平成29年度 第2回 専門的能力・通信線路

2019年6月22日作成,2020年12月29日更新

問1

(1) メタリック伝送線路における減衰量,無ひずみ伝送など

減衰量は,二次定数の一つである減衰定数 $\alpha$ の大小によって決定される。往復導体の単位長当たりの抵抗とインダクタンスをそれぞれ $R$ と $L$,往復導体間の単位長当たりの漏れコンダクタンスと静電容量をそれぞれ $G$ と $C$ とすると,$R$,$L$,$G$ 及び $C$ は線路の一次定数といわれ,減衰定数 $\alpha$ は,これら一次定数から導かれる。

減衰定数 $\alpha$ の近似式は,一般に,高周波(30 [kHz] 程度以上)の場合,次のように表される。

\[ \alpha \fallingdotseq \frac{R}{2}\sqrt{\frac{C}{L}} + \frac{G}{2}\sqrt{\frac{L}{C}} \]

この近似式において,減衰定数 $\alpha$ は,$R = G = 0$ の場合にゼロになるが,これは全く減衰しないということで実現するのは不可能であり,$RC = GL$ の関係にある場合に最小の値となる。しかし,実際の伝送路においては,一次定数の関係は,一般に,$\sqrt{\frac{L}{C}} \ll \sqrt{\frac{R}{G}}$ であるため,$RC = GL$ の減衰量最小条件を満足することは困難であることから,インダクタンス $L$ を大きくすることで減衰量を小さくする方法がとられる。

また,減衰量最小条件は,無ひずみ伝送の成立する条件でもあり,伝送に用いる周波数帯域全体にわたり,特性インピーダンスが一定であること,減衰定数 $\alpha$ が一定であること及び位相定数が周波数に比例することが必要である。

メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論」参照

(2) 光ファイバの構造パラメータ,光ファイバの伝搬特性,光ファイバの分散など

(ⅰ) 光ファイバの構造パラメータ

  1. 光ファイバの構造を決定するパラメータは,SM 光ファイバでは,コア径,モードフィールド偏心量,外径及びカットオフ波長であり,MM 光ファイバでは,モードフィールド径,外径,開口数及び屈折率分布である。(
  2. カットオフ波長とは,高次のモードを遮断する波長をいい,例えば,1.3 [μm] で使用する SM 光ファイバにおいては,カットオフ波長は 1.3 [μm] よりも短くなければならない。カットオフ波長より長い波長領域では高次のモードが導波するマルチモード伝搬となり,短い波長領域では基本モードのみが導波するシングルモード伝搬となる。(
  3. モードフィールド偏心量とは,モードフィールド中心とクラッド中心との距離をいい,モードフィールド中心とコア中心は実質的には同じ場所になるので,モードフィールド偏心量は,一般に,コア中心とクラッド中心との距離として測定される。(

正しくは,A.「下線部が逆」,B.「長く」「短い」「長い」である。

光ファイバの構造を決定するパラメータは,SM 光ファイバでは,モードフィールド径,モードフィールド偏心量,外径及びカットオフ波長であり,MM 光ファイバでは,コア径,外径,開口数及び屈折率分布である。

(ⅱ) 光ファイバの伝搬特性

  1. SM 光ファイバにおけるモードフィールド径は,光強度分布がガウス型で近似できるとき,光強度(光パワー)が最大値の $\displaystyle \frac{1}{\sqrt{e}}$($e$ は自然対数の底)になるところの直径をいう。(
  2. 基本モードにおける光強度分布は,コアの中心で最大値となり,中心から離れるに従って小さくなり,ポアソン分布で近似することができる。(
  3. SI 型光ファイバにおいては,コアとクラッドの境界面を臨界角よりも小さな角度で反射しながら進む光波が存在するが,この光波が光ファイバの伝搬モードになるためには,コアの中心軸に直交する方向の位相変化量が,光波の 1 往復に伴って $\displaystyle \frac{1}{2 \pi}$ の整数倍になる必要がある。(
  4. 光ファイバで伝搬可能なモード数を構造パラメータから求めるには,規格化周波数 $V$ が用いられ,空気中の光の波長を $\lambda$,コアの半径を $a$,コアの屈折率を $n_1$,クラッドの屈折率を $n_2$ とすると,$V$ は次式で表すことができる。(
  5. $\displaystyle V = \frac{2\pi a}{\lambda} \times \sqrt{n_1^2 - n_2^2}$

