機能を果たすのに必要である常用冗長の形式のことをいう。

(ⅱ) 設計に関する用語

  1. フォールトトレランスとは,放置しておけば故障にいたるようなフォールトや誤りが存在しても,要求機能の遂行を可能にするアイテムの属性のことをいう。(
  2. フォールトマスキングとは,あるフォールトがアイテムの中の下位アイテムに存在してもアイテムの特徴によって,その存在を認識させないような状態又はフォールトが存在しても,別のフォールトによってその存在が認識されないような状態のことをいう。(
  3. フォールトアボイダンスとは,製造,設計などにおいて,アイテム及び構成要素にフォールトが発生しないようにする方法又は技術のことをいう。(
  4. 安全寿命設計とは,アイテムの目標寿命以内では故障が生じないように配慮する設計のことをいう。(
  5. フェールソフトとは,アイテムが故障したとき,あらかじめ定められた 1 つの安全な状態をとるような設計上の性質のことをいう。(

フェールソフトとは,アイテムが故障したとき,機能又は性能を縮退しながらアイテムが要求機能を遂行し続ける設計上の性質のことをいう。フェールセーフとは,アイテムが故障したとき,あらかじめ定められた 1 つの安全な状態をとるような設計上の性質のことをいう。

(3) 装置の信頼性

装置は偶発故障期間にあるものとする。また,指数関数の値は,$e^{-0.025}=0.975$,$e^{-0.25}=0.779$,$e^{-0.001}=0.999$ とし,$e$ は自然対数の底とする。

(ⅰ) 装置の信頼度

装置 A を 1,200 時間使用したところ 3 回の故障が発生した。装置 A の 10 時間使用時点における信頼度は,97.5 [%] である。

故障率を $\lambda$ とすると,信頼度は $R = e^{-\lambda t}$ と表される。ここで,$\lambda$ = 3/1,200 [回/時間],t = 10 [時間]であるから,信頼度は次式で求められる。

\[ R = \exp{(-\frac{3}{1,200}\times10)} = e^{-0.025} = 0.975 = 97.5 \text{ [%]} \]

(ⅱ) 信頼度と平均故障率

装置 B の稼働開始後 200 時間経過時点の信頼度を 99.9 [%] 以上に維持するためには,装置 B の平均故障率を 5.0 × 10-4 [% / 時間] 以下にしなければならない。

装置 B の稼働開始後 200 時間経過時点の信頼度を 99.9 [%] 以上に維持するためには,故障率 $\lambda$ は次式を満たす。

\[ 0.999 = e^{-0.001} \le \exp{(-\lambda \times 200)} \]

指数で比較する。

\[ -0.001 \le -\lambda \times 200 \]

故障率 $\lambda$ で整理する。

\[ \lambda \le 0.001/200 = 5 \times 10^{-6} = 5 \times 10^{-4} \text{ [%/h]} \]

問5

(1) バイオメトリクス認証技術の概要

本人認証の実現方法は,一般に,所有物による認証,本人が持つ知識による認証及び本人の身体的・行動的特徴による認証の 3 つのカテゴリに大別される。バイオメトリクス認証は,身体的・行動的特徴を用いて本人認証する方法であり,身体的・行動的特徴の普遍性,唯一性及び永続性の 3 つの性質を利用している。

バイオメトリクス認証の 1 つである指紋による認証では,万人不同,終生不変などといわれている指紋で本人を識別する。指紋照合には,あらかじめ登録された画像と読み込んだ画像を比較して認証する方式のほか,指紋の特徴(分岐点や切れている点など)の位置関係と隆線を抽出するマニーシャマッチング方式があり,パーソナルコンピュータの利用時の本人確認などに利用されている。

バイオメトリクス認証では,パスワードや磁気カードなどを用いた本人認証技術と異なり,照合結果を用いた判定基準には一定の許容範囲を持たせる必要があり,一般に,本人拒否率と他人受入率を考慮して判定しきい値を設定する。

セキュリティ管理技術」参照

マニーシャマッチングの英語表記は,minutiae matching である。

本人拒否率は,受け入れるべき本人であるにもかかわらず,誤って本人と認めない確率,他人受入率は,拒否すべき他人であるにもかかわらず,誤って他人を受け入れてしまう確率である。

(2) 個人情報の管理など

個人情報の保護に関する法律やこれに関係する法令及びガイドラインに基づいた個人情報の管理など

  1. 個人情報には,官報,職員録などに公表されている情報(本人の氏名など)及び防犯カメラに記録された本人が判別できる映像情報が含まれる。(
  2. 個人情報取扱事業者が,個人情報を取り扱うに当たっては,その利用目的をできる限り具体的に特定しなければならない。(
  3. 個人情報取扱事業者が,個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は,その委託先の名称を,本人に通知し,又は公表しなければならない。(

