平成28年度 第2回 線路及び設備管理

2019年6月8日作成,2021年1月2日

問1

(1) GE-PON システムの概要

1 心の光ファイバを光受動素子である光スプリッタを用いて分岐することにより,1 心の光ファイバに複数のユーザを収容する光アクセスシステムは,PON システムといわれる。

PON システムは,データ転送の単位となるフレームの形式や伝送速度の違いなどにより分類され,そのうちの 1 つである GE-PON システムは,1 心の光ファイバにより LAN で一般的に用いられているイーサネットフレームをそのままの形式で,最速で 1 [Gbit/s] の伝送速度により送受信することが可能である。

GE-PON システムでは,設備センタの OLT からユーザ宅の ONU 方向への下り信号の伝送には,複数のユーザの信号を多重化するため TDM 技術が採用されている。また,上り信号と下り信号を 1 心の光ファイバで同時に送受信するため WDM 技術が用いられている。

設備センタの OLT からユーザ宅の ONU 方向への下りフレームは,同一のものが放送形式で当該 OLT 配下の全ての ONU に到達するため,各 ONU は,自分宛のフレームであるか否かを LLID(Logical Link ID)といわれる識別子により判断して自分宛のフレームのみを取り込み,他の ONU 宛のフレームを廃棄している。

さらに,GE-PON システムでは,伝送帯域を有効活用するため,一般に,上り信号の帯域を動的に制御しており,各 ONU は要求する帯域を OLT へ通知し,OLT が各 ONU に帯域を割り当てる DBA という機能が用いられている。

アクセス系線路の光ファイバケーブル設計」参照

GE-PON システム
図 GE-PON システム
DBA(Dynamic Bandwidth Allocation : 動的帯域割当)

一つの帯域を複数のユーザで共用することを帯域共用という。このとき,あるユーザが使っていない帯域を他のユーザに随時割り当てることを DBA と呼んでいる。

(2) 光ファイバの屈折率分布,光ファイバ心線の構造など

(ⅰ) 光ファイバの屈折率分布など

  1. グレーデットインデックス型光ファイバは,コア内の屈折率を連続的に変化させたものであり,光の伝搬速度が,コアの中心付近ではクラッド付近と比較して遅くなる特徴を有している。(
  2. 石英系光ファイバにおいて,コアやクラッドの屈折率を調整する方法としては,コアにフッ素を添加してコアの屈折率を大きくする方法,クラッドにゲルマニウムを添加してクラッドの屈折率を小さくする方法などがある。(
  3. 分散シフト光ファイバ(DSF)は,屈折率分布を変化させることによって波長分散特性を調整したものであり,DSF の屈折率分布にはセグメントコア型などがある。(
  4. シングルモード光ファイバに特有の構造パラメータの 1 つとして,伝搬モードの電界分布の広がりを示すモードフィールド径があり,光強度分布がガウス分布で近似できるとき,屈折率分布の違いはモードフィールド径の違いとして表すことが可能である。(

石英系光ファイバにおいて,コアやクラッドの屈折率を調整する方法としては,コアにゲルマニウムを添加してコアの屈折率を大きくする方法,クラッドにフッ素を添加してクラッドの屈折率を小さくする方法などがある。

石英系光ファイバ
図 石英系光ファイバ

(ⅱ) 光ファイバ心線の構造など

  1. 単心の光ファイバ心線は,一般に,1 次被覆された光ファイバ素線を UV 硬化型樹脂,ポリアミド樹脂などの 2 次被覆で被覆した構造を有している。(
  2. 光ファイバテープ心線は,1 次被覆された光ファイバ素線を 4 本,8 本などに束ねたもので,光ファイバ素線を平行に配列した形状や交差して配列した形状を有している。(
  3. 光ファイバテープ心線を収容するスロットロッドの撚り方向を同一方向として撚りピッチを変えた SZ 撚りの架空用光ファイバケーブルは,光ファイバテープ心線の弛みを利用して中間後分岐作業を容易にしている。(

光ファイバテープ心線は,1 次被覆された光ファイバ素線を 4 本,8 本などに束ねたもので,光ファイバ素線を平行に配列した形状や交差して配列した形状を有している。

光ファイバテープ心線を収容するスロットロッドの撚り方向を周期的に反転させて撚りピッチを一定とした SZ 撚りの架空用光ファイバケーブルは,光ファイバテープ心線の弛みを利用して中間後分岐作業を容易にしている。

