平成23年度 第1回 専門的能力・通信線路

2020年6月7日作成,2021年1月1日

問1

(1) メタリック伝送路における反射の諸特性

伝送路の特性インピーダンスが変化する点では、信号波が折り返す反射現象が生ずる。このとき、一般に、進行してきた信号波は入射波、進行方向とは反対の方向へ戻っていく波は反射波、反射点で反射せず進む波は透過波といわれ、反射の大きさは特性インピーダンスの変化の大きさによって定まる。

反射の大きさを表す指標として反射係数が用いられ、図に示すような特性インピーダンス $Z_1$ の一様線路をインピーダンス $Z_2$ で終端した場合、接続点における電圧反射係数の値は 0.2 となる。また、図において、接続点が開放されている場合、終端のインピーダンスは無限大と考えられる。したがって、終端開放時の入射電圧は入射波と同位相ですべて反射される。

同様に、特性インピーダンスの異なる線路を接続した複合線路では、接続点での反射が生ずることから、実際の線路においては、できるだけ特性インピーダンスを均一化することにより、反射損失を抑えることが重要である。

特性インピーダンス Z1 の一様線路をインピーダンス Z2 で終端した場合
特性インピーダンス $Z_1$ の一様線路をインピーダンス $Z_2$ で終端した場合

メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論」参照

電圧反射係数の値は,次式で求められる。

\[ \frac{Z_2-Z_1}{Z_2+Z_1}=\frac{300-200}{300+200}=0.2 \]

(2) メタリック伝送路の電気的諸特性

(ⅰ) メタリック伝送路における漏話の種類、特徴など

  1. 信号が隣接回線に漏れる現象は漏話といわれる。漏話は、一般に、メタリックケーブルが電磁的又は静電的に結合することによって生じ、前者は誘導回線の電圧の大きさに、後者は誘導回線の電流の大きさに比例する。(
  2. 漏れてくる話の内容が明確にわかるような漏話は了解性漏話といわれ、多数の音声が重なり合うなどして雑音化した漏話は非了解性漏話といわれる。(
  3. 誘導回線の信号の伝送方向とは逆の方向に伝搬して送信側に生ずる漏話は近端漏話、誘導回線の信号の伝送方向と同一の方向に伝搬して受信側に生ずる漏話は遠端漏話といわれ、一般に、近端漏話は線路損失の影響が小さいため、遠端漏話と比較して通信に妨害を及ぼす影響が大きい。(
  4. 漏話を減少させるための一つの有効な方法は、各対の 2 本の導線を撚ることであり、さらに、隣接する対どうしで撚りピッチを変えると、撚りピッチを同一にした場合と比較して大きな軽減効果が得られる。(

下線部が逆である。

(ⅱ) 雑音とひずみの種類、特徴など

  1. 基本雑音は、入力信号の有無に関係なく混入する雑音で、増幅器や変調器などの能動回路で発生し、主に、熱雑音、ショット雑音、$1/f$ 雑音などがある。基本雑音は、一般に、入力信号レベルの低いところで問題となる。(
  2. 漏話以外の雑音としては、雷や鉄道などの強電流施設から静電的あるいは電磁的結合により通信路に入る過負荷雑音、放送波などが架空ケーブルなどを介して侵入する流合雑音などがある。(
  3. 非直線ひずみは、増幅器や変調器の入力と出力が比例関係にないために生ずるひずみであり、波形ひずみの原因となる。特に、変調器の場合は入力波と搬送波との組合せによる相互変調ひずみも相加される。(

正しくは「誘導雑音」である。

CATV 回線は幹線から各家庭へ支線が伸びる構造となっているため,上り方向の通信では,各支線に生じたノイズが幹線に集まることになる。CATV インターネットの上り速度が遅く設定されているのはこの流合雑音のためである。