個人情報取扱事業者が,個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は,その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう,委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない

(3) 迷惑メールの概要と対策

  1. 迷惑メールには,商品やサービス,Web サイトの宣伝などの広告宣伝メール,金銭をだまし取ろうとする詐欺目的の架空請求メール,法外なサイト利用料を要求する不当請求メール,ウイルス感染を目的とするウイルスメールなどがある。(
  2. ISP(Internet Services Provider)が提供するフィルタリングサービスとして,迷惑メールと判定されたメールを受信者に配信しないで ISP のサーバ上において別フォルダに振り分けて保留する形態のものがある。(
  3. 送信ドメイン認証は,迷惑メールの送信者アドレスの詐称を防ぐための技術であり,トンネルモードとトランスポートモードの 2 つの方式がある。(
  4. ISP による迷惑メール対策として,ISP があらかじめ用意しているメールサーバ以外からのメールを ISP の外へ送信しない仕組みである OP25B(Outbound Port 25 Blocking)がある。(

送信ドメイン認証は,迷惑メールの送信者アドレスの詐称を防ぐための技術であり,送信元の IP アドレスを基に正規のサーバから発信されたかを認証する方法とメールに電子署名を付与する方法の 2 つがある。

(4) 建設副産物の処理など

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)に基づく建設副産物の処理など

  1. 建設工事に伴い発生する建設副産物において,廃棄物処理法に規定する産業廃棄物に該当するものとしては,建設汚泥,建設発生木材,建設発生土などがある。(
  2. 排出事業者は,工事において発生した産業廃棄物の処理を委託する場合,市区町村長が許可した産業廃棄物処理業者に委託しなければならない。(
  3. 排出事業者は,工事において発生した産業廃棄物の処理を委託する場合,産業廃棄物管理票(マニフェスト)により処理が適正に行われているか管理しなければならない。マニフェストには,複写式の紙伝票を利用する紙マニフェストと情報処理センタにパーソナルコンピュータなどを使って情報登録する電子マニフェストがある。(
  4. 排出事業者は,工事において発生した産業廃棄物の運搬を運搬受託者へ委託する場合,口頭又は書面により委託契約を行い,産業廃棄物の引越し後,14 日以内に運搬受託者へマニフェストを交付しなければならない。(

建設工事に伴い発生する建設副産物において,廃棄物処理法に規定する産業廃棄物に該当するものとしては,建設汚泥,燃え殻,廃油,廃酸,廃アルカリ,廃プラスチック類などがある。

排出事業者は,工事において発生した産業廃棄物の処理を委託する場合,都道府県知事が許可した産業廃棄物処理業者に委託しなければならない。

排出事業者は,工事において発生した産業廃棄物の運搬を運搬受託者へ委託する場合,書面により委託契約を行い,産業廃棄物とともに運搬受託者へマニフェストを交付しなければならない。

(5) 職場における安全活動など

  1. 労働災害の原因は全て作業者の不注意にあるという分析結果に基づき,ヒヤリハット活動は,作業者に作業手順書の遵守を徹底させるために行われる。(
  2. ツールボックス・ミーティング(TBM)とは,職場の小単位のグループが短時間で仕事の範囲,段取り,各人ごとの作業の安全ポイントなどを作業開始前に打ち合わせるミーティングをいう。(
  3. 危険予知(KY)活動とは,職場の小単位で,現場の作業,設備,環境などをみながら,若しくは作業手順書を用いて,リーダーがメンバーにトップダウン形式で安全作業を指示することにより,作業事故や人身事故などを未然に防止するための活動をいう。(
  4. 5S 活動(運動)の 5S は,整理・整頓・清掃・清潔・躾のそれぞれのローマ字表記で頭文字をとったものであり,このうち整理とは,必要なものを必要なときにすぐに使用できるように,決められた場所に準備しておくこととされている。(

労働災害の原因は,環境,設備,工具,管理監督,作業者の不注意など多くの要因によるものであり,あらゆる面での安全対策を行い,災害を防止することが必要である。

危険予知(KY)活動とは,職場の小単位で,現場の作業,設備,環境などをみながら,若しくは作業手順書を用いて,全メンバーがボトムアップ形式で安全作業を確認することにより,作業事故や人身事故などを未然に防止するための活動をいう。

5S 活動(運動)の 5S は,整理・整頓・清掃・清潔・躾のそれぞれのローマ字表記で頭文字をとったものであり,このうち整理とは,必要なものと,不必要なものをより分け,不必要なものを捨てることである。ちなみに,整頓とは,必要なものを必要なときにすぐに使用できるように,決められた場所に準備しておくことである。

inserted by FC2 system