平成25年度 第1回 専門的能力・通信線路

2020年5月30日作成,2020年12月31日更新

問1

(1) メタリックケーブルを用いたアナログ伝送系における雑音及びひずみの種類と特徴

メタリックケーブルを用いたアナログ伝送系における雑音は、一般に、伝送系内部で発生する雑音と外部から侵入する雑音に分けられ、さらに、伝送系内部で発生する雑音は、信号を伝送していない場合でも存在する基本雑音と信号伝送に伴って発生する準漏話雑音とに分けることができる。基本雑音は、通話の有無と無関係であることから、信号レベルの低いところで問題となり、一般に、大きな妨害になるものは増幅器で発生する雑音であり、その主な成分の一つは、周波数に対して一様に分布している雑音である。

一方、伝送系の入力側に加えられた信号波形と出力側に現れる信号波形が異なる現象は、ひずみといわれる。このうち、位相ひずみは、伝送系の位相量が周波数に対して比例関係にないため、すなわち群伝搬速度が周波数により異なるために生ずるひずみであり、伝送品質に影響を及ぼす。

また、非直線ひずみは、伝送系の入力と出力が比例関係にないために生ずるひずみである。伝送路中の増幅器などの非直線ひずみによる高調波及び混変調波の発生は、雑音の原因となる。

メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論」を参照

(2) メタリック伝送線路の電気的諸特性

(ⅰ) 導体系の高周波領域における電気的諸特性

  1. ごく近くに平行に並んでいる 2 本の導体に電流が流れたとき、それぞれの電流の向きが、同一方向であると電流は導体内部で他方の導体から離れている側を流れようとし、反対方向であると他方の導体に近い側を流れようとして 2 本の導体内部の電流密度に偏りが生ずる。この現象は高周波において顕著となり、一般に、近接効果といわれる。(
  2. 漏れコンダクタンスは、心線間の絶縁物を通して流れる電流の割合を示し、漏れコンダクタンスが小さいほど漏えいする電流が小さいことを意味する。平衡対ケーブルでは、一般に、周波数が高くなると漏れコンダクタンスは大きくなる。(
  3. 線路の特性インピーダンスは、一般に、近似式で求められ、30 [kHz] 以上の高周波における特性インピーダンスは、線路の静電容量の平方根に比例し、自己インダクタンスの平方根に反比例する。(
  4. 導体系では、周波数が変化すると抵抗及び内部インダクタンスに変化が生ずる。これは、導体内部において、周波数の変化に伴い電流分布が変化した結果であり、一般に、電気的特性として周波数が高くなると抵抗は増加し、内部インダクタンスは緩やかに減少する。(

下線部が逆である。線路の特性インピーダンスは,$\displaystyle \sqrt{\frac{L}{C}}$ である。

(ⅱ) 漏話現象、漏話減衰量

  1. 二つの回線間の電気的な結合には静電結合と電磁結合があるが、メタリック伝送の音声回線においては、静電結合の漏話に対する影響は小さく、電磁結合が支配的である。(
  2. 漏話を発生させる側の回線は誘導回線、漏話を受ける側の回線は被誘導回線といわれる。また、被誘導回線において、誘導回線の送端側に生ずる漏話は遠端漏話、誘導回線の受端側に生ずる漏話は近端漏話といわれる。(
  3. 漏話減衰量 $L$ [dB] は、誘導回線の送端電力 $P$ [mW] と被誘導回線の漏話電力 $P_L$ [mW] の比であり、次式で表される。(
  4. \[ L = 10 \log_{10}{\frac{P_L}{P}} \]
  5. 静電結合による漏話量は、線路の特性インピーダンスに比例する。したがって、装荷ケーブルは、一般に、無装荷ケーブルと比較して、特性インピーダンスが大きいため、漏話減衰量が小さくなる。(

正しくは,1.「下線部が逆」,2.「下線部が逆」,3.「$\displaystyle L = 10 \log_{10}{\frac{P}{P_L}}$」である。

近端漏話と遠端漏話
図 近端漏話(Near end crosstalk)と遠端漏話(Far end crosstalk)

