企業活動

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目次

応用情報技術者試験(レベル3)シラバス-情報処理技術者試験における知識・技能の細目- Ver. 7.0 に基づき,「企業活動」の対策ノートを作成した。

本稿は,IT ストラテジスト試験 午前 Ⅱ 対策としても活用できるようにしている。

経営・組織論

  • 企業活動,経営管理,経営組織の種類,特徴,手法を修得し,適用する。
  • 経営環境の変化,課題を修得し,適用する。
  • 企業におけるコンピュータリテラシの必要性,有用性を修得し,適用する。

(1) 企業活動

企業は「ヒト,モノ,カネ,情報」という経営資源を有効活用して企業活動を行っている。

① 企業活動と経営資源

企業理念,人的資本経営,パーパス経営,企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility),企業文化(風土),グリーンIT,カーボンフットプリント
企業理念

企業は,企業理念の下,その会社の目的を実現するために企業活動を行う。その際に大切になる経営資源には,ヒト・モノ・カネ・情報の四つがあり,これを管理するのが経営管理である。

人的資本経営

人的資本経営とは,従業員が持つ知識や能力を「資本」とみなして投資の対象とし,持続的な企業価値の向上につなげる新しい経営の在り方である。

パーパス経営

パーパス経営(purpose 経営)とは,企業の経営理念として自社の存在意義を明確にして,どのように社会貢献していくのかといった「パーパス」を掲げるという意味である。世界におけるパーパス経営の代表例としては,パタゴニア,テスラ,そして日本のソニーグループなどが挙げられる。

企業の社会的責任(CSR : Corporate Social Responsibility)

企業には,自社の利益を追求するだけでなく,社会に影響を与える組織として,社会的な責任を果たすことが求められている。この考え方を CSR(Corporate Social Responsibility : 企業の社会的責任)と呼び,企業が社会に受け入れられ,経営活動を継続するために不可欠な概念となっている。

企業文化(風土)

企業文化とは,従業員と企業との間で共有している価値観や企業規範のことである。

グリーン IT

地球環境に配慮した IT 活用を行う思想。

カーボンフットプリント

カーボンフットプリントとは,商品・サービスのライフサイクルの各過程で排出された温室効果ガスの量を追跡した結果,得られた全体の量を CO2 量に換算して表示することをいう。

② 企業形態

持分会社,株式会社,株式公開(IPO)

法人化された企業を会社と呼ぶが,現在,日本で設立できる会社の形態は,合資会社,合名会社,合同会社(LLC : Limited Liability Company),株式会社の 4 種類である。株式会社では,市場で株式の売買が行えるよう,株式公開(IPO : Initial Public Offering)ができる。

③ 企業の特徴

コーポレートガバナンス,コーポレートガバナンス・コード,IR(Investor Relations),統合報告書,アニュアルレポート,CSR 報告書,BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画),コーポレートアイデンティティ,コーポレートブランド
コーポレートガバナンス (corporate governance)

「企業統治」とも訳され,企業の経営について利害関係者が監視・規律すること。目的は主に 2 つあり「企業の収益力の強化」と「企業の不祥事を防ぐ」ことである。

コーポレートガバナンス・コード

コーポレートガバナンス・コードとは,上場企業が行う企業統治(コーポレートガバナンス)においてガイドラインとして参照すべき原則・指針を示したものである。Corporate Governance の頭文字をとって CG コードと略す場合もある。

IR(Investor Relations)

IR(Investor Relations : インベスター・リレーションズ)とは,企業が株主や投資家向けに経営状態や財務状況,業績の実績,今後の見通しなどを広報するための活動を指す。

統合報告書

統合報告書とは,企業の売上や資産など法的に開示が定められた財務情報に加え,企業統治や社会的責任 (CSR),知的財産などの非財務情報をまとめたものである。

アニュアルレポート

アニュアルレポート(Annual Report)とは,年次報告書のことで,企業がディスクロージャー(情報公開)の観点から任意で発行し,株主や金融機関などの関係先に年度末に配布する,経営内容についての総合的な情報を掲載した冊子を指す。

