平成31年度 第1回 線路及び設備管理

2019年7月14日作成,2021年1月2日更新

問1

(1) 光ファイバケーブルの構造,特徴など

光ファイバは、側面から不均一な圧力が加わると光ファイバ軸が僅かに曲がり、マイクロベンディングロスが生ずる。そこで、光ファイバを側圧から保護するための緩衝層を設けた光ファイバ心線が用いられており、光ファイバケーブルには、単心の光ファイバ心線又は光ファイバテープ心線が集合され収容されている。

光ファイバケーブルにおいて、収容する光ファイバを外力から保護する方法として、光ファイバをフリーな状態にして外力の影響を緩和する構造のものは、ルースタイプといわれる。

アクセス系線路設備に用いられる光ファイバケーブルでは、地下ルートや架空ルートの更なる有効活用を図り、細径・軽量化を可能とする高密度実装が求められており、間欠接着型光ファイバテープ心線を用いたノンスロット構造の光ファイバケーブルが導入されている。

また、光ファイバケーブルでは、長スパンの布設を可能とするために、布設張力が加わったときの伸び率が 0.2 % 以下になるように、テンションメンバに機械的強度を持たせている。

マイクロベンディングロス

光ファイバに側面から不均一な圧力を加えると、光ファイバの軸がわずかに曲がり、発生する損失である。マイクロベンディングロスを軽減する方法は以下の通り。

  • 光ファイバの周りに緩衝層を持たせる
  • 光ファイバをパイプの中に入れる
ルースチューブ(Loose tube)

ルースチューブは,光ファイバを被覆するためのチューブである。

ノンスロット構造(スロットレス)

スロットを使用しない構造のため,従来のテープスロット型と比べて細径・軽量になる。(参考)スロットレス型(4TCCEタイプ)|光ファイバ・ケーブル|情報通信ソリューション統括部門|古河電気工業株式会社

(2) 光ファイバの特徴及び GE-PON の特徴

(ⅰ) 光ファイバの特徴

  1. 光ファイバには、その構造を決定するパラメータがあり、マルチモード光ファイバの場合は、モードフィールド径、開口数などがあり、シングルモード光ファイバの場合は、コア径、遮断波長などがある。(
  2. 石英系光ファイバには、コアやクラッドの屈折率を調整する方法として、コアにフッ素を添加してコアの屈折率を大きくする方法、クラッドにゲルマニウムを添加してクラッドの屈折率を小さくする方法などがある。(
  3. グレーデッドインデックス形光ファイバは、コア内の屈折率を連続的に変化させたものであり、コアの中心付近での光の伝搬速度は、クラッド付近の伝搬速度と比較して遅くなる特徴がある。(
  4. 光増幅用として用いられる希土類添加光ファイバには、クラッドに増幅動作のためのエルビウムイオンと増幅利得の波長特性平坦化のためのリンが添加されているたんものがある。(

正しくは,1.「下線部が逆」,2.「下線部が逆」,4.「コア」「アルミニウム」である。

石英系光ファイバ
図 石英系光ファイバ

(ⅱ) GE-PON の特徴

  1. GE-PON においては、上り信号と下り信号が干渉しないように、WDM を用いて上り信号と下り信号に異なる波長が使用されている。(
  2. GE-PON において、ONU から OLT への上り信号の伝送では、OLT を共有する他の ONU から送出される信号と衝突しないように、CDMA を用いてそれぞれの信号の位相を変化させている。(
  3. GE-PON において、OLT から ONU への下り信号の伝送では、複数の ONU への信号が時間的に重ならないように、FDM を用いて多重化されている。(

正しくは,B.「TDMA 方式」,C.「TDM 方式」である。

設備センタ側からユーザ側への下り方向の通信には TDM 方式(Time Division Multiplexing : 時分割多重化)が用いられ,ユーザ側から設備センタ側への上り方向の通信には TDMA 方式(Time Division Multiplex Access : 時分割多元接続)が用いられている。