(3) 環境に配慮した電気通信線路設備など

(ⅰ) 日本電線工業会規格(JCS)で規定されているエコケーブルの特徴など

  1. 難燃性のエコケーブルは,ケーブル外被の難燃性を向上させるため,水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を難燃剤として用いており,難燃剤を多量に添加することにより機械的強度も向上させている。(
  2. エコケーブルは,外被がポリエチレン系の材料に統一されているため,リサイクルが可能であり,廃棄物の削減が見込める。(
  3. エコケーブルを配管内に敷設するときにケーブル外被の表面が擦れることによって生じた白化現象は,一般に,ケーブルの電気特性に影響を及ぼすことはないため,直ちにケーブルを張り替える必要はない。(
  4. エコケーブルの許容曲げ半径は,ポリ塩化ビニル(PVC)シースケーブルと同等であり,また,エコケーブルのシース除去作業では,PVC シースケーブルに用いるものと同等の工具を使用することができる。(

難燃性のエコケーブルは,ケーブル外被の難燃性を向上させるため,水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を難燃剤として用いており,難燃剤を多量に添加すると機械的強度が低下する。日本電線工業会では,EM(エコマテリアル)電線・ケーブルと称している。

EM電線・ケーブル | 一般社団法人日本電線工業会」参照

(ⅱ) 電気通信線路設備のおける環境対策など

  1. RoHS 指令は,製品の生産段階に限定した期間において,環境負荷や人の健康に害を及ぼす危険を最小化することを目的としており,グリーン調達により納入された電気通信線路設備の RoHS 指令適合品は,アスベストなどの化学物質の使用を制限したものである。(
  2. 電気通信線路設備におけるケーブル,管路などには,プラスチック材料が使用されており,ポリエチレンを使用する接続端子函(クロージャ),ポリプロピレンを使用するケーブル外被や電柱支線ガードなどは,撤去品を一部混合したプラスチック材料により製造されている。(
  3. 電気通信線路設備に用いられている,ハロゲンフリーの環境配慮型のケーブルには,水素と反応すると毒性や腐食性の強いハロゲン化水素となるフッ素,塩素,臭素などのハロゲンは含まれていない。(
  4. 電気通信線路設備における再資源化の施策として実施されているマテリアルリサイクルとは,廃プラスチックなどを焼却する際に発生する熱エネルギーを回収し,燃料として再利用するリサイクル形態の 1 つである。(

RoHS 指令は,製品の生産段階から最終処分まで考慮して,環境負荷や人の健康に害を及ぼす危険を最小化することを目的としており,グリーン調達により納入された電気通信線路設備の RoHS 指令適合品は,鉛,水銀,カドミウム,六価クロム,ポリ臭化ビフェニール(PBB),およびポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)の 6 物質の使用を原則禁止している

RoHS(Restriction on Hazardous Substance)指令 : 有害物質使用制限指令

電気通信線路設備におけるケーブル,管路などには,プラスチック材料が使用されており,ポリプロピレンを使用する接続端子函(クロージャ),ポリエチレンを使用するケーブル外被や電柱支線ガードなどは,撤去品を一部混合したプラスチック材料により製造されている。

電気通信線路設備における再資源化の施策として実施されているマテリアルリサイクルとは,使用済み製品や生産工程から出るごみ等を回収し,利用しやすいように処理して,新しい製品の材料もしくは原料として再利用することである

問2

(1) 光海底ケーブルの監視方式

光海底ケーブルシステムの定期的な監視項目としては,光伝送端局装置間の符号誤り率,光海底中継器での光入出力レベルなどがある。また,光増幅方式を用いた中継光海底ケーブルシステムにおいては,符号誤り率の測定による伝送品質の評価は,Q 値に換算して行われる場合が多く,一般に,Q 値が大きいほど伝送品質が良いとされている。

中継光海底ケーブルシステムでは,海中区間に故障が発生した場合,一般に,故障位置を 1 中継区間内に特定できる監視方式が採用されている。

また,光海底ケーブル,光海底中継器などの海中設備の故障時には,給電系か伝送系か,光海底ケーブルか光海底中継器かなどの切り分けを行い,速やかに故障位置を特定する必要がある。

給電系の故障判定方法としては,直流抵抗測定及び静電容量測定が用いられる。陸揚局からの静電容量測定による故障点の位置判定は誤差が大きいため,ケーブル船で推定故障位置付近のケーブルを回収した後に,ケーブル船から静電容量測定を行い,故障位置を絞り込んでいく方法を採る場合がある。