SM 光ファイバにおけるモードフィールド径は,光強度分布がガウス型で近似できるとき,光強度(光パワー)が最大値の $\displaystyle \frac{1}{e^2}$($e$ は自然対数の底)になるところの直径をいう。

基本モードにおける光強度分布は,コアの中心で最大値となり,中心から離れるに従って小さくなり,ガウス分布で近似することができる。

SI 型光ファイバにおいては,コアとクラッドの境界面を臨界角よりも小さな角度で反射しながら進む光波が存在するが,この光波が光ファイバの伝搬モードになるためには,コアの中心軸に直交する方向の位相変化量が,光波の 1 往復に伴って $2 \pi$ の整数倍になる必要がある。

(ⅲ) 石英系光ファイバにおける分散など

  1. 光ファイバの材料であるガラスの屈折率が光の周波数により僅かながら異なるため,光ファイバ中を伝搬する光パルスの幅が狭まる現象は,分散といわれる。(
  2. MM 光ファイバは,SM 光ファイバと比較して,コア径が大きく光源との結合効率も高いが,モード分散により伝送帯域が制限され,一般に,距離の短い構内配線などで使用される。(
  3. SM 光ファイバのゼロ分散波長や分散スロープを制御して製作された光ファイバは,総称して分散制御光ファイバといわれる。(

光ファイバの材料であるガラスの屈折率が光の周波数により僅かながら異なるため,光ファイバ中を伝搬する光パルスの幅が広がる現象は,分散といわれる。

(ⅳ) 石英系光ファイバの分散特性

  1. 材料分散は光ファイバの材料である石英ガラスの性質に依存するため,大きく変化させることはできないが,構造分散は,比屈折率差や屈折率分布を調節することで変化させることができる。(
  2. 光ファイバのコア形状の僅かなゆがみによって複屈折が生じ,光ファイバ中を伝搬する二つの偏波モード間に伝搬時間差が生ずる現象は,偏波モード分散といわれる。偏波モード分散は,波長分散と比較して光信号への影響は小さいが,伝送速度が高速になるほど伝送距離を制限する要因の一つとなる。(
  3. 光ファイバの波長分散は,材料分散と構造分散の和であるが,SM 光ファイバでは構造分散が伝送帯域を制限する主な要因となる。SM 光ファイバの波長分散は,一般に,1.3 [μm] 付近でゼロとなっている。(
  4. 入射光パルスが光ファイバ中を幾つかの異なったモードで伝搬することによって生ずる分散は,モード分散といわれる。モード分散を小さくするためにコアの屈折率分布を放射線状としたものが GI 型光ファイバであるが,モード分散を完全に無くすことはできない。(

光ファイバの波長分散は,材料分散と構造分散の和であるが,SM 光ファイバでは材料分散が伝送帯域を制限する主な要因となる。SM 光ファイバの波長分散は,一般に,1.3 [μm] 付近でゼロとなっている。

問2

(1) 光ファイバにおける非線形光学現象

光ファイバに高強度の光を入射すると,屈折率が光の電界強度の 2 乗に比例して変化する現象が生ずる。この現象は光カー効果といわれ,入射された光自身が誘起した屈折率変化によって,光の位相が急激に変化する自己位相変調を生じ,この結果,短光パルスのスペクトルに広がりが生ずる。

特に,波長多重伝送など大容量の光伝送において障害となる非線形光学効果として四光波混合といわれる現象がある。これは,異なる三つの波長の光が入射されたときに新たな波長の光が生ずる現象で,波長多重伝送では,特定の信号光に干渉して伝送品質の劣化を引き起こす。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

(2) 光ファイバ伝送における光ファイバへの光の入射,光の性質,MM 光ファイバの周波数特性,信号劣化要因など

(ⅰ) 光ファイバへの光の入射

  1. 光ファイバへの光の入射点では,空気,コア及びクラッドの三つの屈折率の異なる媒質が接しており,空気とコア及びコアとクラッドのそれぞれの境界面での光の屈折及び反射においてファラデーの法則が成り立つ。(
  2. 屈折率の異なる二つの媒質 Ⅰ 及び Ⅱ(ただし,屈折率は,媒質 Ⅰ が媒質 Ⅱ より大きいものとする。)が接した状態で,媒質 Ⅰ から媒質 Ⅱ へ光が入射する場合,光が媒質 Ⅱ に入り込むことなく全反射が生ずるときの入射角は,ブリュースター角といわれる。(
  3. 光ファイバへの光の入射条件を示す開口数(NA)は,光源と光ファイバの結合効率に影響を与える基本的なパラメータであり,一般に,コア径が同じであれば NA の大きな光ファイバほど,また,NA が同じであればコア径の大きな光ファイバほど,結合効率が高い。(
  4. NA は,光ファイバの材料分散を変化させることにより制御可能であり,一般に,NA が大きい光ファイバほど受光可能な入射角は大きくなる。レンズを用いて効率良く光源からの光を光ファイバに入射させるには,光ファイバの NA がレンズの NA を超えないようにしなければならない。(

