平成30年度 第2回 線路及び設備管理

2019年6月3日作成,2021年1月2日更新

問1

(1) 光ファイバの分散特性

光ファイバに入射された光パルスは,光ファイバ中を伝搬する間にその波形に時間的な広がりを生ずる。このように波形が時間的に広がる現象は分散といわれる。

光ファイバの中での分散には,幾つかの種類があり,その一つに,光ファイバに使用される材料の屈折率が波長に依存する特性を持つことに起因する材料分散がある。材料分散の単位としては,一般に,[ps/nm/km] が用いられ,1 [ps/nm/km] とは,スペクトル幅 1 [nm] 光が 1 [km] 伝搬したとき,パルス幅が 1 [ps] 広がることを意味する。

また,コアとクラッドの屈折率差が小さい場合は,その境界面での全反射現象は鏡面のようにはならず,クラッド部分へ一部がしみ出すように全反射が起こる。このしみ出しの割合は,波長によって異なるため,伝搬経路は波長依存性を持つことになり分散が生ずる。この分散は,構造分散といわれる。

波長によって伝搬速度が異なることにより生ずる分散は,波長分散といわれ,波長分散は構造分散と材料分散のであることから,コアの屈折率分布形状を工夫することによって低分散の伝送媒体が実現されている。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

(2) 光ファイバおよび光ファイバケーブル

(ⅰ) 光ファイバの種類と特徴

  1. シングルモード光ファイバの構造パラメータのうち,シングルモードとなる最短の波長を規定する構造パラメータは,開口数(NA)といわれる。NA で規定された波長より短い光は,マルチモードになる。(
  2. WDM 方式を用いた光ファイバ伝送システムにおける四光波混合による伝送品質の劣化を避ける方法の一つとして,ゼロ分散波長を伝送波長域に重ならないようにするために,カットオフシフト光ファイバといわれる光ファイバを用いる方法がある。(
  3. 石英系光ファイバの伝送損失が最小となる 1.55 μm 帯で波長分散が最小となるように波長分散特性を調整した光ファイバは,分散シフト光ファイバ(DSF)といわれ,DSF の屈折率分布には,セグメントコア型などがある。(
  4. 光ファイバの後方散乱係数を制御して,材料分散と構造分散を相殺させることにより屈折率分布をフラットに近づけた光ファイバは,分散フラット光ファイバといわれ,広い波長帯域において,一定の波長分散を実現している。(

シングルモード光ファイバの構造パラメータのうち,シングルモードとなる最短の波長を規定する構造パラメータは,カットオフ周波数といわれる。カットオフ周波数で規定された波長より短い光は,マルチモードになる。

WDM(Wavelength Division Multiplexing : 波長分割多重通信)方式を用いた光ファイバ伝送システムにおける四光波混合による伝送品質の劣化を避ける方法の一つとして,ゼロ分散波長を伝送波長域に重ならないようにするために,非ゼロ分散シフト光ファイバ(NZ-DSF)といわれる光ファイバを用いる方法がある。

光ファイバの屈折率分布を制御して,材料分散と構造分散を相殺させることにより分散値を 0 付近でフラットに近づけた光ファイバは,分散フラット光ファイバといわれ,広い波長帯域において,波長分散を小さく抑えることができる

(ⅱ) アクセス系光ファイバケーブルの構造と機能

  1. アクセス系光ファイバケーブルの光ファイバ心線は,一般に,外径 0.25 [mm] のほかに作業性の向上を意図した外径 0.5 [mm] のものが用いられている。外径 0.5 [mm] の光ファイバ心線は外径 0.25 [mm] の心線を被覆除去した状態と同じ状態に被覆除去できないため,外径 0.25 [mm] の光ファイバ心線用とは異なる専用の接続用部材が用いられている。(
  2. アクセス系光ファイバケーブルは,使用環境によって構造や機能が異なるものが用いられ,スロットロッドと外被の間に吸水テープを巻いた WB ケーブル,難燃性のある外被を施した FR ケーブル,架空布設作業に適するようケーブル部と支持線を一体化した SS ケーブルなどがある。(
  3. クマゼミ対策として用いられるドロップ光ファイバケーブルは,外被が高強度化されているため,テンションメンバは備わっていない。(