(3) 光ファイバの構造パラメータ、光ファイバと受・発光デバイスとの結合損失

(ⅰ) 光ファイバの構造パラメータ

  1. 光ファイバの構造を決定するパラメータは、マルチモード光ファイバの場合は、モードフィールド直径、モードフィールド偏心量、外径、開口数及び屈折率分布であり、シングルモード光ファイバの場合は、コア径、外径及びカットオフ波長である。(
  2. モードフィールド偏心量は、モードフィールド中心とクラッド中心との距離をいい、モードフィールドの中心とコアの中心は実質的には同じ場所になるので、モードフィールド偏心量は、一般に、コア中心とクラッド中心との距離として測定される。(
  3. カットオフ波長とは、高次のモードを遮断する波長であり、例えば 1.3 [μm] で使用するシングルモード光ファイバにおいてはカットオフ波長は 1.3 [μm] よりも短くなければならない。カットオフ波長より長い波長領域ではシングルモードとなることが保証されるが、逆に短い波長領域ではマルチモードとなってしまう。(

下線部が逆である。光ファイバの構造を決定するパラメータは次表のように整理される。

光ファイバの構造を決定するパラメータ
種類 パラメータ
SM 光ファイバ モードフィールド径,モードフィールド偏心量,カットオフ波長
MM 光ファイバ コア径,外径,開口数,屈折率分布

(ⅱ) 光ファイバと受・発光デバイスとの結合損失

  1. 光ファイバ内を伝搬してきた光は、光ファイバ端面から空間に放射される際に光ファイバの開口数に対応して広がって放射される。したがって、受光素子を光ファイバと効率よく結合させるため、受光素子を光ファイバ端面に近づける、受光面積の大きな受光素子を使用するなどの方法が採られる。(
  2. LD の反射面と光ファイバの入射端との間で共振状態となり、LD の電流 - 光出力特性にうねりが出たり雑音が発生することを抑えるため、一般に、光ファイバの入射端には無反射処理が施される。(
  3. LD と光ファイバの結合方法には、分布屈折率レンズで集光する方法、光ファイバ端面を球状に加工して集光する方法、非球面レンズで集光する方法などがある。(
  4. 結合損失 $\alpha$ [dB] は、LD の出力光パワーを $P_o$ [mW]、光ファイバへ入射した光パワーを $P_i$ [mW] とすると、次式で表される。(
  5. \[ \alpha = -10\log_{10}{\frac{P_o}{P_i}} \]

結合損失 $\alpha$ [dB] は,次式で表される。

\[ \alpha = 10\log_{10}{\frac{P_o}{P_i}} \]

問2

(1) 光の性質

光の基本的性質には、屈折、回折、干渉、偏光、非線形光学効果などがあり、これらの性質は、幾何光学、波動光学などを用いて説明することができる。

光ファイバ中などにおける光の屈折は、スネルの法則によって説明され、屈折率の大きい媒質中では、光の速度が遅くなることによって起こる現象であり、スネルの法則は、媒質中を進む光の経路は、最短時間で進めるような経路をとるというフェルマーの原理を言い換えているものである。

光が波動であることを可視的に説明したのがヤングの干渉実験であり、これは一段目に配したスリットを通過した光が回折して放射状に広がり、二段目に配した二つのスリットを通過した光が互いに干渉し合うことにより、三段目に配したスクリーン上に干渉縞を映すもので、光が波の性質を持つことを示している。光合分波器や光フィルタには、このような光の干渉を利用したマッハツェンダ干渉型などがある。干渉縞が鮮明に映し出されるためには、干渉し合う光の位相がそろっている必要がある。LD の光のように位相のよくそろった光は、コヒーレントな光であるといわれる。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

(2) 光ファイバ通信における変調方式、光ファイバの特性

(ⅰ) 光の強度変調

  1. IM-DD 方式は、強度変調方式と直接検波方式を組み合わせたものであり、復調側において、光の位相揺らぎに影響されない、光の強度に比例した出力を得ることができる。(
  2. LD の直接変調は、バイアス電流に変調信号を重畳することにより、変調信号の振幅変化を光の強度変化に変換するものである。バイアス電流を増加させると変調速度を速くできるため、一般に、バイアス電流は LD の発振しきい値より大きく設定されている。(
  3. LD の直接変調は、変調速度が速くなると十分な消光比を確保することが難しくなり、また、高速変調では発振周波数が変化するチャーピングによって波長が広がるため、長距離伝送には適さなくなる。このため、一般に、長距離・高速伝送システムにおける変調には、光源と変調回路とを分離した外部変調方式が用いられている。(
  4. 外部変調器の一種である LN 変調器は、結晶に電界を加えると屈折率が電界強度に比例して変化するポッケルス効果を利用したもので、LD から出力された光を LN 結晶を通過させて、光の振幅、位相などを変化させるものである。(

