平成23年度 第2回 専門的能力・通信線路

2020年6月6日作成,2021年1月1日更新

問1

(1) 一様線路

伝送線路として最も基本的な 2 本の平行導体からなる一様線路においては、抵抗、インダクタンス、静電容量などが線路に沿って一様に存在していると考えられ、このような線路を分布定数回路として扱うことができる。

線路上の任意の点 $x$ における電圧 $V(x)$ 及び電流 $I(x)$ は、自然対数の底を $e$、特性インピーダンスを $Z$、端末条件により定まる積分定数を $A$ 及び $B$ とすれば、次式で表すことができる。

\[ V(x)=Ae^{-\gamma x}+Be^{\gamma x} \] \[ I(x)=\frac{1}{Z_0}(Ae^{-\gamma x}-Be^{\gamma x}) \]

ここで、$\gamma$ は伝搬定数といわれる。$\gamma$ は一般に複素数であり、減衰定数を $\alpha$、位相定数を $\beta$、虚数記号を $\text{j}$ とすると、$\gamma = \alpha +\text{j}\beta$ と表すことができる。

正弦波が線路上を進行していく場合、角周波数を $\omega$、任意の点 $x$ の任意の時間 $t$ における電圧と電流をそれぞれ $v(x,t)$ 及び $i(x,t)$ とすると、

\[ v(x,t)=A\exp{\{-\alpha x +\text{j}(\omega t -\beta x)\}}+B\exp{\{\alpha x + \text{j}(\omega t +\beta x)\}} \] \[ i(x,t)=\frac{1}{Z_0}\{A\exp{\{-\alpha x +\text{j}(\omega t -\beta x)\}}-B\exp{\{\alpha x + \text{j}(\omega t +\beta x)\}}\} \]

となり、位相が $x$、$t$ の関数となっていることを示しており、同一位相の点が進む速度を $u$ とすれば、$u=$ $\displaystyle \frac{\omega}{\beta}$ であり、$u$ は位相速度といわれる。

また、特性インピーダンス $Z_0$ の線路をインピーダンス $Z$ で終端したとき、終端点における電圧反射係数 $\Gamma$ は、$\Gamma = $$\displaystyle \frac{Z-Z_0}{Z+Z_0}$ となる。

メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論」参照

(2) メタリック伝送

(ⅰ) 伝送量などを表す場合に用いられる単位

  1. 伝送線路の送信端の信号電力を $P_S$ [W]、受信端の信号電力を $P_R$ [W] とすれば、伝送線路の減衰量 $L$ [dB] は、$\displaystyle L = 10\log_{10}{\frac{P_S}{P_R}}$ となる。(
  2. 電気通信分野においては、一般に、1 [mW] の電力を基準にした絶対電力レベルを表す単位として [dBm] が用いられる。この単位を用いて 1 [mW] を表すと 0 [dBm] となる。(
  3. 伝送システムにおいて、基準点における絶対電力レベル [dBm] と任意の点における絶対電力レベル [dBm] との差は相対電力レベルといわれ、単位として [dBr] が用いられる。(
  4. [dBm0] は、伝送システムの 0(ゼロ)相対レベル点における、信号の絶対電力レベルを示す単位である。例えば、-15 [dBm0] の信号の場合、相対電力レベルが -10 [dBr] の点における絶対電力レベルは -5 [dBm] である。(

正しくは「-25 dBm」である。ITU-T G100.1 によると,dBm0 単位は次式で定義される。

[dBm0] = [dBm] - [dBr]

(ⅱ) メタリック平衡対ケーブル

  1. 平衡対ケーブルは、同じ構造の 2 本の導体が対をなしているケーブルであり、2 本のそれぞれが、それ以外の導体、遮蔽体又は保護金属体(例えば鉛被)などに対して、構造的また電気的にほぼ等しい関係位置となっている。(
  2. 平衡対ケーブルの抵抗は高周波で表皮効果の影響を受け、漏洩コンダクタンスは周波数に依存し、一般に、抵抗減衰量は周波数の平方根に比例し、漏れ減衰量は周波数に比例する。(
  3. 平衡対ケーブルに使用される絶縁材料は、絶縁耐力が大きく、誘電率が高く、耐候性に優れているなどの性質に加え、焼却時や埋立処理時などにおいて環境へ及ぼす影響が小さいことも重要である。(

