経営戦略
経営戦略マネジメント
1. 経営戦略手法
- 経営戦略に関する基本的な考え方を理解する。
- 全社戦略,事業戦略,代表的な経営戦略手法のあらましを理解する。
(1) 経営戦略
企業が,経営活動によって利益を上げて継続的に存続・成長していくためには,さまざまな状況の変化にうまく対応しながら競合他社との競争に勝ち抜いていかなくてはならない。そのため,自社と競合他社との位置付けや自社の現状を分析し,さらに将来の変化を見据えて中長期的な視点で経営戦略を策定する必要がある。
経営戦略では,最初に達成すべき「目標」を定める。また,戦略の実施に当たっては,目標を達成するための「手段」と,その手段が適切に実施されているかを測定できるように「指標」を定める。
- 重要目標達成指数(KGI : Key Goal Indicator)
- 売上高や利益額などの最終的な経営目標を数値的に示したもの。つまり,目標達成における "何を" を明確にするもの。
- 重要成功要因(CSF : Critical Success Factors)
- 経営戦略の目標・目的を達成するうえで決定的な影響を持つ要因のこと。
- 重要業績評価指数(KPI : Key Performance Indicator)
- KGI に示す目標の達成につながる業績評価の指標。つまり,目標達成における "どのレベルで" を意味する。
デジタルトランスフォーメーション(DX)
最初に DX(Digital Transformation)の概念を提唱したのは,スウェーデン ウメオ大学のエリック・ストールマン教授といわれている。経済産業省が 2018 年 12 月に発表した『DX 推進ガイドライン』によると,DX は次のように定義される。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し,データとデジタル技術を活用して,顧客や社会のニーズを基に,製品・サービス,ビジネスモデルを変革するとともに,業務そのものや,組織,プロセス,企業文化・風土を変革し,競争上の優位性を確立すること。
経済産業省が取りまとめた『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』(DX 推進ガイドライン)によると,経営戦略・ビジョンの提示について次のことが問われている。
想定されるディスラプション(「⾮連続的(破壊的)イノベーション」)を念頭に、データとデジタル技術の活用によって、どの事業分野でどのような新たな価値(新ビジネス創出、即時性、コスト削減等)を生み出すことを目指すか、そのために、どのようなビジネスモデルを構築すべきかについての経営戦略やビジョンが提示できているか。
(2) 全社戦略
- コアコンピタンス経営
- 他社に比べて自社が優位にあり,さらに利益をもたらすことのできるノウハウや技術(コアコンピタンス[1])に経営資源を集中して,競合他社との差別化を図る経営戦略。
- プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)
- 製品の市場占有率と市場成長率から,企業がそれぞれの事業に対する経営資源の最適配分を意思決定する
4 つの領域は,それぞれ花形,金のなる木,問題児,負け犬と呼ばれており,次表に示すような特徴がある。
名称 | 内容 |
---|---|
花形 | 市場成長率と市場占有率が高く,大きな収益をもたらす一方で,市場の成長への対応と占有率維持に追加投資が必要なため,より収益性の高い金のなる木へ移行する必要がある。 |
金のなる木 | 市場の成熟により成長率は低いが,市場占有率は高いため,追加投資を抑えて収益を確保することができる。金のなる木の収益を他の問題児や花形へ投資して,別の収益源を育成する必要がある。 |
問題児 | 市場占有率が低く収益も低いが,市場成長率は高いため,追加投資で市場占有率を高めることにより花形へと移行させる必要がある。だが,市場成長率が低下すると,負け犬となる可能性もある。 |
負け犬 | 投資する必要性はほとんどない。将来的な撤退を検討する。 |
マトリックス表を用いたポートフォリオ類型によって,事業計画や競争優位性の分析を行う目的は,目標を設定し,資源配分の優先順位を設定するための基礎として,自らの置かれた立場を評価することである。
- 競争優位の源泉となる,他社よりも優越した自社独自のスキルや技術などの強み
(3) 事業戦略
ブルーオーシャン戦略
これまでにない製品やサービスを提供して新しい市場を開拓する戦略。競争が激しい成熟した市場を「レッドオーシャン」,未開拓な市場を「ブルーオーシャン」と呼ぶ。
SWOT 分析
自社の特性について,Strengths(強み),Weakness(弱み),Opportunities(機会),Threats(脅威)の 4 つの視点で分析する。
プラスとなる要因 | マイナスとなる要因 | |
---|---|---|
内部の要因 | 強み(自社の特徴や優位点) → 強みを活かす |
弱み(自社の課題や問題点) → 弱みを克服して強みに転換 |
外部の要因 | 機会(自社にとって有利な傾向) → 機会を利用する |
脅威(自社にとって不利な傾向) → 脅威を回避または防御 |