GE-PON システム
図 GE-PON システム

(3) 光ファイバにおける光損失及び分散

(ⅰ) 光ファイバにおける光損失の種類と特徴

  1. 光ファイバにおける光損失のうち、光ファイバの材料固有のものには、紫外吸収損失、赤外吸収損失、レイリー散乱損失などがある。(
  2. 不純物による吸収損失としては、OH 基吸収による損失があり、これは、原理的に除去できないものであり、光ファイバの光損失の支配的な要因となっている。(
  3. レイリー散乱損失は、光の波長と比較して小さい屈折率の揺らぎによって生ずるものであり、レイリー散乱損失の大きさは光の波長の 4 乗に反比例する。(
  4. コアとクラッドの境界面に微小な凹凸が存在し、伝搬する光がこの凹凸のために乱反射することによる損失は、一般に、構造の不均一性による散乱損失といわれる。(

「下線部が不適」である。光ファイバ通信で使用される波長域においては,赤外吸収は長波長側での主要な損失要因である。ちなみに,石英ガラス系のガラス内の不純物である水酸イオンによって生ずる光の損失は、波長 0.94 [μm]、1.24 [μm],1.38 [μm] などにピークがある。

(ⅱ) 光ファイバにおける分散

  1. 光ファイバ中を光パルスが伝搬するとき、光ファイバの出射端における光パルスの幅が入射した光パルスの幅と比較して、時間的に広がる現象は分散といわれる。分散の大きさは、一般に、光ファイバを用いた伝送区間における伝送可能な最大伝送速度を制限する要因となる。(
  2. 分散には、モード分散、材料分散、構造分散などがある。シングルモード光ファイバにおいて、構造分散は生ずることがなく、光パルスの幅が時間的に広がる現象の主要因は、モード分散と材料分散である。(
  3. マルチモード光ファイバに入射された光パルスは、伝搬速度が異なる幾つかのモードに分かれて伝搬するため、光パルスの幅に時間的な広がりを生ずる。この分散を抑えるためには、屈折率分布の形状が放物線状ではなく階段状のマルチモード光ファイバを用いる方法が有効である。(

正しくは,B.「下線部が逆」,C.「下線部が逆」である。

問2

(1) 光海底ケーブルの故障位置の測定など

光海底ケーブル故障は、その故障タイプにより故障位置測定方法や修理方法が異なることから、故障タイプを特定し、より正確な故障位置を陸揚局から測定することが重要となる。

光海底ケーブルの絶縁層などが損傷することにより給電路が海水に短絡した状態の故障は、一般に、絶縁故障(シャント故障)といわれ、光ファイバには異常がないため、光学的方法では故障位置を特定することはできない。両端給電方式の光増幅海底ケーブルシステムでは、シャント故障箇所が1中継区間内であるとき、各光海底中継器にはいずれかの陸揚局から給電されていることから、電圧電流測定により、給電電位がゼロになる点をシャント故障箇所に合わせることで、故障位置を特定することができる。

さらに、シャント故障箇所が陸揚局から第 1 光海底中継器までの区間であれば、陸揚局からの電気パルスエコー測定により故障位置を特定することができる。

また、光海底ケーブル内の給電用導体が、陸揚局からの給電に対して開放された状態の故障は、一般に、オープン故障といわれる。光海底ケーブルの故障箇所のケーブル両端がオープン故障となった場合、工場出荷時の各ケーブルセグメントの静電容量データと陸揚局からの静電容量測定結果を比較することにより、陸揚局から故障点までのおおよその距離を計算できる。

一方、光増幅海底ケーブルシステムにおいて、第 2 中継区間以降に光ファイバ破断故障が生じた場合は、C-OTDR を用いることにより、光ファイバの破断位置を 100 m 以下の精度で測定することができる。

