平成26年度 第2回 専門的能力・通信線路

2020年5月22日作成,2020年12月31日更新

問1

(1) 一様線路における一次、二次定数の周波数特性など

電気的定数が一様に分布している一様線路において、往復導体の単位長当たりの抵抗とインダクタンスをそれぞれ $R$ と $L$、往復導体間の単位長当たりの漏洩コンダクタンスと静電容量をそれぞれ $G$ と $C$とすると、$R$、$L$、$G$ 及び $C$ は線路の一次定数といわれる。これら一次定数から導かれる減衰定数 $\alpha$、位相定数 $\beta$、伝搬定数 $\gamma$ 及び特性インピーダンス $Z_0$ は、二次定数と総称される。

音声周波程度の低周波の場合、一般に、一次定数間において $LG \lt\lt RC$ の関係が成立するため、角周波数を $\omega$ とすると二次定数の $\alpha$ 及び $\beta$ は、次式で近似できる。

\[ \alpha \approx \sqrt{\frac{\omega CR}{2}}\{ 1 - \frac{1}{2}(\frac{\omega L}{R}- \frac{G}{\omega C})\} \] \[ \beta \approx \sqrt{\frac{\omega CR}{2}}\{ 1 + \frac{1}{2}(\frac{\omega L}{R} - \frac{G}{\omega C})\} \]

一方、30 [kHz] 以上の高周波になると、表皮効果、近接効果などのため、一次定数の $R$ が周波数 $f$ の平方根に比例して増加する。

また、特性インピーダンス $Z_0$ は、低周波では周波数 $f$ の平方根に比例して減少し、高周波になると一定値に漸近する。

メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論」参照

(2) メタリック伝送線路における漏話の軽減方法、伝送量に用いられる単位

(ⅰ) 漏話の軽減方法など

  1. ケーブル内の各対の2本の導線を撚ることにより漏話は軽減でき、隣接する対どうしで撚りピッチを同一にすると、撚りピッチを変えた場合と比較して大きな軽減効果が得られる。(
  2. 信号の伝送方向(設備センタからユーザ方向又はユーザから設備センタ方向)ごとに回線をそれぞれ別々のケーブルに分けて収容する 2 条ケーブル方式は、遠端漏話と比較して漏話妨害の影響が大きい近端漏話を軽減する効果がある。(
  3. 長い平衡対ケーブルにおける漏話減衰量は、高周波になるに従い、一般に、オクターブ当たり遠端漏話では 6 [dB]、近端漏話では 4.5 [dB] の減少傾向を示す。また、遠端漏話減衰量は線路長が長くなるに従い増大するが、近端漏話減衰量は線路長に依存しない。(

正しくは「隣接する対どうしで撚りピッチを変えると、撚りピッチを同一とした場合と比較して大きな軽減効果が得られる」である。

(ⅱ) 伝送量などを表す場合に用いられる単位

  1. 伝送線路の送信端の信号電力を $P_\text{S}$ [W]、受信端の信号電力を $P_\text{R}$ [W]とすれば、伝送線路の減衰量 $L$ [dB] は、次式で求められる。(
  2. \[ L = 20\log_{10}{\frac{P_\text{R}}{P_\text{S}}} \]
  3. 電気通信分野においては、一般に、1 [mW] の電力を基準にした絶対電力レベルを表す単位として [dBm] が用いられる。この単位を用いて 1[mW] を表すと 1 [dBm] となる。(
  4. 伝送システムにおいて、基準点における絶対電力レベル [dBm] と任意の点における絶対電力レベル [dBm] との差は相対電力レベルといわれ、単位として [dBr] が用いられる。(
  5. [dBm0]は、伝送システムのゼロ相対レベル点における、信号の絶対電力レベルを示す単位である。例えば、-15 [dBm0] の信号の場合、相対電力レベルが -10 [dBr] の点における絶対電力レベルは -5 [dBm] である。(