光ファイバへの光の入射点では,空気,コア及びクラッドの三つの屈折率の異なる媒質が接しており,空気とコア及びコアとクラッドのそれぞれの境界面での光の屈折及び反射においてスネルの法則が成り立つ。

屈折率の異なる二つの媒質 Ⅰ 及び Ⅱ(ただし,屈折率は,媒質 Ⅰ が媒質 Ⅱ より大きいものとする。)が接した状態で,媒質 Ⅰ から媒質 Ⅱ へ光が入射する場合,光が媒質 Ⅱ に入り込むことなく全反射が生ずるときの入射角は,臨界角といわれる。

NA(開口数)は,光ファイバの材料分散とは関係ない。

(ⅱ) 光の性質

  1. 電磁波は,電界と磁界が直交して進行し,それぞれの振動方向は進行方向に垂直な横波である。光は,放送や携帯電話に用いられる電波の波長と比較して,非常に長い波長の電磁波である。(
  2. 回折現象のうち,光源と観測点のいずれか,又は光源と観測点の両方が開口に近く,光の波面の曲率が無視できない回折は,フラウンホーファー回折といわれる。(
  3. 光の波長に近い大きさの微粒子を含む透明な媒質に白色光を入射させると,入射側に近いところでは青い光が散乱し,残った赤い光が伝搬する。この現象はレイリー散乱といわれ,散乱による損失の大きさは波長の 2 乗に比例する。(
  4. 光の吸収とは,光の一部が光の伝搬媒体によって吸収され,熱に変換される現象をいい,光ファイバでは石英ガラスが持つ紫外吸収と赤外吸収のほか,添加剤として含まれる金属イオンや水素イオンによる不純物吸収がある。(

電磁波は,電界と磁界が直交して進行し,それぞれの振動方向は進行方向に垂直な横波である。光は,放送や携帯電話に用いられる電波の波長と比較して,非常に短い波長の電磁波である。

回折現象のうち,光源と観測点のいずれか,又は光源と観測点の両方が開口に近く,光の波面の曲率が無視できない回折は,フレネル回折といわれる。

光の波長に近い大きさの微粒子を含む透明な媒質に白色光を入射させると,入射側に近いところでは青い光が散乱し,残った赤い光が伝搬する。この現象はレイリー散乱といわれ,散乱による損失の大きさは波長の 4 乗に比例する。

(ⅲ) MM 光ファイバの周波数特性及び伝送帯域

  1. 伝送帯域は,ベースバンド周波数特性において,光信号を電気信号に変換した後の振幅が,変調周波数ゼロのときと比較して 6 [dB] 減衰するまでの周波数の範囲として求めることができる。(
  2. ベースバンド周波数特性は,光ファイバがどこまで高い周波数の変調光信号を伝搬できるかを示すものであり,入射光信号と出射光信号の位相の差で表され,一般に,変調周波数が高くなるほど,また,伝送距離が長くなるほど,周波数チャーピングの影響により光信号波形は劣化する。(
  3. GI 型光ファイバの伝送帯域はモード分散と波長分散によって制限され,光源に LD を使用する場合には波長分散が,また,LED を使用する場合にはモード分散が伝送帯域を制限する主な要因である。(
  4. 伝送帯域特性は光ファイバのモードフィールド径に依存することから,GI 型光ファイバの伝送帯域特性は,一般に,その使用波長で伝送帯域が最大となるようにモードフィールド径が設計される。(

