平成27年度 第2回 電気通信システム
問1
電極板の面積が $S$ [m²],電極板の間隔が $d$ [m] の平行板コンデンサの電極間に,誘電率 $\epsilon$ [F/m] の絶縁物を満たし直流電圧 $V$ [V] を加えたとき,電極板間に働く吸引力は,$\frac{\epsilon SV^2}{2d^2}$ である。
電極板の面積が $S$ [m²],電極板の間隔が $d$ [m],電極間に誘電率 $\epsilon$ [F/m] の絶縁物を満たした平行板コンデンサの静電容量 $C$ [F] は,下式で与えられる。
\[ C = \frac{\epsilon S}{d} \]直流電圧 $V$ [V] を加えたとき,このコンデンサに蓄えられるエネルギー $W$ は,下式で与えられる。
\[ W = \frac{CV^2}{2} =\frac{\epsilon SV^2}{2d} \]電極板に働く吸引力 $P$は,下式となる。
\[ P = \frac{W}{d} = \frac{\epsilon SV^2}{2d^2} \]問2
ある負荷に交流電圧 100 [V] を加えると 4 [A] の電流が流れ,無効電力は 112 [var] であった。この負荷の力率は,0.96 である。
有効電力を $P$ [W],無効電力を $Q$ [W],皮相電力を $S$ [VA] とする。
\[ P = \sqrt{S^2-Q^2}=\sqrt{(100 \times 4)^2 - 112^2}=\sqrt{160,000-12,544}=384 \text{ [W]} \]力率 $\cos \theta$ は,次式で与えられる。
\[ \cos\theta = \frac{P}{S}=\frac{384 \text{ [W]}}{400 \text{ [VA]}}=0.96 \]問3
図に示す論理回路の入出力とも正論理で使用するとき,この論理回路を表す論理式は,$F = \overline{A \cdot B}$ である。

入力する電圧を,$+V$ = H または 0 [V] = L として正論理で使用すると,入力 $A$,$B$ と出力 $F$ の関係(真理値表)は,下表で表される。
入力 A | 入力 B | $D_1$,$D_2$ とトランジスタのベース電圧 | トランジスタの状態 | 出力 |
---|---|---|---|---|
L(0) | L(0) | $D_1$,$D_2$ ともオンのため,ベース電圧は L | オフ | H(1) |
L(0) | H(1) | $D_1$ がオンのため,ベース電圧は L | オフ | H(1) |
H(1) | L(0) | $D_2$ がオンのため,ベース電圧は L | オフ | H(1) |
H(1) | H(1) | $D_1$,$D_2$ ともオフのため,ベース電圧は H | オン | L(0) |
入力 $A$,$B$ が 1 のときだけ,出力は 0 になるので,この回路は NAND 回路を表しており,論理式で表すと,次式となる。
\[ F = \overline{A \cdot B} \]問4
図に示す論理回路の入力を a,b 及び c,出力を f としたとき,出力 f と同じ出力 f となる論理回路は,②である。


図に示す論理回路の出力 $f$ の論理式は,ド・モルガンの定理($\overline{A+B}=\overline{A}\cdot\overline{B}$,$\overline{A\cdot B}=\overline{A}+\overline{B}$)及び復元の定理($\overline{\overline{A}}=A$)により変換すると,次式で表される。
\[ f = \overline{\overline{a+b}+\overline{b+c}}=\overline{\overline{(a+b)}}\cdot\overline{\overline{(b+c)}}=(a+b)\cdot(b+c) \]これは,②の論理回路の出力に等しい。
問5