通信ケーブル監視技術」参照

電気パルスエコー測定とは,海底ケーブルの導体部と外部導体に見立てた海水との間に,パルスを印加し,その反射からケーブル障害点を特定する。

(2) 電線共同溝,電線類の地中化など

(ⅰ) 電線共同溝の概要

  1. 電線共同溝は、道路管理者が電力事業用の電線、電気通信事業用の通信ケーブルなどを収容するため道路の地下に設ける施設であり、本体とインナパイプから構成されており、情報 BOX ともいわれる。(
  2. 電線共同溝の種類は、管路の設置位置や構造面から浅層埋設方式と裏配線方式に大別される。また、電線共同溝方式以外の電線類の地中化整備方式としては、キャブシステムなどの方式がある。(
  3. 電線共同溝は、電線の設置及び管理を行う 2 以上の者の電線を収容するための施設であり、道路の附属物として位置付けられている。(
  4. 電線共同溝には、電気事業者、電気通信事業者、CATV 事業者、有線ラジオ放送事業者など電線管理者の電線を収容できるが、道路管理用ケーブルその他の行政用のケーブルを収容することはできない。(

正しくは,1.「C.C.BOX」,2.「従来方式」,4.「下線部は不適」である。

裏配線方式とは,無電柱化したい主要な通りの裏通り等に電柱類を配置し,主要な通りの沿道の需要家への引込みを裏通りから行い,主要な通りを無電柱化する方式である。

(ⅱ) 電線類の地中化方式

  1. 自治体管路方式は、地方公共団体が管路設備を敷設する方式であり、管路設備の材料費及び敷設費は地方公共団体が負担する。(
  2. 単独地中化方式は、電線管理者が自ら費用を負担して単独で地中化を行う方式であり、敷設された管路などの施設は道路占用物件として電線管理者が管理する。(
  3. 要請者負担方式は、各地方での無電柱化協議会で優先度が低いとされた箇所などにおいて無電柱化の要請に基づいて実施する場合に採用される方式であり、原則として費用の全額を要請者が負担する。(
  4. C. C. BOX は、国土交通省又は地方公共団体の道路管理者が道路管理の高度化を図るための道路管理用光ファイバケーブルを収容する施設として設置するものであり、また、設備の余裕空間を民間事業者に開放している。(

正しくは「情報 BOX」 である。

(3) 通信土木設備の補修,診断など

(ⅰ) 通信土木設備の補修,診断など

  1. 錆腐食が進行して劣化した金属管路の内面に樹脂薄膜を形成することによって補修する方法をとるものは、管内面ライニング工法といわれる。(
  2. 硬質ビニル管の扁平部分を管路内から加熱溶融して除去するとともに、空気圧を利用して熱硬化性樹脂の内管を管路内に引き込み、矯正・補強する方法をとるものは、ビニル管扁平矯正工法といわれる。(
  3. コンクリートの劣化の程度を診断するためには、コンクリート構造物の劣化現象からその劣化機構を特定しなければならない。劣化機構のうち、本来アルカリ性であるコンクリートが外部環境の影響を受けてアルカリ性を失う現象は、ブリーディングといわれる。(

正しくは,B.「油圧」,C.「中性化」である。ちなみに,ブリーディングとは,生コンクリートの中に含まれる水分が,比重が小さいためにコンクリートの表面に浮き出す現象である。

(ⅱ) マンホール及びとう道の耐震対策,補修工法など

  1. 地震により液状化が予想される地域にマンホールを設置する場合は、一般に、レジンコンクリート製と比較して重量の大きいセメントコンクリート製が適している。(
  2. 地震により液状化が予想される地域のマンホールに施されるグラベルドレーン工法は、地盤を締め固めることにより液状化による間隙水を遮断し、マンホールの浮上がりを防止している。(
  3. マンホールの劣化を放置すると、道路陥没などの事故につながるおそれがあるため適切な補修が必要であり、セメントコンクリート製マンホールの本体のひび割れ補修工法としては V 字形カット工法がある。(
  4. とう道と立坑の取付部において、地震によるひび割れからの漏水対策として可とう性と止水性を有するゴムジョイントを設置する方法がある。(