- スケールメリット
- 同じ事業の規模または製品の規模を拡大して得られる効果のこと。
- シナジー効果
- 異なる事業または製品を複数同時に扱うことで得られる相乗効果のこと。
SWOT 分析を用いて識別した,自社製品に関する外部要因はどれか。
- 営業力における強み
- 機能面における強み
- 新規参入による脅威
- 品質における弱み
正解は,3. である。
2. マーケティング
- マーケティングの基本的な考え方,代表的なマーケティング手法の基本的な考え方を理解する。
(1) マーケティング理論
① マーケティング分析
- 3C(Customer, Competitor, Company)分析
- 市場・顧客(Customer),競合他社(Competitor),自社(Company)の視点から分析する。
- 市場調査(マーケティングリサーチ)
- セグメンテーション
- 顧客や消費者を共通する属性や特徴を持つ集団に分類することをセグメンテーション(segmentation,顧客セグメンテーション/市場セグメンテーション)という。
- ターゲティング
- ポジショニング
- サンプリング
- 質問法
- 観察法
- 実験法
企業の事業活動を機能ごとに主活動と支援活動に分け,企業が顧客に提供する製品やサービスの利益は,どの活動で生み出されているかを分析する手法はどれか。
- 3C 分析
- SWOT 分析
- バリューチェーン分析
- ファイブフォース分析
正解は,3. である。
他の技法では答えが得られにくい,未来予測のような問題に多く用いられ,a. ~ c. の手順に従って行われる予測技法はどれか。
- 複数の専門家を回答者として選定する。
- 質問に対する回答結果を集約してフィードバックし,再度質問を行う。
- 回答結果を統計的に処理し,分布とともに回答結果を示す。
- クロスセッション法
- シナリオライティング法
- 親和図法
- デルファイ法
正解は,4. である。
② マーケティングミックス
マーケティング戦略を実施するために使われるツールで,目標達成のために,適切なマーケティング手法を組み合わせることをいう。組合せは,一般的にマーケティングの基本要素である製品(Product),価格(Price),流通(Place),プロモーション(Promotion)であり,4P と呼ばれている。
4P に対して,買い手の視点から再定義したものが 4C である。そのため,4P と 4C は,それぞれの要素が下表のように対応している。
4P | 4C |
---|---|
Product(製品) | Customer Value(価値) |
Price(価格) | Cost(コスト) |
Place(場所) | Convenience(利便性) |
Promotion(販売促進) | Communucation(コミュニケーション) |
- マーチャンダイジング
③ CS(Customer Satisfaction : 顧客満足)
- 顧客ロイヤルティ
- ブランド戦略
- UX(User Experience)
- UX とは、ある製品やサービスとの関わりを通じて利用者が得る体験およびその印象の総体。使いやすさのような個別の性質や要素だけでなく、利用者と対象物の出会いから別れまでの間に生まれる経験の全体が含まれる。
- コンバージョン率
- ある期間にサイトを訪れた人のうち、コンバージョン(消費者や見込み顧客が、商品の購入やサービスの加入などを行うこと)に至った人の割合をコンバージョン率(CVR:Conversion Rate)という。訪問者が多くても CVR が低ければ成果が上がっていないことを意味し、コンバージョンを促す工夫が求められる。
- リテンション率
(2) マーケティング戦略
自社の製品やサービスについて,売れる仕組みを作り上げる活動がマーケティングである。そして,マーケティングの手段や手法を組み立てたものをマーケティング戦略と呼ぶ。
① 製品戦略
プロダクトライフサイクル(PLC : Product Life Cycle)は,導入期,成長期,成熟期,衰退期の 4 つの期に区切って需要の推移を示す。
期 | 説明 |
---|---|
導入期 | 市場へ商品を投入した段階。認知度が低いため,需要は部分的であり,新規の需要を開拓する必要がある。 |
成長期 | 市場における商品の認知度が高まり,需要が高まる段階。供給を増やすための投資が必要となる。 |
成熟期 | 需要が大きくなり,企業間の競争が激化する段階。市場のシェアを維持するために,新しい品種の追加やコストダウンなどが重要となる。 |
衰退期 | 需要が減少し,衰退する企業が現れる段階。市場からの撤退や代替市場への進出などを検討する。 |
- コモディティ化
- 製品やサービスの品質や機能において差別化が困難になる状態のことをいう。コモディティ化は,技術や市場の発達や,標準化の浸透,ライフサイクルの成熟により起こるとされる。
- カニバリゼーション
- カニバリゼーション(cannibalization)とは、自社の商品が自社の他の商品を侵食してしまう「共食い」現象のことをいう。
プロダクトライフサイクルにおける成長期の特徴は。