原信号をデジタル化する際の標本値間の相関が大きい音声やファクシミリなどの信号をデジタル伝送する場合は,情報伝送を効率的に行うための手段の 1 つとして,情報の冗長性を取り除くことにより,伝送するデータのビット数を減らすことができる予測符号化が用いられる。
信号をデジタル化する際には,原信号を忠実に伝送すると広帯域になってしまうため,効率的な情報伝送,すなわち少ないビット数で伝送することが必要となる。この技術の 1 つとして,情報の冗長性を取り除く帯域圧縮が有効であり,幅広く採用されている。
音声などの信号においては時間的圧縮,ファクシミリなどの画信号においては空間圧縮を行う。いずれの場合にも,直前に送信した信号と今回送信する信号の変化に着目して,その差分を送信することにより冗長性を圧縮することが基本となり,このような圧縮技術を予測符号化という。
問6
マイクロ波出力などの高周波電力を測定する際に,バレッタやサーミスタを用いて,これらの素子が被測定電力を吸収することにより生ずる抵抗値の変化分を電力値に換算する方法がある。
電力の測定には,通過型と終端型がある。高周波無線電力の測定は終端型を示している。
終端型の測定には大きく分けて,ダイオードで検波して直流電圧計を駆動する方式と,熱電対を利用して発熱を電力量に換算する方式,及びサーミスタなどを利用して抵抗値の変化を検出する方式がある。熱電対やサーミスタ方式は実効電力を直接測定できるため広く採用されているが,サーミスタ方式は抵抗の変化分を検知するための電子回路用電源が必要となる。
問7
図に示すように,異なる特性インピーダンス $Z_01$,$Z_02$ の線路を接続して信号を伝送したとき,その接続点における電圧反射係数を $m$ とすると,電流反射係数は,$-m$ で表される。

電流反射係数は,$-m$ で与えられ,電圧反射係数と符号が逆になる。
問8
搬送波を信号波で変調するキャリア変調には 3 つの方法があり,このうち位相角を変化させる方法と周波数を変化させる方法は,総称して角度変調といわれる。
搬送波を信号波で変調するには,振幅変調(AM : Amplitude Modulation),位相変調(PM : Phase Modulation),周波数変調(FM : Frequency Modulation)の 3 方式がある。
このうち位相角を変化させる方法(位相変調)と周波数を変化させる方法(周波数変調)は,総称して角度変調といわれる。
問9
伝送する情報量を一定とし,1 符号(シンボル)当たりの多値レベル数を大きくすると変調速度は低減できるが,耐雑音特性は低下する。
伝送する情報量を一定とし,1 符号(シンボル)当たりの多値レベル数を大きくすると変調速度は低減できるが,耐雑音特性は低下する。
問10
パケット交換方式は,情報量に応じ一定長のブロックに分割して組み立てたパケットの単位で情報転送を行う蓄積交換方式である。
パケット交換方式は,情報量に応じ一定長のブロックに分割して組み立てたパケット(Packet : 荷札を付けた小包)の単位で転送を行い,パケットはパケット交換機において一度蓄積され,パケット網内を相手端末まで転送される。このような交換方式を蓄積交換方式という。
問11
ある回線群において,時刻 $t_1$ ~ $t_2$ の $T$ 分間の呼量と呼数を調査したところ,運んだ呼量は $a_c$ アーランで,運んだ呼数が $C$ 呼であった。この回線群の運んだ呼の平均回線保留時間は,$\frac{a_c \times T \times 60}{C}$ である。
運んだ呼量 $a_c$ [アーラン]は,時間 $T$ [分],呼数 $C$ [呼],平均保留時間 $h$ [秒] とすると,下式で与えられる。
\[ a_c = \frac{C \times h}{60 T} \]よって,平均保留時間 $h$ は,下式となる。
\[ h = \frac{a_c \times 60T}{C} \]問12
異なる電気通信事業者のネットワーク相互を接続するための接続点は,一般に,POI といわれる。
異なる電気通信事業者のネットワーク相互をつなぐ接続点には,中継交換機インターフェース,加入者線交換機インターフェース,伝送装置インターフェース,共通線信号網インターフェースなど回線相互の接続点が規定されており,事業者間の責任の分界点を示す。この接続点を一般に,POI(Point Of Interface)と呼ぶ。