伝送線路の送信端の信号電力を $P_\text{S}$ [W]、受信端の信号電力を $P_\text{R}$ [W]とすれば、伝送線路の減衰量 $L$ [dB] は、次式で求められる。

\[ L = 10\log_{10}{\frac{P_\text{S}}{P_\text{R}}} \]

正しくは,2.「0 [dBm]」,4.「-25 [dBm]」である。

(3) 石英系光ファイバの分散、非線形光学効果

(ⅰ) 石英系光ファイバの分散など

  1. 光ファイバの材料であるガラスの屈折率が光の周波数によりわずかながら異なるため、光ファイバ中を伝搬する光パルスの幅が狭まる現象は分散といわれる。(
  2. 光ファイバ中での分散には、材料分散、構造分散、モード分散及び偏波モード分散の四つがあり、このうち材料分散と構造分散の和は波長分散といわれる。(
  3. MM 光ファイバにおいては、光ファイバ中を伝搬する各モードの伝搬速度が異なるために生ずるモード分散が、符号間干渉を引き起こすため、伝送帯域を制限する主な要因となる。(
  4. SM 光ファイバのゼロ分散波長や分散スロープを制御して製造された光ファイバは、総称して分散制御光ファイバといわれる。(

正しくは「広がる」である。

(ⅱ) 光ファイバ中を伝搬する光の位相速度及び群速度

  1. 真空中の光の速度を $c$、媒質の屈折率を $n$ とすると、媒質中を伝わる光の速度は、$\displaystyle \frac{c}{n}$ となり、この速度は、光の位相が伝わる速さであり位相速度といわれる。一方、周波数が異なる複数の波の集まりである波束が伝わる速度、すなわちパルスの包絡線が伝わる速度は、群速度といわれる。(
  2. SI 型光ファイバでは、高次モードほど群速度が速くなる。これは、入射端で幅の広いパルスを入力しても、異なるモードに分担されて伝搬される結果、伝搬距離とともにパルスの幅が狭くなることを意味する。(
  3. 最も基本的なモードとなる LP01モードは、波長が長くなると、電磁界が広がり屈折率の低いクラッドの影響を受けて位相速度が速くなる。逆に、波長が短くなると、電磁界がコアに集中して位相速度は遅くなり、コアの屈折率で決まる値に収束する。(

正しくは「下線部が逆」である。

問2

(1) 光ファイバの分類について

光ファイバを導波原理によって分類すると、全反射型及びブラッグ反射型に大別できる。全反射型の光ファイバは、コアとクラッドの屈折率差を利用した全反射によって光をコア内に閉じ込め、ブラッグ反射型の光ファイバは、フォトニックバンドギャップを利用して光をコア内に閉じ込めている。

光ファイバの誘電体の材料による分類では、石英系光ファイバ、プラスチック光ファイバなどがある。さらに、石英系光ファイバは、機能によって、光増幅作用を有する EDF、波長分散の特性を制御した DCF などに分類することができる。プラスチック光ファイバは、損失などの面では石英系光ファイバに及ばないが、一般に、耐屈曲性に優れ、大口径の光ファイバを製造しやすいなどの特徴を持つことから、LAN などの短距離通信、宅内配線などに用いられている。

また、光ファイバは、コアの屈折率分布の違いにより、SI 型及び GI 型に分類される。

通信ケーブルの種類・特性及び適用」参照

(2) 光ファイバの構造パラメータ、損失特性、非線形光学特性

(ⅰ) 光ファイバの構造パラメータなど

  1. 構造パラメータとは、コア径、クラッド径、コア/クラッド偏心率など光ファイバの構造にかかわるパラメータをいい、SM 光ファイバでは、コア径に代わって定義されるモードフィールド径が用いられる。(
  2. モードフィールド径は、SM 光ファイバの径方向の光強度がガウス分布で近似できるとき、光強度が最大値に対して $\displaystyle \frac{1}{e^2}$($e$ は自然対数の底)になるところの直径をいう。(
  3. 光ファイバの光学的パラメータの一つである比屈折率差 $\Delta$ は、コアとクラッドの屈折率の違いの程度を表すパラメータであり、コアの最大屈折率を $n_1$、クラッドの屈折率を $n_2$ とすると、次式で近似される。(
  4. \[ \Delta \approx \frac{n_1 - n_2}{n_1} \]