専門的分野・水底線路 対策ノート」参照

Q 値(光信号品質)

バイナリ信号の 1,0 の振幅は雑音などでばらつくが,そのばらつきの大きさ(標準偏差)と平均振幅の差によって定義される値。品質が下がると Q 値は低くなる。

(2) 通信土木設備の構造,特徴など

(ⅰ) マンホールの形状,構成など

  1. 躯体の寸法や形状を規格として定めた標準マンホールの形状には,直線形と分岐形があり,直線形の標準マンホールのうち,収容可能な管路条数が最大のものは,3 号マンホールである。(
  2. マンホールは,一般に,き線ルート及び中継ルートにおいて,ケーブルや接続部である地下用クロージャを収容する設備とされており,作業者が中に入ってケーブルの建設保守作業を行うためのスペースが確保されている。(
  3. レジンコンクリート製ブロックマンホールは,複数に分割されたブロックで構成され,ブロック相互の結合には,一般に,接着剤が使用されている。(
  4. マンホールは,一般に,躯体,首部及び鉄蓋から構成されている。躯体の内側にはケーブルダクトが形成された額縁,外側には管路周辺からの浸水を防ぐ防水コンクリート,底部には排水用の水溜枡などが設けられている。(

躯体の寸法や形状を規格として定めた標準マンホールの形状には,直線形と分岐形があり,直線形の標準マンホールのうち,収容可能な管路条数が最大のものは,8 号マンホールである。

(ⅱ) 管の種類と特徴など

  1. 管の種類には,材料の違いにより硬質ビニル管,塗覆装鋼管,鋳鉄管などがあり,このうち鋳鉄管は,送電線の昇圧化などに伴う誘導対策に使用される。(
  2. 鋳鉄管は,金属材料を使用する管のうちでは腐食に強く,鋳鉄管の抗張力は塗覆装鋼管と比較して大きい。(
  3. 硬質ビニル管は,塩化ビニル樹脂を主体とした重合体を主原料に用いた管であり,同一呼び径において,硬質ビニル管の肉厚は,鋳鉄管の肉厚と比較して厚く,塗覆装鋼管の肉厚と比較して薄い。(

硬質ビニル管は,塩化ビニル樹脂を主体とした重合体を主原料に用いた管であり,同一呼び径において,肉厚は,硬質ビニル管 > 鋳鉄管 > 塗覆装鋼管である

(ⅲ) 通信土木設備の橋梁添架管路,専用橋など

  1. 橋梁添架管路としては,一般に,鋼管を使用し,橋台際や支持間隔の制約で鋼管が適用できない箇所などでは硬質ビニル管を使用する。(
  2. 橋梁添架管路の支持間隔は,管の水平移動,軸のたわみ,橋梁振動との共振などを考慮して決めるが,硬質ビニル管の支持間隔は鋼管の支持間隔と比較して広い。(
  3. 管路ルートが河川などを横断する場合には,道路橋,専用橋などを利用する方法がある。道路橋に管路を添架する形式には,橋梁の上部構造を利用する形態と橋梁の下部構造を利用する形態がある。(
  4. 専用橋は,河川などを横断する適当な道路橋が確保できない場合,通信ケーブル専用の橋として架橋するものであり,専用橋の形式において,3 本の細長い部材で構成された三角形が連続した骨組構造を主桁とする形式の橋は,プレートガーダ橋といわれる。(

橋梁添架管路としては,一般に,硬質ビニル管を使用し,橋台際や支持間隔の制約で硬質ビニル管が適用できない箇所などでは鋼管を使用する。

橋梁添架管路の支持間隔は,管の水平移動,軸のたわみ,橋梁振動との共振などを考慮して決めるが,硬質ビニル管の支持間隔は鋼管の支持間隔と比較して狭い

硬質ビニル管の支持間隔は 2.0 ~ 2.5 m,鋼管の支持間隔は 5.5 m 以下。

専用橋は,河川などを横断する適当な道路橋が確保できない場合,通信ケーブル専用の橋として架橋するものであり,専用橋の形式において,3 本の細長い部材で構成された三角形が連続した骨組構造を主桁とする形式の橋は,トラス橋といわれる。ちなみに,プレートガーダー橋とは,鋼板や形鋼を組み合わせて板状にし,これを断面が I 字形になるように組み立てた桁(ガーダー)からなる鉄橋である。