正しくは,2.「振幅比」,3.「」,4.「屈折率分布形状(プロファイル)」である。

モードフィールド径は,SM 型ファイバのパラメータである。

(ⅳ) 光ファイバ通信における信号劣化要因など

  1. 光伝送路の途中に光コネクタなどの光部品があると,反射によって干渉現象が生ずる。反射光が光源である LD まで戻り干渉現象によって発振光が不安定になることを防ぐため,ホトリフレクタが用いられる。(
  2. 光信号が伝送路を伝わるうちに,自然条件の影響を受け光ファイバが温度変化によって伸縮すると揺らぎを生じ,ビット誤り率を増大させる要因の一つとなる。この揺らぎの周波数が 10 [Hz] 未満のものはジッタといわれる。(
  3. 線形中継システムでは,信号光と ASE 光との間のビート雑音は中継器数に比例して増大し,また,ASE 光と ASE 光との間のビート雑音は中継器数の 2 乗に比例して増大する。(

光伝送路の途中に光コネクタなどの光部品があると,反射によって共振現象が生ずる。反射光が光源である LD まで戻り干渉現象によって発振光が不安定になることを防ぐため,アイソレータが用いられる。

光信号が伝送路を伝わるうちに,自然条件の影響を受け光ファイバが温度変化によって伸縮すると揺らぎを生じ,ビット誤り率を増大させる要因の一つとなる。この揺らぎの周波数が 10 [Hz] 未満のものはワンダといわれる。

問3

(1) 分散制御光ファイバの種類,機能など

光ファイバ製造技術の進歩,高性能な希土類添加光ファイバ増幅器の開発,WDM 方式の普及などに伴い,目的に応じた波長分散特性を持つ光ファイバが開発・製造されている。

分散シフト光ファイバは,石英系光ファイバの極低損失領域である 1.55 μm 帯で波長分散がゼロとなるように制御された光ファイバであり,屈折率分布を調整することにより,構造分散の波長依存性を変化させ,ゼロ分散波長を 1.3 μm 帯から 1.55 μm 帯にシフトさせている。

分散フラット光ファイバは,広い波長範囲で低分散を実現した光ファイバであり,屈折率分布構造により,W 型,4 重クラッド型などがあり,WDM 方式などで用いられている。

1.3 μm 帯でゼロ分散の特性を持つ光ファイバを 1.55 μm 帯で使用すると,約 17 [ps/nm/km] の波長分散が生ずる。この波長分散は,伝送用光ファイバの分散特性とは正負が反対の分散特性を持つ分散補償光ファイバを接続することにより相殺できるため,既設の光ファイバを 1.55 μm 帯の光ファイバ通信システムで有効利用することができる。

通信ケーブルの種類・特性及び適用」参照

(2) 光ファイバケーブルの構造,特徴,融着接続技術,接続部における損失など

(ⅰ) 光ファイバケーブルの構造など

  1. 光ファイバケーブルの抗張力体の材料には,鋼線,FRP などが用いられており,鋼線は FRP と比較してヤング率が大きい。(
  2. 光ファイバケーブルは,外力や水などに対する伝送特性の安定,ケーブルの布設や接続の作業の行いやすさ,設備管理のしやすさ,浸水防止などの保守の行いやすさなどの機能を考慮した構造にする必要がある。(
  3. 光ファイバケーブルの構造において,ユニット型は,テープ心線をあらかじめ成型した溝型のスロット内に収容することで高密度の実装が可能となる構造となっている。(
  4. WB ケーブルでは,ケーブル内部に吸水剤を含んだ WB テープが入れられており,ケーブル外被の損傷などにより生じた浸水が,ケーブル内部に広がることを防止する構造となっている。(

光ファイバケーブルの構造において,スロット型は,テープ心線をあらかじめ成型した溝型のスロット内に収容することで高密度の実装が可能となる構造となっている。

(ⅱ) 光ファイバ心線,光ファイバケーブル又は光ファイバコードの構造,特徴など

  1. 光ファイバ心線には,温度特性や機械特性を確保する目的で,多層被覆が施されており,内層にはマイクロベンドを防止するために硬い被覆が,また,外層には側圧などから光ファイバを保護するために柔らかい被覆が用いられている。(
  2. 自己支持形光ファイバケーブルは,光ケーブル部と吊り線が一体となっていることから,光ケーブル部は架渉後も常時伸びひずみを受け続けるため,光ファイバの破断確率が高くなる。このため,吊り線は,架渉張力,温度変化,風圧,着雪などによる光ファイバケーブルの伸びひずみを考慮したものが用いられる。(
  3. タイト型光ファイバケーブルは,光ファイバ心線を抗張力体の周りに集合し,その上に側圧などの外力から光ファイバを保護するための緩衝層などを施した構造である。抗張力体は,布設後の温度変化による光ケーブルの伸縮を抑えて,損失増加防止の役割を果たしている。(
  4. 光ファイバコードは,一般に,光ファイバ心線の周囲に抗張力体としてポリアミド系繊維などを密着して配置し,さらに抗張力体上にビニルなどを被覆してシースとした構造であり,光伝送機器内配線,同一フロア内の機器間の接続などに使用される。(