市場が製品の価値を理解し始める。製品ラインもチャネルも拡大しなければならない。この時期は売上も伸びるが,投資も必要である。
プロダクトライフサイクルにおける成熟期の特徴は。
需要が大きくなり,製品の差別化や市場の細分化が明確になってくる。競争者間の競争も激化し,新品種の追加やコストダウンが重要となる。
② 価格戦略
- 価格設定方法(コストプラス法ほか)
- 製造原価又は仕入原価に一定のマージンを乗せて価格を決定する。
- バリュープライシング
- スキミングプライシング
- サブスクリプションモデル
③ 流通戦略
- フランチャイズチェーン
- チャネル統合
- オムニチャネル
- オムニチャネル(omni-channel retailing)とは、流通・小売業の戦略の一つで、複数の販売経路や顧客接点を有機的に連携させ、顧客の利便性を高めたり、多様な購買機会を創出すること。
④ プロモーション戦略
- 広告
- 販売促進
- パブリシティ
(3) マーケティング手法
- マスマーケティング
- ワントゥワンマーケティング
- リレーションシップマーケティング
- 顧客との良好な関係を維持することで個々の顧客から長期間にわたって安定した売上を獲得することを目指すマーケティング手法
- ダイレクトマーケティング
- 市場テスト(テストマーケティング)
- プッシュ戦略 / プル戦略
3. ビジネス戦略と目標・評価
- ビジネス戦略と目標の設定,評価の目的,考え方,手順のあらましを理解する。
- 目標の設定,評価のための代表的な情報分析手法のあらましを理解する。
自社の分析とマーケティング戦略に基づいて,業務活動における具体的な戦略を立案することをビジネス戦略と呼ぶ。
(1) ビジネス戦略と目標の設定・評価
競争地位別戦略(コトラーの競争戦略)
経済学者のフィリップ・コトラー(Philip Kotler)により提唱された競争戦略の理論で,市場における占有率(シェア)によって,企業をリーダ,チャレンジャ,ニッチャ,フォロワに類型化し,それぞれに適した戦略を採るための分析手法である。
名称 | 内容 |
---|---|
リーダ | 市場において最大のシェアを持つ企業が該当する。この位置を維持するために,新規需要の獲得や市場全体に適応する製品の投入(全方位戦略)などによって,市場規模を拡大する。 |
チャレンジャ | リーダに次ぐ規模のシェアを持ち,リーダの位置を狙う企業が該当する。リーダに対する差別化戦略により,市場におけるシェアの拡大を図る。 |
ニッチャ | シェアは低いが,独自性により特定の市場に特化した企業が該当する。他社が参入しにくい「しきま市場(ニッチ市場)」に対して,専門化する特定化戦略を採り,高利益率を狙う。 |
フォロワ | 上記のいずれにも該当しない企業が該当する。リーダの行動を観察し,迅速に模倣する戦略(模倣戦略)により,製品開発などのコスト削減を図る。 |
企業の競争戦略におけるリーダ戦略を説明せよ。
利潤,好評判の維持・向上と最適市場シェアの確保を目標として,市場内の全ての顧客をターゲットにした全方位戦略を取る。
競争上のポジションで,ニッチャの基本戦略はどれか。
- シェア追撃などのリーダ攻撃に必要な差別化戦略
- 市場チャンスに素早く対応する模倣戦略
- 製品,市場の専門特化を図る特定化戦略
- 全市場をカバーし,最大シェアを確保する全方位戦略
正解は,3. である。他社が参入しにくい小規模な市場に製品やサービスを提供し,利益を上げる戦略である。
- ビジネスモデルキャンパス
- KGI(Key Goal Indicator : 重要目標達成指標)
- 売上高や利益額などの最終的な経営目標を数値的に示したもの。つまり,目標達成における「何か」を明確にするもの。
- CSF(Critical Success Factors : 重要成功要因)
- 経営戦略の目標・目的を達成するうえで決定的な影響を持つ要因のこと。
- KPI(Key Performance Indicator : 重要業績評価指標)
- KGI に示す目標の達成につながる業績評価の指標。
- モニタリング
バランススコアカードの内部ビジネスプロセスの視点における戦略目標と業績評価の指標の例はどれか。
- 持続的成長が目標であるので,受注残を指標とする。
- 主要顧客との継続的な関係構築が目標であるので,クレーム件数を指標とする。
- 製品開発力の向上が目標であるので,製品開発領域の研修受講時間を指標とする。
- 製品の納期遵守が目標であるので,製造期間短縮日数を指標とする。
正解は,4. である。
バランススコアカードの学習と成長の視点における戦略目標と業績評価指標の例はどれか。
- 持続的成長が目標であるので,受注残を指標とする。
- 主要顧客との継続的な関係構築が目標であるので,クレーム件数を指標とする。
- 製品開発力の向上が目標であるので,製品開発領域の研修受講時間を指標とする。
- 製品の納期遵守が目標であるので,製造期間短縮日数を指標とする。
正解は,3. である。
(2) 目標設定及び評価のための手法
- BSC(Balanced Scorecard : バランススコアカード)