(ⅳ) とう道の構造と特徴

  1. とう道は,多条数の通信用ケーブルを収容できるトンネル形式の通信土木設備であり,災害に強い,交通量が多い道路においても任意にケーブル工事ができる,大きな需要耐力があるといった特徴を有している。(
  2. とう道設備の施工方法には,シールド工法と開削工法があり,とう道の断面形状は,一般に,シールド工法では円形,開削工法では矩形である。(
  3. 開削式とう道の縦断線形では,道路の縦断勾配,埋設物,必要な土被り,排水,歩行,資材運搬の容易性などを考慮して決定されるが,一般に,勾配が設けられている。(
  4. シールド式とう道の構造としては,内側に 1 次履工,外側に 2 次履工が設けられ,2 次履工は,防食,防水,蛇行修正などを目的としている。(

シールド式とう道の構造としては,外側に 1 次履工,内側に 2 次履工が設けられ,2 次履工は,防食,防水,蛇行修正などを目的としている。

シールド式とう道
図 シールド式とう道

問3

(1) 光ファイバの接続

光ファイバの接続方法は,一般に,再接続を考慮しない永久接続方法である融着接続及びメカニカルスプライス接続と,再接続を考慮した接続方法であるコネクタ接続に分類される。

融着接続は,光ファイバ端面を溶融して接続する方法である。融着接続は,前処理,融着,スクリーニング試験,接続部の補強などの手順で行われる。前処理には,光ファイバ心線被覆除去,光ファイバの清掃,光ファイバ心線切断などが含まれる。融着後には,著しく弱い接続部を除去するため,光ファイバに一定の荷重を一定時間加えるスクリーニング試験が行われ,さらに,接続部においては,一般に,熱収縮チューブを用いて被覆除去部を覆う補強方法が採られている。

メカニカルスプライス接続は,V 溝などを形成した接続部分を用いて機械的に光ファイバを把持する接続方法である。この接続方法では,一般に,屈折率が石英系ガラスとほぼ同じジェル状又は固形状の屈折率整合剤を接続部分の中に入れ,端面間の空気層を除去する方法を用いている。

コネクタ接続は,着脱が容易なコネクタを用いる方法である。代表的な単心光ファイバ用のコネクタである SC コネクタによる接続では,光ファイバのコアの中心を光コネクタの中心に設定するための部品であるフェルールを対向させて突合せ,球面状に研磨されたフェルールの接触面を弾性変形させる PC(Physical Contact)接続により光ファイバ端面の隙間を無くしフレネル反射を抑えている。

通信ケーブルの敷設・接続方法」参照

(2) メタリックケーブルに生ずる雑音,メタリックケーブルの雷害対策など

(ⅰ) アクセス系メタリックケーブルに生ずる雑音など

  1. 平衡対ケーブルに生ずる雑音の 1 つとして,手ひねり接続された部分の電気抵抗が振動などで変化することにより生ずる時々断に伴う雑音がある。(
  2. 平衡対ケーブル設備では,メタリック心線の融通を確保するため,一般に,ブリッジタップが存在し,ブリッジタップの先端部分は短絡されているため,ループ抵抗が生ずることから,特に,ADSL 回線では損失が増加し,伝送速度が低下する要因となる場合がある。(
  3. 平衡対ケーブルの損失は,周波数が高くなるに従い増加する特性を示し,4 [kHz] 程度までは緩やかに増加し,100 [kHz] 程度を超えると,表皮効果による抵抗の増加などにより,急激に増加する。(
  4. 平衡対ケーブルの漏話には,同一カッド内のペア相互間の静電結合によって生ずるものがある。カッドくずれが起きた場合は,静電結合が大きくなるため,漏話も大きくなる。(

平衡対ケーブル設備では,メタリック心線の融通を確保するため,一般に,ブリッジタップが存在し,ブリッジタップの先端部分は開放されているため,反射が生ずることから,特に,ADSL 回線では損失が増加し,伝送速度が低下する要因となる場合がある。ちなみに,メタリックケーブルの終端は,通常短絡することはない。

(ⅱ) メタリックケーブルの雷害対策など

  1. メタリックケーブルを用いた通信線と端末装置間に取り付けられている酸化亜鉛バリスタなどのサージ防護デバイス(SPD)は,雷サージが印加されるとインピーダンスが上昇し,雷サージ電流を遮断する機能を有している。(
  2. ユーザビルに設置される VDSL 集合装置の雷害対策としては,保安用接地,電源用接地及び通信用接地を等電位化する共通接地としないで,それぞれ個別接地とする方法,VDSL 集合装置の電源線とメタリックケーブルを用いた通信線との間に雷サージのバイパスルートを設ける方法などが有効である。(
  3. メタリックケーブルを用いた通信線の付近に高圧の電力線があると,電力線と通信線間の静電容量により通信線も高電圧となる。この高圧を低減する対策としては,通信線の金属シースを接地して通信線の電圧を金属シースの電位とほぼ同じ電位にする静電遮蔽用の接地方法が有効である。(