(3) 光ファイバの損失要因など

(ⅰ) 光ファイバの損失要因

  1. 赤外吸収損失は、光ファイバのコアを伝搬する光が、ガラス分子を振動させることにより生ずる損失であり、熱で振動している分子の振動数と光の周波数が一致し、共振現象が生ずる場合に大きくなる。(
  2. 光ファイバの材料固有の損失であるレイリー散乱損失は、溶融状態のガラス材料が熱的な揺らぎを残したまま固化することにより生ずる屈折率の揺らぎに起因する損失であり、レイリー散乱損失の大きさは波長の 2 乗に比例する。(
  3. 構造の不均一性による散乱損失は、クラッドと被覆との境界面に存在する微小な揺らぎ、すなわち境界面の凹凸に起因する損失であり、理想的に真円でかつ長手方向に均一な完全に円筒状のクラッドが形成できないことにより生ずる損失である。(
  4. マイクロベンディングロスは、光ファイバの側方からの不均一な応力による光ファイバ軸の微小で不規則な曲がりによって生ずる損失であり、光ファイバの軸方向の収縮による座屈では発生しない。(

正しくは,2.「波長の 4 乗」,3.「コアとクラッドの密度のゆらぎ」,4.「曲率半径が小さく曲げられた光ファイバで、コアとクラッドの境界面に入射する光の角度が境界面の法線と光のなす角度で表したときの臨界角より大きくなると、コアを伝搬する光の一部がクラッド内へ放射されるために発生する」である。

(ⅱ) 光ファイバの損失特性

  1. 石英系光ファイバは 1.55 [μm] 付近に最低損失領域があり、これより長波長側の 1.6 [μm] 付近からは赤外吸収の影響により損失が増加する。(
  2. 低損失な光ファイバを実現するために、コアを純粋石英ガラスとし、クラッドにはフッ素添加の屈折率の低い石英ガラスを用いた純粋石英コア光ファイバが開発されている。この光ファイバは、コアに GeO2 を添加した光ファイバと比較してレイリー散乱が小さい。(
  3. マクロベンディングロスとは、光ファイバが曲げられたときに生ずる損失であり、曲率半径が小さく曲げられた光ファイバ内では、コアとクラッドの境界面と入射光のなす角が変化して、光がクラッド内へ漏れることにより損失が生ずる。(
  4. 結合損失とは、発光素子と光ファイバの結合において発生する損失である。結合損失の大きさは、発光素子の光ビームの広がりの違いにより決まり、光ファイバのコア径など構造の違いには影響されない。(

光ファイバへの光の入射条件を示す開口数(NA : Numerical Aperture)は,光源と光ファイバの結合効率に影響を与える基本的なパラメータであり,一般に,コア径が同じであれば NA の大きな光ファイバほど,また,NA が同じであればコア径の大きな光ファイバほど,結合効率が高い

問2

(1) 光の導波原理など

光は、電磁波の一種であり、電界と磁界が振動しながら伝搬する波である。一般に、時間 $t$、位置 $z$ における電界の振動は、次式で表すことができる。

\[ E(z,t)=E_0 \cos(\omega t - \beta z - \phi) \]

ここで、$E_0$ は振幅、$\omega$ は角周波数、$\phi$ は基準となる時空間点($t=0$,$z=0$)における初期位相を表す。また、$\beta$ は伝搬定数といわれ、伝搬する波の波長を $\lambda$ とすると、$\beta=$$\displaystyle \frac{2\pi}{\lambda}$ で表される。

また、波の位相の進む速度は、位相速度といわれ、位相速度 $V_P$は、角周波数 $\omega$ と伝搬定数 $\beta$ を用いて、$V_P=$$\displaystyle \frac{\omega}{\beta}$ で求められる。

一方、光は、異なった屈折率を持つ誘電体間の境界面で反射や屈折を生ずる。光の平面波がある屈折率の誘電体からそれと異なる屈折率の誘電体に入射する際の反射と屈折の関係は、スネルの法則により表される。