- ビジネス戦略が計画的に実施されているかを評価する手法で,企業の過去,現在,未来の活動が適切であるかどうかを判断するために「財務(過去)」「顧客(現在)」「業務プロセス(現在)」「学習・成長(将来)」の各視点を用いて判断する。
- ニーズ・ウォンツ分析
- 顧客がモノを求める観点において,ニーズとは必要に迫られて買うことで,ウォンツとはどうしても欲しいと思って買うことである。ニーズ・ウォンツ分析は,顧客の持つニーズをウォンツに押し上げるために行う分析である。
- 競合分析
- バリューエンジニアリング
- シックスシグマ
- TQM(Total Quality Management : 総合的品質管理)
- QC(Quality Control)や TQC(Total Quality Control)は,品質改善活動をボトムアップ方式で実行するが,TQM は,トップマネジメントからその活動を浸透させる品質管理手法である。経営目標に品質改善や顧客満足度の指標を設定し,企業全体のプロセスを構築,運用,管理する。TQM は,日本の優れた日本型 TQC を研究し考え出され,1980 ~ 90 年代のアメリカにおいて多くの成功を収めた。
バランススコアカードで使われる戦略マップを説明せよ。
財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長という四つの視点を基に,課題,施策,目標の因果関係を表現したもの。
4. 経営管理システム
- 代表的な経営管理システムのあらましを理解する。
(1) 経営管理システム
- ERP
- ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業の持つ資金や人材、設備、資材、情報など様々な資源を統合的に管理・配分し、業務の効率化や経営の全体最適を目指す手法。また、そのために導入・利用される業務横断型の業務ソフトウェアパッケージ(ERPパッケージ)のこと。
- SFA
- SFA(Sales Force Automation)とは、企業で利用される情報システムやソフトウェアの一種で、営業活動を支援して効率化するもの。
- KM
- ナレッジマネジメント(knowledge management)とは、一人ひとりの従業員の持つ業務上有用な知識(ナレッジ)を部門内や組織全体で蓄積・共有し、従業員の能力の向上や業務の効率向上に繋げる手法。
- CRM
- CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客の属性や接触履歴を記録・管理し、それぞれの顧客に応じたきめ細かい対応を行うことで長期的な良好な関係を築き、顧客満足度の向上や取引関係の継続に繋げる取り組み。また、そのために利用される情報システム(CRM システム)。CRM の目的は,顧客ロイヤリティの獲得と顧客生涯価値の最大化である。
- SCM
- SCM(Supply Chain Management)とは、自社内あるいは取引先との間で受発注や在庫、販売、物流などの情報を共有し、原材料や部材、製品の流通の全体最適を図る管理手法。また、そのための情報システム。
- 企業内情報ポータル(EIP)
- EIP(Enterprise Information Portal)とは,企業内のデータベースを参照したり、業務に必要なアプリケーションを利用したりできるシステム。「企業情報ポータル」「CP(corporate portal)」「EP(enterprise portal)」とも呼ばれる。
ナレッジマネジメントを説明せよ。
企業内に散在している知識を共有化し,全体の問題解決力を高める経営を行う。
技術戦略マネジメント
1. 技術開発戦略の立案
- 技術開発戦略の目的,基本的な考え方を理解する。
- 技術動向の把握,イノベーション促進の重要性を理解する。
(1) 技術開発戦略
① 技術開発戦略の目的と考え方
- MOT(Management of Technology : 技術経営)
- オープンイノベーション
- イノベーションのジレンマ
- リーンスタートアップ
- API エコノミー
- R&D(Research and Development)
- VC(Venture Capital : ベンチャーキャピタル)
- CVC(Corporate Venture Capital : コーポレートベンチャーキャピタル)
技術経営におけるプロダクトイノベーションを説明せよ。
新たな商品や他者との差別化ができる商品を開発すること。
プロセスイノベーションに関する記述として,適切なものはどれか。
- 競争を経て広く採用され,結果として事実上の標準となる。
- 製品の品質を向上する革新的な製造工程を開発する。
- 独創的かつ高い技術を基に革新的な新製品を開発する。
- 半導体の製造プロセスをもっている他企業に製造を委託する。
正解は,2. である。
技術の S カーブを説明せよ。
技術の進歩の過程を示すものであり,当初は緩やかに進歩するが,やがて急激に進歩し,その後,緩やかに停滞していく過程を示す。
② 価値創出の三要素
- キャズム
- 魔の川(Devil River)
- 死の谷(Valley of Death)
- ダーウィンの海(Darwinian Sea)
③ 技術開発戦略の立案