メタリックケーブルを用いた通信線と端末装置間に取り付けられている酸化亜鉛バリスタなどのサージ防護デバイス(SPD)は,雷サージが印加されるとインピーダンスが低下し,雷サージ電流を大地に逃がす機能を有している。

ユーザビルに設置される VDSL 集合装置の雷害対策としては,保安用接地,電源用接地及び通信用接地を等電位化するため共通接地(一点接地)とする方法,VDSL 集合装置の電源線とメタリックケーブルを用いた通信線との間に雷サージのバイパスルートを設ける方法などが有効である。

(3) 光ファイバ心線の心線対照方法,試験方法など

(ⅰ) 光ファイバ心線の心線対照方法

  1. 光ファイバ ID テスタを用いた心線対照において,現用通信光の波長が 1.55 [μm] の場合,心線対照光の波長としては,一般に,現用通信光の波長より短い 1.31 [μm] を適用する。(
  2. 光ファイバ ID テスタを用いた心線対照において,自然光や現用通信光の漏洩光などの心線対照光以外の光パワーによる誤検出を防止するため,心線対照光としては,一般に,変調光が用いられる。(
  3. 光ファイバケーブルの故障修理における光ファイバ心線切替作業では,光ファイバの誤切断や誤接続を防止するため,光ファイバ ID テスタを用いた心線対照を行うが,光ファイバケーブルの建設工事では,設計図面に従い布設,接続作業などを行うため,一般に,光ファイバ ID テスタを用いた心線対照は不要とされている。(
  4. ユーザ近傍の引込区間などに用いられている,最小許容曲げ半径 15 [mm] の光ファイバは,曲げを与えても光信号が心線の外部に漏れにくいことから,光ファイバ ID テスタを用いた心線対照を行うことができないため,一般に,設備管理簿を利用して該当する光ファイバ心線を確保する。(

光ファイバ ID テスタを用いた心線対照において,現用通信光の波長が 1.55 [μm] の場合,心線対照光の波長としては,一般に,現用通信光の波長より長い 1.65 [μm] を適用する。

光ファイバケーブルの故障修理における光ファイバ心線切替作業では,光ファイバの誤切断や誤接続を防止するため,光ファイバ ID テスタを用いた心線対照を行うが,光ファイバケーブルの建設工事では,設計図面に従い布設,接続作業などを行っていても,一般に,光ファイバ ID テスタを用いた心線対照は必須である

ユーザ近傍の引込区間などに用いられている,最小許容曲げ半径 15 [mm] の光ファイバは,曲げを与えても光信号が心線の外部に漏れにくいことから,光ファイバ ID テスタを用いた心線対照を行うことができないため,曲げ部に光ファイバ被覆と同程度の屈折率を持つ透過性部材を用いて漏洩光の検出感度を高め,漏洩光を確認する。なお,設備管理簿との整合性も確認する。

(ⅱ) 光ファイバの試験,保守方法など

  1. OTDR を用いた光ファイバの損失測定では,光ファイバに入射する光パルス幅を広くするほどダイナミックレンジは大きくなるが測定分解能は低下する。(
  2. 光ファイバ通信システムにおける伝送特性は,一般に,符号誤り率により評価される。符号誤り率は,一般に,回折格子や干渉計を備えた光スペクトル測定器を用いて測定される。(
  3. 光ファイバ心線の接続作業時において,光ファイバの切断にニッパを用いると光ファイバの切断面の不良が原因で光ファイバの接続部で断線する場合があるため,切断面を加熱し軟化させる光ファイバストリッパが用いられる。(
  4. 防水型光ファイバケーブルに用いられる WB テープは,一般に,不織布に撥水材料が塗布してあり,浸水すると撥水材料が水をはじき,ケーブル内部との間に遮水層を形成することによりそれ以上の浸水を防止するものである。(

光ファイバ通信システムにおける伝送特性は,一般に,符号誤り率により評価される。符号誤り率は,一般に,パルス発生器,符号誤り率測定器などを使用し,測定器が持つ,パルス発生器の出力信号と同一のパルスパターンと,光ファイバ伝送システムからの入力信号パターンを照合することにより符号誤りの有無が確認される