正しくは「低く」である。

(3) 光伝送など

(ⅰ) 光ファイバの伝搬特性

  1. 光ファイバで伝搬可能なモード数を構造パラメータから求めるには、規格化周波数 $V$ が用いられ、空気中の光の波長を $\lambda$、コアの半径を $a$、コアの屈折率を $n_1$、クラッドの屈折率を $n_2$ とすると、$\displaystyle V = \frac{2\pi a}{\lambda}\times\sqrt{n_1^2-n_2^2}$ で表すことができる。(
  2. 基本モードにおける光強度分布はコア中心で最大値となり、中心から離れるにしたがって小さくなり、ポアソン分布で近似することができる。(
  3. SI 型光ファイバにおいては、コアとクラッドの境界面を臨界角よりも小さな角度で反射しながら進む光波が存在するが、この光波が光ファイバの伝搬モードになるためには、コアの中心軸に直交する方向の位相変化量が、光波の 1 往復に伴って $\displaystyle \frac{1}{2\pi}$ の整数倍になる必要がある。(
  4. SM 光ファイバにおけるモードフィールド径は、光強度分布がガウス型で近似できるとき、光強度(光パワー)が最大値の $\displaystyle \frac{1}{e}$ ($e$ は自然対数の底)となる直径をいう。(

正しくは,1.「ガウス分布」,3.「$2\pi$ の整数倍」,4.「最大値の $\displaystyle \frac{1}{e^2}$」である。

モードフィールド直径
図 モードフィールド直径

(ⅱ) 光の屈折、反射など

$\phi_1$ は入射角、$\phi_2$ は屈折角とし、いずれも境界面の法線と光のなす角度とする。

  1. 屈折率 $n_1$ の誘電体から屈折率 $n_2$ の誘電体に光が入射するとき、 $\displaystyle \frac{\sin{\phi_1}}{\sin{\phi_2}}=\frac{n_1}{n_2}$ が成り立つ。(
  2. 屈折率 $n_1$ の誘電体から屈折率 $n_2$ の誘電体に光が入射するとき、$n_1 \lt n_2$ の場合、$\phi_2$ が 90 度となる角度が存在し、このときの $\phi_1$ を臨界角又は全反射角という。(
  3. 光ファイバのコアの屈折率を $n_1$、クラッドの屈折率を $n_2$、光ファイバの最大入射角を $\theta_\text{max}$ すると、光源と光ファイバとの結合効率に影響する基本的なパラメータである開口数 $\text{NA}$ は、$\text{NA} = \sin\theta_\text{max}=\sqrt{n_1-n_2}$ で表すことができる。(
  4. 屈折率 $n_1$ の誘電体から屈折率 $n_2$ の誘電体に、電界が入射面と平行な光(P 偏光)が入射するとき、$\phi_1 + \phi_2$ が 90 度で無反射になる現象が生じ、このときの $\phi_1$ はブリュースター角といわれる。(

正しくは,1.「$\displaystyle \frac{\sin{\phi_1}}{\sin{\phi_2}}=\frac{n_2}{n_1}$」,2.「$n_1 \gt n_2$ の場合」,3.「$\text{NA} = \sin\theta_\text{max}=n_1 \sqrt{2\frac{n_1-n_2}{n_1}}$」である。

問2

(1) 光ファイバにおける光の伝搬

石英系光ファイバの場合、一般に、伝送損失が最小となる波長 1.55 μm 帯における損失は 0.2 [dB/km] 程度であり、1 [km] 伝送しても約 95.5 [%] の光が受信側に到達する。また、C バンドといわれる波長 1.55 μm 帯の周波数帯域幅は約 4.4 [THz] と広帯域であることから、10 [Gbit/s] 以上の伝送速度を有する高速な光通信システムが実用化されている。さらに、光ファイバケーブルは、電気信号を伝搬するメタリック平衡対ケーブル又は同軸ケーブルとは異なり、電気伝導体ではないため、電磁誘導による影響を受けず、漏話も本質的に発生することがない。

光ファイバ内に光信号を閉じ込めて伝搬させる方法を導波原理により分類すると、光ファイバの中心部に屈折率の高い部分(コア)を設け、全反射の原理で光を閉じ込める方法と、光ファイバ断面内の二次元方向に規則的な配列で屈折率を変化させた領域を作り、屈折率の配列に対応したブラック条件を満たした光が光ファイバ内に閉じ込められて伝搬されるホトニックバンドギャップを利用する方法とに大別される。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