アクセス系光ファイバケーブルの光ファイバ心線は,一般に,外径 0.25 [mm] のほかに撚り合わせを可能とした外径 0.5 [mm] のものが用いられている。外径 0.5 [mm] の光ファイバ心線は外径 0.25 [mm] の心線を被覆除去した状態(素線 0.125 [mm])と同じ状態に被覆除去できるため,外径 0.25 [mm] の光ファイバ心線用と同様の専用の接続用部材が用いられている。

クマゼミ対策として用いられるドロップ光ファイバケーブルは,外被が高強度化されているが,テンションメンバも備わっている

GE-PON 及び光中継伝送システム

(ⅰ) GE-PON に用いられる光受動デバイスの機能,特徴

  1. PLC(石英系プレーナ光波回路)を用いた 8 分岐光スプリッタは,Y 分岐を多段接続して構成されており,8 分岐光スプリッタの原理的な光損失は,6 [dB] である。(
  2. 8 分岐を超える光スプリッタには,PLC 型と比較して小型化及び集積化が容易なファイバ溶融型カプラが用いられている。(
  3. GE-PON では,上りの光信号と下りの光信号に異なる波長が用いられており,透過できる波長帯域が 1.49 μm 帯 ~ 1.65 μm 帯である光スプリッタが使用されている。(
  4. 設備センタからの試験光が通信に影響を及ぼさないようにするためには,ファイバグレーティングを利用した光フィルタをユーザ側の ONU の直前に組み込み,試験光が ONU に到達しないようにする方法が有効である。(

PLC(石英系プレーナ光波回路)を用いた 8 分岐光スプリッタは,Y 分岐を多段接続して構成されており,8 分岐光スプリッタの原理的な光損失は,9 [dB] である。

2 分岐の三段構造であるから,3 [dB] × 3 = 9 [dB]

8 分岐を超える光スプリッタには,ファイバ溶融型カプラと比較して小型化及び集積化が容易な PLC 型が用いられている。

GE-PON では,上りの光信号と下りの光信号に異なる波長が用いられており,透過できる波長帯域が 1.31 μm 帯 ~ 1.55 μm 帯である光スプリッタが使用されている。

GE-PON : Gigabit Ethernet - Passive Optical Network

光ファイバによる公衆回線網において,1 本の回線を複数の加入者で共用する PON 上でギガビットイーサネットの信号をそのまま流す技術。最高 1 Gbps の FTTH サービスを提供することができる。

(ⅱ) 光中継伝送システムの概要

  1. 3R 機能を有する再生中継器を用いた光中継伝送システムでは,中継器数の増加により雑音は蓄積されないが波形劣化は蓄積され,SN 比を低下する要因となる。(
  2. 線形中継器を用いた光中継伝送システムでは,光信号をそのまま直接増幅しているため柔軟に伝送速度を選択できる,波長の異なる複数の光信号の一括増幅が可能であるなどの特徴がある。(
  3. WDM 方式を用いた光中継伝送システムにおける光信号の波形劣化要因である非線形光学効果として,自己位相変調,四光波混合などがある。自己位相変調を抑える方法としては,使用波長を不等間隔で配置する方法がある。(
  4. WDM 方式を用いた光中継伝送システムにおける雑音としては,発光源雑音,入力光信号の持つ量子雑音であるショット雑音,受光素子での誘導放出による ASE 雑音などがあり,SN 比が低下する要因となる。(

3R 機能を有する再生中計器を用いた光中継伝送システムでは,中継器数の増加により雑音,波形劣化は蓄積されないことから,SN 比が低下しない。

WDM 方式を用いた光中継伝送システムにおける光信号の波形劣化要因である非線形光学効果として,自己位相変調,四光波混合などがある。四光波混合を抑える方法としては,使用波長を不等間隔で配置する方法がある。

WDM 方式を用いた光中継伝送システムにおける雑音としては,発光源雑音,入力光信号の持つ量子雑音であるショット雑音,光増幅器での誘導放出による ASE(amplified spontaneous emission)雑音などがあり,SN 比が低下する要因となる。

問2

(1) 海底ケーブル敷設工事に用いられるケーブル敷設船の機能

ケーブル敷設船は,一般の船舶が有している航海に必要な機能に加え,複雑なケーブル敷設工事に対応できる機能を装備している。

ケーブル敷設船の推進方式としては,船上でのケーブル接続作業への支障にならないように振動の少ない電気推進方式,前進全速から後進全速までの全範囲で任意の船速を無段階で得ることができる可変ピッチプロペラを用いた方式などが用いられている。

また,作業性を考慮して,ケーブル陸揚地での船固めや船上でのケーブル接続作業における自動定点保持を長時間可能とするために推進装置を制御する DPS(Dynamic Positioning System)を搭載するケーブル敷設船が導入されている。