バイアス電流は LD の発振しきい値より大きく設定すると,一般に,消光比が劣化する問題が生ずる。

(ⅱ) 石英系光ファイバにおける非線形光学効果

  1. 石英系光ファイバは、本質的には非線形性が小さい媒質であるが、入射した光を細径のコアに閉じ込めるため単位面積当たりのパワー密度が高くなること、低損失であるため光と媒質との相互作用長が長くなることなどによって、各種の非線形光学効果が起きやすくなる。(
  2. 高強度の短光パルスが光ファイバに入射されると、光の電界により光ファイバの屈折率が変化し、光パルスの位相が急激に変化する結果、パルスの前縁部では周波数が高くなり、後縁部では周波数が低下する。この現象は、自己位相変調といわれる。(
  3. 四光波混合は、位相整合条件を満たさない場合に大きくなり、ゼロ分散波長近傍で生じやすい。四光波混合は光ファイバを用いた波長変換手法の一つとして用いられる一方で、WDM 方式においては伝送品質劣化の要因となる。(

正しくは,B.「パルスの前縁部では周波数が低下し、後縁部では周波数が高くなる」,C.「位相整合条件を満たす場合に限り」である。

(ⅲ) 石英系光ファイバの分散特性

  1. 入射光パルスが光ファイバ中を幾つかの異なったモードで伝搬することによって生ずる分散は、モード分散といわれる。モード分散を小さくするためにコアの屈折率分布を放物線状としたものが GI 型光ファイバであるが、モード分散を完全になくすことはできない。(
  2. 材料分散は光ファイバの材料である石英ガラスの性質に依存するため、大きく変化させることはできないが、構造分散は、比屈折率差や屈折率分布を調節することで変化させることができる。DSF は、1.55 μm 帯での波長分散がゼロとなるように調節した SM 光ファイバである。(
  3. 光ファイバのコア形状のわずかなゆがみによって複屈折が生じ、光ファイバ中を伝搬する二つの偏波モード間に伝搬時間差が生ずる現象は、偏波モード分散といわれる。偏波モード分散は、波長分散と比較して光信号への影響は小さいが、高速になるほど、また、長距離になるほど伝送距離を制限する要因の一つとなる。(
  4. 光ファイバの波長分散は、材料分散と構造分散の和であるが、SM 光ファイバでは構造分散が伝送帯域を制限する主な要因となる。波長分散は、一般に、1.3 [μm] 付近でゼロとなり、光ファイバの伝送損失が最も小さくなる 1.55 μm 帯では約 17 [ps/nm/km] である。(

正しくは「材料分散」である。

(ⅳ) 光ファイバ通信における信号劣化の要因

  1. 伝送路の途中に光増幅器がある場合、信号の入力がない場合でも光増幅器から発生する誘導放出光が増幅器自体によって増幅されて雑音となる。この雑音は ASE 雑音といわれ、SN 比を劣化させる原因となる。(
  2. 伝送路の途中に光コネクタや光部品などがあると、それらの接続点で光が反射することによって光信号が劣化したり、反射光が LD まで戻ってしまうとレーザ発振が不安定になったりする場合がある。(
  3. 光ファイバに、スペクトル幅の狭い強い光を入射すると、入射光より約 11 [GHz] 低い周波数付近に新たな光が発生する現象は誘導ラマン散乱といわれる。この散乱光は入射した光とは逆の方向に向かって発生するため、光増幅器には、一般に、光アイソレータが挿入されている。(
  4. 信号の時間軸方向の揺らぎにおいて、10 [Hz] 以上の速さの揺らぎはジッタ、10 [Hz] 未満の速さの揺らぎはワンダといわれ、一般に、ジッタは伝送路中の光ファイバ長の温度変化による伸縮などによって、ワンダは送受信回路中の電子回路内部の発振周波数の変動などによって発生する。(