ある屈折率の誘電体からそれより低い屈折率の誘電体に光が入射する場合、入射角(入射光と境界面とのなす角)が一定の角度より小さくなると入射光が全反射する。この全反射を始める入射角度は臨界角といわれる。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

(2) 光の性質、光通信における特性など

(ⅰ) 光の性質など

  1. 光の回折は、光の伝搬において光波の波面の各点を波源として全方向に広がる波の包絡面が二次波を構成するというホイヘンスの原理により説明することができる。(
  2. 光の振動方向が一定した光を直線偏光といい、偏光面の異なる二つの直線偏光を合成すると楕円偏光となる。また、位相が $\pi/4$ だけ異なり、振幅が等しく、偏光面が互いに直角をなす二つの光を合成すると円偏光となる。(
  3. 電界や磁界によって生ずる複屈折において、屈折率の変化が、光の進行方向と平行に印加した電界に比例する現象はポッケルス効果、光の進行方向と垂直に印加した電界の2乗に比例する現象は光カー効果といわれる。(
  4. 点光源からの光を二つの異なる経路に分けた後、再び合成すると、干渉縞が現れる現象はヤングの実験により確認でき、鮮明な干渉縞を発生することができる光はコヒーレントな光といわれる。(

正しくは「位相が $\pi/2$ だけ異なり」である。

(ⅱ) 光通信における信号劣化要因など

  1. 波長によって伝搬速度が異なることに起因して生ずる分散は、波長分散といわれる。光通信に用いられる光パルスは、厳密には単一の波長ではなく波長の広がりを有しているため、波長分散があると、波長によって伝搬時間に差が生じ、受信端でパルス幅が広がり、信号が劣化する。(
  2. 光ファイバの製造過程では、加水分解反応を用いるため、光ファイバ中に OH 基が混入する場合がある。OH 基は光ファイバ中に 1 [ppm] 程度含まれていても、吸収による伝送損失の増加要因となる。(
  3. 長尺の光ファイバに強い光を入射したとき、その入射光の光周波数より高い周波数帯にスペクトル幅の広い光が発生する現象は、誘導ラマン散乱といわれ、この現象を利用した光増幅器であるファイバラマン増幅器の増幅可能な波長帯は、1.3 μm 帯に限定されている。(

正しくは「入射光の周波数を変えることにより任意のストークス光を発生させ信号光を増幅することが可能である」である。

(ⅲ) 光ファイバの非線形光学現象など

  1. 高強度の短光パルスが光ファイバに入射されると、光の電界で光ファイバ物質中の電子の軌道が変化することによって屈折率が変化する現象が生じ、光パルス自身が誘起した屈折率変化により、その位相は急激に変化する。この現象は、自己位相変調といわれ、パルスは大きな周波数変化を伴う。(
  2. 波長の異なる二つの光を光ファイバに入射したとき、一方の光の強度変化により生ずる屈折率変化で他方の光の位相変化が生ずる現象は、相互位相変調といわれる。(
  3. 波長分散による光パルス波形の広がりの変化と、ブリルアン散乱による光パルス波形の圧縮の変化が同じ大きさで釣り合っている場合、光パルス波形は崩れずに伝搬することが可能となり、このような状態は光ソリトンといわれる。(
  4. 波長の異なる三つの光が光ファイバに入射されると、非線形光学効果により、新しい第四の光が発生する現象は、四光波混合といわれる。(