(ⅱ) 石英系光ファイバの損失特性など

  1. 光ファイバの損失は、一般に、光ファイバの軸方向に均等に分布しているため、[dB/km] という単位で表される。これは光が 1 [km] 伝搬したときの光パワーの減衰量をデシベルで表したもので、例えば 0.2 [dB/km] の場合、50 [km] で 10 [dB] の損失があり、光パワーが 10 分の 1 となる。(
  2. 光ファイバにおける吸収損失には、波長 0.1 [μm] 付近にピークがある紫外吸収、波長 10 [μm] 付近にピークがある赤外吸収などがある。光ファイバ通信で使用される波長域においては、紫外吸収はレイリー散乱損失よりも小さいため問題とならないが、赤外吸収は長波長側での主要な損失要因となる。(
  3. 光ファイバにおけるレイリー散乱損失は、主に短波長側で支配的となる損失であり、光ファイバ製造時に高温状態で固化する際にコアとクラッドの境界面にできる凹凸が原因で発生する。(
  4. 光ファイバのマクロベンディング損失は、光ファイバが許容曲率半径より小さい半径で曲げられたときなどの外的な要因により発生し、コアとクラッドの境界面に入射する光の角度が臨界角より小さくなるため、光が外部に放射されることによって生ずる損失である。ただし、入射角及び臨界角は、コアとクラッドの境界面の法線と光のなす角度とする。(

正しくは「密度の揺らぎ」である。

(ⅲ) 自己位相変調及び四光波混合

  1. 光ファイバに高強度の短光パルスを入射すると、光カー効果により屈折率の変化を生じ、光パルスの前縁部分は高周波側へ、後縁部分は低周波側へシフトする。このような現象は、自己位相変調といわれる。(
  2. 光ファイバの波長分散特性において、ゼロ分散波長より短波長側は正常分散領域、長波長側は異常分散領域といわれ、自己位相変調を受けた光パルスの幅は、正常分散領域では狭まり、異常分散領域では広がる。(
  3. 二つ以上の異なった波長の光を同時に光ファイバに入射したとき、入射光とは異なる新たな波長の光が発生する現象は、四光波混合といわれる。新たに発生した光はプローブ光といわれ、WDM 方式では通信光に干渉し、伝送特性を劣化させる要因となる場合がある。(

正しくは,A.「下線部が逆」,B.「下線部が逆」,C.「アイドラー光」である。

光ファイバ中の四光波混合発生とその応用技術開発」(古河電工時報 第105号,平成12年1月)参照

(ⅳ) 誘導ラマン散乱(SRS)及び誘導ブリルアン散乱(SBS)

  1. 非線形散乱は、光の強度があるしきい値を超えると、光ファイバ媒質の振動と入射光との相互作用が原因で発生する散乱であり、音響的振動によって生ずる散乱は SRS、光学的振動によって生ずる散乱は SBS といわれる。(
  2. SRS 及び SBS では、入射光と同じ周波数の光が散乱されるレイリー散乱とは異なり、入射光とは異なる周波数の光が散乱される。散乱光は、入射光の低周波側と高周波側の両側の周波数域で発生する。(
  3. SRS 及び SBS において、入射光より高周波側に発生する散乱光は、ストークス光といわれる。(
  4. ストークス光は、SRS では入射光と逆方向のみに伝搬するのに対し、SBS では入射光と同方向と逆方向の両方向に伝搬する。(

正しくは,1.「下線部が逆」,3.「低周波側」,4.「下線部が逆」である。

問3

(1) 分散制御光ファイバの種類、機能

光ファイバ製造技術の進歩、高性能な希土類添加光ファイバ増幅器の開発、WDM 方式の普及などに伴い、目的に応じた波長分散特性を持つ光ファイバが開発・製造されている。