正しくは,1.「自然放出光」,3.「13 [THz]」「同じ方向及び逆の方向」,4.「下線部が逆」である。

問3

(1) 多重伝送技術

多重伝送技術は、通信資源の有効利用によりコストダウンを図る、通信管理を容易にするなどの目的で開発された通信技術である。

光ファイバ 1 心で双方向伝送を実現する方式としては TCM 方式、WDM 方式などがあり、上りと下り方向にそれぞれ 1 心ずつ光ファイバを割り当てる方式としては SDM 方式がある。

TCM 方式は、上りと下り方向のそれぞれの情報に対して時間差を設けて伝送することにより、光ファイバ 1 心で双方向伝送を実現している。この方式は、光ファイバが 1 心で済むため伝送路のコストを抑えることができるが、双方向伝送のために時間差を設けていることから伝送できる距離が制限される。

WDM 方式は、異なる複数の波長の光を 1 心の光ファイバで多重伝送することができる。この方式の利点は、各波長ごとの伝搬速度を低く設定できるため光ファイバの非線形性や分散特性による波形劣化が小さいこと、光クロスコネクト装置や光分岐・挿入装置などを用いることにより信号の分岐・挿入を O/E 変換することなく大容量の信号処理が可能であることなどである。

中継系光ファイバケーブルの伝送技術」参照

(2) 光ファイバ増幅器、光ファイバ心線、光合分波器などの種類、構造、特徴

(ⅰ) 光ファイバ増幅器の種類、特徴

  1. 光ファイバ増幅器には、エネルギー準位が反転分布状態にある希土類イオンからの誘導放出現象を利用する希土類添加光ファイバ増幅器と、光ファイバ中の非線形散乱による誘導散乱現象を利用する光ファイバラマン増幅器がある。(
  2. 希土類添加光ファイバ増幅器は、コア部に希土類元素を添加した光ファイバを増幅媒体として用いており、増幅可能な波長帯域は添加する希土類元素に依存し、増幅性能も添加する希土類元素により異なっている。(
  3. 光ファイバラマン増幅器は、希土類添加光ファイバ増幅器と比較して、励起効率が低い、増幅効率が低いなどの欠点があるものの、励起光の波長を変えることにより任意の波長の光を増幅可能である、伝送路である光ファイバを増幅媒体として利用できるなどの利点がある。(
  4. EDFA の増幅可能な波長帯域は、EDF の長さに依存するため、EDF を長尺化することにより、増幅波長帯域を C バンド帯から E バンド帯にシフトすることが可能である。(

正しくは「添加物に依存し」である。

表 希土類添加物光ファイバの添加物
帯域 添加物
1.3 μm 帯用 プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd)
1.4 μm 帯用 ツリウム(Tm)
1.55 μm 帯用 エルビウム(Er)

(ⅱ) 石英系光ファイバ素線及び心線の構造、特徴

  1. 光ファイバ素線は、ケーブル製造時や使用時に新たなクラックが発生しないよう、光ファイバ表面がプラスチック層で保護されている。この保護層は1次被覆といわれ、被覆材料としては、一般に、熱硬化型樹脂が用いられている。(
  2. 光ファイバ心線は、被覆材料とガラスの膨張係数が異なるため、低温環境下では光ファイバの長手方向に応力が加わることにより、屈曲部の曲げ半径が小さくなり、損失が増加する場合がある。(
  3. 光ファイバ心線は、大きな外力を受けることにより 2 次被覆が塑性変形を起こすと、側圧荷重が直接光ファイバに加わり、損失増加や破断に至るおそれがある。このため、緩衝層及び 2 次被覆の寸法や材料定数は、温度、側圧荷重、被覆条件などを考慮して設計されている。(

正しくは「紫外線硬化型樹脂」である。

(ⅲ) 光合分波器の構造、特徴など

  1. 光ファイバ型は、2 本の光ファイバを融着せずに平行に接近して並べることにより、一方の光ファイバのコア内を伝搬する光がクラッドに漏れ出した後、他方の光ファイバのコア内に入る現象を利用している。(
  2. アレイ導波路格子型は、入出力導波路群、二つのスラブ導波路及びアレイ導波路群から構成され、長さの異なる複数の入出力導波路からの回折光の分散を利用したものである。(
  3. 誘電体多層膜型は、屈折率の異なる数種類の誘電体を光の波長の $\displaystyle \frac{1}{4}$ 又は $\displaystyle \frac{1}{2}$ の厚さで交互に積層して、多層膜の界面で生ずる透過光と反射光を利用したものである。(
  4. ファイバグレーティング型は、光ファイバのクラッド内に屈折率の高低の繰り返しを設け、ブラッグ波長と異なる光が選択的に反射されることを利用したものである。(