さらに,ケーブル敷設船は,埋設機,ROV(Remotely Operated Vehicle)などを吊り下げるための A フレーム,大量の海底ケーブルを格納する複数のケーブルタンク,及び海底中継器を恒温で格納することができる海底中継器格納場所を有しており,ケーブル敷設・巻揚げのための DCE(Drum Cable Engine),高速敷設に適した LCE(Linear Cable Engine)などを装備している。

専門的分野・水底線路 対策ノート」参照

(2) 管路,とう道などの通信土木設備

(ⅰ) 管の種類,特徴

  1. 管の種類には,材料の違いにより硬質ビニル管,塗覆装鋼管,鋳鉄管などがあり,このうち鋳鉄管は,送電線の昇圧化などに伴う誘導対策に使用される。(
  2. 鋳鉄管は,金属材料を使用する管のうちでは腐食に強く,鋳鉄管の抗張力は塗覆装鋼管と比較して大きい。(
  3. 硬質ビニル管は,塩化ビニル樹脂を主体とした重合体を主原料に用いた管であり,同一呼び径において,硬質ビニル管の肉厚は,鋳鉄管の肉厚と比較して厚く,塗覆装鋼管の肉厚と比較して薄い。(

硬質ビニル管は,塩化ビニル樹脂を主体とした重合体を主原料に用いた管であり,同一呼び径において,硬質ビニル管の肉厚は,鋳鉄管の肉厚と比較して厚く,塗覆装鋼管の肉厚と比較して厚い

(ⅱ) 管路設備の耐震対策

  1. マンホールダクト部において,地震時の地盤変状などに起因して生ずる相対変位によるコンクリートの剥離などを抑える対策として,スチールファイバコンクリートを用いて耐荷力の向上を図る方法がある。(
  2. 地震により液状化が予想される地域において管路を設置する場合は,硬質ビニル管を使用し,マンホールからの第 1 接続点で管路と管路の接続部にねじ式継手を使用する。(
  3. 地盤が軟弱地盤から土質が異なる地盤に急変する箇所に管路を施設する場合は,硬質ビニル管単独又は金属管単独とし,硬質ビニル管の場合は離脱防止継手を使用し,金属管の場合は短尺化した管を使用する。(
  4. 河川などを横断する通信ケーブルのための専用橋は,一般に,道路橋と比較して幅員が狭く,その形式は耐震対策として有効である圧延鋼桁に限定されている。(

地震により液状化が予想される地域において管路を設置する場合は,金属管を使用し,マンホールからの第 1 接続点で管路と管路の接続部に伸縮継手を使用する。

地盤が軟弱地盤から土質が異なる地盤に急変する箇所に管路を施設する場合は,硬質ビニル管単独又は金属管単独とし,金属管の場合は離脱防止継手を使用し,硬質ビニル管の場合は短尺化した管を使用する。

河川などを横断する通信ケーブルのための専用橋は,一般に,道路橋と比較して幅員が狭く,その形式は耐震対策として有効である圧延鋼桁やトラスなどがある。

(ⅲ) とう道の構造と特徴

  1. とう道は,多条数の通信用ケーブルを収容できるトンネル形式の通信土木設備であり,災害に強い,交通量の多い道路においても制約が少なくケーブル工事ができる,大きな需要耐力があるといった特徴を有している。(
  2. とう道設備の施工方法には,シールド工法と開削工法があり,とう道の断面形状は,一般に,シールド工法では円形,開削工法では矩形である。(
  3. シールド式とう道の構造としては,内側に 1 次覆工,外側に 2 次覆工が設けられ,2 次覆工は,防食,防水,蛇行修正などを目的としている。(
  4. 開削式とう道の縦断線形は,道路の縦断勾配,埋設物,必要な土被り,排水,歩行,資材運搬の容易性などを考慮して決定され,一般に,勾配が設けられている。(

シールド式とう道の構造としては,外側に 1 次覆工,内側に 2 次覆工が設けられ,2 次覆工は,防食,防水,蛇行修正などを目的としている。

シールド式とう道
図 シールド式とう道

(ⅳ) とう道の劣化

  1. とう道の壁に生成される白色物質は,コンクリートの中の消石灰がコンクリートの亀裂から流出し,空気中の酸素と反応して生成される炭酸カルシウムである。(
  2. コンクリートの中の消石灰がコンクリートの亀裂から流出し,地下水に置き換わると,コンクリートの中は徐々にアルカリ化し,鉄筋は腐食しやすくなる。(
  3. とう道の鉄筋の腐食は,鉄筋被りが極端に深い場合に発生しやすい。(
  4. とう道の鉄筋を腐食しにくくするには,浸透性防錆材をコンクリート表面に塗布し,鉄筋まで浸透させ,防錆被膜を形成することにより,錆の発生を抑制する方法がある。(