光ファイバ心線には,温度特性や機械特性を確保する目的で,多層被覆が施されており,内層にはマイクロベンドを防止するために柔らかい被覆が,また,外層には側圧などから光ファイバを保護するために硬い被覆が用いられている。

光ファイバ心線
図 光ファイバ心線

(ⅲ) 光ファイバの融着接続技術

  1. 融着接続機は,一般に,高周波でアーク放電を行い,放電開始時のみ高電圧をトリガ的に加える高周波トリガ方式により光ファイバを加熱溶融し接続している。(
  2. 融着接続機は,一般に,光ファイバの融着接続部の強度が光ファイバ心線の強度と比較して低下していないか,一定の張力をかけて強度チェックを行う機能を有している。(
  3. 光ファイバの融着接続部は,緩衝層や被覆層が除去されて石英ガラスがむき出しになって接続されているため,一般に,紫外線硬化樹脂を用いて補強している。(

光ファイバの融着接続部は,緩衝層や被覆層が除去されて石英ガラスがむき出しになって接続されているため,一般に,熱収縮スリーブを用いて補強している。

(ⅳ) 光ファイバの接続部における損失,不良などの原因

  1. 接続部は屈折率が不均一又は不連続な領域と捉えることができ,伝搬する光の一部が不連続な領域で反射して反対方向に進むことにより生ずる反射光が,反射損失,ホトダイオードの特性劣化,雑音などの原因となる。(
  2. 接続損失の要因には,軸合わせの精度,端面の研磨状況などの接続技術に起因するものと,接続する 2 本の光ファイバパラメータの相違によるものがある。接続技術に起因するものには光ファイバコアの軸ずれ,軸の傾斜,間隙などがあり,これらのうち間隙による損失への影響が最も大きいため,軸ずれを補正するよりも間隙を最小限にすることを優先する必要がある。(
  3. 光ファイバの融着接続における軸ずれの発生要因としては,光ファイバの被覆除去が不十分であること又は融着接続部のクランプ及び V 溝にゴミが付着していることがある。再度融着接続を行う場合は,クランプ及び V 溝の清掃並びに光ファイバカッターの切断刃の清掃などを行う必要がある。(
  4. 光コネクタにおける損失には,端面突合せ部に生じた微小な間隙に起因し,屈折率の異なる媒質の境界面に生ずるレイリー散乱による損失がある。(

接続部は屈折率が不均一又は不連続な領域と捉えることができ,伝搬する光の一部が不連続な領域で反射して反対方向に進むことにより生ずる反射光が,反射損失,レーザダイオードの特性劣化,雑音などの原因となる。

接続損失の要因には,軸合わせの精度,端面の研磨状況などの接続技術に起因するものと,接続する 2 本の光ファイバパラメータの相違によるものがある。接続技術に起因するものには光ファイバコアの軸ずれ,軸の傾斜,間隙などがあり,これらのうち軸ずれによる損失への影響が最も大きいため,軸ずれを最小限にすることを優先する必要がある。

光コネクタにおける損失には,端面突合せ部に生じた微小な間隙に起因し,屈折率の異なる媒質の境界面に生ずるフレネル反射による損失がある。

問4

(1) 光コネクタ接続技術及び接続時の損失要因など

SM 光ファイバどうしを接続する場合,低損失で接続するために光ファイバの軸直角断面内における光パワー分布のモードフィールドを整合させることが重要であるため,SM 光ファイバの接続に用いられる光コネクタは,直径 10 [μm] のコアどうしを再現性よく突き合わせる高い寸法精度が求められる。そのため,光ファイバどうしを直接突き合わせることができるバッドジョイントといわれる方式が用いられる。バッドジョイント方式は,一般に,フェルールどうしを弾性スリーブを用いて整列し,突合せ接続する機構が採用されている。