分散シフト光ファイバは、石英系光ファイバの極低損失領域である 1.55 μm 帯で波長分散がゼロとなるように制御された光ファイバであり、屈折率分布を調整することにより、構造分散の波長依存性を変化させ、ゼロ分散波長を 1.3 μm 帯から 1.55 μm 帯にシフトさせている。

分散フラット光ファイバは、広い波長範囲で低分散を実現した光ファイバであり、屈折率分布構造により、W 型、4 重クラッド型などがあり、WDM 方式などで用いられている。

1.3 μm 帯でゼロ分散の特性を持つ光ファイバを 1.55 μm 帯で使用すると、約 17 [ps/nm/km] の波長分散が生ずる。この波長分散は、正負が反対の分散特性を持つ分散補償光ファイバを接続することにより相殺できるため、既設の光ファイバを 1.55 μm 帯の光ファイバ通信システムで有効利用することができる。

通信ケーブルの種類・特性及び適用」参照

(2) 通信用光ファイバケーブルの特性、構造、接続技術

(ⅰ) 光ファイバケーブルの特性、機能、試験方法など

  1. 光ファイバケーブルは、布設時などに加えられる曲げによって光ファイバの破断寿命を縮める場合があるため、許容曲率半径の範囲内での取扱いが必要である。許容曲率半径の基準は、一般に、布設時はケーブル外径の 4 ~ 5 倍、固定時は 6 ~ 10 倍とされている。(
  2. 光ファイバ心線には、温度特性、機械特性などを満足するため、多層被覆が施されている。2 層構造の光ファイバ心線の場合、外層被覆には、側圧などから光ファイバを守るために外力を吸収する軟らかい材料が、また、内層被覆には、マイクロベンドを防止するために硬い材料が用いられている。(
  3. 光ファイバケーブルは、布設時の最大張力が加わったときの伸び率が、ケーブルの構成材料の中で最も弾性領域の小さい光ファイバの許容伸び率以下となるように、外被、テンションメンバなどで引張強度が確保され、光ファイバケーブルの許容伸び率は、一般に、0.2 [%] 程度とされている。(
  4. 光ファイバケーブルの機械的特性試験の一つであるしごき試験は、直線状に布設された光ファイバケーブルにローラーで 500 [N] の側圧荷重をかけ、その際に生ずる伝送損失の変化を測定するもので、試験後に残留するひずみ量も評価対象となる。(

正しくは,1.「布設中はケーブル外径の 20 倍以上、布設後は 10 倍以上」,2.「下線部が逆」,4.「曲線状」である。

光ファイバケーブルの機械特性試験方法に関する JIS 制定」参照

張力下での曲げ(しごき試験)の目的(JIS C 6851 : 2006)

この試験は,既定の負荷を加えたとき,光ファイバケーブルが布設中にローラ又は曲がり周辺での曲げに耐えられるかどうかを測定することを目的とする。

(ⅱ) 光ファイバケーブル及び光ファイバコードの構造、特徴など

  1. SZ 型光ファイバケーブルは、スロットの撚り回転の方向が 1 回転ごとに反転しているケーブルであり、ケーブル布設後でも、ケーブルの途中からケーブルを切断することなく、光テープ心線又は光ファイバ心線の取り出しを容易に行うことができる。(
  2. 架空ドロップ光ファイバケーブルは、一般住宅や小規模集合住宅へ光ファイバケーブルを引き込む際に用いられるケーブルであり、ケーブル本体に金属性のテンションメンバを配置したメタリックタイプと、落雷時などのサージ電流が宅内に流入しないようにテンションメンバを配置しないノンメタリックタイプがある。(
  3. 光ファイバコードは、一般に、光ファイバ心線の周囲を抗張力繊維で補強し、さらに PVC 被覆を施して強度を高めたもので、1 心タイプ、2 心タイプなどがあり、機器内配線、屋内の機器間接続などに利用されている。(

