平成28年度 第2回 電気通信システム

2019年5月27日作成

問1

静電容量がそれぞれ $C_1$ [F] 及び $C_2$ [F] である 2 つのコンデンサが,それぞれ $V_1$ [V] 及び $V_2$ [V] の電圧で充電されている場合に,2 つのコンデンサの極性を合わせて並列に接続したときのコンデンサの両極間の電位差は,$\frac{C_1 V_1 + C_2 V_2}{C_1 + C_2}$ [V] になる。

静電容量がそれぞれ $C_1$ [F] 及び $C_2$ [F] である 2 つのコンデンサが,それぞれ $V_1$ [V] 及び $V_2$ [V] の電圧で充電されている場合に,蓄えられる電荷をそれぞれ $Q_1$ [C] 及び $Q_2$ [C] とする。

\[ Q_1 = C_1 V_1 \] \[ Q_2 = C_2 V_2 \]

2 つのコンデンサの極性を合わせて並列に接続すると,蓄えられる電荷は $Q_1 + Q_2$ [C],静電容量は $C_1 + C_2$ [F] となるので,コンデンサの両極間の電位差 $V$ [V] は,次式で求められる。

\[ V = \frac{Q_1 + Q_2}{C_1 + C_2} = \frac{C_1 V_1 + C_2 V_2}{C_1 + C_2} \]

問2

図に示す回路において,各抵抗の値が全て同一の 5 [Ω] であるとき,端子 A - B 間の合成抵抗は,5 [Ω] である。

合成抵抗
図 合成抵抗

回路を次のように変形する。

合成抵抗
図 合成抵抗

この回路は,平衡のとれたブリッジ回路であるから,中心の 5 [Ω] を取り除いても端子 A - B 間の合成抵抗は変わらない。つまり,端子 A - B 間の合成抵抗は,5 + 5 = 10 [Ω] の並列回路の抵抗となる。よって,端子 A - B 間の合成抵抗は 5 [Ω] である。

問3

図に示す回路の入力側に交流電圧 $V_i$ を加えたとき,出力側に現れる電圧 $V_o$ の波形は,である。

出力側に現れる電圧波形
図 出力側に現れる電圧波形
入力電圧波形と回路
図 入力電圧波形と回路

図の回路はリミッタ回路を示している。

ダイオード D1 のアノード側には常に $-E$ の電圧が加わり,ダイオード D2 のカソード側には常に $+E$ の電圧が加わっている。

したがって,入力交流電圧 $V_i$ が 0 から $\pm E$ の間は,ダイオード D1 の $-E$ より高く,ダイオード D2 の $+E$ より低いため,ダイオード D1,D2 はオフとなり,出力 $V_o$ には入力交流電圧 $V_i$ が出力される。$V_i$ がダイオード D1 の $-E$ より低い間は D1 はオンとなり $-E$ が出力され,ダイオード D2 の $+E$ より高い間は D2 がオンとなり $+E$ が出力される。

問4

図に示す論理回路において,A 及び B を入力とすると,出力 C の論理式は,$C=$ $\overline{A} +\overline{B}$ で示される。

論理回路
図 論理回路

設問の出力 C の論理式は下式で表され,同一の法則($A + A = A$,$A \cdot A = A$)及びド・モルガンの法則を利用して簡略化する。

\[ C = (\overline{A \cdot A \cdot B}) \cdot (\overline{A \cdot B \cdot B}) = (\overline{A \cdot B}) \cdot (\overline{A \cdot B}) = (\overline{A \cdot B}) = \overline{A} + \overline{B} \]

問5

無線 LAN システムのネットワーク構成において,基本となる 1 つの基地局と,その配下の複数の端末で構成されるネットワーク形態は,一般に,インフラストラクチャモードといわれる。

無線 LAN システムのネットワーク構成には,インフラストラクチャモードとアドホックモードがある。

インフラストラクチャモード

ネットワークを制御するアクセスポイント(中継器)を介して各端末を接続する方式

インフラストラクチャモード
図 インフラストラクチャモード

アドホックモード

各端末が中継機器を介さずに相互に直接電波を送受信して通信する方式

アドホックモード
図 アドホックモード

問6

内部抵抗が 0.99 [Ω] で最大目盛が 10 [mA] の電流計がある。これを測定可能電流が 100 [mA] の電流計とするためには,0.11 [Ω] の分流器を用いればよい。