とう道の壁に生成される白色物質は,コンクリートの中の消石灰がコンクリートの亀裂から流出し,空気中の二酸化炭素と反応して生成される炭酸カルシウムである。

コンクリートの中の消石灰がコンクリートの亀裂から流出し,炭酸カルシウムに置き換わると,コンクリートの中は徐々に中性化し,鉄筋は腐食しやすくなる。

とう道の鉄筋の腐食は,鉄筋被りが極端に浅い場合に発生しやすい。

問3

(1) アクセス系線路設備におけるメタリックケーブル又は光ファイバケーブルの保守方法

アクセス系線路設備における地下用メタリックケーブルには,き線系ケーブルと配線系ケーブルがある。

き線系ケーブルには,一般に,ケーブル内に乾燥空気を連続して供給するガス連続供給方式によるガス保守が適用され,ケーブル損傷などによりピンホールが発生した場合,ケーブル内に供給されているガスが漏洩して内圧が低下するので,それを監視・検出することにより,ピンホールを発見することが可能となる。

配線系ケーブルには,ケーブル内への浸水を防ぐために,ケーブル内にポリブデンを主成分とする混和材を充填した JF ケーブルがある。

一方,アクセス系線路設備における地下用光ファイバケーブルには,一般に,不織布に吸水材料が塗布してある WB テープを用いた WB ケーブルがある。WB テープは,浸水すると吸水材料が吸水して膨張しながらゲル化してケーブルの隙間を埋め尽くし,止水ダムを形成することによりそれ以上の浸水を防止するものである。WB ケーブル適用区間では,マンホール内のケーブル接続箇所に浸水を検知するための浸水検知モジュールを設置することにより,ガス保守を不要としている。

浸水検知モジュールは,吸水膨張剤,可動体,曲げ付与部などから構成され,接続部に浸水が発生すると,吸水膨張剤が水を含むことにより膨張し,可動体を押し上げる。このとき,光ファイバは可動体の押上げにより,曲げ付与部に一定の曲げを与えられ曲げ損失が発生する。この曲げ損失を,OTDR により検出することで,浸水の発生及び浸水位置を検知することが可能となる。

通信ケーブル監視技術」参照

WB とは,Water Block の略である。

OTDR とは,Optical Time Domain Reflectometer の略であり,光ファイバの片端から光を入射し,光ファイバ内で生じる後方散乱光や反射光により,光ファイバの損失などを測定する装置である。

(2) 線路設備の劣化とその対策,光ファイバの試験方法

(ⅰ) 線路設備の劣化とその対策

  1. 強風地域では,ケーブルの振動によって吊り線が吊架部で繰り返し曲げられ,疲労破断することがある。対策としては,ラインガードやセパレータを用いる方法が有効である。(
  2. キツツキ,リスなどの鳥虫獣類による外被損傷の防止対策に用いられる架空ケーブルとしては,アルミラミネートテープで外被を補強・保護した HS ケーブルがある。HS ケーブルは,強風地域での外被亀裂に対する対策としても有効である。(
  3. 管路に布設されたケーブルには,ケーブルの温度伸縮や車両の通過に起因する振動などによりケーブルが移動するクリーピングといわれる現象が発生することがある。対策としては,マンホール内で伸縮型のケーブル受け金物によりケーブルを受ける方法が有効である。(
  4. 地下ケーブルのポリエチレン外被に生ずる環境応力亀裂(ESC)は,一般に,ケーブルの円周方向に発生する。ESC の発生要因としては,塩素イオンによるケーブル外被の劣化が挙げられる。対策としては,ケーブル布設時に外被を中性洗剤で洗浄する方法が有効である。(

ラインガードは,自己支持形ケーブル支持線の吊架部分の補強に使用する。

キツツキ,リスなどの鳥虫獣類による外被損傷の防止対策に用いられる架空ケーブルとしては,ステンレステープで外被を補強・保護した HS ケーブルがある。HS ケーブルは,強風地域での外被亀裂に対する対策としても有効である。