表 各バンドと波長
バンド(略称) バンド 波長 [nm]
T-band Thousand-band 1 000 - 1 260
O-band Original-band 1 260 - 1 360
E-band Extended-band 1 360 - 1 460
S-band Short-wavelength-band 1 460 - 1 530
C-band Conventional-band 1 530 - 1 565
L-band Long-wavelength-band 1 565 - 1 625
U-band Ultralong-wavelength-band 1 625 - 1 675

(2) 光ファイバなど

(ⅰ) SM 光ファイバの特性など

  1. 誘電体中の電子は構成する原子や分子から離れて自由に動くことはできないが、ガラスなどの誘電体中を電磁波が伝搬すると、一般に、伝搬周波数に対応した応答を示し、これが波長分散をもたらす。(
  2. SM 光ファイバは、一般に、1.3 [μm] 近傍で波長分散が零になり、1.55 μm 帯で損失が最小となる。1.55 μm 帯で波長分散を零に近づけるためには、光ファイバの比屈折率差を小さめに設定し、材料分散を小さくすることによって、波長分散を最小にする方法がある。(
  3. 周波数スペクトル幅を有する光パルスは、一般に、光ファイバ内を伝搬するに従いパルス幅が広がり、信号の伝送に影響を及ぼす波長分散が発生する。波長分散の値の単位としては [ps/nm/km] が用いられ、1 [ps/nm/km] はスペクトル幅が 1 [nm] の光が 1 [km] 伝搬するとパルス幅が 1 [ps] 広がることを示している。(
  4. SM 光ファイバにおいては、直交する二つの偏波成分が存在する。光ファイバが理想的な真円でなく、また完全に均質でないために生ずる二つの偏波成分間の遅延差は偏波モード分散といわれる。(

正しくは「比屈折率差と構造分散パラメータを大きくすることにより、構造分散を大きくし、材料分散と相殺させる」である。

(ⅱ) 光ファイバ増幅器の特徴など

  1. EDFA はエルビウム添加光ファイバ(EDF)を用いた増幅器であり、0.98、1.48 μm 帯などに励起光波長が存在し、誘導放出光の波長としては 1.55 μm 帯が石英系光ファイバの低損失波長帯と一致しているため広く利用されている。(
  2. EDFA において、1.48 μm 帯励起法の場合のモードフィールド径(MFD)は、波長が 1.55 [μm] の MFD とほぼ一致するため高い利得を得ることができる。一方、0.98 μm 帯励起法は、1.48 μm 帯励起法と比較して、吸収係数は同等であるが MFD の差異が大きいことから、高い利得は得られない。(
  3. 1.3 μm 帯の光ファイバ増幅器を構成する光ファイバに使用される希土類元素として、プラセオジム、ネオジムなどがあるが、高利得、低雑音の光ファイバ増幅器としては、プラセオジムをフッ化物ファイバに添加した PDFA がある。(

正しくは「」である。励起光の励起波長が 0.98 [μm] の場合,最も利得係数が大きい。

(ⅲ) 発光デバイスの原理、特性など

  1. 半導体結晶では、その構成原子の内部エネルギーは量子化された準位をとり、禁制帯を挟んで低いエネルギー領域の伝導帯と高いエネルギー領域の価電子帯に分布する。(
  2. LED においては、半導体の pn 接合に逆方向電圧を印加することにより、p 型半導体領域に電子が、n 型半導体領域に正孔が注入され、伝導帯にある電子と価電子帯にある正孔が再結合して自然放出光が発生する。(
  3. LD は誘導放出を利用したものであり、ある波長の光を入射すると同じ波長の光が誘導放出されると同時に一部が吸収される。誘導放出が吸収を上回るようにするには、pn 接合に一定以上の逆方向電圧を加えて反転分布状態にする必要がある。(
  4. LD の駆動電流を変化させることにより LD の出力光強度を直接変調することが可能であるが、一般に、数 [GHz] 以上の高速変調を行うと LD は多モードで発振するようになり、発光スペクトルが広がってしまい、これが伝送距離を制限する要因の一つとなる。(