問13
無線 LAN の伝送方式には,小出力電力で,耐干渉性や秘匿性を確保するため,衛星通信でも利用されているスペクトル拡散方式を用いたものがある。
無線 LAN は,IEEE 802.00 で標準化されている規格が用いられている。このうち IEEE 802.11b は 2.4 GHz 帯を使用し,物理レイヤでは直接拡散方式(スペクトル拡散方式の 1 方式で,他には周波数拡散方式がある)を用いている。
直接拡散方式(DS 方式)は,QAM 等で 1 次変調した信号を,拡散コード(PN 符号)を使って 2 次変調を行う。
受信側では逆拡散を行い受信信号を取り出すが,もし受信信号にノイズが混入しても,逆拡散時にノイズは全体的に拡散されてしまうため,受信信号への影響が小さくなり,耐干渉性や秘匿性が確保される。
問14
国際電話サービスを利用する場合,相手着信国の国番号から始まる電気通信番号の前にダイヤルする電気通信番号は,一般に,国際プレフィックスといわれ,日本では 010 が用いられている。
国内通話と国際通話を識別するための識別番号は,国際プレフィックスと呼ばれ,日本では 010 が用いられている。
問15
No. 7 共通線信号方式では,ISDN における呼設定,呼解放などの基本的な接続処理のための機能を提供するレベル 4 のプロトコルとしては,ISUP が用いられる。
No. 7 共通線信号方式では,レベル 1 ~ 4 の階層構造が規定されている。設問の選択肢はプロトコルスタック等の名称である。
レベル 4 は,ユーザ信号の転送部であり,ISDN の呼制御メッセージは ISUP(ISDN User Part)という。
問16
IP 層における通信のセキュリティを確保するためのプロトコルである IPsec の主な機能として,認証機能,データ暗号化機能及び鍵交換機能が挙げられる。
IPsec(Security Architecture for Internet Protocol)は,暗号技術を用いることで,IP パケット単位で改ざん検知や秘匿機能を提供するプロトコルである。これによって,暗号化をサポートしていないトランスポート層やアプリケーションを用いても,通信路の途中で,通信内容を覗き見られたり,改ざんされることを防止できる。
問17
無線通信における電界強度は,実用単位として [V/m] 又は [μV/m] で表されるが,これは 1 メートル当たり何ボルトの,又は,何マイクロボルトの空間電位の差があるかを示すものである。
電界強度とは,ある地点での電波が届いている電波の強さのことである。
電界強度は,送信電力の平方根に比例し,受信点までの離隔距離に反比例し,[V/m] の単位で表される。
問18
光ファイバを用いて光信号を伝送する場合,伝送帯域を制限する主な要因となるモード分散は,マルチモード光ファイバ特有の現象である。
マルチモード光ファイバにおいて,入射光は複数のモードで光ファイバを伝わる。そのため各モードで到達時間に差を生じ,出力側でパルス幅が広がる。この現象をモード分散という。
問19
対称三相交流を Y 結線したとき,相電圧と線間電圧との間には,$\pi / 6$ [rad] の位相差がある。
Y 結線の巻数の 1 相当たりの電圧が各相とも同じ電圧のとき,下図の通り,線間電圧と相電圧との間には,$\pi / 6$ [rad] の位相差がある

問20
光ファイバの特性及び構造を決定する基本要素は構造パラメータといわれる。シングルモード光ファイバの構造パラメータの 1 つであるモードフィールド径は,光学的手法ではコアの識別が困難であることから,便宜上,光強度分布からコアとクラッドの境界部分を読み取り求められる値である。
光ファイバのパラメータには,光学系パラメータと構造パラメータがある。
光学系パラメータ
- 比屈折率差
- 受光角
- 開口数
- 屈折率分布係数
構造パラメータ
- コア径
- 外径
- コア非円率
- 外径非円率
- 偏心率
- モードフィールド径
- カットオフ波長