管路に布設されたケーブルには,ケーブルの温度伸縮や車両の通過に起因する振動などによりケーブルが移動するクリーピングといわれる現象が発生することがある。対策としては,マンホール内においてケーブル移動防止金物を用いて機械的にケーブル移動を止める方法が有効である。

地下ケーブルのポリエチレン外被に生ずる環境応力亀裂(ESC)は,一般に,ケーブルの円周方向に発生する。ESC の発生要因としては,石鹸水などの界面活性剤のあるところで応力を受けることが挙げられる。対策としては,ケーブル布設時に中性洗剤等の界面活性剤を使用しない,外被に損傷を与えないことが有効である。

(ⅱ) 光ファイバの試験,保守方法

  1. 後方散乱係数の異なる光ファイバを接続した場合,接続損失の正確な測定法としては,光ファイバのそれぞれの片側より光パワーメータを用いて接続損失を測定し,そのうち大きい方の値を採用する方法が用いられる。(
  2. 浸水状態のまま一定期間放置された光ファイバ心線の破断確率は,最大で乾燥状態の 2 倍となることから,浸水を適切に検知することが必要となる。浸水期間を短くすることにより破断確率の上昇を抑制することが可能である。(
  3. 光ファイバ心線の接続作業時において,光ファイバの切断にニッパを用いると光ファイバの切断不良が原因で光ファイバの接続部で断線する場合があるため,切断面を球面状に形成して光ファイバのコアどうしを精度良く接触できる光ファイバカッタが使用される。(
  4. 光ファイバの破断確率を推定するために,ブリルアン散乱光における光周波数シフトの変化量やひずみ依存性を利用した光ファイバひずみ分布測定器(B-OTDR)を用いて,光ファイバの長さ方向に分布するひずみを測定する方法がある。(

後方散乱係数の異なる光ファイバを接続した場合,接続損失の正確な測定法としては,光ファイバのそれぞれの片側より OTDR を用いて接続損失を測定し,その平均を求める方法が用いられる。

浸水状態のまま一定期間放置された光ファイバ心線の破断確率は,最大で乾燥状態の 10 倍となることから,浸水を適切に検知することが必要となる。浸水期間を短くすることにより破断確率の上昇を抑制することが可能である。

光ファイバ心線の接続作業時において,光ファイバの切断にニッパを用いると光ファイバの切断不良が原因で光ファイバの接続部で断線する場合があるため,切断面を鏡面状に切断して光ファイバのコアどうしを精度良く接触できる光ファイバカッタが使用される。

(3) 災害対策への取組,災害対策機器の概要

(ⅰ) 災害対策基本法に基づく災害対策への取組など

  1. 災害対策基本法において,独立行政法人,日本銀行,日本赤十字社,日本放送協会その他の公共機関及び電気,ガス,輸送,通信その他の公共的事業を営む法人であって,内閣総理大臣が指定するものは,指定公共機関といわれる。(
  2. 公益事業特権の適用を受けることができる認定電気通信事業者に認定された電気通信事業者は,認定と同時に災害対策基本法に定める指定公共機関として指定される。(
  3. 指定公共機関は,内閣府に設置される中央防災会議が作成する防災に関する基本的な計画に基づき,その業務に関し,防災業務計画を作成し,毎年防災業務計画に検討を加え,必要があると認めるときは,これを修正しなければならない。(
  4. 指定公共機関は,防災業務計画を作成し,又は修正したときは,速やかに当該指定公共機関を所管する大臣を経由して内閣総理大臣に報告し,関係都道府県知事に通知するとともに,その要旨を公表しなければならない。(
  5. 指定公共機関として指定された電気通信事業者は,災害対策基本法などの法令に則り,電気通信設備等の耐水構造化や耐震構造化による電気通信設備等の高信頼度化,主要な伝送路の多ルート化や主要な中継交換機の分散設置による電気通信システムの高信頼度化などの災害対策に取り組んでいる。(

公益事業特権の適用を受けることができる認定電気通信事業者に認定された電気通信事業者は,認定と同時に災害対策基本法に定める指定公共機関として指定されることはない

指定公共機関は,災害対策基本法 第 2 条 第 1 項 五に基づき,内閣総理大臣が指定する。

災害基本対策法 第二条 定義

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(中略)

五 指定公共機関 独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会その他の公共的機関及び電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人で、内閣総理大臣が指定するものをいう。