正しくは「自己位相変調によるパルスの狭まり」である。

(ⅳ) 光ファイバの分散特性など

  1. マルチモード光ファイバにおいて、各モードにおける屈折率が異なることにより生ずる分散は、モード分散といわれる。光源からマルチモード光ファイバに光パルスを入射する場合、光源の波長が単一であれば、入射光パルスが複数の異なるモードに分かれて伝搬してもモード分散は生じない。(
  2. 光ファイバに用いられる材料において、波長に対する散乱係数が異なることにより生ずる分散は、材料分散といわれる。材料分散値は、一般に、波長が長くなるにつれて正の値から負の値に変化する。(
  3. シングルモード光ファイバの波長分散の値の単位としては、一般に、[ps/nm/km] が用いられる。例えば、10 [ps/nm/km] とは、スペクトル幅 1 [nm] の光が 10 [km] 伝搬したとき、パルス幅が 1 [ps] 広がることを意味する。(
  4. 構造分散と材料分散の和は波長分散といわれ、波長分散の値は光ファイバの構造及び材料により決定される。構造分散の値は、光ファイバの屈折率分布の構造を変えることによって変化する特徴を有しており、光ファイバの波長分散の値は、構造分散の値を変化させることにより制御することができる。(

正しくは,1.「入射光パルスが複数の異なるモードに分かれて伝搬すればモード分散は生じる」,2.「負の値から正の値」,3.「スペクトル幅 1 [nm] の光が 1 [km] 伝搬したとき、パルス幅が 10 [ps] 広がることを意味」である。

問3

(1) 光ファイバの構造、特徴など

光ファイバケーブルの製造時や使用時において破断強度を低下させるクラックの発生を防ぐため、光ファイバ表面を一次被覆で保護したものは、光ファイバ素線といわれる。

光ファイバ素線の一次被覆は、一般に、紫外線硬化型樹脂が用いられ、光ファイバ素線の外径の標準寸法は、250 [μm] である。さらに、光ファイバ素線の外側に二次被覆となる強固な構造を設けたものは、光ファイバ心線といわれる。

二次被覆の材料としては、押出成型時の収縮が少なく硬い材料としてナイロンを使うことが多い。一般に、硬い二次被覆材料は熱膨張係数が大きく、低温での圧縮ひずみが大きくなるため、被覆はその効果と悪影響とをバランスさせるように設計する必要がある。

光ファイバケーブルは、必要な心線数を束ねるとともに外部からの圧力や浸水などを防ぎ、光損失を長期にわたり安定に維持することが求められる。光ファイバケーブルの主な構成要素は、心線、複数の心線を束ねたユニット、布設などの際に加わる張力を分担する抗張力体、浸水や衝撃を防ぐ防水材及びケーブル外被である。

通信ケーブルの種類・特性及び適用」参照

(2) 光通信設備など

(ⅰ) 光ファイバの種類、機能など

  1. 分散シフト光ファイバ(DSF)は、石英系光ファイバの伝送損失が最小となる 1.55 μm 帯で波長分散が最小となるように波長分散特性を調整した光ファイバであり、DSF の屈折率分布には、二重コア型、セグメントコア型などがある。(
  2. ノンゼロ分散シフト光ファイバは、実効断面積を小さくすることにより 1.3 μm 帯よりわずかに短波長側にゼロ分散波長をシフトさせつつ、使用波長帯域内では波長分散をゼロとしないことを特徴とした光ファイバで、非線形現象の抑制に有効であることから WDM 伝送システムに使用されている。(
  3. 分散フラット光ファイバは、光ファイバの屈折率分布を制御して、材料分散と構造分散を相殺させることにより分散スロープをフラットに近づけることで広い波長帯域において、小さい波長分散を可能とする光ファイバである。(
  4. 分散補償光ファイバは、伝送用光ファイバに接続することによって、全体の波長分散を補償するものであり、分散補償光ファイバに要求される波長分散特性は、補償の対象となる伝送用光ファイバの種類や特性によって異なる。(