正しくは「砂地盤中に砕石のパイルを設けることで水平方向の排水距離を短縮し、地震時に生じる間隙水圧の上昇を抑止して」である。

グラベルドレーン工法(砕石パイル工法)は,砂地盤中に砕石のパイルを設けることで水平方向の排水距離を短縮し、地震時に生じる間隙水圧の上昇を抑止して、液状化を防止する。市街地など振動や騒音が懸念される場所での施工や既設構造物周辺での施工も可能な液状化対策工法である。

問3

(1) 環境に配慮した電気通信線路設備など

環境に配慮し、循環型社会の構築を目指すための施策として 3R があり、3R の一つとして、リサイクルがある。

電気通信線路設備に用いられる環境配慮型のケーブルは、外被がポリエチレン系の材料に統一されており、リサイクル対応が可能であるため、廃棄物の低減に寄与することができる。

環境配慮型ケーブルの外被には、一般に、ポリエチレンに水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を混和することにより難燃性を持たせた材料が用いられている。

また、環境配慮型のケーブルには、火災時に有害なガスや腐食性ガスを発生せず、煙の発生も少なく、防災安全性の向上が図られていることが求められる。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素及びアスタチンの五つの元素の総称であり、ハロゲンを含む物質が燃えると、環境及び人体に有害なハロゲン化水素ガスが発生することがあるため、環境配慮型のケーブルとしては、ハロゲンを含んでいないハロゲンフリーケーブルが用いられる。

なお、電気通信線路設備におけるリサイクル形態の一つとして、廃プラスチックなどを焼却する際に発生する熱エネルギーを回収し、燃料として再利用するサーマルリサイクルがある。

(2) 線路設備の劣化など

(ⅰ) ケーブルなどの線路設備の劣化とその対策

  1. 管路に布設されたケーブルには、ケーブルの温度伸縮や車両の通過に起因する振動などによりケーブルが移動するクリーピングといわれる現象が発生することがある。対策としては、マンホール内で伸縮型のケーブル受け金物によりケーブルを受ける方法やケーブル移動量に見合ったスリーブサイズのクロージャを設ける方法が有効である。(
  2. 地下ケーブルのポリエチレン外被に生ずる環境応力亀裂(ESC)は、一般に、ケーブルの円周方向に発生する。ESC の発生要因としては、塩素イオンが挙げられる。対策としては、ケーブル布設時に外被を中性洗剤で洗浄する方法が有効である。(
  3. 石英系光ファイバは、引張応力が加わり、ひずみが生ずると、やがて破断する場合がある。対策としては、レイリー散乱光の周波数分布が光ファイバの光減衰量に比例してシフトする特性を利用することでひずみの分布を測定することにより、ひずみの発生箇所を特定するとともに、これを除去する方法が有効である。(
  4. 寒冷地において、ケーブル引上げ点、橋梁添架などの管路が大気中に露出している箇所で管路内の溜水が凍結すると、体積膨張によりケーブルに過大な力が働き、傷や座屈が発生することがある。対策としては、PE パイプを挿入することにより、凍結圧を PE パイプで吸収する方法が有効である。(

正しくは,1.「ケーブル移動防止金物で機械的にケーブルの移動を止める方法」,2.「中性洗剤等の界面活性剤を使用しない,外被に損傷を与えないこと」,3.「ブリリアン散乱光」「ひずみ量」である。

(ⅱ) 金属を用いた線路設備の腐食の要因とその対策

  1. 金属は、一般に、イオン化傾向の大きいものほど腐食しやすく、鉄と比較してイオン化傾向の小さい亜鉛は、酸化しにくいため腐食速度は遅く、亜鉛めっきとして鋼材の防食に広く利用されている。(
  2. ステンレス鋼やアルミニウムのように不動態といわれる緻密な被膜を形成する高耐食性金属材料は、一般に、孔食などの局部的な腐食に注意する必要がある。(
  3. マンホール内の金物の腐食には、イオン化傾向が異なる金属材料の金物の接触による腐食、バクテリアの作用による腐食などがあり、その対策としては、流電陽極による犠牲防食などが有効である。(
  4. 電柱の支線アンカやロッドは、湿潤した土中で腐食することがあり、その対策としては、有機塗覆を施した防食タイプを用いることが有効である。(