光ファイバ心線の接続作業時において,光ファイバの切断にニッパを用いると光ファイバの切断面の不良が原因で光ファイバの接続部で断線する場合があるため,切断面を鏡面状に切断し光ファイバのコアどうしを精度良く接触できるよう光ファイバカッタが用いられる

防水型光ファイバケーブルに用いられる WB テープは,一般に,不織布に吸収材料が塗布してあり,浸水すると吸収材料が吸水,膨張しながらゲル化してケーブルの隙間を埋め尽くし,止水ダムを形成することによりそれ以上の浸水を防止するものである。

問4

(1) 労働安全衛生に関する法令に基づく安全管理体制及び安全活動の概要

事業者は,快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保する責務を有している。

労働安全の管理体制としては,通信業の場合,事業者は常時使用する労働者数が 300 人以上の事業場において,統括安全衛生管理者を選定し,安全管理者,衛生管理者などを指揮させるとともに,労働者の危険又は健康障害を防止するための措置などの業務を統括管理させなければならない。また,通信業の場合,常時 100 人以上の労働者を使用する事業場では,事業者は労働者の危険の防止に関する重要事項などを調査審議させ,事業者に対して意見を述べさせるために,安全委員会を設置することが義務付けられている。安全委員会の運営方法として,重要な議事内容は記録し,3 年間保存しなければならない。

さらに,労働災害を防止するための管理を必要とする作業で,政令で定めるものについては,当該作業の区分に応じて,作業主任者を選任しなければならない。作業主任者は,作業に従事する労働者の指揮のほか,機械・安全装置の点検,器具・工具などの使用状況の監視などに関する職務を担っており,技能講習修了者や免許所有者の中から選任されるものである。

また,ヒューマンエラーに起因する事故などを防止するための安全活動の 1 つに,危険予知訓練(KYT)がある。KYT の進め方としては,現状把握,本質追及などの各段階を経て進めていく 4R 法がある。

4R 法とは,① 現状把握,② 本質追及,③ 対策樹立,④ 目標設定の 4 段階で進めていく方法である。

(2) システムの信頼性

(ⅰ) アベイラビリティ

  1. 与えられた時点でシステムが動作可能である確率は,一般に,瞬間アベイラビリティなどといわれる。(
  2. MTBF を MTBF と MTTR の和で除したものは,一般に,運用アベイラビリティといわれる。(
  3. MUT(平均アップ時間)を MUT と MDT(平均ダウン時間)の和で除したものは,一般に固有アベイラビリティといわれる。(

MTBF を MTBF と MTTR の和で除したものは,一般に,固有アベイラビリティといわれ,次式で定義される。

$\displaystyle A = \frac{\text{MTBF}}{\text{MTBF} + \text{MTTR}} = \frac{\mu}{\mu + \lambda}$

MUT(平均アップ時間)を MUT と MDT(平均ダウン時間)の和で除したものは,一般に運用アベイラビリティといわれ,次式で定義される。

$\displaystyle A = \frac{\text{MUT}}{\text{MUT} + \text{MDT}}$

(ⅱ) 保全

  1. 予防保全を行わないと,大きな休止損失を招くことや,品質や安全性の面で問題を生ずることがある。(
  2. 装置の故障の兆候を監視して必要なときに措置を行う状態監視保全は,予防保全の一形態であり,統計的・数理的に故障が予測できない場合に有効である。(
  3. 故障率が DFR(Decreasing Failure Rate)型の部品の保全においては,使用に先立ちスクリーニング,エージングなどを行うより,定期的に部品を取り替える予防保全を行う方が有効である。(

故障率が DFR(Decreasing Failure Rate)型の部品の保全においては,使用に先立ちスクリーニング,エージングなどを行うことが有効である

(3) 装置の信頼性

装置は偶発故障期間にあり,$e^{-0.10}=0.90$,$e^{-0.08}=0.92$,$e^{-0.04}=0.96$ とし,$e$ は自然対数の底とする。

(ⅰ) MTBF の計算

装置 A の総動作時間を 2,000 時間,総動作不能時間を 400 時間,故障回数を 4 回としたとき,装置 A の MTBF は 500 時間である。

MTBF は,総動作時間 2,000 時間を故障件数 4 回で除して求められる。

MTBF = 総動作時間 / 故障件数 = 2,000 [時間] / 4 [回] = 500 [時間]