正しくは「1.55 μm 帯」である。

(ⅱ) 光ファイバの接続技術など

  1. 融着接続におけるコア調心法とは、光源からの光を光ファイバ内に透過させ、コアとクラッドの屈折率の違いにより生ずるコントラストによって、コアの位置を認識させ軸合わせを行う方法である。(
  2. メカニカルスプライスは、光ファイバを溶融することなく、専用の接続工具を用いて物理的に光ファイバを把持する接続方法である。光ファイバの軸合わせは光ファイバの外径を基準とするため、一般に、光ファイバのコアとクラッドに偏心があると接続損失が増加する。(
  3. フェルールの端面を斜めに研磨する方法は、一般に、PC 研磨といわれ、光コネクタのばねによりハウジングが押し出されることで先端部が弾性変形を起こし、光ファイバ端面どうしが、直接、接触できることで反射を抑えている。(

正しくは「凸球面状」である。

(ⅲ) EDFA の特性、動作原理など

  1. EDFA は、光ファイバのクラッドに添加したエルビウム(Er)の 3 準位系の誘導放出遷移を利用した光ファイバ増幅器であり、1.55 [μm] を中心とした利得帯域を持つ。(
  2. EDFA は、一般に、LD 励起光源、光ファイバカプラ、光変調器、エルビウム添加光ファイバ(EDF)及び光スイッチの五つの主要な光部品から構成される。(
  3. EDF を評価するパラメータの一つである励起効率は、単位光量当たりの信号利得を表し、EDF の光ファイバ長及び入射信号光量に大きく依存するため、一般に、最適な光ファイバ長で、かつ、小信号入力状態で評価される。(
  4. 0.98 μm 帯励起は、1.48 μm 帯励起と比較して雑音指数は高いが、パワー変換効率が優れているため、一般に、高出力特性を要求されるブースタアンプ用の励起光源に用いられる。(

正しくは,1.「コア」,2.「光アイソレータ」,4.「」である。

光ファイバ増幅器の構成(前方励起型)
図 光ファイバ増幅器の構成(前方励起型)

(ⅳ) 光ファイバデバイスの特徴など

  1. 光カプラの形態としては、ロッドレンズと誘電体多層膜を用いたバルク型、光ファイバ融着による光ファイバ型、ガラスなどで形成する光導波路型などがある。光ファイバ型は、光が伝搬しながら結合状態を変えていく分布結合を利用している。(
  2. 石英を用いた光導波路型カプラは、基板内で多段構成ができるなど、集積化が可能である。Y 分岐導波路を用いたものでは、波長依存性がほとんどなく、出力ポートの光損失のばらつきを抑えることができる。(
  3. 光ファイバのクラッドに周期的な屈折率変化を与えたファイバグレーティング(FG)には、その屈折率変化の周期により、短周期 FG と長周期 FG に大別され、短周期 FG には、フレネル反射により特定の波長の光だけを反射するものがある。(
  4. FG の製造方法の一つである位相マスク法は、干渉法と比較して、製造時の安定性及び再現性に優れるため、一般に、量産用として用いられる。(

正しくは「」である。

問4

(1) 光ファイバの強度及び疲労特性の測

光ファイバの素材として利用されている石英系ガラスは、一般に、機械的に極めて脆く、靭じん性が小さい。このような光ファイバの機械特性である破断強度や疲労特性は、グリフィスフローとして知られる微細な表面傷、光ファイバ中の泡、不純物粒子などの存在によって著しく損なわれる。

光ファイバの強度は、引張り試験、曲げ試験などによって評価される。引張り試験や曲げ試験は破壊試験であり、これらの試験によって破断強度を求めることができる。また、スクリーニング試験は、製造段階などで一定水準以下の品質のものを取り除くために行われる。

光ファイバ強度劣化の時間依存性、すなわち疲労特性の測定方法としては、光ファイバに一定の応力を与えた状態で放置し、破断するまでの時間を測定して静的疲労特性を求める方法と、破断強度のひずみ速度依存性から動的疲労特性を求める方法があり、後者の方法では、破断強度は、一般に、ひずみ速度の増加とともに大きくなる。