正しくは,1.「下線部が逆」,2.「順方向電圧」,3.「順方向電圧」である。

(ⅳ) 受光デバイスの原理、特性など

  1. PD においては、入射光が禁制帯で吸収されることにより、伝導帯に電子が、価電子帯には正孔が励起される。これら電子と正孔は電界によってドリフトし、光電流として外部回路に取り出すことができる。(
  2. APD は、pn 接合に大きな逆バイアス電圧を印加すると、わずかなキャリアの移動によって次々にキャリアが生成され、加速度的に電流が増大するアバランシェ効果による電流増幅作用を利用している。(
  3. PD の応答特性を高めるためには空乏層を広げることが必要である。空乏層を広げるためには、順バイアス電圧を印加する方法、又は p 層と n 層の間に不純物濃度の高い抵抗層を挟む方法がある。(
  4. PD で検出可能な光の波長領域は使用する半導体材料によって決まり、半導体材料としては、一般に、0.8 [μm] 以下の短波長領域では Ge が、1.0 [μm] 以上の長波長領域では Si が使用される。(

正しくは,1.「空乏層」,3.「空乏層を広げると応答速度は低下する」,4.「下線部が逆」である。

問3

(1) 光アクセスシステムの基本構成

光アクセスネットワークの形態には、設備センタとユーザとの間を光ファイバで 1 対 1 に結ぶ形態と、1 対多で接続する形態とがある。1 対多で接続する形態としては、設備センタとユーザとの間に信号を多重化する装置を設置して設備センタからの光信号を電気信号に変換することにより複数のユーザに接続する ADS 方式と、パッシブ素子を用いた光スプリッタを設置して光信号を分岐することにより複数のユーザに接続する PDS 方式がある。

PDS 方式では、1 心の光ファイバで上りと下り方向の信号が同時に通信を行っているため、光信号どうしの干渉を避ける必要があり、一般に、上りと下り方向にそれぞれ別の光波長を割り当てる WDM 技術が用いられている。また、PDS 方式では、ユーザから設備センタに向けた上り方向の信号の多重化には TDMA 方式が用いられている。

TDMA 方式では、設備センタの OLT から各ユーザの ONU までの伝送距離が異なることによって生ずる伝送時間のずれを補正するために、OLT は各 ONU との間の伝送時間を測定して記憶し、上り信号が衝突しない送出タイミングを算出して各 ONU に通知する。この伝送時間を測定する処理はレンジングといわれ、レンジングによって OLT と ONU 間の最大論理距離が決定される。

アクセス系線路の光ファイバケーブル設計」参照

GE-PON システム
図 GE-PON システム

(2) 光ファイバケーブル伝送方式

(ⅰ) 変調方式の特徴など

  1. 光ファイバ通信に用いられる変調方式には、LD や LED の光強度を変化させてデジタル信号を伝送する強度変調があり、この変調方式では、1 と 0 に対応した光強度の比が小さいと雑音などの影響を受けやすくなる。(
  2. 伝送速度が数 [Gbit/s] 以上の光ファイバ通信では、変調時に波長が揺らぐ現象である波長チャーピングにより伝送距離が大きく制限されることから、外部変調器を使わない直接変調方式が用いられる。(
  3. ポッケルス効果を用いた LiNbO 変調器(LN 変調器)としては、強度変調器、3 位相変調器及び偏波変調器があり、位相変調器の原理は、加えた電圧によって生ずる屈折率の変化を利用して、導波路を伝搬する光の位相を変化させるものである。(
  4. 半導体光変調器は、LN 変調器と比較して、一般に、動作電圧が低く LD との集積が可能であり、小型化が図られている。(

正しくは「直接変調方式を使わない外部変調器」である。

(ⅱ) 光ファイバケーブル伝送における多重化方式

  1. 時分割多重(TDM)方式は、伝送路を時間領域で分割し、各チャネルの光パルス信号が互いに重ならないように配列して多重伝送する方式で、PON 方式の下り信号の多重化などに用いられている。(
  2. 波長分割多重(WDM)方式は、伝送路を波長帯ごとに分割使用する方式で、複数のチャネルの信号を異なる波長の光に重畳し、同一の伝送路を用いて多重伝送する方式で、基幹系伝送システムなどに広く用いられている。(
  3. 空間分割多重(SDM)方式は、例えば、上り方向と下り方向とで、それぞれ別々の光ファイバ心線を用いることにより双方向の伝送を行うなど物理的に異なる伝送路を用いて多重伝送する方式で、他の多重化方式と複合的に用いられることがある。(

