平成22年度 第1回 専門的能力・通信線路

2020年6月9日作成,2021年1月1日更新

問1

(1) 一様線路における一次、二次定数の周波数特性など

電気的定数が一様に分布している一様線路において、往復導体の単位長当たりの抵抗とインダクタンスを $R$ と $L$、往復導体間の単位長当たりの漏洩コンダクタンスと静電容量を $G$ と $C$ とすると、$R$、$L$、$G$、$C$ は線路の一次定数といわれる。これら一次定数から導かれる減衰定数 $\alpha$、位相定数 $\beta$、伝搬定数 $\gamma$、特性インピーダンス $Z_0$ は、二次定数と総称される。

高周波(30 [kHz] 以上)になると電流が導体の表面に集中する表皮効果などのため、一次定数の $R$ が周波数 $f$ の平方根に比例して増加する。

一方、低周波(音声周波程度)の場合、一般に、一次定数間において $LG \lt \lt RC$ の関係が成立するため、角周波数を $\omega$ とすると二次定数の $\alpha$ 及び $\beta$ は、次式で近似できる。

\[ \alpha \approx \sqrt{\frac{\omega CR}{2}}\{1-\frac{1}{2}(\frac{\omega L}{R}-\frac{G}{\omega C})\} \] \[ \beta \approx \sqrt{\frac{\omega CR}{2}}\{1+\frac{1}{2}(\frac{\omega L}{R}-\frac{G}{\omega C})\} \]

また、特性インピーダンス $Z_0$ は低周波では、周波数 $f$ の平方根に比例して減少し、高周波になると一定値に漸近する。

メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論」参照

(2) メタリック伝送線路の電気的諸特性など

(ⅰ) 伝送系の雑音

  1. 伝送系内部で発生する雑音は、信号を伝送していない場合でも発生する基本雑音と、信号の伝送を行ったときに発生する準漏話雑音とに分けることができる。(
  2. 増幅器で発生する基本雑音には、導体中の自由電子の熱的じょう乱運動による熱雑音があり、入力信号の有無にかかわらず発生する雑音である。(
  3. 多重漏話雑音は、平衡対ケーブルと比較して同軸ケーブルにおいて特に問題となり、テレビジョン伝送などにおいては、伝送距離及び回線収容心線数を制限する要因となる。(
  4. 漏話以外の雑音としては、雷及び電気鉄道などの強電流施設から静電的又は電磁的に通信路に入る誘導雑音、放送波などが架空線などを介して侵入する誘導雑音などがある。(

多重漏話雑音は、誘導回線が多数ある場合に、同時に漏れてくる各回線からの漏話が同程度のものであるとき、互いに干渉することにより生ずる非了解性の雑音であり、バブル雑音(bubble noise)ともいわれる。同軸ケーブルで高周波伝送する場合,表皮効果の影響で外部とは電磁的にほぼ完全遮断されるので漏話は考えなくても良い。テレビジョン伝送はアナログでも数 MHz の帯域幅を持っているのでなおさらである。

(ⅱ) 漏話の種類や特徴など

  1. 漏話を起こすもとになる回線は誘導回線、漏話を受ける回線は被誘導回線といわれ、被誘導回線において、誘導回線の送端側に生ずる漏話は遠端漏話、誘導回線の受端側に生ずる漏話は近端漏話といわれる。(
  2. 静電結合による漏話は被誘導回線のインピーダンスに比例し、電磁結合による漏話は誘導回線のインピーダンスに反比例する。(
  3. 平衡対ケーブルの場合、一般に、誘導回線及び被誘導回線のインピーダンスは同等なので、特性インピーダンスが高くなる低周波(音声周波数)では静電結合による漏話が支配的であるが、特性インピーダンスが低くなる高周波では電磁結合による漏話も考慮する必要がある。(

下線部が逆である。

近端漏話と遠端漏話
図 近端漏話(Near end crosstalk)と遠端漏話(Far end crosstalk)