- コア技術
- 技術研究
- 委託研究
- 共同研究
- デザイン思考
- PoC(Proof of Concept : 概念実証)
- PoV(Proof of Value : 価値実証)
- 技術獲得
- 技術供与
- 技術提携
- 産学官連携
- 標準化戦略
2. 技術開発計画
- 技術開発計画の目的,基本的な考え方を理解する。
(1) 技術開発計画
- 技術開発投資計画
- 技術開発拠点計画
- 人材計画
- 経営資源の最適配分
- 投資対効果
- コアカレントエンジニアリング
- 製品開発において,設計,生産計画などの工程を同時並行的に行う手法
- パイロット生産
- 知的財産権管理
- 市場ニーズ
(2) 技術開発のロードマップ
- 技術ロードマップ
- 製品応用ロードマップ
- 特許取得ロードマップ
- 市場ニーズ
ビジネスインダストリ
1. ビジネスシステム
- 各種ビジネス分野に用いられている代表的な情報システムの種類,特徴を理解する。
(1) 社内業務支援システム
- 会計・経理・財務システム
- XBRL
- XBRL(eXtensible Business Reporting Language)とは、企業の財務諸表や財務報告などを記述するための標準的な形式を定めた規格の一つ。XML を応用した言語の一つで、一度入力した財務情報を関係機関で共有し、ソフトウェアによる自動処理で伝達、保存、加工などすることができる。
- 人事・給与システム
- 営業支援システム
- グループウェア
- グループウェア(groupware)とは、組織や集団の内部で情報を共有したりコミュニケーションを取ることができるソフトウェアのこと。
- ワークフローシステム
- 組織内の特定のワークフローを情報化し、コンピュータシステムで状態の管理を行えるようようにしたものをワークフローシステム(workflow system)という。主に書類の作成や回覧など情報の流れを扱う業務で導入される。
- Web 会議システム
- Web 会議(Web conferencing)とは、Web ブラウザで利用できるアプリケーションおよびネットサービスの一種で、離れた場所にいる人同士が資料やデータを共有して共同作業を行ったり、音声や動画をリアルタイムに交換して会議を開くことができるもの。
(2) 基幹業務支援システム及び業務パッケージ
- 流通情報システム
- 物流情報システム
- 店頭販売管理
- 販売管理
- 受発注管理
- 在庫管理
- 顧客管理
- 金融情報システム
- 医療情報システム
- POS システム
- 生産管理システム
- CDN(Content Delivery Network)
- ERP パッケージ
- 業務別パッケージ
- 業種別パッケージ
- ユビキタスコンピューティング
- IoT(Internet of Things)
- ブロックチェーンの活用(トレーサビリティ確保,スマートコントラクトほか)
コンビニエンスストアにおいて,ポイントカードなどの個人情報と結び付けられた顧客 ID 付き POS データを収集・分析することによって確認できるものはどれか。
- 商品の最終的な使用者
- 商品の店舗までの流通経路
- 商品を購入する同期
- 同一商品の購入頻度
正解は,4. である。
サプライチェーンマネジメントを説明せよ。
購買,生産,販売及び物流を結ぶ一連の業務を,企業間で全体最適の視点から見直し,納期短縮や在庫削減を図る。
(3) 行政システム及び公共情報システム
- 超スマート社会
- Society 5.0
- e-Gov
- 電子政府
- 電子自治体
- LGWAN(Local Government Wide Area Network : 総合行政ネットワーク)
- LGWAN とは、都道府県や市区町村などの地方自治体のコンピュータネットワークを相互接続した広域ネットワーク。地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が運営しており、中央省庁間の広域ネットワークである政府共通ネットワーク(霞ヶ関 WAN)とも相互接続されている。
- 住民基本台帳ネットワークシステム
- EDINET(Electronic Disclosure for Investors' NETwork)
- 公共情報システム
- スマートグリッド
- 通信と情報処理技術によって,発電と電力消費を総合的に制御し,再生可能エネルギーの活用,安定的な電力供給,最適な需給調整を図るシステム
- EMS(Energy Management System : エネルギーマネジメントシステム)
- GPS(Global Positioning System : 全地球測位システム)応用システム
- 緊急速報
- マイナンバー
- マイナンバー(社会保障・税番号)とは、社会保障や納税などの際に国民一人一人を識別するための 12 桁の番号。日本政府が発行・管理するもので、自治体に住民票を持つすべての国民と特別永住者など国内に居住する一部の外国人に発行される。
- ユニバーサルデザイン
- ユニバーサルデザインとは、すべての人が等しく使うことができる、あるいは使いやすいデザイン・設計のこと。より現実的には、なるべく多くの人が同じように使えることを目指すデザイン原則を表す。