鋼材を亜鉛をめっきすることで,緻密な腐食生成物の皮膜を形成し、腐食速度を遅らせる方法が広く用いられている。

(3) 光ファイバケーブル接続部の浸水対策,光ファイバの接続損失の算出方法など

(ⅰ) 光ファイバケーブル及び光ファイバケーブル接続部の浸水対策など

  1. ガス保守方式において、大気圧よりも高い圧力でケーブルの内部に送り込まれている乾燥空気の長手方向におけるガス圧分布を測定することにより、ガスが漏洩している位置を探索えいし、故障位置を判定する方法がある。(
  2. 光ファイバケーブルの場合、マンホールなどにおいてケーブルの内部が浸水しても直ちに故障にはつながらないため、非ガス保守方式が適用でき、防水構造の光ファイバケーブルと接続点における浸水検知技術を併用することによって光ファイバの破断寿命の短縮を防止する措置の実施に役立てている。(
  3. マンホール内の光ファイバケーブル接続点に取り付けられる浸水検知モジュールは、吸水材が水を含むと膨張して可動体を押し上げることにより、監視用の光ファイバ心線を断線させるものである。この断線箇所は、光パワーメータにより特定できる。(

正しくは「に曲げを発生させるものである。この作用により増加した光ファイバの損失」である。

(ⅱ) 後方散乱係数の異なる光ファイバの接続構成における,OTDR の測定波形

後方散乱係数の異なる光ファイバ A と光ファイバ B との接続構成における、OTDR による光ファイバ A からの測定波形及び光ファイバ B からの測定波形を、それぞれ図 1 及び図 2 の太線で示す。図 1 及び図 2 における接続点での測定波形の段差がそれぞれ 0.4 dB,0.8 dB であるとき、接続損失は、 0.2 dB と求められる。ただし、図 1 及び図 2 に示す a は、後方散乱係数の差によるレベル差を表し、図 1 に示す光ファイバ B の点線の波形及び図 2 に示す光ファイバ A の点線の波形は、光ファイバ A と光ファイバ B の後方散乱係数が同じ場合に想定される測定波形を表すものとする。

OTDR による光ファイバ A からの測定波形及び光ファイバ B からの測定波形
図1 OTDR による光ファイバ A からの測定波形及び光ファイバ B からの測定波形
OTDR による光ファイバ A からの測定波形及び光ファイバ B からの測定波形
図 2 OTDR による光ファイバ A からの測定波形及び光ファイバ B からの測定波形

接続損失を $x$ [dB] とする。図1と図2より,以下の 2 式が成り立つ。($a$ は問題文中にあるとおり,後方散乱係数の差によるレベル差)

$a - x = 0.4$
$a + x = 0.8$

2 式より,$x$ を求めると,$x = 0.2$ [dB] となる。なお,後方散乱係数の差によるレベル差 $a$ は 0.6 [dB] である。

問4

(1) 電気通信事故に係る事故報告制度の概要

電気通信事業者は、電気通信事業法の規定により電気通信業務の一部を停止したとき、又は電気通信業務に関し通信の秘密の漏えいその他総務省令で定める重大な事故が生じたときは、その旨をその理由又は原因とともに、遅滞なく、総務大臣に報告しなければならない。また、電気通信事業者は、詳細な報告を所定の様式により、その重大な事故の発生した日から 30 日 以内に総務省に報告しなければならない。

報告を要する重大な事故は、電気通信役務の区分に応じ、その電気通信役務の提供を停止又は品質を低下させた事故を対象に、その影響を与えた利用者数(以下、影響利用者数という。)及び継続時間によって定められている。