(ⅱ) 並列冗長システムの信頼度

装置 B1 及び B2 のMTBF をそれぞれ 2,000 時間及び 5,000 時間としたとき,装置 B1 及び B2 をそれぞれ 1 つ用いた並列冗長システムの 200 時間における信頼度は,99.6 [%] である。

故障率は MTBF の逆数であるから,装置 B1 及び B2 の故障率をそれぞれ $\lambda_1$,$\lambda_2$ とすると,次式で求められる。

\[ \lambda_1 = \frac{1}{2,000} \] \[ \lambda_2 = \frac{1}{5,000} \]

装置の信頼度 $R = e^{-\lambda t}$ より,装置 B1 及び B2 の 200 時間における信頼度をそれぞれ $R_1$,$R_2$ とすると,次式で求められる。

\[ R_1 = \exp{(-\frac{200}{2000})} = e^{-0.1} = 0.90 \] \[ R_2 = \exp{(-\frac{200}{5000})} = e^{-0.04} = 0.96 \]

並列冗長構成の信頼度 $R$ は,次式で求められる。

\[ R = 1-(1-R_1)(1-R_2) = 1 - (1-0.90)(1-0.96)=1-0.1\times0.04 = 0.996 \]
並列冗長システムの信頼度
図 並列冗長システムの信頼度

問5

(1) 電子メールのセキュリティ

電子メールシステムにおいて一般的に使用されるプロトコルとして,POP と SMTP がある。POP は,電子メールを受信するためのプロトコルであるが,メールの受信者と POP サーバとの間でやり取りされるユーザ名やパスワードが暗号化されていないため,悪意の第三者によってユーザ名やパスワードが盗聴され,悪用されるおそれがある。セキュリティを高めるため POP によるメール受信の仕組みと通信の暗号化などを行う仕組みを併用するものとして POP over SSL/TLS がある。また,POP over SSL/TLS ではパスワードだけでなくメール本文も含めて暗号化される。

SMTP は,電子メールを送信するためのプロトコルであるが,認証の仕組みを有していない。そのため,悪意の第三者によって SMTP サーバが不正に使用され,迷惑メールや攻撃メールを送信する際の踏み台として利用されるおそれがある。セキュリティを高めるため SMTP 利用時にも認証を行う方式には,POP befor SMTPSMTP AUTH がある。POP befor SMTP は,SMTP サーバを利用してメールを送信する前に,POP サーバへのアクセスを必須とし,事前に認証を行う方式である。また,SMTP AUTH は,SMTP の拡張仕様の 1 つであり,SMTP サーバがメールの送信を実行する前に,送信依頼をしてきた相手が正規の利用者かどうかを確認する方式である。

セキュリティ管理技術」参照

(2) ISMS の要求事項を満たすための管理策

JIS Q 27001 : 2014 に規定されている,ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の要求事項を満たすための管理策

  1. プログラムソースコードへのアクセスは,制限しなければならない。(
  2. パスワード管理システムは,対話式でなければならず,また,良質なパスワードを確実とするものでなければならない。(
  3. 情報セキュリティのための方針群は,これを定義し,管理層が承認し,発行し,全ての従業員に通知しなければならず,関連する外部関係者に対しては秘匿しなければならない。(
  4. 装置は,可用性及び完全性を継続的に維持することを確実にするために,正しく保守しなければならない。(

情報セキュリティのための方針群は,これを定義し,管理層が承認し,発行し,全ての従業員に通知しなければならず,関連する外部関係者に対しても通知しなければならない

(3) 情報システムへの攻撃の前段階として行われる不正行為

  1. 公開サーバの IP アドレスや組織内のホストの IP アドレスを探り出す行為は,一般に,IP スプーフィングといわれる。(
  2. サーバ上で稼働しているアプリケーションに対して,具体的なソフトウェアやそのバージョンを探り出す行為は,一般に,NAPT といわれる。(
  3. サーバに連続してアクセスし,使用しているポートを探り出す行為は,一般に,バナーチェックといわれる。(
  4. ネットワーク上を流れているパケットの盗聴を行う際には,一般に,スニッフィングツールが使用される。(