(ⅲ) 漏話の軽減方法など

  1. 平衡対ケーブルの漏話は、任意の 2 対間の静電結合及び電磁結合によって生ずるが、音声回線では静電結合は微小な値であることから、静電結合による漏話の軽減方法を考慮する必要はない。(
  2. 平衡対ケーブルにおける漏話減衰量は、高周波になるに従い、一般に、オクターブ当たり遠端漏話では 6 [dB]、近端漏話では 4.5 [dB] の減少傾向を示す。また、遠端漏話減衰量は、線路長が長くなるに従い増大するが、近端漏話減衰量は、線路長には無関係である。(
  3. 信号の伝送方向(設備センタからユーザ方向又はユーザから設備センタ方向)ごとに心線をそれぞれ別々のケーブルに分けて収容しても、漏話妨害が遠端漏話と比較して大きい近端漏話を軽減する効果はない。(
  4. ケーブル内の各対の 2 本の導線を撚ることにより漏話は軽減でき、隣接する対どうしで撚りピッチを同一にすると、撚りピッチをにした場合と比較して大きな軽減効果が得られる。(

正しくは,1.「」,3.「はある」,4.「下線部が逆」である。

(ⅳ) 反射係数と透過係数

  1. 特性インピーダンス $Z_1$ を持つ一様線路に、特性インピーダンス $Z_2$ を持つ一様線路が接続されているとき、接続点における電圧反射係数は、$\displaystyle \frac{Z_2-Z_1}{Z_1+Z_2}$ で表され、電圧透過係数は、電圧反射係数に 1 を加えた値となる。(
  2. 特性インピーダンスが異なる一様線路が相互に接続されているとき、接続点における電流反射係数は、電圧反射係数に -1 を乗じた値となり、電流透過係数は、1 から電圧反射係数を減じた値となる。(
  3. 一様線路の受端側が短絡されているとき、受端点における電圧反射係数は -1 となり、また、一様線路の受端側が開放されているとき、受端点における電圧透過係数は 2 となる。(
  4. 特性インピーダンス $Z_1$ を持つ一様線路に、特性インピーダンス $Z_2$を持つ一様線路が接続されているとき、その接続点における電圧反射係数 $m$ の値は、$Z_2 \gt\gt Z_1$ のとき、$m \approx -1$ となり、電圧は入射波と逆位相ですべて反射される。(

正しくは「$m \approx 1$ となり、電圧は入射波と同位相ですべて反射される」である。

問2

(1) シングルモード(SM)光ファイバの構造パラメータなど

SM 光ファイバの構造パラメータには、モードフィールド径、モードフィールド偏心量、カットオフ波長などがある。

モードフィールド径は、SM 光ファイバの径方向の光強度分布がガウス型で近似できるとき、光強度が最大値の $\displaystyle \frac{1}{e^2}$($e$ は自然対数の底)になる直径である。

モードフィールド偏心量は、現実には、SM 光ファイバのモードフィールド中心とクラッド中心が同じ点にならないことから、これらの中心間の距離として定義される。ここで、モードフィールド中心とは、SM 光ファイバの LP01 モードの電界分布の中心をいい、クラッド中心とは、クラッド表面を最もよく近似する円の中心をいう。

カットオフ波長とは、伝搬モードが一つになる最短の波長であり、カットオフ波長より短い波長に対しては伝搬モードがマルチモードとなる。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

モードフィールド直径
図 モードフィールド直径

(2) 光の伝送特性など

(ⅰ) 非線形光学特性など

  1. 自己位相変調とは、入射された光そのものの光強度により出力光パルスの周波数が変調を受ける現象をいい、これはファラデー効果による光ファイバの屈折率の変化に起因して発生するものである。ファラデー効果により、光パルスの立上がり部分は高周波数側へ、光パルスの立下がり部分は低周波数側へシフトされる。(
  2. 異なる三つの波長の光が光ファイバ中に入射したときに新たな波長の光が生ずる現象は、一般に、四光波混合といわれ、波長多重伝送では、伝送品質の劣化要因となる。(
  3. 媒質の光学的格子振動と入射光の相互作用により光が発生する現象は、ラマン散乱といわれ、入射光強度が十分大きい場合に生ずる誘導散乱は、誘導ラマン散乱といわれる。(
  4. 誘導ブリルアン散乱では、後方散乱光のみが強く発生し、また、散乱光が強く発生する帯域幅が狭いため、誘導ブリルアン散乱光を強く発生させるためには、スペクトル幅の非常に狭い入射光を用いる必要がある。(