緊急通報を取り扱う音声伝送役務では、影響利用者数 3 万 以上かつ継続時間 1 時間以上の場合が該当する。また、緊急通報を取り扱わない 050-IP 電話 などの音声伝送役務では、影響利用者数 3 万 以上かつ継続時間 2 時間以上の場合、又は影響利用者数 10 万以上かつ継続時間 1 時間以上の場合が該当する。

一方、総務大臣が電気通信役務の提供の停止を受けた利用者の数の把握が困難であると認めるときに適用する基準の一つとして、電気通信役務の停止に係る電気通信設備の伝送速度の総和が 200 万 kbit/s を超えるものがある。また、携帯電話の役務については、当該電気通信役務の停止に係る基地局について、その停止の時間帯に当該基地局の電気通信役務の提供区域に存した利用者の数が 3 万 以上の場合と規定されている。

安全・信頼性対策」参照

(2) 信頼性試験及び非修理系の故障率のパターン

(ⅰ) 信頼性試験

  1. 実使用状態でアイテムの動作、環境、保全、観測の条件などを記録して行う試験は、一般に、フィールド試験(現地試験)といわれる。(
  2. 規定のストレス及びそれらの持続的、反復的負荷がアイテムの性質に及ぼす影響を調査するため、ある期間にわたって行う試験は、一般に、限界試験といわれる。(
  3. アイテムに対して等時間間隔でストレス水準を順次段階的に増加して行う試験は、一般に、ステップストレス試験といわれる。(
  4. 加速試験における加速手段として、ストレスを厳しくして劣化を加速させる方法、負荷の間欠動作の繰り返し度数の増加や連続動作による時間的加速を図る方法などがある。(

正しくは,「耐久試験」である。

(ⅱ) 非修理系の故障率のパターン

  1. システムの初期運用段階に現れ、故障しやすい欠陥を持った部品が故障を起こすため最初は故障率が高く、時間の経過とともに故障率が低下する故障率のパターンは、DFR 型といわれる。(
  2. 部品の摩耗など、システムの老朽化の兆候が現れる段階の故障率のパターンは、IFR 型といわれ、故障を未然に防ぐための有効な手段としては、デバギングがある。(
  3. 経過時間にかかわらず故障率がほぼ一定の値となる故障率のパターンは、CFR 型といわれる。(
  4. 非修理系におけるシステムの故障率の推移をモデル化したものは、一般に、バスタブ曲線といわれる。(

正しくは「部品交換」である。

故障率減少型(Decreasing Failure Rate : DFR)

時間の経過とともに故障率が減少していくもの。主に設計や製造上の欠陥による故障。

初期故障を軽減するため,アイテムを使用開始前又は使用開始後の初期に動作させて,欠点を除去し,是正するデバギングが有効。

故障率一定型(Constant Failure Rate : CFR)

故障が時間の経過に関係のないもの。主に突発的事象による故障。

故障率増加型(Increasing Failure Rate : IFR)

故障が時間の経過とともに増加していくもの。主に摩耗,損耗など特定の不良モードによる故障。

(3) システムの信頼性

(ⅰ) MTTR

装置 A の故障率が 0.2 %/時間 であるとき、固有アベイラビリティが 98.0 % であるためには MTTR は、 10.20 時間 でなければならない。ただし、答えは、四捨五入により小数第 2 位までとする。

故障率は 0.2 [%/時間] なので,0.002 [件/時間]である。故障率より MTBF を計算する。

\[ \text{MTBF}=\frac{1}{\lambda}=\frac{1}{0.002}=500 \text{ [h]} \]

固有アベイラビリティ $A$ = 98.0 % であるためには,MTTR は次式のとおり 10.20 時間でなければならない。

\[ A=\frac{\text{MTBF}}{\text{MTBF}+\text{MTTR}} \] \[ \text{MTTR}=(\frac{1}{A}-1)\times \text{MTBF}=(\frac{1}{0.98}-0.1) \times 500 = 10.204 \]