正しくは「FRP 製のテンションメンバを配置したノンメタリックタイプ」である。

ノンメタリック型の架空ドロップ光ファイバケーブルのテンションメンバには FRP が用いられている。

(ⅲ) 光ファイバの融着接続技術など

  1. 融着接続機の加熱方式として採用されている高周波トリガ方式は、高周波でアーク放電を行う際、放電開始時のみ必要な高電圧をトリガ的に加えることで、少ない消費電力で光ファイバ端面を加熱溶融することができる。(
  2. 融着接続は、光ファイバ端面を約 2,000 [°C] で溶融し、表面張力による自己調心作用を利用して軸合わせを行うため、接続する光ファイバの端面にカケ、リップ、傾斜などがある状態で接続しても、長期にわたり良好な伝送品質を得ることができる。(
  3. 多心融着接続機の光ファイバの調心方法には、一般に、融着接続する光ファイバをV溝上に整列させ、アーク放電により光ファイバ端面を加熱・溶融し、光ファイバの表面張力による自己調心作用を利用して軸合わせを行う、外径調心法が採用されている。(

正しくは「接続する光ファイバの端面にカケ、リップ、傾斜などがない状態で接続すれば」である。

(ⅳ) 光ファイバの接続損失の要因、対策

  1. 光ファイバの接続部は、屈折率が不均一又は不連続な領域と考えることができ、この不連続な領域で信号光の一部が反射して信号光の進行方向とは反対の方向に進むことにより、反射損失、LD の特性劣化、双方向多重伝送における雑音などの問題を引き起こす場合がある。(
  2. 光コネクタでの反射を抑制するための方法として、端面へのマッチングオイルの充填、斜め研磨、すき間をなくすための PC 研磨などがある。(
  3. 光ファイバの接続特性は、コアの軸合わせの精度、端面の加工精度、接続条件、光ファイバパラメータの差異などにより決まる。標準の SM 光ファイバにおいては、一般に、0.8 [μm] 程度のコア軸ずれで、0.1 [dB] 程度の損失が生ずるとされている。(
  4. 光ファイバの融着接続後、接続部に軸ずれや曲りがある場合は、原因として融着接続機の放電パワーの不足が考えられるため、バッテリー残容量のチェック又は電極棒の交換後、再度接続をやり直す必要がある。(

正しくは「光ファイバの被覆除去が不十分であること又は融着接続部のクランプ及び V 溝にゴミが付着していること」である。

問4

(1) 光アクセス網における光ファイバ ID テスタを用いた作業、レーザ製品の安全基準

光ファイバケーブル設備の建設作業や保守作業を行う際、誤接続や誤切断を回避するため、一般に、光ファイバ ID テスタ(以下 ID テスタという。)などを用いて光ファイバ心線の対照が行われる。

ID テスタを用いた心線対照においては、現用回線に影響を与えないようにするため、ID テスタ送信部から対照したい光ファイバに、一般に、通信光より長波長で,かつ,変調された対照光を挿入し、ID テスタ受信部の曲げ部で、対照光の漏れを検出して、該当する光ファイバを特定する。対照光には、通信光より曲げ損失が大きい 1.65 [μm] の光源などが用いられる。

光通信システムなどで使用されるレーザ光は、一般に、人間の目には見えず危険である。レーザ製品は、JIS C 6802 : 2014 において、人間の目及び皮膚に対するレーザ放射の危険性を基準として、8 段階にクラス分けされている。レーザ光による事故を防止する方策としては、使用するレーザ製品のクラスを確認すること、レーザ出射口やそれに接続された光ファイバ端面を裸眼でのぞかないこと、レーザ光防止の眼鏡を着用することなどがある。