(ⅱ) 災害時優先電話,災害対策機器など

  1. 災害の救援や復旧並びに公共の秩序の維持のため,法令に基づき,防災関係等各種機関等に対し,電気通信事業者が提供している災害時優先電話は,一般に,災害発生時などに行われる通信制限時であっても優先電話への着信を優先して扱うことにより,重要通信を確保するサービスである。(
  2. 災害復旧時において,障害を受けた優先電話は,復旧作業の効率性にかかわらず,他の通常電話に対して最優先で復旧される。(
  3. 移動式 ICT ユニットは,ICT サービス提供に必要な装置類を収容した可搬型のユニットであり,災害時に被災地に搬入・設置して避難所などの周辺に Wi-Fi によるローカルネットワークの構築,広域ネットワークへの接続を短時間で行うことができる。(
  4. 電気通信事業者は,災害発生時に重要な通信設備などへの電源供給の応急復旧に資するために災害対策用移動電源車を配備しており,一台の最大発電能力は 500 [kVA] であり,また,発電方式はガスタービン発電に統一されている。(

災害の救援や復旧並びに公共の秩序の維持のため,法令に基づき,防災関係等各種機関等に対し,電気通信事業者が提供している災害時優先電話は,一般に,災害発生時などに行われる通信制限時であっても優先電話からの発信を優先して扱うことにより,重要通信を確保するサービスである。

災害復旧時において,障害を受けた優先電話は,復旧作業は効率性の観点から実施され,他の通常電話に対して最優先で復旧されることはない

電気通信事業者は,災害発生時に重要な通信設備などへの電源供給の応急復旧に資するために災害対策用移動電源車を配備しており,一台の最大発電能力は対応規模に応じてさまざまで 2,000 [kVA] を有する発電機もあり,また,発電方式はガスタービン方式の他ディーゼルエンジン方式などがある。

問4

(1) 施工管理の管理機能とその関連性,工程表の特徴など

施工において,品質管理,工程管理,原価管理及び安全管理は,四大管理機能といわれる。四大管理機能は,それぞれ独立したものでなく,相互に関連性を持っている。

例えば,工程と原価の関連性をみると,工事の施工出来高と,固定原価と変動原価から成る工事総原価の関係において,採算のとれる状態にあるためには,損益分岐点の施工出来高以上の施工出来高を上げる必要がある。工程速度と原価の関係において,工事総原価が最小となる施工速度は経済速度といわれ,経済速度における施工出来高の上昇には限度があり,施工速度が速すぎると,工事総原価は高くなり,工事の採算性は悪化する。

四大管理機能のうち,工程管理においては,一般に,工事の施工手順や所要日数などを分かりやすく図表化した工程表が用いられる。工程表には,横線式工程表,ネットワーク式工程表などがあり,横線式工程表の一つに,縦軸に作業内容を置き,横軸に各作業の日数をとるバーチャートがある。バーチャートは,工期に影響する作業がどれであるかを把握しにくい欠点があるが,各作業の所要日数が分かり,さらに作業の流れが左から右に移行しているので作業間の関連性が分かりやすいという特徴を有している。

工程管理」参照

(2) JIS Z 8115 : 2000 ディペンダビリティ(信頼性)用語

(ⅰ) 設計に関する用語

  1. 温予備とは,待機手段が作動状態にあるけれども,システムには機能的に接続されていない待機冗長の形式のことをいう。(
  2. 冷予備とは,待機手段が作動状態になくて,システムにも機能的に接続されていない常用冗長の形式のことをいう。(
  3. 多様性冗長とは,異なる手段によって,同一の機能を実現する冗長のことをいう。(
  4. m/n 冗長とは,m 個の同じ機能の構成要素中,少なくとも n 個が正常に動作していれば,アイテムが正常に動作するように構成してある常用冗長のことをいう。(
  5. 部分冗長とは,可能な手段のうちの一つだけが要求機能を果たすのに必要である常用冗長の形式のことをいう。(