正しくは「光カー効果」である。

(ⅱ) 光ファイバの伝送特性など

  1. 光ファイバ伝送においては、光ファイバそのものの伝送損失、光ファイバ間の接続損失、分岐素子などのデバイスの挿入損失などが伝送距離限界に影響を与える。(
  2. 光ファイバの群速度に関連する特性は分散特性といわれ、多モード分散、偏波モード分散、材料分散などがある。分散特性に起因する光信号の伝搬遅延時間は群遅延時間といわれ、伝送可能なビットレート及び伝送距離は、群遅延時間の広がりの影響を受ける。(
  3. 光の状態を表す要素には、周波数、位相、振幅など以外に、電界の振動方向を示す偏光がある。電界にはx軸方向又はy軸方向に偏光したモードがあり、光ファイバの非軸対称性などから生ずる両モードの伝搬遅延時間の差は偏波モード分散といわれる。(

(ⅲ) 発光素子の発光原理など

  1. 自然放出光はコヒーレント光であり、LD 光は誘導放出による光であるためインコヒーレント光である。(
  2. 発光素子の発光強度を強くする方法として、クラッド層の両側にクラッド層よりもエネルギー・ギャップが大きい活性層を設けたシングルヘテロ構造があり、この構造によって、キャリア閉じ込めと光閉じ込めの両方の効果により効率の良い発光を可能とするもので、LD に用いた場合はしきい値電流を低減できる。(
  3. レーザ発振は、誘導放出及び共振の二つの作用によって発生し、発光波長は、一般に、高いエネルギー準位の価電子帯と低いエネルギー準位の伝導帯とのエネルギー準位差により決定される。(
  4. ファブリペロー形 LD の発振状態での光の波長は、反射面間で共振する波長、すなわち、共振器の中で定在波ができる波長だけになり、共振を起こす条件は、共振器の長さが発振する波長の $\displaystyle \frac{1}{2}$ の整数倍である。(

正しくは,1.「下線部が逆」,2.「」,3.「下線部が逆」である。

(ⅳ) 受光素子の特性など

  1. 半導体受光素子は、外部に印加する電圧の大きさによりホトダイオード(PD)とアバランシホトダイオード(APD)の二つに大別される。APD は PD と比較して感度が高いが、必要とされる印加電圧は低い。(
  2. PD の暗電流とは、光が入射していないときにもバイアス回路に流れている電流であり、ショット雑音の原因となる。(
  3. APD では、光の吸収によって生成された電子などのキャリアが電界から十分なエネルギーを得て加速され、新たにキャリアを生成する。新たに生成されたキャリアが更に新たにキャリアを生成するので、これを順次繰り返して光カー効果といわれる現象が発生し、キャリアの数がなだれのように急激に増加する。(
  4. 受光素子で生ずる熱雑音は、光電変換過程において電子が時間的あるいは空間的に不規則に励起されるために生ずる光電流のゆらぎに起因するものである。(

正しくは,1.「も高い」,3.「アバランシ効果(電子なだれ効果)」,4.「ショット雑音」である。

問3

(1) EDFA の構成など

EDFA は、一般に、エルビウム添加光ファイバ、励起用光源、光アイソレータ、光フィルタなどから構成される。

励起用光源としては、半導体レーザが用いられるが、励起光の進行方向と信号光の進行方向が一致しているものは前方励起といわれ、プリアンプなどに適している。励起波長によって利得係数(1 [mW] の励起光に対する利得)は異なり、励起光の励起波長が 0.98 [μm] の場合、最も利得係数が大きい。高い利得係数を得るための方法として、光ファイバのコア中心に集中的にエルビウムを添加することが有効である。