正しくは,1.「コアを伝搬する光波のモード結合」,2.「干渉」,4.「コア内」である。

(ⅳ) 光ファイバ通信における線形中継方式の特徴

  1. EDFA を用いた中継器は線形中継器又は 1R 中継器といわれ、EDF に励起用 LD などを付加した構造で増幅機能を実現している。(
  2. 線形中継方式では、光増幅器で生ずる戻り光雑音の累積による SN 比の劣化、光ファイバの分散によって生ずる波形ひずみの累積などにより、伝送特性が劣化する。(
  3. 線形中継方式は、中継器内に符号形式や伝送速度を制約する要因となる電子回路類がないため、システムを構築した後でも伝送速度の変更に柔軟に対応することができる。(
  4. 線形中継方式においては、光ファイバによる光信号の減衰と波長分散を補償するため、一般に、光信号の増幅には EDFA が、波長分散の補償には DCF などが用いられる。(

正しくは「自然放出雑音」である。

問4

(1) 石英系光ファイバの融着接続

融着接続法は、両側の光ファイバ端面を加熱溶融しながら直接密着させて一体化するため、コネクタ接続やメカニカル接続と比較して、光学的に最も連続性の良い、長期安定性に優れた接続部が得られる。融着接続法で低損失の接続を行うためには、光ファイバ端面を、光ファイバ軸に直角で平滑、かつ、欠けなどが無い状態に切断する必要があり、応力破断法の原理に基づく光ファイバ切断器が広く用いられている。

融着接続機の加熱方式は、一般に、アーク放電式が用いられている。この加熱方式は、切断した光ファイバ端面どうしを溶融するため、一般に、20 ~ 100 [kHz] の高周波でアーク放電を行い、光ファイバを 2,000 [°C] 以上に加熱溶融するものである。

融着接続機は、接続する V 溝上の光ファイバ端面を 10 ~ 20 [μm] 程度離した状態で軸合わせ及び予加熱を行い、アーク放電が開始すると同時に、一方の光ファイバを移動させて端面を接触させてから、圧着スリーブ融着接続する。

融着接続後には、著しく弱い接続部を除去するため、光ファイバに一定の荷重を一定時間加えてスクリーニング試験を行う。光ファイバの融着接続部は、緩衝層や被覆層が除去され石英ガラスが露出していることから、接続部の補強を行うために、熱収縮スリーブを用いた補強法が広く用いられている。

通信ケーブルの敷設・接続方法」参照

(2) 光ファイバケーブルの試験、接続

(ⅰ) 石英系光ファイバ及び光ファイバコードの強度、特性などの試験方法

  1. 光ファイバの強度は、引張試験、曲げ試験などによって評価される。引張試験及び曲げ試験は、破壊試験であり、この試験を行った光ファイバは実用に供することはできないため、一般に、抜取りで行われる。(
  2. 光ファイバのスクリーニング試験は、強度が一定水準以下の光ファイバを取り除くための試験であり、ダンサローラ法、ダブルキャプスタン法などにより、一般に、全数試験が行われる。(
  3. 光ファイバの疲労特性には、静的及び動的疲労特性があり、静的疲労特性の測定方法は、光ファイバに一定応力を与えた状態で放置し、破断するまでの時間を測定するもので、JIS において、光ファイバに一定のおもりをつり下げる方法、引張試験器を用いて破断するまで一定のひずみ率速度で引き伸ばす方法などが規定されている。(
  4. 光ファイバコードの機械的特性試験は、光ファイバコードに一定の外力を一定時間加えた後に外力を取り除き、光ファイバコードの外観及び光学的な導通状態の確認を行うもので、JIS において、圧壊特性試験、衝撃特性試験などが規定されている。(