単心光ファイバ用コネクタでは,弾性スリーブとして,一般に,割りスリーブが用いられ,光ファイバを中心に接着固定したフェルールどうしを弾性スリーブで整列し,突き当てることにより接続する。多心光ファイバ用コネクタでは,フェルールは,一般に,ガイドピン用の穴とともに一体形成され,ガイドピンによって整列する機構が用いられている。

光コネクタ接続は,接続する双方の光ファイバ端面間に空隙が存在すると,屈折率の不連続性が接続損失を発生させる要因となるため,屈折率整合剤や PC 接続が用いられている。

通信ケーブルの敷設・接続方法」参照

(2) 光ファイバケーブルの伝送帯域の測定,波長分散の測定など

(ⅰ) MM 光ファイバの伝送帯域の測定方法,特徴など

  1. 周波数領域での測定法は,正弦波状に強度変調された光を被測定 MM 光ファイバに入射し,被測定 MM 光ファイバから出射する光の変調周波数に対する減衰量から伝送帯域を測定する方法である。(
  2. 周波数領域での測定法の一つである周波数掃引法は,測定精度,測定の再現性などの点で優れていることから,伝送帯域測定方法の主流となっている。(
  3. 時間領域での測定法は,短パルスレーザ光を被測定 MM 光ファイバに入射し,被測定光ファイバの入出射端における光パルスをモード変換し,光ファイバの構造パラメータから伝送帯域を測定する方法である。(
  4. 時間領域での測定法の一つであるパルス法は,一般に,周波数掃引法と比較して時間のダイナミックレンジが狭く,また,短尺光ファイバケーブルに対しては SN 比が低下するため測定精度が悪い。(

時間領域での測定法は,短パルスレーザ光を被測定 MM 光ファイバに入射し,被測定光ファイバの入出射端における光パルスをフーリエ変換し,光ファイバの構造パラメータから伝送帯域を測定する方法である。

(ⅱ) SM 光ファイバの波長分散の測定方法,特徴など

  1. SM 光ファイバにおける波長分散の測定においては,波長分散の値を直接測定することは困難であるため,個別の測定によって得られる材料分散値と構造分散値の平均値から波長分散の値が求められる。(
  2. パルス法の一つであるツインパルス法は,変調度の異なる二つの光パルスを被測定光ファイバに同時に入射し,測定される光パワーレベル差を定義式に当てはめて,波長分散を求める方法である。(
  3. 位相シフト法は,正弦波変調された二つの波長の光が,光ファイバ中を伝搬したときに生ずる非線形光学効果と変調度の関係から波長分散を求める方法であり,変調周波数は測定する光ファイバの長さと分散量によらず一定に保つ必要がある。(
  4. OTDR 法は,入射された光パルスが遠端にて反射され,戻ってくるまでの時間差を利用することにより波長分散を測定する方法であり,位相シフト法と異なり,片端測定が可能である。(

材料分散値と構造分散値を個別の測定によって得ることは困難。

パルス法の一つであるツインパルス法は,波長の異なる二つの光パルスを被測定光ファイバに同時に入射し,測定される到着時間差を定義式に当てはめて,波長分散を求める方法である。

位相シフト法は,強度変調された二つの波長の光が,光ファイバ中を伝搬したときに生ずる非線形光学効果と変調度の関係から波長分散を求める方法であり,変調周波数は測定する光ファイバの長さと分散量によらず一定に保つ必要がある。

(3) 電柱の耐力,コンクリート柱の劣化など

(ⅰ) 電柱の耐力,根入れ長,地盤支持力など

  1. コンクリート柱に用いられるプレストレスコンクリート(PC)は,あらかじめ引張応力を与えておき,外力による圧縮応力を打ち消すことでひび割れの発生を防いでいる。(
  2. 電柱が倒壊しないためには,水平荷重による曲げモーメントに対して地盤が十分な抵抗モーメントを有し,傾斜角が過大にならないことが必要であることから,電柱の根入れ長は,一般に,通常地盤においては,電柱の長さの 1/7 としている。(
  3. JIS において,PC 柱(1 種)の曲げ強度は,ひび割れ試験荷重を加えたとき幅 0.5 [mm] を超えるひび割れが残留してはならないと規定されている。(
  4. 電柱の折損は,一般に,地盤が堅固で,水平荷重による曲げモーメントよりも電柱の許容曲げ応力が小さい場合に発生する。また,電柱の傾斜又は転倒は,一般に,地盤が軟弱で,電柱の支点反力としての曲げモーメントを地盤が受けきれない場合に発生する。(