偏波無依存形光アイソレータは、増幅器内の残留反射、増幅器内外の反射による発振及び過剰雑音発生を抑えるために用いられ、一方向にのみ光を伝搬させ、逆方向の光は伝搬させない光部品である。

光フィルタは、増幅された光信号のみを取り出す役割を果たしており、光信号の波長帯のみを通過させる狭帯域な光バンドパスフィルタである。

各構成部品間の接続には反射を抑えるために融着接続が適するが、光コネクタを用いる場合は低反射対策がとられたものを用いる。

EDFA は、半導体増幅器と比較して、一般に、高増幅効率、高増幅利得及び低雑音であり、偏波依存性も少なく、通信用光ファイバとの接続も容易であるなどの優れた特徴を有している。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

光ファイバ増幅器の構成(前方励起型)
図 光ファイバ増幅器の構成(前方励起型)

(2) 光増幅器や光コネクタなど

(ⅰ) EDFA の雑音特性などに

  1. EDFA 内では誘導放出により信号光が増幅されるとともに自然放出光が発生するが、この自然放出光は EDFA の増幅帯域全域にわたって発生し、信号光とともに増幅されて雑音となる。このような雑音を ASE 雑音という。(
  2. 信号光を検出する際に発生する雑音のうち、自然放出光のショット雑音と自然放出光間のビート雑音は、光フィルタで低減可能である。(
  3. 光増幅器の雑音特性を示す指標として、雑音指数が用いられる。雑音指数は EDFA の出力端における信号電力対雑音電力比と励起光強度の比で表される。(
  4. EDFA における雑音指数の理論限界値は 3 [dB] であるが、励起光の波長として利用される 0.98 [μm] と 1.48 [μm] を比較した場合、0.98 [μm] を利用したほうがより理論限界値に近い雑音指数を得ることができる。(

光増幅器の入力側の SN 比と出力側の SN 比は,雑音指数といわれる。

(ⅱ) 光増幅器の種類など

  1. 光増幅器は、光ファイバ増幅器と半導体光増幅器に大別される。このうち、半導体光増幅器は、電流注入で励起することができ、集積化が可能であるなどの利点を持つ。(
  2. 光ファイバ増幅器には、希土類イオンの反転分布による誘導放出過程を基本とする希土類添加光ファイバ増幅器と、光ファイバ中の非線形散乱(光学フォノンによるラマン散乱)による誘導散乱過程を基本とする光ファイバラマン増幅器がある。(
  3. 希土類添加光ファイバ増幅器においては、増幅可能な波長は添加物によりそれぞれ特定の波長に限られており、1.3 μm 帯及び 1.5 μm 帯ではエルビウム、1.65 μm 帯ではツリウムやネオジウムなどが添加物として用いられている。(
表 希土類添加物光ファイバ増幅器
帯域 添加物
1.3 μm 帯用 プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd)
1.4 μm 帯用 ツリウム
1.55 μm 帯用 エルビウム

(ⅲ) 光ファイバの接続方法など

  1. メカニカルスプライスは、光ファイバの端面をつき合わせ、固定・把持して接続する方法であり、屈折率整合剤により接続状態を補完する。光ファイバの軸合わせはコア中心を基準とするため、接続損失はコア偏心量に影響されない。(
  2. 光ファイバの切断方法としては、光ファイバ軸に直角で平滑な端面を得るため、応力破断法の原理に基づく方法がある。これは光ファイバ表面に微小な傷をつけ、適当な曲率で曲げながら軸方向に張力を加えて切断する方法である。(
  3. 融着接続法は、両端の光ファイバ端面を加熱溶融しながら直接密着させて一体化する方法で、アーク放電を熱源に使用した低接続損失が得られる融着接続機が普及しているが、4 心、8 心などのテープ型心線の接続には使用できない。(
  4. 融着工程においては、一般に、光ファイバの接続部は、光ファイバ自体の機械的強度と比較して、十分な強度が保たれるため、特別な補強などの処置は不要である。(