通信ケーブルの種類・特性及び適用」参照

(2) 光ファイバの伝送特性の測定技術など

(ⅰ) 波長分散の測定法など

  1. シングルモード光ファイバにおける波長分散を測定する方法としては、周波数領域及び時間領域での測定法がある。前者の測定法としては位相法など、後者の測定法としてはパルス法などがある。波長分散は材料分散と構造分散に分けられるが、これら二つの分散を個別に分離して測定することは困難である。(
  2. 位相法は、同一波長の光を複数の周波数の正弦波で変調して被測定光ファイバに入射し、伝搬後の信号と原信号の位相差を測定することにより群遅延時間を求め、これを波長について微分することによって波長分散を求める方法である。(
  3. パルス法は、直接、群遅延時間差を測定することにより波長分散を求める方法であり、パルス法の一つであるツインパルス法は、光ファイバに波長の異なる二つの光パルスを同時に入射し、伝搬後の群遅延時間差を求める方法である。(
  4. OTDR 法は、被測定光ファイバの片方の端から複数の異なる波長の光パルスを入射し、遠端で反射したそれぞれの異なる波長の光の戻ってくるまでの時間差を測定することにより、波長分散を求める方法である。(

正しくは「異なる波長」である。

位相法は,異なる波長の正弦波変調光源間の相対位相シフトを用い,指定された波長範囲における,光ファイバの波長分散を求める手順である。通常,光源にはレーザダイオード,フィルタ付き発光ダイオード,又はフィルタ付きの増幅された自然放出光(ASE)光源を用いる。相対位相シフトは,相対時間遅延に変換し,その結果得た群遅延データを,各光ファイバの種類について定義する式に近似する。

(ⅱ) 伝送帯域の測定法など

  1. 光ファイバの伝送帯域は、モード分散、材料分散、構造分散、偏波モード分散などによって決定される。マルチモード光ファイバはモード分散が支配的要因であり、シングルモード光ファイバでは材料分散と構造分散が支配的要因である。(
  2. 伝送帯域の測定法の一つである周波数掃引法は、周波数領域での測定法であり、正弦波で変調された光を被測定光ファイバに入射し、変調周波数を掃引することによって、被測定光ファイバのベースバンド周波数を測定し、伝送帯域を求める方法である。(
  3. 伝送帯域の測定法の一つであるパルス法は、被測定光ファイバに光パルスを入射し、伝搬後のパルス波形と入射パルス波形を励振して比較することによりその伝達関数として被測定光ファイバのベースバンド周波数応答を求める方法であり、周波数掃引法と比較して測定のダイナミックレンジが広い。(

正しくは「狭い」である。

(ⅲ) 光増幅器の利得、雑音指数の測定法など

  1. 光増幅器の利得は、光増幅器の入力端での信号光パワーに対する出力端での信号光パワーの比として定義され、入力信号光パワーが低い領域では一定の値を示し、この領域は非飽和領域、線形領域あるいは小信号領域といわれる。(
  2. 光増幅器の利得は、入力信号光パワーのほか、偏波面の変化によっても変動するため、利得測定中に信号光の偏波面が変化すると誤差を生ずることがあることから、偏波依存利得変動の大きい光増幅器の利得を測定する場合は、偏波スクランブルを行うか、測定ポイントごとに偏波面の調整を行う必要がある。(
  3. 光増幅器の入力側の SN 比に対する出力側の SN 比の比は、雑音指数といわれる。光増幅器の利得が1より十分大きい場合には、雑音指数の支配的要因は、増幅された信号光と ASE 光の間で発生するビート雑音と、ASE 光と ASE 光の間で発生するビート雑音である。(
  4. 利得と雑音指数の測定方法は、電気的手法と光学的手法に大別される。光学的手法は、利得測定において電気的手法と比較して ASE 光の影響を受けにくく、また、雑音指数の測定において雑音指数総和値の測定に適し、光増幅器の実使用に近い状態での値が得られる。(