下線部は動的疲労特性の測定方法である。

(ⅱ) 光ファイバケーブル接続時などにおける余長処理、収納方法

  1. クロージャなどにおける接続余長収納部に求められる条件は、余長収納による損失増が少ない、許容曲率半径以上の曲げ径を常に確保できる、心線及び接続部を外力から保護する、心線の収納及び取出しが容易かつ安全にできるなどである。(
  2. トレイ収納法は、プラスチック又は金属製のトレイの中に接続部を固定し、一般に、余長心線を曲げ直径 30 [mm] 以上に巻いて収納する。この収納法は、心線を収納したトレイを積み重ねてクロージャなどに収容することから、大型で重くなるため、とう道又はマンホール内の広いスペースが確保できる場所での使用に限られている。(
  3. プラスチックシート収納法は、厚さ数百ミクロンのプラスチックシートを折り曲げて光ファイバを収納する。この収納法は、心線を収納したシートを円筒形状に整列させることにより体積を小さくできるため、多心ケーブル用のクロージャなどに用いられている。(

正しくは「直径 60 [mm] 以上」である。

(ⅲ) 光ファイバケーブルの接続方法など

  1. マンホールなどの地下環境における光ファイバケーブルの接続には、水密性を重視した構造のクロージャが用いられる。水密性を確実に確保するため、すべての地下用クロージャは、スリーブの合わせ目をシール剤で埋める構造となっている。(
  2. 架空用クロージャは、頻繁な光回線の増設、撤去に際して、作業を安全に、かつ、接続損失を低減するために光ファイバ接続点をすべて融着接続としており、接続点の収納や切替作業が簡素化される構造となっている。(
  3. ビルや集合住宅などに屋外から引き込まれた光ファイバケーブルと構内光ファイバケーブルとの接続点に設置される光成端キャビネットは、一般に、屋外光ファイバケーブルの成端機能と光コネクタによる設備分界点の機能を有している。(
  4. 局内装置間を光ファイバケーブルで接続する場合には、SC コネクタが主に用いられるが、装置の高密度化に伴い、より小型の SMA コネクタ、SMC コネクタなどの多心を一括接続できるコネクタも用いられている。(

正しくは,1.「スリーブ間に棒状のゴムを挟み込み密着させる」,2.「メカニカルスプライス接続」,4.「下線部は不適」である。SMA コネクタ,SMC コネクタは,同軸ケーブルを接続する規格である。

(ⅳ) 光コネクタ接続技術など

  1. SC コネクタを用いて光ファイバケーブルの接続が確実に行われたことを確認する方法として、かん合確認マークといわれる白色などで表示された線が SC アダプタに隠れるまで押し込まれたこと、SC アダプタの引抜け防止用のツメのかん合音を確認することなどがある。(
  2. SC コネクタによる接続においては、光ファイバ端面の隙間を無くしフレネル反射を抑えるため、光ファイバを中心に固定したフェルールで光ファイバのコアどうしの位置を合わせ、さらに凸球面研磨されたフェルールの接触面を弾性変形させる、PC 接続を行っている。(
  3. 光コネクタが具備すべき機能には、フェルールを用いて光ファイバを固定する機能、フェルールどうしを高精度に整列させる機能、フェルールの整列状態を機械的に保持する機能などがある。(

問5

(1) 架空構造物における風圧荷重、ケーブル張力

通信用ケーブルを支持するための架空構造物は、電柱、つり線、支線、金物類などで構成されている。架空構造物の設計は、有線電気通信法、電気事業法、道路法など関連する法令や規則に準拠して行う必要がある。例えば、有線電気通信設備令施行規則では、安全な通信設備の構築のために必要な、通信用ケーブルの必要地上高が規定されている。

架空構造物に加わる主な荷重には、風圧荷重、ケーブル張力及び垂直荷重がある。風圧荷重は、線路方向に直角な方向から風が吹いたときに最大となり、このときの空気密度を $\rho$ [kg/m3]、風速を $v$ [m/s]、抗力係数を $c$ とすると、風圧荷重 $P$ [N/m2]は、$\displaystyle \frac{1}{2}\rho\times9.8\times cv^2$ で表される。風圧荷重は、最大風速や積雪状況などを考慮して、甲種、乙種及び丙種の 3 種類に分類されており、これを地域ごとに当てはめることにより、簡単に安全かつ経済的な設計を行うことができる。