- ディジタルデバイド
- デジタルデバイドとは、コンピュータやインターネットなどの情報技術(IT:Information Technology)を利用したり使いこなしたりできる人と、そうでない人の間に生じる、貧富や機会、社会的地位などの格差。個人や集団の間に生じる格差と、地域間や国家間で生じる格差がある。
2. エンジニアリングシステム
- エンジニアリングシステムの開発,設計における目的,基本的な考え方を理解する。
- 生産の自動制御,生産システム,生産管理,コンピュータ支援システムの目的,基本的な仕組みを理解する。
(1) エンジニアリングシステムの目的と考え方
(2) 生産の自動制御
- 生産方式(かんばん方式,リーン生産方式,セル生産方式)
- リーン(lean)はトヨタ生産方式(TPS : Toyota Production System)を基に,1980 年代に米国で体系化された顧客への提供価値の最大化をはかるための思考方法や生産方式を指す。顧客の価値を定義し,顧客に至るバリューストリームの視点でムダを排除して業務を改善する方法は,製造業に限らず,あらゆる業種に適用でき,ムダなコストを低減させながら,同時に顧客の信頼を得ることが可能になる。
- 生産ラインの編成
- JIT(Just In Time : ジャストインタイム)
- NC(Numerical Control : 数値制御)
- 数値制御とは、工作機械などを数値データを与えて制御する方式のこと。人間による操作や機械的な仕掛けによる制御に代わる制御方式として普及している。数値制御で制御する機械を「NC 工作機械」「NC 装置」「NC 旋盤」「NC フライス盤」のように呼ぶ。
- 自動監視装置
- 無人搬送車
- 自動倉庫
“かんばん方式”を説明せよ。
中間在庫を極力減らすために,生産ラインにおいて,後工程の生産に必要な部品だけを前工程から調達する。
生産現場における機械学習の活用事例として,適切なものはどれか。
- 工場における不良品の発生原因をツリー状に分解して整理し,アナリストが統計的にその原因や解決策を探る。
- 工場の生産設備を高速通信で接続し,ホストコンピュータがリアルタイムで制御できるようにする。
- 工場の生産ロボットに対して作業方法をプログラミングするのではなく,ロボット自らが学んで作業の効率を高める。
- 累積生産量が倍増するたびに工場従業員の生産性が向上し,一定の比率で単位コストが減少する。
正解は,3. である。
セル生産方式の利点が生かせる対象はどれか。
- 生産性を上げるために,大量生産が必要なもの
- 製品の仕様が長期間変わらないもの
- 多種類かつフレキシブルな生産が求められるもの
- 標準化,単純化,専門化による分業が必要なもの
正解は,3. である。
(3) 生産システム
- CAP(Computer Aided Planning)
- CAPP(Computer Aided Process Planning)
- MRP
- MRP(Material Requirements Planning)とは、製造業などの生産管理手法の一つで、生産計画に基いて部品表と在庫情報から発注すべき資材の量と時期を決定する方式。1960年代に考案され、コンピュータシステムと共に広まった。
- FMS(Flexible Manufacturing System)
- FMC(Flexible Manufacturing Cell)
- 生産性指標
手順 1. ~ 3. に従って処理を行うものは。
- 今後の一定期間に生産が予定されている製品の種類と数量及び部品構成表を基にして,その構成部品についての必要量を計算する。
- 引当て可能な在庫量から各構成部品の正味発注量を計算する。
- 製造/調達リードタイムを考慮して構成部品の発注時期を決定する。
正解は,MRP である。
(4) コンピュータ支援システム
- CAD
- CAD(Computer Aided Design)とは、工業製品や建築物などの設計や製図をコンピュータを用いて行うこと。また、そのためのソフトウェアや情報システム。
- CAE
- CAE(Computer Aided Engineering)とは、工業製品の設計や構造の解析、机上の試験などにコンピュータシステムを導入して効率的に行うこと。また、そのような工程を支援するソフトウェアやシステム(CAE ツール、CAE システム)を指すこともある。
- CAM
- CAM(Computer Aided Manufacturing)とは、工業製品などの製造現場で利用される情報システムおよびソフトウェアの一つで、CAD などで作成した設計図面などを元に、工作機械を操作するためのプログラムの作成などを行うもの。
- PDM
- PDM(Product Data Management)とは、工業製品の開発工程において、設計や構成に関する情報を包括的に一元管理して部門間で共有することにより、コスト削減や工期の短縮を図る手法。また、そのために用いられるソフトウェアや情報システム(PDM システム)のこと。
- CIM