コンクリート柱に用いられるプレストレスコンクリート(PC)は,あらかじめ圧縮応力を与えておき,外力による引張応力を打ち消すことでひび割れの発生を防いでいる。

電柱が倒壊しないためには,水平荷重による曲げモーメントに対して地盤が十分な抵抗モーメントを有し,傾斜角が過大にならないことが必要であることから,電柱の根入れ長は,一般に,通常地盤においては,電柱の長さの 1/6 としている。

JIS において,PC 柱(1 種)の曲げ強度は,ひび割れ試験荷重を加えたとき幅 0.05 [mm] を超えるひび割れが残留してはならないと規定されている。

(ⅱ) コンクリート柱の劣化,非破壊検査法など

  1. コンクリート柱の凍害は,コンクリート中の含水率が限界値以上に高まった状態で,水分が凍結と融解とを繰り返すことにより,コンクリートの表層部から劣化する現象で,一般に,初期にはちりめん状や亀甲状のひび割れが発生し,より進行すると崩壊に至る場合がある。(
  2. コンクリート柱に縦ひび割れが発生する原因の一つに,必要な支線を省略するなどして過大な不平衡荷重を与えた場合がある。また,横ひび割れは,主に,コンクリート柱内の長手方向に配された鉄筋が腐食した場合に発生する。(
  3. 海岸近くのコンクリート柱では,海塩粒子が付着しコンクリート柱の表面から内部に浸透して鉄筋を腐食させることがある。腐食した鉄筋は膨張するため,コンクリートにひびが入り,塩分の浸透が容易になり更に鉄筋の腐食が進行する。(
  4. コンクリート柱の劣化を判断するための非破壊検査の方法として,打音法,超音波法,電磁波法などがある。このうち,超音波法では,測定物に対して超音波を入射し,内部からの反射波を測定することによりひび割れ,異常箇所の有無などを検出する。(

コンクリート柱に横ひび割れが発生する原因の一つに,必要な支線を省略するなどして過大な不平衡荷重を与えた場合がある。また,縦ひび割れは,主に,コンクリート柱内の長手方向に配された鉄筋が腐食した場合に発生する。

問5

(1) 光ファイバケーブルのピース長算出など

光ファイバケーブルによる線路設備の設計は,需要動向や設備現況などを十分に精査して行わなければならない。また伝送品質を考慮して,適用するケーブル種類,最適なルート,中継区間数及びケーブルのピース割りなどを決定する必要がある。

光ファイバケーブルのピース割りの設計は,ケーブル布設作業,接続作業及び伝送品質に関わる重要な設計項目であり,ケーブル布設区間の直線部,屈曲部,曲線部,傾斜部などの各区間ごとの張力予測計算を行い,接続点となるマンホールなどの位置,ルート上の作業性,安全性などを考慮して実施する。

張力予測計算の一例として,地下管路区間の傾斜や曲がりのない直線部分の張力 $T$ [N] は,ケーブルの繰出し点における張力をゼロ,直線部の長さを $L$ [m],単位長さ当たりのケーブル質量を $W$ [kg/m],摩擦係数を $\mu$,重力加速度を $g$ [m/s2] とすると,$T$ = $g \mu L W$ [N] で求められる。

また,ケーブルピース長は,線路亘長マンホール内などでのケーブル必要長を加えた線路の実際の長さ,接続必要長,成端必要長,マージンなどの布設必要長を考慮して算出する。

光ファイバケーブルのピース割り案を決めた後,伝送路に許容される損失値に収まるかどうか損失値の計算を実施して,接続点数が適切かどうかの確認を行い,ピース割りを最終的に決定する。

アクセス系線路の光ファイバケーブル設計」参照

(2) 管路内又は架空光ファイバケーブルの布設設計など

(ⅰ) 管路内への光ファイバケーブルの布設設計など

  1. 凍結するおそれのある地域の引上げ分線管路,橋梁添架管路及びその他凍結による影響が予想される区間は,管路内の溜水の凍結から光ケーブルを保護するために,ハーフダクトが使用される。(
  2. 光ファイバケーブルに過大な側圧が加わると,光ファイバ心線に残留ひずみが生ずることがあるため,屈曲区間などでは,ケーブルの許容曲げ半径及び許容側圧を考慮して設計する必要がある。(
  3. 同一管路内へ複数の光ファイバケーブルを収容して管路の有効利用を図る多条布設技術には,インナーパイプといわれる管をあらかじめ布設しておき,追加する光ファイバケーブルをインナーパイプ内へ布設する方法がある。インナーパイプを用いた多条布設技術を用いると,一般に,呼び径 75 mm 管へ光ファイバケーブルを 3 条まで布設できる。(