予備とは,待機手段が作動状態にあるけれども,システムには機能的に接続されていない待機冗長の形式のことをいう。英語で,熱予備は hot standby である。

冷予備とは,待機手段が作動状態になくて,システムにも機能的に接続されていない待機冗長の形式のことをいう。

m/n 冗長とは,n 個の同じ機能の構成要素中,少なくとも m 個が正常に動作していれば,アイテムが正常に動作するように構成してある常用冗長のことをいう。

部分冗長とは,可能な手段のうちの 2 つ以上が要求機能を果たすのに必要である常用冗長の形式のことをいう。

(ⅱ) 試験・検査に関する用語

  1. 適合試験とは,アイテムの特性又は性質が規定の要求事項に合致するかどうかを判定するための試験をいう。(
  2. フィールド試験とは,試験時に動作,環境,保全及び測定の条件を記録するフィールドで行う適合試験又は決定試験をいう。(
  3. 加速試験とは,規定のストレス及びそれらの持続的又は反復的印加がアイテムの性質へ及ぼす影響を調査するため,ある期間にわたって行う試験をいう。(
  4. スクリーニング試験とは,不具合アイテム又は初期故障を起こしそうなアイテムの除去又は検出を意図する試験又は試験の組合せをいう。(

耐久試験とは,規定のストレス及びそれらの持続的又は反復的印加がアイテムの性質へ及ぼす影響を調査するため,ある期間にわたって行う試験をいう。

ちなみに,加速試験とは,アイテムのストレスへの反応に対する観測時間の短縮,又は与えられた期間内のその反応増大のため基準条件の規定値を超えるストレス水準で行う試験をいう。

(3) ある非修理系システムの故障率

次の文章は,ある非修理系システムの故障率などについて述べたものである。このシステムが故障するまでの運用時間の分布が表に示すとおりのとき,以下の問に答えよ。ただし,システムは偶発故障期間にあり,$\log_{e} 0.9 = -0.1$ とし,$e$ は自然対数の底とする。

(運用時間の単位:時間)
故障番号 12345678910
運用時間 30312033183130161724

(ⅰ) システムの故障率

このシステムの 1 時間当たりの故障率は,0.04 である。

運用時間の合計は,30 + 31 + 20 + 33 + 18 + 31 + 30 + 16 + 17 + 24 = 250 [時間]

故障率は,故障件数(10 件)を総運用時間(250 時間)で除して求められる。

10 / 250 = 0.04

(ⅱ) システムの信頼度

このシステムの稼動開始後 2.5 時間の信頼度は,0.9 である。

システムの稼働開始後 t [時間] の信頼度を $R_t = 0.9$,故障率を $\lambda = 0.04$ とすると,次式が成り立つ。

\[ R_t = 0.9 = \exp{(-\lambda t)} = \exp{(-0.04 t)} \] \[ \log_e 0.9 = -0.1 =-0.04t \] \[ t = 0.1/0.04 = 2.5 \]
システムの稼働開始後 t [時間] の信頼度
図 システムの稼働開始後 t [時間] の信頼度

問5

(1) 情報システムの脆弱性を狙った攻撃

情報システムに脆弱性があるとそれが弱点となって外部からの攻撃を受けることがある。脆弱性の元となるプログラムの欠陥などはセキュリティホールともいわれる。

脆弱性を狙った攻撃には,バッファオーバーフロー攻撃,SQL インジェクション攻撃などがある。バッファオーバーフロー攻撃を受けると,入力されたデータを一時的に蓄えておく領域にあらかじめ用意した大きさ以上のデータが送り込まれることにより,プログラムが停止したり,誤動作したりするおそれがある。SQL インジェクション攻撃を受けるとデータベース内のレコードに含まれる情報が改ざん・消去される,情報が漏洩するなどの被害が生ずるおそれがある。

また,情報システムに用いられるコンピュータの OS は,最も基本的なソフトウェアであるだけにその脆弱性の問題は深刻なものになる危険性がある。OS の脆弱性対策としては,セキュリティパッチをダウンロードして適用する方法がある。

ネットワークセキュリティ対策」参照

(2) ISMS の要求事項を満たすための管理策

JIS Q 27001 : 2014 に規定されている,ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の要求事項を満たすための管理策

  1. 装置は,セキュリティの 3 要件のうちの機密性及び安全性を継続的に維持することを確実にするために,正しく保守しなければならない。(
  2. パスワード管理システムは,非対話式でなければならず,また,良質なパスワードを確実とするものでなければならない。(
  3. プログラムソースコードへのアクセスは,制限しなければならない。(