CSR 報告書

企業が,環境や社会問題などに対して企業は倫理的な責任を果たすべきであるとする CSR(企業の社会的責任)の考え方に基づいて行う,社会的な取り組みをまとめた報告書のこと。持続可能性報告書とも呼ばれる。環境,労働,安全衛生,社会貢献などに関する情報や,事業活動に伴う環境負荷などを幅広く公開する。

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)

BCP とは,不測の事態や大規模な自然災害の発生に際して,損害を最小限にし,事業の継続及び早期復旧を図るために組織としての行動計画を定めたものである。

中小企業庁が公開している「中小企業 BCP 支援ガイドブック」によれば,BCP のポイントは以下のとおり。

  1. 重要商品(事業)を特定すること
  2. 復旧する目標時間を考えること
  3. 取引先とあらかじめ協議しておくこと
  4. 代替策を用意・検討しておくこと
  5. 従業員と BCP の方針や内容について共通認識を形成しておくこと

BCM(Business Continuity Management)において考慮すべきレジリエンスは「不測の事態が生じた場合の組織的対応力や,支障が生じた事業を復元させる力」である。

コーポレートアイデンティティ

企業の特性や個性を明確に提示し,共通したロゴやメッセージなどを発信することで社会に向けたメッセージを形成していくことをコーポレートアイデンティティという。

コーポレートアイデンティティは,企業の特徴や個性を分かりやすい形であらゆる手段で提示することで,顧客と共有し企業の存在価値を高めていく企業戦略である。

コーポレートブランド

コーポレートブランドとは,ステークホルダーが,その会社・グループに対して抱くイメージを決定付ける無形の資産である。

(2) 経営管理

① 経営管理とは

経営目標,経営計画,事業計画,業績評価,PDCA,OODA ループ,財務・資産・人事・情報管理,TQM(Total Quality Management:総合的品質管理)
PDCA

PDCA は,Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(見直し・改善)の 4 段階を繰り返すことによって,経営を継続的に改善する方法である。

DMAIC

下図は,シックスシグマの基本となる日常業務の効率や品質の向上を目指す継続的改善サイクルである DMAIC の活動フェーズである。

DMAIC の活動フェーズ
図 DMAIC の活動フェーズ

② 経営管理の理論と展開

用語例 科学的管理法,経営過程論,協働システム,一般システム理論

③ ヒューマンリソースマネジメント

エンプロイヤビリティ,年俸制,コンピテンシー,コーチング,メンタリング,ケーススタディ,e-ラーニング,リスキリング,アダプティブラーニング,ジョブローテーション,キャリア開発,選抜型人事, チームビルディング, CDP(Career Development Program:キャリアデベロップメントプログラム),アルムナイ採用,リテンション,タレントマネジメント,エンパワーメント,HPI(High Potential Individual),HR テック(HRTech),MBO(Management by Objectives and self-control:目標管理制度),ワークライフバランス,ワークエンゲージメント,EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム),ワークシェアリング,テレワーク,DE & I(Diversity,Equity & Inclusion),ウェルビーイング(well-being)

経営管理においては,ヒューマンリソースマネジメントHRM : Human Resource Management : 人的資源管理)が非常に重要である。HRM には,人事管理や労務管理だけでなく,組織の設計や教育・訓練,報酬体系の設計,福利厚生など様々な内容が総合的に含まれる。

年俸制(裁量労働制)

専門業務や企画業務における労働時間は,実際の労働時間に関係なく,労使協定であらかじめ取り決めた労働時間とみなす。

コンピテンシ

コンピテンシとは,高い業務成果を生み出す顕在化された個人の行動特性である。職種別に高い業績を上げている個人の行動特性(例えば「ムードメーカ」「論理思考」など)を分析し,その行動特性を評価基準として従業員を評価する。

コンピテンシモデルは,人材の評価や育成の基準とするために,恒常的に成果に結び付けることができる個人の行動や思考特性を定義したものである。

リスキリング (reskilling)

日本でリスキリングは,「学び直し」と訳されることが多い。そのため社会人が大学などで学び直すリカレント教育や障害学習と混同されがちであるが,似て非なるものである。

リスクリングは,英語の「reskill」の動名詞で,「新しいスキルを身につけさせる」という意味がある。企業が従業員に新しいスキルを身につけさせ,デジタル化などで社内からなくなっていく職種から新しい職種に移ってもらうことを指す。