正しくは「下線部が逆か」である。

(ⅳ) OTDR の機能と特徴など

  1. OTDR は、レイリー後方散乱光などを測定することにより、光ファイバの距離と光損失を測定することが可能である。光ファイバの接続点においては、反射減衰量の測定は不可能であるが光接続損失の測定は可能である。(
  2. 融着接続箇所においては、フレネル反射による強い反射光で生ずる山側の波形と融着接続箇所前後のレイリー後方散乱光量の違いによる段差が観測されるが、直線近似法として 2 点法を用いて光接続損失が求められる。(
  3. OTDR による測定では、光コネクタなどの反射点で生ずる反射光及びその反射光で生ずる受信波形のすそ引きによって、引き続く反射点、融着点、接続点などの位置、損失、反射率などの測定が不能となるデッドゾーンが存在する。デッドゾーンには、反射測定(フレネル反射)デッドゾーンと損失測定(後方散乱光)デッドゾーンの 2 種類がある。(
  4. B-OTDR では、光パルスを光ファイバに入射することにより発生する後方散乱光のうち、入射光パルスの周波数から数十 [kHz] 程度ダウンシフトした周波数のブリルアン散乱光を測定することにより光ファイバのひずみ分布を求めることができる。(

正しくは,1.「反射減衰量の測定は可能であり」,2.「フレネル反射点前後の伝送損失の差分から」,4.「」である。

問5

(1) アクセス系光ファイバケーブル設備の設備設計など

アクセス系光ファイバケーブル設備の基本設計は、一般に、需要予測に基づき、配線方法の選定、光ファイバケーブルの布設ルートの選定、心線数の決定などの作業の流れで進められる。

実施設計では、現地調査により、布設するルートの道路形態や既存設備の現況確認はもとより、光ファイバケーブルの布設や接続作業を行う場所の作業環境、施工の安全性、法的規制の確認など、幅広い調査が行われる。

光ファイバケーブルの建設工事では、一般に、メタリックケーブルと比較して長尺の光ファイバケーブルを布設することになるため、地下管路区間のマンホール内における光ファイバケーブルの屈曲角度や既存設備の状況を確認して、ケーブルけん引機や接続機の設置及び作業のスペースを確保する必要がある。

こうした現地調査の結果から建設・保守作業を考慮して仮の接続点を決定する。これによりケーブルピース長を決定し、それぞれのケーブルけん引張力を算出する。

また、ユーザビルへ光ファイバケーブルを引き込む場合は、個々のユーザビルの既設ケーブルの引込み状況、引込み管路の空き状況、ビル内配管状況などを調査し、さらに、光ファイバケーブルを成端する構内光配線キャビネットを設置するスペースとして、一般に、ビルの MDF 室の状況を確認する必要がある。

アクセス系線路の光ファイバケーブル設計」参照

(2) 光ファイバケーブルの種類、張力設計、損失設計など

(ⅰ) 光ファイバ及び光ファイバケーブルの種類と適用区間

  1. ムササビなどのげっ歯動物類から光ファイバケーブルを防護するために軽量で高強度のプラスチックテープを巻いた構造の光ファイバケーブルが実用化されている。主に架空区間で使用される光ファイバケーブルではあるが、地下管路区間のネズミ対策にも適用されている。(
  2. クラッドに空孔構造を有する光ファイバは、空孔の屈折率が石英系ガラスと比較して十分小さく、空孔がない場合に放射される光を空孔を含む領域で閉じ込めることから、曲げ損失を抑えることができる。(
  3. 電力ケーブルへの並設やコンピュータなどの電子機器間の電位差が問題となるようなシステムでは、光ファイバケーブル内部に金属を含まないノンメタル光ファイバケーブルを適用することが有効である。(
  4. 光ファイバの屈折率分布形状による分類では GI 型と SI 型に大別される。GI 型光ファイバの屈折率分布形状は、各伝搬モード間の伝搬時間差をできるだけ小さくするため、ほぼ放物線状となっている。(