なお、レーザ光の危険度は、光パワーだけではなく、波長、パルス幅などでも異なるので注意が必要である。

通信ケーブル監視技術」参照

(2) 光パワーメータ及び光ファイバ増幅器

(ⅰ) 光パワーメータの種類及び特徴について

  1. 光パワーメータは、光電変換型及び熱変換型の 2 種類に大別される。ホトダイオードを光検出器として用いた光電変換型光パワーメータは、熱変換型光パワーメータと比較して、検出感度が高い、ダイナミックレンジが広いなどの特徴を有している。(
  2. 光電変換型光パワーメータは、波長依存性があることから、一般に、測定時の値を補正するため、測定波長を入力する機能が具備されている。(
  3. 熱変換型光パワーメータは、光エネルギーを受光体に吸収させ、その温度上昇、又は温度上昇に伴う体積、圧力、抵抗などの変化量を測定して光パワーに換算するため、光電変換型光パワーメータと比較して、応答時間が短い、外部環境変化の影響を受けにくいなどの特徴を有している。(

正しくは「受けやすい」である。

(ⅱ) 光ファイバ増幅器の種類、特徴など

  1. 希土類添加光ファイバ増幅器は、希土類イオンを添加した光ファイバを増幅媒体としており、光ファイバとの整合性に優れる、30 [dB] 以上の高利得が容易に得られる、偏波依存性がないなどの特徴がある。(
  2. 希土類添加光ファイバ増幅器で増幅可能な波長帯は、光ファイバのコアに添加する希土類元素に依存し、一般に、1.3 μm 帯の増幅にはネオジムやプラセオジムが、1.4 μm 帯の増幅にはツリウムが、また、1.55 μm m帯の増幅にはエルビウムが用いられる。(
  3. ファイバラマン増幅器は、光ファイバの非線形現象である誘導ラマン散乱を利用しており、1.55 μm 帯では、増幅したい信号光の波長より約 300 [nm] 長波長側の強い励起光を入射することにより、任意の波長の信号を増幅することができる。(
  4. ファイバラマン増幅器は、希土類添加光ファイバ増幅器と比較して、増幅効率は劣るが、波長多重励起により広帯域の増幅特性が得られる、励起光の波長を選定することにより任意の波長域において利得が得られる、伝送用光ファイバを増幅媒体として利用できるなどの特徴がある。(

正しくは「約 100 [nm] 短波長側」である。

(ⅲ) 光ファイバ増幅器の利得及び雑音指数について

  1. 光ファイバ増幅器の利得は、出力側の信号光パワーと入力側の信号光パワーの比として求められる。光ファイバ増幅器の出力側には、増幅された信号光のほかに光ファイバ増幅器内で発生し増幅された自然放出光(ASE)が含まれているため、利得の測定時には ASE 分を考慮する必要がある。(
  2. 光ファイバ増幅器の利得の測定方法は、電気的測定法及び光学的測定法に大別される。電気的測定法による光ファイバ増幅器の利得 $G$ は、強度変調された信号光パワーを、スペクトラムアナライザを用いて、光ファイバ増幅器の入力側と出力側で測定した値をそれぞれ $S_\text{in}$ と $S_\text{out}$ とすると、次式で求められる。 \[ G = \sqrt{\frac{S_\text{in}}{S_\text{out}}} \] 電気的測定法では、変調周波数を 500 [kHz] 以下とすることにより、ASE の影響を受けにくい測定が可能である。(
  3. 光ファイバ増幅器の雑音指数(NF)は、入力側の SN 比($S_\text{in}/N_\text{in}$)に対して出力側の SN 比($S_\text{out}/N_\text{out}$)がどれだけ低下したかで表され、次式で求められる。 \[ \text{NF}=10 \log_{10}(\frac{S_\text{in}/N_\text{in}}{S_\text{out}/N_\text{out}}) \] 光ファイバ増幅器における出力側の SN 比は、一般に、光ファイバ増幅器の利得分だけ、入力側の SN 比より改善される。(