(ⅲ) 光デバイスと光ファイバとの結合方法など

  1. 発光素子から出射される光ビーム径は屈折や回折により拡散するため、一般に、発光素子と光ファイバの結合にはレンズが用いられ、光ビーム径の絞込みが行われる。(
  2. 光ファイバ内を伝搬してきた光が、光ファイバの端面から空間に出射される際には、光ファイバの開口数に対応して端面から広がって出射されるため、光ファイバの端面と受光素子との間はできるだけ近づける必要がある。(
  3. 発光素子と光ファイバの結合の際に、レンズや光ファイバが数 [μm] ずれただけで大きな結合損失を生ずることがあるため、高信頼性が要求される光モジュールを構成する部品の固定には、YAG レーザを用いた溶接技術が用いられている。(
  4. レーザ光源は出力光そのものの反射により発振が不安定になることがあるため、光ファイバとの結合部には凹レンズを組み込むことにより、反射光の帰還を阻止している。(

正しくは「光アイソレータ」である。

(ⅳ) WDM 伝送システムに用いられる光ファイバなど

  1. 分散シフト SM 光ファイバは、屈折率分布を制御することで、材料分散の値を変化させ、ゼロ分散波長を 1.3 μm 帯から 1.55 μm 帯にシフトさせた SM 光ファイバである。(
  2. 分散マネジメント光ファイバは、SM 光ファイバと、SM 光ファイバのコアとクラッドの屈折率の大小を逆転させた逆分散ファイバとを組み合わせることにより、局所的な波長分散は非零(ノンゼロ)としながらも、伝送路全体で累計波長分散と分散スロープを補償する光ファイバである。(
  3. ノンゼロ分散シフト SM 光ファイバは、伝送路全体にわたり累積する波長分散を抑え、かつ、非線形光学効果を抑制できることから光ファイバ増幅器の直後など光パワーの高い区間や広帯域の WDM 伝送などに適している。(
  4. MM 光ファイバには、コア内の屈折率分布の違いにより SI 型と GI 型とがあるが、屈折率分布が一様となっている SI 型は、GI 型と比較してモード分散の影響が小さいことから、WDM 伝送に適している。(

正しくは,1.「波長分散特性を調整し(構造分散の値を変化させ)」,2.「」,4.「大きい」「不適である」である。

問4

(1) 光ファイバケーブルの布設工法など

光ファイバケーブルの布設時に用いられるけん引方法には、先端けん引法、中間けん引法及び分散けん引法の 3 種類がある。先端けん引法は、けん引車だけでけん引する方法で、大部分の張力がテンションメンバに加わる。中間けん引法は、先端けん引法ではケーブルの許容張力を超える場合に用いられ、けん引車とけん引機を同時に使用する方法で、ケーブルの中間でケーブルけん引機にてケーブル外被を把持し、けん引することにより、テンションメンバに加わる張力を分散する。

光ファイバケーブルは、一般に、1 [km] を超える長スパンの布設を実現するため、布設張力に耐える強度を持たせている。光ファイバケーブルのテンションメンバは、光ファイバケーブル布設が可能となる張力が加わったときの伸びが 0.2 [%] 以下になるように設計されている。

架空用光ファイバケーブルを架渉する場合は、一般に、ケーブル繰出し点、ケーブルけん引点及び内角が 90 度以上 150 度以下の曲柱には小型屈曲部用金車を用い、けん引作業においては、ケーブルに加わる張力、曲がり状況及び速度を常時監視しながら行う。

光ファイバケーブル布設時に、布設張力などの布設条件、地形などによって一定方向への延線が困難な場合や、傾斜地などによって布設張力がケーブルの許容張力を越える場合には、布設ルートの中間でケーブルを引き出し、張力を解放する。その際、ケーブルにキンクが生ずることを防止するため、8 の字状にケーブルを整理し、曲げ半径にも注意する必要がある。