正しくは「ステンレステープ」である。

(ⅱ) 光ネットワークにおける光ファイバケーブル接続点の決定要因など

  1. 基幹系ネットワークでは、伝送距離の長遠化を図るためなどから、一般に、融着接続が適用されるが、アクセス系ネットワークでは心線使用の融通性、心線切換えの迅速性及び保守性を考慮し、一般に、コネクタ接続が適用されている。(
  2. アクセス系ネットワークで心線数無逓減配線法が適用される場合は、建設時の接続点数を少なくすることが可能であるが、後分岐接続工法を多用することは現用回線への影響が懸念されることから、ルート決定の段階で分岐点と心線数をあらかじめ設定しておくことが望ましい。(
  3. アクセス系ネットワークのループ配線法において、き線ケーブルとビル引込みケーブルとの接続は、信頼性を確保するために、設備センタから時計回り方向と反時計回り方向に布設された心線に分散して接続する方法が有効である。(

(ⅲ) 地下管路区間で光ファイバケーブルを布設する場合の牽引力

図に示すように、地下管路区間においてX地点からZ地点へ、以下に示す条件で光ファイバケーブルを布設する場合、Z点でのけん引張力は、970 [N] である。

(条件)
  1. 光ファイバケーブル質量:0.5 [kg/m]
  2. X 〜 Y 間の布設距離:200 [m]
  3. Y 〜 Z 間の布設距離:100 [m]
  4. 繰出し点の初期張力:100 [N]
  5. 摩擦係数 $\mu$:0.5
  6. 張力増加率 $e^{\mu\theta}$:1.2
    ただし,$e$ は自然対数の底とする。
  7. 重力加速度 $g$:10 [m/s2]
  8. 光ファイバケーブルの布設ルートは平面とし,高低差はないものとする。
地下管路区間で光ファイバケーブルを布設する場合の牽引力
図 地下管路区間で光ファイバケーブルを布設する場合の牽引力

Y 点での直線張力は次式で求められる。

繰出し点の初期張力+ X-Y 間の張力 = 100 [N] + 0.5 × 10 [m/s2] × 200 [m] × 0.5 [kg/m] = 600 [N]

Z 方向への張力に変換するため,張力増加率を乗じる。

Y 点での直線張力 × 張力増加率 = 600 [N] × 1.2 = 720 [N]

Y-Z 間の張力は次式で求められる。

0.5 × 10 [m/s2] × 100 [m] × 0.5 [kg/m] = 250 [N]

したがって,Z 点でのけん引張力は次式となる。

720 [N] + 250 [N] = 970 [N]

(ⅳ) 光ファイバケーブルシステムの許容最小送信レベル

中継光ファイバケーブルシステムの損失設計において、以下に示す条件の場合、受信レベルを満足する光ファイバケーブルシステムの許容最小送信レベルは、-6 [dBm] である。

(条件)
  1. 総伝送路長:80 [km]
  2. 受信レベル(受光感度範囲):-30 [dBm] 〜 -20 [dBm]
  3. 光ファイバケーブルの損失:0.2 [dB/km]
  4. 接続損失:0.1 [dB/箇所]
  5. 接続箇所数:20 箇所
  6. システムマージン:6 [dB]
  7. 上記以外の損失は,考慮しないものとする。

伝送路における損失を求める。

光ファイバケーブルの損失 × 総伝送路長 = 0.2 [dB/km] × 80 [km] = 16 [dB]

接続損失を求める。

1 箇所あたりの接続損失 × 接続箇所数 = 0.1 [dB/箇所] × 20 [箇所] = 2 [dB]

受信レベル(最小),システムマージンを考慮し,光ファイバケーブルシステムの許容最小送信レベルを求める。

受信レベル最小 + 全損失 + システムマージン = -30 [dBm] +(16 [dB] + 2 [dB]) + 6 [dB] = -6 [dBm]
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