(ⅱ) 並列接続の信頼度

信頼度 70 % である装置 B を複数台並列に接続し、信頼度を 99 % 以上とするためには、装置 B を少なくとも 4 台構成とする必要がある。ただし、必要に応じ以下の値を用いること。

log100.3 = -0.523,log100.7 = -0.155

題意を満たすため,次式が成り立つ。

1-(1-0.7)$n$ ≥ 0.99
0.01 ≥ 0.3$n$

両辺を対数をとり,整理する。

log100.01 ≥ $n$ log100.3
-2 ≥ $n$ × (-0.523)
3.82 ≤ $n$

問5

(1) ポートスキャンの概要

攻撃者がインターネット経由でサーバに攻撃を行う際、攻撃対象に対して事前調査を行うことがある。この調査には、ICMP を使用した ping コマンド を用いて対象のサーバの稼動状態を確認する方法、ポートスキャンにより攻撃対象のサーバがどのようなサービスを外部に公開しているかなどを確認する方法がある。

ポートスキャンは、サーバとの通信が トランスポート 層プロトコルである TCP や UDP を用いて行われていることを利用しており、各ポートに対して開いているかどうかを調べていくことにより、対象サーバが提供しているサービスを特定することができる。

ポートスキャンには様々な手法がある。このうち、 TCP 接続 スキャンは標的ポートに対して完全なスリーウェイハンドシェイクを行うため、対象サーバのログに残る可能性は高い。一方、TCP SYN スキャンはスリーウェイハンドシェイクの処理を途中で中断しコネクション確立を行わないため、対象サーバのログに残りにくい。

ポートスキャンにより提供サービスが攻撃者に知られてしまうと、攻撃を仕掛けられるおそれがあるため、不要なサービスは停止し、ポートを閉じるなどの対策を講じておくことが望ましい。

ネットワークセキュリティ対策」参照

TCP (Transmission Control Protocol)
インターネットなどのネットワークで,IP(Internet Protocol)の一段階上位層のプロトコル(通信規約)として標準的に使われるものの一つ。TCPはコネクション型のプロトコルで、通信相手の状況を確認して接続を確立し、データの伝送が終わると切断するという手順を踏む。相手が確実にデータを受け取ったかを確認したり、データの欠落や破損を検知して再送したり、届いたデータを送信順に並べ直したりといった制御を行う。信頼性は高いが転送効率は低く、通信経路の品質が低いとデータの到着に遅延が生じたり通信不能になりやすい。転送効率より確実性が重視される用途でよく利用される。
TCP SYN
インターネットなどのIPネットワーク上ではトランスポート層のプロトコルとして信頼性の高いTCP(Transmission Control Protocol)が非常によく用いられる。SYNパケットはクライアントからサーバへ接続を開始したいときに最初に送るパケットである。
UDP (User Datagram Protocol)
インターネットなどのネットワークで,IP(Internet Protocol)の一段階上位層のプロトコル(通信規約)として標準的に使われるものの一つ。UDPはコネクションレス型のプロトコルで、通信相手が確実にデータを受け取ったかどうか確認したり、データの欠落を検知して再送したり、送信順と着信順を一致させるといった制御を行わず、データを「送りっぱなし」にする。信頼性は低いが転送効率が高く、遅延が発生しにくいため、多少のデータの欠落があっても高速性や即時性(リアルタイム性)を重視する用途(通話、放送など)でよく利用される。

(2) ISMS の要求事項を満たすための管理策

  1. 組織が採用した分類体系に従って、取外し可能な媒体の管理のための手順を実施しなければならない。(
  2. 情報のラベル付けに関する適切な一連の手順は、認証機関が定める情報分類体系に従って策定し、実施しなければならない。(
  3. 情報を格納した媒体は、輸送の途中における、認可されていないアクセス、不正使用又は破損から保護しなければならない。(
  4. 媒体が不要になった場合は、正式な手順を用いて、セキュリティを保って処分しなければならない。(