表 リスキリングとリカレント教育の違い
リスキリング リカレント教育
期間 短期間(6 ~ 18 か月) 長期間(反復)
背景 デジタル化・自動化がもたらす雇用の消失 生涯学習
目的 学習,スキル習得,職種転換 学習
実施責任 企業(行政) 個人
講座提供 民間企業 大学などの教育機関
学習分野 主にデジタル分野 広範囲

政府は 2023年6月に閣議決定した成長戦略「新しい資本主義実行計画」の改訂版などで,リスキリングの支援など労働市場改革を進める方針を示している。今後,日本でも急速にリスキリングの取り組みが広がっていくと想定される。

CDP (areer Development Program:キャリアデベロップメントプログラム)

企業が継続雇用の前提として,従業員に対して他社でも通用する技術・能力の維持責任を求める一方,企業も従業員の能力開発を積極的に支援する。

MBO(Management by Objectives:目標管理制度)

自ら設定した目標の達成を目指して従業員が主体的に業務に取り組み,その達成度に応じて評価が行われることである。

企業や組織の目標管理の仕組みとして OKR(Objectives and Key Results)を活用するとき,OKR の目標(Objectives)は一定期間でのストレッチゴールで人を鼓舞する内容とし,主な結果(Key Results)は定量的なものにする。

ワークライフバランス

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章によれば,「仕事と生活の調和が実現した社会」の姿として,具体的に以下のような社会を目指すべきであるとしている。

就労による経済的自立が可能な社会
経済的自立を必要とする者とりわけ若者がいきいきと働くことができ,かつ,経済的に自立可能な働き方ができ,結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて,暮らしの経済的基盤が確保できる。
健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
働く人々の健康が保持され,家族・友人などとの充実した時間,自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てる豊かな生活ができる。
多様な働き方・生き方が選択できる社会
性や年齢などにかかわらず,誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており,子育てや親の介護が必要な時期など個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき,しかも公正な処遇が確保されている。
ワークシェアリング

ワークシェアリングは,仕事(work)と共有(sharing)を組合わせた言葉で,人々の間で雇用を分かち合うことを意味し,労働時間の短縮によって仕事の機会を増やす考え方である。

ワークシェアリングは 2 タイプに大別される。

雇用維持型
一時的な業績悪化,あるいは中高年等の余剰人員の発生に対処するため,1 人あたりの労働時間を少なくすることで雇用を維持しようとするもの
雇用創出型
1 人のフルタイム従業員が行っていた仕事を,複数人のパートタイム等の短時間雇用で賄うことで,多くの人々に雇用機会を与えるもの
ダイバーシティ

ダイバーシティ(Diversity)は,翻訳すると「多様性」の意味になる。ダイバーシティマネジメントは,企業活動に人種や性別などの違いから生じる様々な価値観を取り込むことによって,新たな価値の創造や組織のパフォーマンス向上につなげようとする経営手法である。

企業活動において女性の活躍の場を拡大したり,障がい者・高齢者・若年者を積極的に雇用することなどがダイバーシティマネジメントの事例である。

成果・能力主義

能力主義と実績主義の徹底,経営参加意識の醸成,業績向上へのインセンティブなどを目的に,職務と能力,業績を基準に報酬を決める。

人事評価の落とし穴

人事評価には次のような心理的変更に気をつけて,公正かつ厳密に実施する必要がある。

ハロー効果
評価項目の一部が飛び抜けて高いときに,その評価に引きずられて他の項目も根拠なく高評価になってしまうこと。
中心化傾向
評価が中心に偏ってしまうこと。例えば 5 段階評価において,十分に実績を把握できていない項目の評価が "3" に集中してしまうこと。
寛大化傾向
考課者の自信欠如や個人的感情から,評価が甘くなってしまうこと。例えば,長期の研修などで行動を共にしたときなどに,「情が移ってしまう」など。
論理誤差
ある評価項目と論理的な関係がある別の項目について,調査することなく同じ評価を与えてしまうこと。例えば,プログラミングの知識が豊富な者に対し,論理的思考力に同等の評価を与えてしまうなど。
アクションラーニング