正しくは,1.「接続損失はコア偏心量に影響する」,3.「多心一括融着接続機があり,テープ型心線の接続にも使用できる」,4.「緩衝層や被覆層が除去され石英ガラスが露出していることから,接続部の補強を行うために,熱収縮スリーブを用いた補強法が広く用いられている」である。

(ⅳ) 光ファイバ接続に用いられる光コネクタの種類と特徴など

  1. FC コネクタは、マルチモード光ファイバ及びシングルモード光ファイバの両方に使用される光コネクタであり、プラグとアダプタの締結にはネジで行う方式を採用している。(
  2. SC コネクタは、一般に、金属製のフェルールを使用しており、フェルールの端面は、フラット研磨が用いられている。(
  3. ST コネクタは、主に構内配線用及び計測用に用いられる光コネクタであり、セラミックフェルールを割スリーブアダプタを使って軸合わせをするタイプでバイヨネット式締結方式を採用している。(
  4. MT コネクタは、ピンかん合方式のプラスチック製多心光コネクタである。光ファイバの両側にある 2 本のガイドピンによって 1 対のフェルールが高精度に位置決めされる。(

正しくは「強化ガラスやプラスチック製の」である。ちなみにフェルールは光ファイバのコアの中心をコネクタの中心に設定するための部品である。

問4

(1) 光ファイバケーブルの非ガス保守方式

光ファイバケーブルの非ガス保守方式において用いられる防水構造を持つ光ファイバケーブルには、一般に、WB ケーブルが用いられる。

外被部から浸水するとその浸水箇所の吸水材料が膨潤しながら WB テープから分離し、ゲル化して光ファイバケーブル内の隙間を埋め尽くすことにより、止水のダムを形成し、すきそれ以降の浸水を防止することができる。

また、浸水を長時間放置すると、光ファイバに対し、長期的な破断寿命の短縮とケーブル内金属の腐食に伴い発生した水素による長期的な損失増加が懸念されるので、ケーブルの接続部に浸水検知モジュールを用いることで浸水したことを検知する方法が採られている。

浸水検知モジュールは、接続部に浸水が発生すると、吸水材料が水を含むことにより膨潤して可動体を押し上げて光ファイバに圧力をかけ、曲げを発生させる構造になっており、この作用により増加した光ファイバの光損失を、OTDR で検出することで、浸水の発生及び浸水位置を検知することが可能となる。

通信ケーブル監視技術」参照

(2) 通信線路の監視技術など

(ⅰ) 光パワーメータの機能と特徴など

  1. 光パワーメータは、熱変換型と光電変換型に大別される。熱変換型はセンサの堅牢性をいかして主に可搬型光パワーメータとして用いられ、光ファイバ布設現場などの屋外でも使用される。(
  2. 光パワーの測定において、ホトダイオード(PD)を用いた光電変換型は、熱変換型と比較して、検出感度が高く、応答時間が速い特徴を有している。(
  3. 光パワーメータの受光感度を悪化させる原因の一つとして PD 自体の熱雑音がある。そのため、冷却型の受光器をセンサとして用いるとともに、高感度受光モジュールを搭載することで、雑音レベルの低減を図っている。(
  4. PD を受光部に用いている光パワーメータは、PD に波長依存性があることから、一般に、測定時の値を補正するために、測定波長を入力する機能が付加されている。(

熱変換型は,外部温度の影響を受けやすいので,屋外では使用できない。

(ⅱ) 波長分散測定

  1. シングルモード光ファイバの波長分散は、モード分散と材料分散に分けられるが、二つの分散を分離して測定することは困難であり、また、伝送帯域は、これら二つの分散の和で支配されるため、実際にはトータルの分散値測定が行われる。(
  2. OTDR 法は、いくつかの異なる波長の光パルスを被測定光ファイバに片端から入射させ、遠端にて反射され戻ってくるまでの時間差を測定することで波長分散を測定する方法である。(
  3. 位相法は、OTDR 法と比較して、測定点が多く測定精度がよい反面、ダイナミックレンジの点で劣るという特徴がある。(