ケーブル張力は、ケーブルを架渉したときに線路方向に加わる張力のことで、弛度が小さいとケーブル張力が大きくなる傾向がある。弛度は、最高温度時と最低温度時に必要な規格を満足するように、つり線種別、ケーブル重量、電柱スパン長、施工時の温度、風圧荷重ごとに定められている。

垂直荷重は、電柱に垂直方向に加わる荷重のことで、電柱そのものの重量のほか、盤類、ケーブル類、作業者、工具類などの重量を考慮する必要がある。

架空線路構造物の種類・特性及び適用」参照

(2) 腐食などによる線路設備の劣化

(ⅰ) 地下線路設備における金属腐食の原因など

  1. 種類の異なる土質層にまたがって金属が埋設されると、土壌の通気性の差により同一金属間であってもマクロ電池が形成される。このとき通気性の悪い土質中の部分が陰極となり腐食する。(
  2. イオン化傾向の異なる 2 種類の金属が電気的に接触していると、イオン化傾向の小さい方の金属が陽極となり腐食する。(
  3. 土壌中に生息する硫酸塩還元バクテリア、硫黄バクテリアなどが生成する化学物質により、金属が腐食する場合がある。(
  4. 土壌中に塩素イオンなどが多く含まれ、導電率が高い環境下では、安定した酸化物皮膜が形成されることにより、隙間腐食などの発生が抑えられる。(

正しくは,1.「陽極」,2.「イオン化傾向の大きい方の金属」,4.「隙間腐食などが発生しやすい」である。

(ⅱ) 地下線路設備における金属の腐食防止方法

  1. 排流方式の一つである選択排流方式は、埋設金属体と電気鉄道のレールなどの迷走電流発生源の帰線との間に電流逆流防止装置を取り付けて双方を電気的に接続し、埋設金属体に流入した迷走電流を大地に流出させずレール又は変電所に直接帰還させる方式である。(
  2. 外部電源方式は、直流電源を用いて、プラス側を埋設金属体に、マイナス側を不溶性の接地電極に接続し防食電流を流す方式で、電食と自然腐食のいずれにも有効である。(
  3. 流電陽極方式は、イオン化傾向の大きい金属(流電陽極)を埋設金属体に接続し、異種金属間の電位差により防食電流を得る方式で、流電陽極には亜鉛、アルミニウム、マグネシウムなどが用いられる。(

下線部が逆である。

(ⅲ) 架空構造物の腐食の原因とその対策

  1. 鋼管柱で発生する張り紙防止シートや番号札が貼付された箇所の腐食の防止対策としては、腐食成分を含まない、ポリウレタン系塗料、ニトリルゴム系接着剤などを用いるのが有効である。(
  2. つり線などで使用されるアルミ防食鋼撚り線は、耐食性に優れているが、接続端子函取付け部などの見えない部分で局部的な腐食が進むことがある。(
  3. 海岸地帯の設備は、表面に海塩粒子が付着することで、腐食、絶縁不良などの被害を受けることがある。海塩粒子の影響が及ぶのは、一般に、大気中の海塩粒子量は海岸から離れるに従い急激に減少するため、海岸から数 [km] 程度までである。(
  4. 下部支線の腐食は、臨海低湿地、植込み、側溝周辺など湿った土中で発生しやすく、地中深くなるほど酸素量が減少するため、一般に、腐食の程度は小さくなる傾向がある。(

正しくは「通気性が悪くなるため,一般に,腐食の程度は大きくなる傾向がある」である。

(ⅱ) 腐食以外の線路設備劣化とその対策

  1. 温度変化による伸縮や車両が通行することによる振動でケーブルが移動する現象はクリーピングといわれ、車両通行量が多い傾斜地や路面に凸凹が著しい直線道路の真下に埋設されたケーブルでは特にクリーピングが発生しやすい。(
  2. 寒冷地では、管路内の溜水が凍結することによりケーブルが圧壊され、故障を起こすことがある。ケーブルの圧壊を防止するには、管路内にケーブルと一緒に金属製パイプを布設することによりケーブルに加わる凍結圧を減少させる方法がある。(
  3. リスのようなげっ歯類動物、コウモリガの幼虫などからのケーブル被害の対策には、HS ケーブルを用いるのが効果的であるが、局部的な対策としては、PVC 電線防護カバーによる対策が極めて有効である。(

正しくは「PE パイプ」である。

inserted by FC2 system