- CIM(Computer Integrated Manufacturing)とは、製造業の生産工程で必要となる、あるいは発生する様々情報をコンピュータシステムで一元的に管理し、製造の最適化を推進する手法。また、そのためのソフトウェアや情報システム。
CAD を説明せよ。
コンピュータを使用して,製品の形状や構造などの属性データから,製品設計図面を作成する。
3. e-ビジネス
- EC,EDI などインターネットを介して行う e-ビジネスの仕組み,特徴を理解する。
- データ交換の代表的な標準を理解する。
- ソーシャルメディアの概念,類型,技術的背景を理解する。
e-ビジネスとは,コンピュータやネットワークを利用したビジネス活動のことで,EC や EDI,ソーシャルメディアがある。
(1) EC(Electronic Commerce : 電子商取引)
EC(Electronic Commerce : 電子商取引)とは、データ通信やコンピュータなど電子的な手段を介して行う商取引の総称。狭義にはインターネットを通じて遠隔地間で行う商取引を指す。より狭義には、Webサイトなどを通じて企業が消費者に商品を販売するネット通販(オンラインショップ)を指す場合もある。
電子商取引には,消費者(C : Consumer),企業(B : Business),政府(G : Government)の組合せによって,次表に示す形態がある。
形態 | 取引の例 |
---|---|
C to C | ネットオークション |
B to C | インターネットショッピング |
G to B | 自治体の利用する物品や資材の電子調達,電子入札を行う。 |
G to C | 住民票,パスポートなどの電子申請 |
G to G | 自治体間の住民票データの交換 |
B to B | EDI による受発注データ交換 |
- 逆オークション
- インターネット上で,一般消費者が買いたい品物とその購入条件を提示し,単数又は複数の売り手がそれに応じる取引形態。
- ロングテール
- インターネットを活用したオンラインショップなどでは,販売機会が少ない商品でもアイテム数を幅広く取りそろえることによって,機会損失のリスクを減らす効果がある。
① 電子受発注システム
② 電子決済システム
③ e-ビジネスの進め方
e マーケットプレイスを説明せよ。
多くの売手と買手が,インターネット上に設けられた市場を通じて出会い,中間流通業者を介さず,直接取引を行う手法
(2) EDI
EDI(Electronic Data Interchange : 電子データ交換)とは、商取引に関する情報を標準的な形式に統一して、企業間で電子的に交換する仕組み。受発注や見積もり、決済、出入荷などに関わるデータを、あらかじめ定められた形式にしたがって電子化し、インターネットや専用の通信回線網など通じて送受信する。
① EDI の仕組みと特徴
② データ交換での標準
EDI を実施するための情報表現規約で規定されるべきものはどれか。
- 企業間の取引の契約内容
- システムの運用時間
- 伝送制御手順
- メッセージの形式
正解は,4. である。
(3) ソーシャルメディア
ソーシャルメディア(social media)とは、インターネット上で展開される情報メディアのあり方で、個人による情報発信や個人間のコミュニケーション、人の結びつきを利用した情報流通などといった社会的な要素を含んだメディアのこと。
消費者が配信するコンテンツによりインターネット上のメディアが形成される CGM(Consumer Generated Media : 消費者生成メディア)があり,代表的なものとして掲示板,SNS,ブログ,動画投稿サイトなどがある。
CGM の例としては,個人が,自ら使用した商品などの評価に関する情報を,不特定多数に向けて発信するブログや SNS などの Web サイトがある。
- シェアリングエコノミー
- 遊休状態にある物や場所,人的リソースなどを多くの人と共有したり交換したりすることで新しい価値を生み出す社会・経済のこと。インターネットやスマートフォンの普及により,貸し手と借り手を容易に繋げることができるようになった。代表的な例としては自室の空き時間を他人に貸す民泊や自家用車に同乗させるライドシェアなどがある。
シェアリングエコノミーを説明せよ。
ソーシャルメディアのコミュニティ機能などを活用して,主に個人同士で,個人が保有している遊休資産を共有したり,貸し借りしたりする仕組みである。
4. 民生機器
- IoT システム・組込みシステムのあらましを理解する。
- 民生機器の特徴,動向,代表例を理解する。
(1) IoT システム・組込みシステム
- マイコン
- マイコンとは、マイクロコントローラの略で、組み込みシステム向けの統合型の IC チップを意味する。
- 組込み OS
- 組込み OS(embedded OS)とは、産業機器や家電製品など、マイクロコンピュータを中心としたいわゆる組み込みシステム(embedded system)を制御するオペレーティングシステム(OS)。
- リアルタイム OS
- リアルタイム OS(real-time operating system : RTOS)とは、OS(オペレーティングシステム)の種類の一つで、時間的な制約がある処理を実行するための機能や特性を備えたもの。産業ロボットや輸送機械などの組み込みシステムの制御用としてよく用いられる。