装置は,セキュリティの 3 要件のうちの可用性及び完全性を継続的に維持することを確実にするために,正しく保守しなければならない。

パスワード管理システムは,対話式でなければならず,また,良質なパスワードを確実とするものでなければならない。

(3) 迷惑メールの概要と対策

  1. 迷惑メールには,商品やサービス,Web サイトの宣伝などの広告宣伝を目的とするもの,金銭をだまし取ろうとする詐欺目的のもの,法外なサイト利用料を要求するもの,ウイルス感染を目的とするものなどがある。(
  2. ISP が提供するフィルタリングサービスには,迷惑メールと判定されたメールを受信者に配信しないで ISP のサーバに保留するものがある。(
  3. 送信ドメイン認証は,迷惑メールの送信者アドレスの詐称を防ぐための技術であり,トンネルモードトランスポートモードの二つの方式がある。(
  4. ISP による迷惑メール対策として,ISP があらかじめ用意しているメールサーバ以外からのメールを ISP の外へ送信しない仕組みである OP25B がある。(

送信ドメイン認証は,迷惑メールの送信者アドレスの詐称を防ぐための技術であり,送信元の IP アドレスを基に正規のサーバから発信されたかを認証する方法メールに電子署名を付与する方法の二つの方式がある。

前者には SPF 方式及び Sender ID 方式,後者には DKIM 方式及び Domain Keys 方式がそれぞれある。

(4) 通信線路工事における労働安全衛生に関する法令に基づく資格など

  1. 移動式クレーンを使用して,1 トン以上の電柱の玉掛け作業をする者は,玉掛け作業に係る特別教育を終了した者でなければならない。(
  2. 移動式クレーンを使用して,5 トン以上の電柱を吊り,移動作業をする者は,当該作業に係る移動式クレーンの運転技能講習を修了した者でなければならない。(
  3. マンホール内で作業を行う場合の酸素欠乏危険作業主任者は,酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の特別教育を修了した者のうちから選任しなければならない。(
  4. 吊り足場などの足場の組立て等作業主任者は,足場の組立て等作業主任者の特別教育を修了した者のうちから選任しなければならない。(
  5. 架空線路の保守作業では,作業床の高さが 2 [m] 以上 10 [m] 未満の高所作業車を運転(道路上を走行させる運転を除く。)する者は,高所作業車運転技能講習を修了した者,又は高所作業車運転業務の特別教育を修了した者でなければならない。(

移動式クレーンを使用して,1 トン以上の電柱の玉掛け作業をする者は,玉掛け作業に係る技能講習を終了した者でなければならない。

移動式クレーンを使用して,5 トン以上の電柱を吊り,移動作業をする者は,当該作業に係る移動式クレーンの運転士免許を取得している者でなければならない。

マンホール内で作業を行う場合の酸素欠乏危険作業主任者は,酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の技能講習を修了した者のうちから選任しなければならない。

吊り足場などの足場の組立て等作業主任者は,足場の組立て等作業主任者の技能講習を修了した者のうちから選任しなければならない。

(5) 建設業法などに定める内容に基づく建設工事の請負契約における元請負人の義務など

  1. 元請負人は,その請け負った建設工事を施工するために必要な工事の細目,作業方法その他元請負人において定めるべき事項を定めようとするときは,あらかじめ注文者の意見を聴く必要があるが,下請負人の意見を聴く必要はない。(
  2. 元請負人は,請負代金の出来高部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは,当該支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対して,当該元請負人が支払を受けた金額の出来高に対する割合及び当該下請負人が施工した出来高部分に相応する下請代金を,当該支払を受けた日から 20 日以内に特約に基づく期間内に支払わなければならない。(
  3. 元請負人は,下請負人からその請け負った建設工事が完成した旨の通知を受けたときは,当該通知を受けた日から 20 日以内で,かつ,できる限り短い期間内に,その完成を確認するための検査を完了しなければならない。(
  4. 特定建設業者は,発注者から請求があったときは,営業所ごとに備え置かれた施工体制台帳を,その発注者の閲覧に供しなければならない。
    なお,請負代金の額が 3,500 万円以上の工事の場合は,施工体制台帳の写しを発注者に提出しなければならない。(

元請負人は,その請け負った建設工事を施工するために必要な工事の細目,作業方法その他元請負人において定めるべき事項を定めようとするときは,あらかじめ下請負人の意見をきかなければならない

元請負人は,請負代金の出来高部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは,当該支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対して,当該元請負人が支払を受けた金額の出来高に対する割合及び当該下請負人が施工した出来高部分に相応する下請代金を,当該支払を受けた日から 1 月以内で,かつ,できる限り短い期間内に支払わなければならない。

特定建設業者は,発注者から請求があったときは,工事現場ごとに備え置かれた施工体制台帳を,その発注者の閲覧に供しなければならない。なお,公共工事の場合は,施工体制台帳の写しを発注者に提出しなければならない。

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