自社が直面する経営課題に対して参加者が自ら施策を立案し,問題解決に向けた取組みを実践していく学習方法。

④ 行動科学

ロジカルシンキング,垂直思考,水平思考,仮説思考,グループダイナミクス,親和図,ブレーンストーミング,マズロの欲求段階説,動機づけ・衛生理論,XY 理論,期待理論,内発的動機づけ,PM 理論,SL(Situational Leadership)理論,コンティンジェンシー理論,シェアードリーダーシップ,サーバントリーダーシップ
マズロの欲求段階説

1943 年,アメリカの心理学者エイブラハム・マズロは,「人間の動機に関する理論 (A Theory of Human Motivation)」という論文を発表した。これまでの常識を打ち破るこの論文でマズロは,欲求の段階,つまりベーシックな生理的欲求――食べ物,暖かさ,水など――が最下層にあり,その上に安全の欲求,帰属の欲求,承認の欲求,そしていちばん上に自己実現の欲求が重なるピラミッドを描いた。現在でも,この「欲求段階説」は,消費の重要な要素を理解し,消費者の行動やその理由を説明する上で,もっとも有効なモデルとして知られる。

マズロの欲求 5 段階説
段階 欲求 説明 分類
5 自己実現の欲求 社会に貢献したい,創造性を発揮したいなどの欲 精神的欲求
4 自尊の欲求 成功,評判,地位などへの欲
3 愛・所属の欲求 友情,家族愛,親密な関係などへの欲
2 安全欲求 家族や健康の安全,安心,資産,雇用の確保などへの欲 物理的欲求
1 生理的欲求 食料,水,睡眠,排泄,性交などへの欲
XY 理論

XY 理論は,ダグラス・マグレガー(Douglas Murray McGregor)が人間に対する 2 つの対立的な考え方を「権限行使による命令統制の X 理論」と「統合と自己統制の Y 理論」と提唱したものである。

X 理論は,「人間は本来なまけたがる生き物で,責任をとりたがらず,放っておくと仕事をしなくなる」という考え方。この場合,命令や強制で管理し,目標が達成できなければ懲罰といった,「アメとムチ」による経営手法となる。

Y 理論は,「人間は本来進んで働きたがる生き物で,自己実現のために自ら行動し,進んで問題解決をする」という考え方。この場合,労働者の自主性を尊重する経営手法となり,労働者が高次元欲求を持っている場合有効である。

PM 理論

PM 理論とは,リーダシップは「P機能」と「M機能」という 2 つの柱で構成されているとする理論で,2 つの機能の強弱の組合せでリーダのタイプを類型化して表す。

P 機能(Performance function)
計画立案,指示,叱咤などによってチームの生産性を高め,目標達成に向けてチームをけん引していく能力
M 機能(Maintenance function)
チーム構成員同士の人間関係を良好に保ち,チームワークを深める能力

各機能が強い場合を大文字 (P,M),弱い場合を小文字 (p,m) で表し,その組合せで 4 つのタイプに当てはめる。

表 PM 理論
M 機能(集団維持機能)
P 機能
(目標達成機能)
Pm 型
仕事はできるが,メンバの面倒見は悪い
PM 型
生産性を高める力,集団をまとめる力が共にある
pm 型
成果を上げる力がなく,メンバの面倒見も悪い
pM 型
メンバの面倒見は良いが,成果を上げる能力が今一つ
SL 理論(Situational Leadership 理論)

ハーシィ及びブランチャードが提唱した,教示的,説得的,参加的,委任的の四つに,部下の成熟度レベルによって,リーダシップスタイルを分類した理論。部下の成熟度によって,マネジメントする人間のリーダシップがどのように変化するかを説明するものである。リーダシップをタスク(仕事)志向,人間関係志向の 2 軸に分けて有効なリーダシップを示している。

  1. 未熟な部下には仕事面を中心に指導する指導(指示)型
  2. 部下の成熟に従って,徐々に人間関係を強めていく説得(コーチ)型
  3. さらに成熟すると仕事面の指導が少なくなる相談(カウンセリング)型
  4. 最終的には,リーダシップを弱め,権限や責任を部下に委譲する委任(エンパワーメント)型
リーダシップの変化
図 リーダシップの変化
演習問題