電流計に加わる電圧は,10 [mA] × 0.99 [Ω] = 9.9 [mV] である。この電流計で最大目盛 100 [mA] の電流計とするため,100 [mA] - 10 [mA] = 90 [mA] を分流器で分流できればよい。よって,分流器の抵抗 $R$ [Ω] は下式で求められる。

R = 9.9 [mV] / 90 [mA] = 0.11 [Ω]

問7

伝送路の雑音に対する伝送品質を表す尺度の 1 つとして,SN 比が用いられる。受信入力端における SN 比の設計値が 18 [dB] 以上必要とされるモデムにおいて,伝送路の受信端での信号レベルが -7 [dBm] であった場合,この伝送路に許容される雑音レベルは,-25 [dBm] である。

SN 比 [dB] は信号レベル $S$ [dBm] - 雑音レベル $N$ [dBm] で表される。

伝送路に許容される雑音レベルを $N$ [dBm] とし,下式より求める。

18 [dB] = -7 [dBm] - $N$ [dBm]

よって,$N$ = -25 [dBm] である。

問8

アナログ伝送において,伝送信号の多重化により伝送帯域が広くなると,低周波域と高周波域との伝送損失の差が大きくなることから,伝送帯域内での SN 比を一定に近づけるため,低周波域の信号送出レベルを高調波域より下げ,その分高周波域の信号送出レベルを上げて伝送する方法は,エンファシス伝送といわれる。

アナログ伝送におけるエンファシス技術は,高調波の信号ほど信号が減衰するため,信号の高調波成分を予め強調させることで,エラーを発生させずに長距離を伝送することができる技術である。

問9

光通信に用いられる半導体レーザ(LD)の出力光を変調する方式としては,LD の駆動電流に信号電流を重畳することにより,LD の励起量を変化させる直接変調方式がある。

電気信号を光信号に変調する方式には,大きく分けて直接変調方式外部変調方式がある。

直接変調方式は,半導体レーザ(LD)などを用いて変調信号の変化をそのまま光源の強度変化にする方式で強度変調ともいわれる。

外部変調方式は,半導体レーザの出力光に対して外部から電気光学効果などを利用して変調を加える方式である。

問10

電話用デジタル交換機の通話路の正常性を確認するための自動試験において,通話路に試験パターン信号を常時流すことによって通話路の導通確認を行う方法を用いるものは,一般に,パイロット試験といわれる。

電話デジタル交換機における通話路の自動確認試験には,パリティ試験パイロット試験照合試験などがある。

パリティ試験では,スイッチの「入」側でデジタル信号にパリティビットを付加し,「出」側でパリティチェックを実施することで,ビット単位の正常性確認を行う。

パイロット試験は通話路に試験パターン信号を流して正常性を確認する。

照合試験では,2 重化した通話路の両系の信号をビット単位で照合する。

問11

1 日のうち,1 年間を平均して呼量が最大となる連続した 1 時間について,1 年間の呼量及び呼数の最大のものから順に 30 日分の呼量及び呼数を抜き取って,それぞれ平均した呼量及び呼数は基礎トラヒックといわれ,電話サービスの設備容量の算出,サービス品質の評価などに用いられる。

事業用電気通信設備規則 第三十五条 接続品質

事業用電気通信設備の接続品質は、基礎トラヒック(1 日のうち、1 年間を平均して呼量(1 時間に発生した呼の保留時間の総和を 1 時間で除したものをいう。以下同じ。)が最大となる連続した 1 時間について 1 年間の呼量及び呼数の最大のものから順に 30 日分の呼量及び呼数を抜き取つてそれぞれ平均した呼量及び呼数又はその予測呼量及び予測呼数をいう。以下同じ。)について、次の各号のいずれにも適合しなければならない。(各号,省略)

問12

公衆交換電話網(PSTN)では,トラヒックが集中し,異常輻輳が生じた場合は,迂回接続規制,出接続規制,発信規制などのトラヒックコントロールを行う。

PSTN(Public Switched Telephone Networks : 公衆交換電話網)の輻輳制御には,発信規制,入呼規制,出接続規制がある。また,複数ルートがある場合にトラヒックの少ないルートに迂回する機能は,迂回接続制御といわれるが,同一対地への接続規制(入呼規制)は,迂回接続規制と呼ばれている。