正しくは「組織が採用した」である。

情報のラベル付けに関する適切な一連の手順は,組織が採用した情報分類体系に従って策定し,実施しなければならない。

(3) パーソナルコンピュータ(PC)のセキュリティ対策

  1. 専用ワイヤを用い、机など持ち運ぶことが難しいものと PC のセキュリティスロットとを結びつけるスクリーンロックによる対策は、PC の盗難を防ぐ効果が期待できる。(
  2. PC 画面に貼付することにより、PC 画面の左右の視野角を狭めることができるプライバシーフィルタによる対策は、のぞき見を防ぐ効果が期待できる。(
  3. メモリロックによる対策は、一定時間操作が行われなかった場合に PC の画面を切り替えて、切替え前の画面が見られないようにするとともに、正しいパスワードが入力されるまで操作を禁止することができる。(

正しくは,A.「セキュリティワイヤ」,C.「スクリーンロック」である。

(4) 建設副産物の処理など

  1. 建設副産物適正処理推進要綱に定められた対象建設工事とは、特定建設資材を用いた建築物等に係る解体工事等であって、その施工技術が建設リサイクル法施行令又は都道府県が条例で定める建設工事の技術基準以上のものをいう。(
  2. 建設工事に使用される建設資材のうち、建設リサイクル法施行令で定められた特定建設資材とは、コンクリート、コンクリート及び鉄から成る建設資材、木材及びアスファルト・コンクリートをいう。(
  3. 発注者及び施工者は、基本方針として、対象建設工事から発生する特定建設資材廃棄物のうち、再使用及び再生利用がされないものであって熱回収をすることができるものについては、熱回収を行うこととされている。(
  4. 元請業者は、建築物等の設計及びこれに用いる建設資材の選択、建設工事の施工方法等の工夫、施工技術の開発等により、建設副産物の発生を抑制するよう努めるとともに、分別解体等、建設廃棄物の再資源化等及び適正な処理の実施を容易にし、それに要する費用を低減するよう努めなければならない。(

正しくは「規模」「規模に関する基準」である。

「対象建設工事」とは、特定建設資材を用いた建築物等に係る解体工事又はその施工に特定建設資材を使用する新築工事等であって、その規模が建設リサイクル法施行令又は都道府県が条例で定める建設工事の規模に関する基準以上のものをいう。

(5) 公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン

なお、以下の文章において、設備とは、電柱、管路、とう道、ずい道、鉄塔その他の認定電気通信事業の用に供する線路又は空中線を設置するために使用することができる設備をいう。

  1. 設備の貸与期間は、原則として 10 年間とされ、設備保有者は、設備の使用が公物管理関係法令等の適用を受けるときは、当該公物の占用等の期間についての規定を十分に勘案するものとする。(
  2. 設備使用料の原価は、建設費に、他人資本費用、自己資本費用及び利益対応税の合計額を加えて算定され、減価償却費は算定に含まれない。設備保有者は、事業者に対し、当該原価に基づく適正な設備使用料を求めることができる。(
  3. 設備保有者は、設備の提供に伴い、当該設備の改修工事を行う必要が生じる場合は、事業者に対し当該工事の設計及び施工に係る費用負担を求めることができる。この場合において、事業者から当該工事が必要となる理由を求められたときは、経営上の秘密の保持に支障がない範囲で、これに応じるものとする。(
  4. 設備保有者の事情又は正当な利益を有する第三者の要請により、現に提供している設備を撤去する場合は、契約内容にかかわらず事業者の負担により原状復帰することとする。(

正しくは,1.「5 年間」,2.「減価償却費及び保守運営費に、他人資本費用、自己資本費用及び利益対応税の合計額を加えて算定する」,4.「事前予告及び移転費用の取扱いについては,設備の提供に係る契約に明示するものとする」である。

公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン」参照

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