アクセス系線路の光ファイバケーブル設計」参照

(2) 光ファイバの接続など

(ⅰ) 光ファイバの接続方法など

  1. 光ファイバの接続においては、光ファイバのコアの中心軸に折れ曲がりや軸ずれがなく、端面を密着させることが重要である。接続点での光反射を防ぐためには、溶融一体化、完全密着、間隙を光ファイバと同じ屈折率の整合剤で充塡する方法などがある。(
  2. 光ファイバの接続時に、突き合わされる 2 本の光ファイバのコアの重なりがずれると、ずれた部分から光が外部に漏れることにより損失が生ずる。この損失は、重なり部分のコア全体の断面積に対する割合から求めることができる。(
  3. 光ファイバの接続部には、低損失、低反射及び長期信頼性が求められ、光ファイバの接続特性は、光ファイバの軸合せの精度、端面状況、光ファイバのパラメータの差異などによって決定される。(
  4. 光ファイバの接続においては、光ファイバの端面を鏡面状態にする必要があり、鏡面状態は、ガラスの特質である延性破壊を利用することにより簡単な方法で得ることができる。(

正しくは「脆性破壊」(変形しないで突然に壊れてしまう性質を脆性といい,このような壊れ方を脆性破壊という)である。

(ⅱ) 光コネクタのフェルール端面の研磨方法

  1. フラット研磨は、フェルールの端面を平面に研磨する方法で、光ファイバの先端はフェルール端面より内側になるため光ファイバの接続点において間隙が生じ、フレネル反射により接続損失が発生する。この方法はフェルールが金属の場合などに用いられる。(
  2. PC 研磨は、フェルールの端面を球面に研磨する方法で、コネクタ接続の際、フェルールが押されることにより先端部に弾性変形が生じ、光ファイバ端面どうしが直接接触することから、反射を抑えた安定した接続が可能である。(
  3. 斜め PC 研磨は、フェルールの端面を斜め 45 度に球面研磨する方法で、反射光を光ファイバのコア方向に反射させることで反射光を抑えることが可能である。(

正しくは,「8 度」「クラッド方向」である。

(ⅲ) 光ファイバの融着接続技術など

  1. 光ファイバ心線の接続を行うには、a. 外被の除去、b. 被覆の除去、c. 光ファイバ心線の切断、d. 光ファイバ心線の清掃の順序で準備を行う。(
  2. 光ファイバ心線の一次被覆は被覆除去の際に大部分は除去されるが、残った部分を除去するために心線の清掃を行う。光ファイバ心線の清掃は、シンナーを含ませたウエスなどで行う。(
  3. 光ファイバテープ心線の被覆の除去に使用するホットジャケットストリッパは、上下 2 枚の刃と光ファイバテープ心線に熱を加えて UV 樹脂を除去し、光ファイバテープ心線を切断する機能を有している。(
  4. 光ファイバテープ心線などの融着接続に使用される多心融着接続機で用いられている外径調心法は、固定V溝上に光ファイバ心線を整列させ、放電により加熱・溶融された光ファイバの表面張力による自己調心作用を利用して軸合わせを行う方法である。(

正しくは,1.「下線部が逆」,2.「アルコール」,3.「」である。

(ⅳ) 光コネクタ接続技術など

  1. FC コネクタは、多心テープ心線の一括接続用に開発されたピンかん合方式の光コネクタであり、光ファイバの両側にあるガイドピンによって一対のフェルールが高精度に位置決めされることにより接続される。(
  2. 光ファイバコード付き光コネクタを用いた終端法は、片端に光コネクタが接続されたピグテール形の光ファイバを現場で融着接続又はメカニカルスプライスすることにより終端する方法である。(
  3. メカニカルスプライス法による現場組立光コネクタは、光ファイバ端面研磨済みのコネクタ部品が用いられる。コネクタ部品のメカニカルスプライス部にはあらかじめ接着剤が入っており、内蔵された光ファイバと挿入光ファイバを接着させることにより短時間で組立てができる。(
  4. 光コネクタは着脱が容易であるが、コネクタ端面にほこりが付着すると光損失が増加するため、接続の際には端面研磨装置を用いてコネクタ端面を清掃するなど取扱いには注意が必要である。(

正しくは,1.「FC コネクタは、プラグとアダプタの締結にはネジで行う方式」,3.「屈折率整合剤」,4.「アルコールに浸したワイプ紙、光コネクタクリーナなどで」である。

問5

(1) 通信設備として使用される電柱の構造、特徴など

通信設備として使用される主な電柱には、構造部材の違いにより、コンクリート柱と鋼管柱とがある。コンクリート柱の基本構造は、籠状の鉄筋とコンクリートからなる中空のパイプ状構造である。鉄筋には長手方向の鉄筋とこれに巻き付けるら旋鉄筋があり、長手方向の鉄筋のうち、元口から末口まで通して配置される鉄筋は、緊張筋といわれる。