正しくは,B.「$G=\sqrt{S_\text{out}}/S_\text{in}$」,C.「」である。

(ⅳ) 光ファイバ増幅器の増幅特性を向上させる方法など

  1. EDF の励起効率を高くするための方法の一つに、EDF の構造を改善する方法がある。センタドープ構造の EDF は、クラッド部にエルビウムを添加した構造を有しており、励起光強度の強い部分とエルビウム添加領域が重ならないようにして励起効率を高くしている。(
  2. WDM 伝送システムに用いられる光ファイバ増幅器には、広帯域で平坦な増幅特性が求められる。平坦な増幅特性を得る方法として、EDF にアルミニウムとゲルマニウムを共添加する方法、光ファイバ増幅器の出力端に長周期ファイバグレーティングを用いた利得等化器を付加する方法などがある。(
  3. EDFA の高出力化を図るには、励起光源自体を高出力化する方法のほか、コアを 2 重構造とした EDF を用いる方法などがある。(
  4. EDFA の基本構成には、前方励起系、後方励起系及び双方向励起系の 3 種類があり、励起光として、一般に、低雑音増幅を目的した前方励起系では 1.48 μm 帯が、また、高出力動作を目的とした後方励起系では励起光から信号光への変換効率が高い 0.98 μm 帯が用いられる。(

正しくは,1.「」,3.「」,4.「」である。

問5

(1) 光ファイバケーブルの構造設計、布設時の張力

光ファイバケーブルに許容される伸びは、光ファイバに許容される破断確率と使用する光ファイバのスクリーニング荷重を基に決定され、光ファイバの弾性限度以下の伸び率で布設できるようにケーブルの構造が設計される。光ファイバケーブルの許容張力は、ケーブルメーカの仕様書で規定されており、一般に、ケーブルの布設長の分布などを想定して500 [m] ~ 1 [km] の自重相当に設定されている。

光ファイバケーブル布設時の牽引張力は、線路形式(管路、とう道、架渉など)、布設形状(直線、曲線、屈曲など)、ケーブル種別などにより異なることから、それぞれの布設区間ごとに計算し、布設するケーブルの許容張力以下となるように設計する必要がある。光ファイバケーブルの牽引張力を $T$ [N] とすると、光ファイバケーブルを水平に布設する場合、布設区間ごとの牽引張力は以下の計算式で求めることができる。

直線区間 $T = T_0 + \mu g L W$
曲線区間 $T = (T_0 + \mu g L W)K$
屈曲部直後 $T=T_0 K$

ここで、$T_0$ [N] は布設対象区間直前の張力、$\mu$ は摩擦係数、$g$ [m/s2]は重力加速度、$W$ [kg/m] は単位長当たりのケーブル質量、$L$ [m] は布設対象区間の長さ、$K$ は張力増加率であり $K=e^{\mu\theta}$($e$ は自然対数の底、$\theta$ [rad] はケーブルの交角)である。

アクセス系線路の光ファイバケーブル設計」参照

(2) 光ファイバケーブルなどの配線法、布設方式、故障とその対策

(ⅰ) アクセス系光ファイバケーブルの配線法

  1. アクセス系における配線法は、需要動向、需要密度、管路設備の有無、保守性、信頼性、経済性などを総合的に勘案して決定され、一般に、放射状に構築された既設の管路設備を使用して配線する場合はスター配線法が、管路設備がメッシュ状に構築されているエリアではループ配線法が適しているとされている。(
  2. ループ無逓減配線法は、一般に、高速、広帯域サービス需要が面的に発生し、かつ、急増している都市部のビジネスエリアなどに適しており、心線の後分岐が可能であることから、心線の融通性が高く、需要への即応と柔軟な対応が可能な配線法とされている。(
  3. スター無逓減配線法は、一般に、通信土木設備の制約などによってループ無逓減配線法の適用が困難なエリアに適しており、設備センタから最遠端のユーザまで心線を逓減することなく配線していることから、ループ無逓減配線法と同様に、心線の融通性が高く、需要への即応と柔軟な対応が可能な配線法とされている。(
  4. スター逓減配線法は、一般に、需要が広範囲にわたって散在し、かつ、需要変動が小さいエリアに適しており、突発的な需要の発生に対しては心線の融通を図ることが難しく即応性に欠ける配線法であるが、ケーブル故障時の救済が容易である、分散収容が可能であるなど、ループ無逓減配線法と比較して、信頼性の高い配線法とされている。(