正しくは「構造分散」である。

(ⅲ) OTDR 技術など

  1. OTDR では、光ファイバ長、故障位置、区間ごとの伝送損失、光コネクタや融着点における接続損失、反射減衰量などを測定することができる。(
  2. 光ファイバに光を入射したときに、光ファイバの途中から入射端に戻ってくる光には、コアの屈折率の段差により生ずる後方散乱光と、レイリー散乱光のうち光ファイバの入射端に戻ってくるフレネル反射がある。OTDR は、この原理を測定に利用している。(
  3. 受光器が飽和してしまっている間の測定できない時間又は距離はデッドゾーンといわれ、反射測定デッドゾーンと損失測定デッドゾーンの 2 種類があり、反射測定デッドゾーンは、後方散乱光デッドゾーンともいわれる。(
  4. 中継器を用いた長距離の光ファイバ線路においては、後方散乱光が測定できないため、ブリルアン散乱光を用いた C-OTDR 技術を用いることで線路の監視を行うことができる。(

正しくは,2.「下線部が逆」,3.「損失測定」,4.「レイリー散乱光」である。

(ⅳ) 光増幅器の測定項目、測定方法など

  1. 光増幅器の利得は入力信号光パワー、信号光波長などに依存するため、測定に際してはこれらが制御された状態になっていることが必要である。(
  2. 被測定光には、増幅された信号光のほかに光増幅器内で発生・増幅された自然放出光が重畳しているため、利得の測定においては、これを分離させる工夫が必要である。(
  3. 光増幅器の使用において、SN 比は、光増幅器内部で増幅自然放出光が加わる分、出力側で低下する。低下の度合いが小さいほど、より微弱な信号の増幅に適しており、この性能は、雑音指数で表される。(
  4. 光増幅器の利得と雑音指数の測定方法には、光学的測定方法と電気的測定方法があり、光学的測定方法は、単一波長での測定が基本である。(

正しくは「」か。

問5

(1) 光ファイバケーブルによる線路設備の設計

光ファイバケーブルによる線路設備の設計は、需要動向や設備現況などを十分に精査して行わなければならない。また伝送品質を考慮して、適用するケーブル種類、最適なルート、中継区間数及びケーブルのピース割りなどを決定する必要がある。

光ファイバケーブルのピース割りの設計は、ケーブル布設作業、接続作業及び伝送品質に関わる重要な設計項目であり、ケーブル布設区間の直線部、屈曲部、曲線部、傾斜部などの各区間ごとの張力予測計算を行い、接続点となるマンホールなどの位置、ルート上の作業性、安全性などを考慮して実施する。

張力予測計算の一例として、地下管路区間の傾斜や曲がりのない直線部分の張力 $T$ [N] は、ケーブル繰出し点における張力をゼロ、直線部の長さを $L$ [m]、単位長さ当たりのケーブル質量を $W$ [kg/m]、摩擦係数を $\mu$、重力加速度を $g$ [m/s2] とすると、$T=$$\mu gLW$ [N] で求められる。

また、ケーブルピース長は、線路亘長マンホール内などでのケーブル必要長を加えた線路の実際の長さ、接続必要長、成端必要長、マージンなどの布設必要長を考慮して算出する。

光ファイバケーブルのピース割り案を決めた後、伝送路に許容される損失値に収まるかどうか損失値の計算を実施して、接続点数が適切かどうかの確認を行い、ピース割りを最終的に決定する。

アクセス系線路の光ファイバケーブル設計」参照

(2) 線路配線方式と線路設計

(ⅰ) 光アクセス設備の配線方式

  1. ループ無逓減配線法は、光ファイバケーブルルート上の任意の地点で任意の光ファイバ心線を選択でき、需要への即応と柔軟な対応が可能であり、異なる経路への収容変更を容易に実現できるため回線分散が可能で、信頼性の高い配線方式である。(
  2. スター逓減配線法は、広い範囲に需要が散在しているが、比較的需要変動が小さく、安定しているエリアに適しており、効率的に設備を構築できるが、突発的な需要への対応や即応性が難しい配線方式である。(
  3. スター無逓減配線法は、既設管路に制約のあるルートで、需要密度が低いエリアに適しており、通信設備センタから配線エリアのき線点まで光ファイバ心線を無逓減とする方式であり、ループ無逓減配線法と比較して、心線管理が複雑な配線方式である。(