問13

インターネット上におけるホスト名を IP アドレスに対応させるデータベースは,DNS といわれる。

インターネット上におけるホスト名を IP アドレスに対応させるデータベースは,DNS(Domain Name System)といわれる。

インターネットに接続されるすべてのコンピュータは固有の IP アドレスを持っているが,数字の羅列であり覚えにくいため,人間が覚えやすい名前で扱うことができる機能が考案され,これをインターネットドメイン名という。

問14

公衆交換電話網(PSTN)での接続において,接続先を識別するために付与される固定電話の電話番号の体系は,一般に,先頭の数字が国内プレフィックスといわれる 0 で始まり,市外局番,市内局番及び加入者番号が続く構成となっている。

公衆交換電話網(PSTN)での接続において,接続先を識別するために付与される固定電話の電話番号の体系は,一般に,先頭の数字が国内プレフィックスといわれる 0 で始まり,市外局番,市内局番及び加入者番号が続く構成となっている。

固定電話の電話番号の体系:国内プレフィックス「0」,市外局番 1 ~ 4 桁,市内局番 1 ~ 4 桁,加入者番号 4 桁

問15

通信ネットワークを構成する信号網における共通線信号方式は,通話回線と信号回線とを分離して,信号回線を共通に使用する方式があり,個別網信号方式とは異なり通話中でも順方向や逆方向の信号転送ができる特徴がある。

通信ネットワークを構成する信号網における共通線信号方式は,通話回線と信号回線を分離して,信号回線を共通に使用する方式であり,個別網信号方式とは異なり通話中でも順方向や逆方向の信号転送ができる特徴がある。

問16

インターネットなどへのダイヤルアップ接続に利用される PPP プロトコルで用いられるユーザ認証プロトコルのうち,毎回パスワードが変更される OTP(One Time Password)方式を使用し,コネクション確立後も定期的にパスワードを交換することにより,盗聴などに対するセキュリティを高めたプロトコルは,CHAP といわれる。

OTP(One Time Password)方式を使用し,コネクション確立後も定期的にパスワードを交換することにより,盗聴などに対するセキュリティを高めたプロトコルは,CHAP といわれる。

PPP(Point to Point Protocol) 接続で,物理的なリンクが確立した後の認証には,PAPCHAP がある。

PAP(Password Authentication Protocol)は,認証のための ID とパスワードを暗号化せずにサーバへ送る。

CHAP(Challenge Handshake Authentication Protocol)は,チャレンジ・レスポンス方式を用いて,伝送線路上にパスワードそのものを流さないようにしている。

問17

デジタル衛星通信などで用いられる時分割多元接続方式は,複数の基地局からの送信を 1 つの無線搬送周波数で処理できるという利点を持っている。

時分割多元接続方式(TDMA)は,全地球局が同一周波数,同一帯域の信号を使用しながら,回線ごとに異なるタイムスロットを割り当てて送受信することにより,相互干渉なく通信を行う,タイムスロットが重ならないように,時間の同期制御が必要になる。

問18

光ファイバ中における光の伝搬において,光の反射・屈折についてのスネルの法則は,コアとクラッドの屈折率の差が大きいほど,光が全反射する入射角(コアとクラッドの境界面の法線と光のなす角)が小さくなることを示している。

スネルの法則において,2 つの媒質が平面で接している場合の光線の反射式は,下式で表される。

\[ n_1 \sin \theta = n_2 \sin \phi \]

ここで,$n_1$ はコア,$n_2$ はクラッドの屈折率であり,$\theta$ は入射角,$\phi$ は屈折角である。

問19

三相変圧器の結線方法には,Y 結線と Δ 結線がある。このうち,Y 結線の巻数の 1 相当たりの電圧が各相とも同じ電圧のとき,線間電圧は相電圧の $\sqrt{3}$ 倍である。

Y 結線の巻数の 1 相当たりの電圧が各相とも同じ電圧のとき,下図の通り,線間電圧は相電圧の $\sqrt{3}$ 倍である。

Y 結線の線間電圧
図 Y 結線の線間電圧

問20

光パルス試験器を用いて光ファイバに光パルスを入射して伝搬させると,光ファイバの破断点では,急峻な屈折率変化によるフレネル反射光が発生し,この光が破断点までの距離に比例した時間を経過した後に入射端に戻ってくることを利用して,破断位置の測定を行うことができる。

フレネル反射(Fresnel reflection)とは,異なる屈折率を持つ物質どうしが接触する境界面に対し光が入射する際,その光の一部に対して生じる反射のことである。この反射は,屈折率の差と入射角の差に依存する。

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