- リアルタイム制御
- イベント
- センサ
- ロボティクス(Robotics : ロボット工学)
- ロボットを設計し制作するための工学的な研究を指す。機械工学,センサー技術や電子工学,ロボット制御プログラム作成のための情報工学など,さまざまな工学の知見が結集されている。ドローンやお掃除ロボット,RPA などはロボティクスの具体的な成果であり,IoT,AI との連携強化により自動運転システムを実現するなど,ビジネスや社会生活全般への応用,展開がますます期待されている。
- ファームウェア
- ファームウェア(firmware)とは、コンピュータや電子機器などに内蔵されるソフトウェアの一種で、本体内部の回路や装置などの基本的な制御を司る機能を持ったもの。
- BLE ビーコン
(2) 民生機器
① 民生機器の特徴と動向
- 情報家電
- 情報家電(information home appliance)とは、デジタルデータの処理や送受信に対応し、通信ネットワークやデジタル入出力端子、メモリーカードなどを介して外部の機器と通信や連携が可能な家庭用電気製品。
- ユビキタスコンピューティング
- ユビキタス(ubiquitous)とは、遍在する、至る所にある、どこにでもある、おなじみの、などの意味を持つ英単語。IT の分野では、世の中の至る所にコンピュータが埋め込まれ、通信ネットワークを介して互いに連携し、人々がコンピュータの存在を意識せずにその利便性を享受できるような社会や情報システムのあり方を表す。1988 年に米ゼロックス(Xerox)社のパロアルト研究所(PARC:Palo Alto Research Center)の主任研究員だったマーク・ワイザー(Mark Weiser)氏が、社会にコンピュータが溶け込み、いつでもどこでもその機能や能力を活用できるコンピュータの新しいあり方を提唱し、“ubiquitous computing” (ユビキタスコンピューティング)と名付けた。
- IoT(Internet of Things)
- IoT(Internet of Things)とは、コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在する様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。
② 民生機器の例
- コンピュータ周辺機器/OA 機器
- 民生用通信端末機器
- ホームネットワーク
- ウェアラブルコンピュータ
- ウェアラブルコンピュータ(wearable computer)とは、小型の携帯型コンピュータの一種で、体に身につけて持ち運び、そのままの状態で使用できるもの。腕時計型(スマートウォッチ)や眼鏡型(スマートグラス)、指輪型などが提唱されている。
- スマートスピーカ
- センサネットワーク
- HEMS(Home Energy Management System)
- 家庭内の電気設備や家電製品の稼働状況や電力使用量を監視・記録し、また、設備を遠隔から制御することにより、電力使用量や電力料金の低減・最適化を図る情報システムを HEMS(Home Energy Management System)という。
- ディジタルサイネージ
- ディスプレイに映像,文字などの情報を表示する電子看板
通信機能及び他の機器の管理機能をもつ高機能型の電力メータであるスマートメータを導入する目的として,適切でないものはどれか。
- 自動検針によって,検針作業の効率を向上させる。
- 停電時に補助電源によって,一定時間電力を供給し続ける。
- 電力需要制御によって,ピーク電力を抑制する。
- 電力消費量の可視化によって,節電の意識を高める。
正解は,2. である。
5. 産業機器
- 産業用電子機器の特徴,動向,代表例を理解する。
(1) 産業機器
① 産業機器の特徴と動向
- M2M(Machine to Machine)
- M2M(Machine to Machine)とは、機械と機械が通信ネットワークを介して互いに情報をやり取りすることにより、自律的に高度な制御や動作を行うこと。
- スマートファクトリー
- インダストリー 4.0
- 「第四次産業革命」を指す。人や機械,パートナー企業などがデータを交換することで,製造工程や進捗情報などを共有し,製造プロセス革新,さらにバリューチェーンの変革や新たなビジネスモデルの構築を目指すコンセプト。2011 年に,ドイツ政府が製造業の競争力強化と空洞化防止のための構想として国家プロジェクトを開始し注目された。
② 産業機器の例
- ロボット(産業用,医療用,介護用,災害対応用ほか)
- ドローン
- 自動倉庫
- 自動販売機
- ATM(Automated Teller Machine : 現金自動預払機)
- 医療機器
- 患者モニタリング装置
③ 自動車制御システムの特徴と動向
- コネクテッドカー
- 自動運転
- 自動車に取り付けたセンサで車両の状態,路面状況などのデータを計測し,ネットワークを介して保存し分析することによって,効率的な運転を支援する。