公開サーバの IP アドレスや組織内のホストの IP アドレスを探り出す行為は,一般に,アドレス・スキャンといわれる。

サーバ上で稼働しているアプリケーションに対して,具体的なソフトウェアやそのバージョンを探り出す行為は,一般に,バナーチェックといわれる。

サーバに連続してアクセスし,使用しているポートを探り出す行為は,一般に,ポートスキャンといわれる。

IP スプーフィングとは,攻撃元を特定させないため IP アドレスを詐称することにより,その IP アドレス保持者になりすまし,ハッキングなどを行う行為のこと。

NAPT とは,プライベートアドレスをグローバルアドレスに変換する際に,ポート番号も変換することにより,1 つのグローバルアドレスに対して,複数のプライベートアドレスを割り当てる技術のこと。

(4) ネットワーク工程表の特徴など

  1. 作業は矢線で示し,矢線の長さは,作業の所要日数と比例関係にあるため,各作業の所要日数を視覚的に確認でき,工程に影響を及ぼす作業を明確にすることができる。(
  2. スタートの結合点からゴールの結合点に至る全ての経路の中で所要日数が最も長い経路はクリティカルパスといわれ,クリティカルパスは,複数存在することはなく,1 つに限定される。(
  3. 作業相互間の関係を示すダミー作業は,一般に,破線の矢線で表示され,所要日数が 0(ゼロ)であるため,クリティカルパスを決定する際に考慮する必要はない。(
  4. ある作業を最早開始時刻で始めて,後続する作業の最早開始時刻に全く影響することなく消費できる余裕時間は,フリーフロート(自由余裕)といわれ,どの作業においても,フリーフロートがトータルフロート(全体余裕)と比較して大きくなることはない。(

作業は矢線で示し,矢線の長さは,作業の所要日数と比例関係にはなく,各作業の所要日数は数字で書き込む。各作業の相互依存関係をネットワーク図にしたものであり,作業の関係を視覚的に確認でき,工期に影響を及ぼす作業を明確にすることができる。

スタートの結合点からゴールの結合点に至る全ての経路の中で所要日数が最も長い経路はクリティカルパスといわれ,クリティカルパスは,1 つに限定されず複数存在することがある

作業相互間の関係を示すダミー作業は,一般に,破線の矢線で表示され,所要日数が 0(ゼロ)であるため,クリティカルパスを決定する際に考慮する必要がある

(5) 公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン

IT 戦略会議・IT 戦略本部合同会議で取りまとめられた取組方針である「線路施設の円滑化について」にのっとり策定された「公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン」における基本的な考え方など

ここで,電柱,管路,とう道,ずい道,鉄塔その他の認定電気通信事業の用に供する線路又は空中線を設置するために使用することができる設備を設備といい,設備の所有者を設備保有者という。

  1. 本ガイドラインは,電気通信事業法に規定する端末設備の接続等の運用基準として機能することとなるものであり,設備保有者が遵守すべき標準的な取扱方法を取りまとめることにより,設備保有者による線路施設等の円滑化を図るものである。(
  2. 線路を設置するために使用することができる設備の設備保有者には,電気通信事業者及び鉄道事業者のみが該当し,空中線を設置するために使用することができる設備の設備保有者には,電気通信事業者その他の公益事業者がそれぞれ該当する。(
  3. 設備保有者は,認定電気通信事業者に設備を提供するに当たり,資本関係その他の理由により,差別的な取扱いをしないものとする。(
  4. 設備保有者は,設備の提供に係る条件等を独自に策定し,一般に,非公表ととする
    なお,設備の提供に係る条件等は,認定電気通信事業者から設備の提供の申込みがあった都度,個別に協議して決定する。(

本ガイドラインは,電気通信事業法に規定する他人の土地の使用権に関する協議の認可・裁定の運用基準として機能することとなるものである。設備の所有者が,認定電気通信事業者に設備の一部を提供する場合において,設備保有者及び事業者が遵守すべき標準的な取扱方法を取りまとめることにより,事業者による線路敷設等の円滑化を図り,超高速インターネットの整備に不可欠な光ファイバ網の整備等を推進し,もって利用者の利益,国民の利便性の向上に資することを目的とする。

線路を設置するために使用することができる設備の設備保有者には,電気通信事業者,電気事業者,鉄道事業者その他の公益事業者が該当し,空中線を設置するために使用することができる設備の設備保有者には,電気通信事業者その他の公益事業者がそれぞれ該当する。

設備保有者は,設備の提供に係る条件等をあらかじめ公表する。なお,公表すべき条件等は,このガイドラインで規定する(透明性の原則)。また,設備保有者は,事業者から設備の使用の申込みを受けたときは,原則として,ガイドラインで定める場合を除き拒否できない

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