スター無逓減配線法は、一般に、通信土木設備の制約などによってループ無逓減配線法の適用が困難なエリアに適しており、設備センタから最遠端のユーザまで心線を逓減することなく配線していることから、ループ無逓減配線法と同様に、心線の融通性が高く、需要への即応と柔軟な対応が可能な配線法とされている。

(ⅱ) メタリックケーブルによるアクセス設備の配線方式

  1. き線ケーブル配線法は、固定配線区画を設定して、需要数に見合う固定回線と固定配線区画相互間の融通性を高めるための共通線を設ける方式である。さらに、固定回線及び共通線でも収容しきれない局部的な需要変動に対応するため、共通予備線が設けられている。(
  2. 自由配線法は、CCP ケーブルを用いた配線方式である。需要数の変動に対応するため、いくつかの端子函相互でマルチプル回線や補助線を設けて心線選択の自由度を向上させている。(
  3. FD 配線法は、配線点に FD キャビネットを設置し、需要に柔軟に対処できるように補助線及び連絡補助線が設けられ、効率的な運用及び保守作業の向上が図られている方式である。FD キャビネットでの接続にはマルチプルコネクタが用いられている。(

正しくは,B.「」,C.「」である。

(ⅲ) 光ファイバケーブル種別と適用区間の関係

  1. 丸形 SM 光ファイバケーブルは、一般に、とう道区間、管路区間及び架空引上げ区間に適用され、いずれの場合も、両端コネクタ付きケーブルが適用される。(
  2. 自己支持形 SM 光ファイバケーブルにおいて、つり線部とケーブル部の間の首部に大きなスリットを入れて窓をあけたケーブルは、軽量化されているが、横風に弱く、ダンシング対策を要する架空区間には適用されない。(
  3. SM 光ファイバケーブルの HS タイプは、アルミラミネートテープを用いた外被構造を有しており、ダンシング対策を要する架空区間に適用される。(
  4. テープ心線を SZ 撚りの溝型スロットに収容した架空用光ファイバケーブルは、中間後分岐が可能のため、FTTH 網の架空区間の構築に適用される。(

正しくは,1.「片端コネクタ付きケーブル」,2.「横風に強く」「適用される」,3.「適用されない」である。

(ⅳ) 光ファイバケーブルの布設工事の設計など

  1. 摩擦係数は、接触する物質の違いや物質表面の状態によって異なる。光ファイバケーブル布設張力計算に使用する管路とケーブル間の摩擦係数は、一般に、管路とワイヤ間の摩擦係数より大きい。(
  2. 光ファイバケーブルの布設許容張力の計算は、一般に、ケーブル繰出し点側から直線部や屈曲部など、設備形態に合わせた張力計算を各区間ごとに行い、ケーブル牽引点で布設許容張力以下であれば布設可能と判断する。(
  3. 屈曲点における光ファイバケーブルの布設張力は、屈曲点直前の張力に張力増加率を乗じて算出する。張力増加率は、屈曲点前後の交角(rad)と光ファイバケーブルの重量で算出する。(
  4. 光ファイバケーブルに曲げを与えると光ファイバに曲げひずみが加わり、場合によっては破断原因になり、光ファイバの寿命を短くするおそれがある。光ファイバケーブル布設時に許容される曲率半径は、一般に、布設後のケーブル固定時よりも大きい。(

正しくは「摩擦係数」である。$K$ は張力増加率であり $K=e^{\mu\theta}$($e$ は自然対数の底、$\theta$ [rad] はケーブルの交角,$\mu$ は摩擦係数)である。

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