スター逓減配線法よりも,ループ無逓減配線法は,信頼性が高い。

(ⅱ) 光ファイバケーブルの布設方式

  1. 地下線路方式では、とう道や管路を使用するほかに、道路管理者が設置する情報 BOX、C. C. BOX などを使用する場合がある。(
  2. 地下線路方式は、中継系区間、幹線系区間などで採用され、架空線路方式と比較して、光ファイバケーブルが風雨、氷雪などの気象条件の変動、地上建造物、樹木などからの損傷を受けにくいなど信頼性が高い。(
  3. 管路を有効に使用するための方式の一つに、フリーアクセス方式がある。この方式は、既設配線管路やフリーアクセス管路から、新たな引き込み管路などを分岐して光ファイバケーブルなどを布設する方式であり、管路増設コストを抑制することができる。(

(ⅲ) アクセス系光ファイバケーブルなどの故障とその対策

  1. 光ファイバケーブル布設後に光損失増加が発生した場合、その発生原因の一つに、光ファイバテープ心線の波打ち現象が考えられる。波打ち現象は、光ファイバケーブルの牽引端でケーブル外被と光ファイバテープ心線を一緒に固定しないこと、人力で牽引することなどで回避することができる。(
  2. 光ファイバの断線は、接続用クロージャ内、端末装置付近の心線接続部などで発生することが多い。このような断線を防止するため、融着接続の場合は、接続部を補強・固定するため熱収縮スリーブを加熱した後に光ファイバにねじれがないか確認すること、FA コネクタ接続の場合は、接続する光ファイバを、コネクタ内蔵のフェルールと突き合わせるため、適正な長さで外被を除去し切断することなどが重要である。(
  3. メカニカルスプライスにおける主な故障原因として、光ファイバ端面どうしの隙間、端面の異常及びメカニカルスプライス素子内への異物混入がある。これらの対策としては、光ファイバは所定の長さで切断すること、整備・点検された光ファイバカッタを使用すること、メカニカルスプライス素子の個別梱包袋は使用直前まで開封しないことなどがある。(
  4. 光コネクタ端面に汚れ、異物などが付着すると、伝送特性が劣化するだけでなく、光コネクタ端面で目に見えない強い光が発生することにより、光コネクタ端面を溶融し損傷するファイバヒューズ現象が発生するおそれもある。ファイバヒューズ現象の防止策としては、光コネクタクリーナを用いて光コネクタ端面を清掃する方法などがある。(

正しくは,1.「一緒に固定すること」,2.「光ファイバにねじれがないことを確認した後に接続部を補強・固定するため熱収縮チューブを加熱すること」,4.「」である。

(ⅳ) 通信線路設備の劣化とその対策

  1. ケーブルのクリーピングは、ケーブルの温度伸縮、車両通行に起因する振動などにより発生する。クリーピングの対策として、ケーブル移動防止金物で機械的にケーブルの移動を止める、ケーブルの移動量に見合ったスラックを設けるなどの方法があり、後者は、主に橋梁添架ケーブルで用いられ、スラックは、一般に、橋梁添架管路の中間部に設けられる。(
  2. SS 形 CCP ケーブルの心線コア移動は、温度変化、風によるケーブルの振動などが原因で発生し、接続端子函内で心線コアがシースから突き出したり、引き込まれたりするなどの現象である。心線コア移動の対策としては、規格に合った張力や捻回数で架渉する、心線コアをテープなどで固定するなどの方法がある。(
  3. 寒冷地においては、管路内の溜水の凍結圧によるケーブルの変形、圧壊などを防止するため、中空の PE パイプをケーブルとともに管路内に挿入し、溜水の凍結時に PE パイプが潰れて凍結圧を吸収することで、ケーブルを保護する方法がある。(

正しくは「橋詰マンホール」である。

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