凍結するおそれのある地域の引上げ分線管路,橋梁添架管路及びその他凍結による影響が予想される区間は,管路内の溜水の凍結から光ケーブルを保護するために,PE パイプが使用される。

(ⅱ) 架空光ファイバケーブルの布設設計など

  1. 様々な場所に布設される架空線路設備の設計を効率的に行うために,設備の強度設計に用いる風圧荷重は,立地条件により甲種,乙種及び丙種の 3 種類に分類されている。(
  2. 丙種風圧荷重は,市街地以外の地域に適用される。ただし,海岸地域などの強風地域では甲種風圧荷重が適用され,氷雪の多い地域では乙種風圧荷重が適用される場合がある。(
  3. 架空地線における弛度は,弛度が最も大きくなる最高温度時に必要な地上高を確保でき,最低温度時に甲種風圧荷重又は集中荷重が加わったとしても吊り線強度の安全率が 2.0 より小さくならないように吊り線種別,ケーブル重量,電柱スパン,施工時の温度及び適用風圧荷重の別に定められている。(
  4. 複数のケーブルが同一の電柱に架設され,電柱にケーブルを固定する架設ポイントが不足したり美観を損ねたりする場合がある。一束化架設後方は,これらの問題に対応するため複数のケーブルを一つに束ねる工法であり,巻付け方式やスパイラルハンガー方式などがある。(

丙種風圧荷重は市街地に適用する。

有線電気通信設備令施行規則 第六条

2 令第六条第二項に規定する電柱の安全係数は、市街地以外の地域であつて、氷雪の多い地域以外の地域においては、甲種風圧荷重、氷雪の多い地域においては、甲種風圧荷重又は乙種風圧荷重のうちいずれか大であるもの、市街地においては、丙種風圧荷重が加わるものとして計算する。

(ⅲ) 雷害及び誘導妨害の対策など

  1. 雷サージには,大きく分けて誘導雷サージと直撃雷サージがある。誘導雷サージは,落雷電流で発生した電磁波に起因する静電誘導現象により,通信線や電力線に誘導される電圧や電流である。(
  2. 雷害対策には,通信線と電源線へ避雷素子を設置し,雷サージが通信装置へ侵入しないように避雷素子間の接地線を連結して雷サージのバイパスルートを作成する方法がある。(
  3. 誘導妨害の対策が必要な場合,抗張力体が FRP で PE シース構造としたノンメタリックの光ファイバケーブルを用いる方法が有効である。(
  4. 光ファイバケーブルの抗張力体などに金属材料を使用した光ファイバケーブルの誘導雷サージ対策には,接続点において抗張力体をクロージャの金具へ連結し,テンションメンバ把持金具を電気的に連結したうえで,接地を行う方法がある。(

雷サージには,大きく分けて誘導雷サージと直撃雷サージがある。誘導雷サージは,落雷電流で発生した電磁波に起因する電磁誘導現象により,通信線や電力線に誘導される電圧や電流である。

(ⅳ) 曲線ルートとなっている地下管路区間モデル

図に示すような曲線ルートとなっている地下管路区間モデルにおいて,以下に示す条件で X 点から Y 点へ光ファイバケーブルを布設する場合,Y 点での張力は,1,690 [N] である。

(条件)
  1. 曲線部直前(X 点)の張力 : 1,000 [N]
  2. 摩擦係数 $\mu$ : 0.5
  3. 張力増加率 : 1.3
  4. ケーブル質量 $W$ : 0.3 [kg/m]
  5. 曲線区間の長さ $L$ : 200 [m]
  6. 交角 $\theta$ : 30 度
  7. 重力加速度 $g$ : 10 [m/s2]
  8. 光ファイバケーブルの布設ルートは平面とし,高低差はないものとする。
曲線ルートとなっている地下管路区間モデル
図 曲線ルートとなっている地下管路区間モデル

曲線部直前の張力を $T_1$ とすると,Y 点での張力 $T_2$ は次式で求められる。ただし,$K$ は張力増加率とする。

\[ T_2 = (T_1 + 10 \mu WL) \times K = (1,000 + 10 \times 0.5 \times 0.3 \times 200) \times 1.3 = 1,690 \]
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