電柱には、地際部が支点となって曲げモーメントが作用するため、最も強度が要求される箇所は、地際部であるが、電柱を製造する場合、地際部の強度を電柱全体に求めることは不経済となるため、末口は元口より細くしてテーパを付けることにより電柱全体としての強度を確保している。電柱の平均テーパ $\alpha$ は、末口直径を $D$、元口直径を $D'$、長さを $L$ とすれば、$\alpha =$$\displaystyle \frac{D'-D}{L}$ で求められ、一般に、コンクリート柱と鋼管柱の平均テーパの値は$\displaystyle \frac{1}{75}$ で同じである

架空線路構造物の種類・特性及び適用」参照

(2) 架空構造物について

(ⅰ) 架空構造物における風圧荷重など

  1. 架空構造物では、線路方向に対して垂直な方向の風が吹いたときに風圧荷重は最大となり、風に垂直に向いた面の風圧荷重は、空気の密度に比例し、風速の 2 乗に比例する。(
  2. 架空構造物の強度設計に適用する風圧荷重は、立地条件などにより異なり、有線電気通信設備令施行規則において、甲種風圧荷重、乙種風圧荷重など 4 種類に分類されている。(
  3. 乙種風圧荷重は、通信ケーブルの周囲に比重 0.9 の氷雪が厚さ 6 [mm] で付着した場合において、甲種風圧荷重における風圧の 2 分の 1 の風圧を受けるものとして計算した荷重であり、主に積雪地帯に適用する。(
  4. 丙種風圧荷重は、甲種風圧荷重における風圧の 2 分の 1 の風圧を受けるものとして計算した荷重であり、主に市街地に適用する。(

正しくは「3 種類」である。

法規 対策ノート「有線電気通信設備令施行規則」参照

(ⅱ) 架空線路構造物における設計荷重など

  1. 部材を正規に定められた方法で使用していれば破損することがない最大の荷重は、一般に、設計荷重といわれる。(
  2. 部材に外力を加えたとき、その部材が破壊される荷重は、一般に、破壊荷重といわれる。(
  3. 設計荷重は、破壊荷重/安全率で表すことができる。ここで、安全率とは、荷重見積りの不確定性、応力計算の近似性などの不確定要素を考慮し、許容応力と部材の基準強さとの関係を定める係数である。(

(ⅲ) 架空構造物の地上高など

  1. 電柱の柱長は、架渉されるケーブルなどの地上高が、法令などに規定された必要地上高を確保できるように、根入れ深さ(根入れ長)、頭部余長などを考慮して選定される。(
  2. 電柱などの架空構造物間に張られたケーブルなどの弛みの度合いは、一般に、弛度といわれ、弛度は、最低温度時に、架渉ケーブルが法令などに規定された必要地上高を確保できるように設計されなければならない。(
  3. 弛度は、最低温度時に、甲種風圧荷重又は集中荷重が加わったときでも、つり線又は支持線の強度の安全率が確保できるように設計されなければならない。(
  4. 弛度が標準より小さいと、一般に、張力が標準より大きくなり、つり線や支持線の切断、支線の破損などに至るおそれが生ずる。(

正しくは「最高温度時」である。

(ⅳ) 電柱の支線、基礎地盤支持力など

  1. 電柱に作用する荷重は、水平荷重と垂直荷重の 2 種類に分類できるが、支線がある電柱の水平荷重は、一般に、電柱に 9/10、支線に 1/10 を分担させるように設計している。(
  2. 電柱と支線との取り付け角度は、一般に、必要強度を満たすための角度と支線素材使用量の関係から、一般地では35 度、積雪地帯では積雪による沈降力などを考慮して 45 度となっている。(
  3. 同じ長さの鋼管柱とコンクリート柱とを同じ根入れ長で、同じ地盤に建柱した場合、基礎地盤の支持力は、元口径が小さい鋼管柱の方が大きい。(
  4. 電柱が倒壊しないためには、水平荷重による曲げモーメントに対して地盤が十分な抵抗モーメントを有し、電柱の傾斜角が過大にならないことが必要である。(

正しくは,1.「電柱に 1/10、支線に 9/10 を分担」,2.「35 ~ 45 度の範囲で大きくとり」「35 度」,3.「小さい」である。

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