リーダーシップを“タスク志向”と“人間関係志向”の強弱で四つの型に分類し,部下の成熟度によって,有効なリーダーシップの型が変化するとしたものはどれか。

  1. SL 理論
  2. Y 理論
  3. コンピテンシモデル
  4. マズローの欲求段階説
(出典)平成25年度 秋期 IT ストラテジスト試験 午前2 問21

正解は,1. である。

コンティンジェンシ理論

コンティンジェンシー理論とは,いついかなる状況でも高い成果を発揮する唯一最善なリーダーシップは存在せず,外部環境の変化に応じて望ましいリーダーシップのスタイルも変化すべきだとする考え方を指す。なお,コンティンジェンシー(contingency)とは偶然性や偶発性という意味である。

1940 年頃までは,リーダーシップは「資質」の要素が大きいとされてきたが,1960 年代にコンティンジェンシー理論が説かれると,「状況に応じて役割を変えるべきもの」だというリーダーシップのあらたな考え方が広がった。

ゴールマンの 6 つのリーダーシップ
ゴールマンの 6 つのリーダーシップ
リーダーシップ 適した組織の特徴 具体的な実践方法
ビジョン型
Vision
メンバーのモチベーション・能力が高い メンバーに達成難度が高めのビジョン(目標)のみを提示,プロセスは任せる。リーダーは到達時点を掲げ,メンバー(部下)が舵を取る。
コーチ型
Coaching
メンバーとの関係が良好/やる気のあるメンバーを成長させたい まずメンバーの性格・特徴を把握しコミュニケーションを取って自主性を引き出しながら目標達成へと促す。中長期的な目標達成に適する。
仲良し型
Democratic
リーダーの能力が足りない/メンバーの人柄・関係が良い リーダー自身が短所や力不足な点を認め,その部分をメンバーに補ってもらう。リーダーひとりではまかないきれない時などに有効
調整型
Affiliative
メンバーのモチベーションが高い/組織の関係性を良くしたい メンバーの自主性や能力を尊重しメンバーと一緒に意思決定をする。メンバーの責任意識を高め結束力を高めるのでチームの総合的な力を底上げしたいときに有効
率先垂範型
Pacesetting
リーダーの実務能力が高い/メンバーのモチベーション・能力がある程度高い リーダーとして部下たちの模範となる。自らハードワークもこなし「こうして働く」という具体例を部下に示す。強制力が強すぎるとメンバーの反感を買う。
命令型
Commanding
メンバーの自主性がない/短期間で成果を出す必要がある リーダーは自身の命令に対してすぐに反応するようメンバーに促す。度が過ぎると嫌われるのでリーダーは自身の影響力を高める必要あり

⑤ リスクマネジメント

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画),BCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント),JIS Q 22301(ISO 22301),事業影響度分析(BIA),レジリエンス
JIS Q 22301 (ISO 22301)

JIS Q 22301:2013 が要求事項を規定している対象は,事業継続マネジメントである。

(3) 経営組織

階層型組織(ピラミッド型組織),フラット型組織,職能別組織,ラインアンドスタッフ組織,機能別組織,事業部制組織,マトリックス組織,カンパニー制組織,DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自立組織),プロジェクト組織,CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者),CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者),CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者),CISO(Chief Information Security Officer:最高情報セキュリティ責任者),CPO(Chief Privacy Officer:最高プライバシー責任者),CFO( Chief Financial Officer : 最高財務責任者), COO ( Chief Operating Officer:最高執行責任者),CoE(Center of Excellence)
階層型組織(ピラミッド型組織)

経営者,部長,課長,平社員といった階層に分かれた組織。

職能別組織

購買・生産・販売・財務などの仕事の性質によって,部門を編成した組織である。

事業部制組織

業務遂行に必要な職能と利益責任を,製品別,顧客別又は地域別にもつことによって,自己完結的な経営活動が展開できる組織である。

マトリックス組織

構成員が,自己の専門とする職能部門と特定の事業を遂行する部門の両方に所属する組織である。事業部制組織と職能性組織との両方の特徴を生かそうとする組織である。

プロジェクト組織

特定の課題のもとに各部門から専門家を集めて編成し,期間と目標を定めて活動する一時的かつ柔軟な組織である。

CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)

すべての業務を統括する役員のこと。

CIO (Chief Information Officer:最高情報責任者)

経営から求められる役割は,ビジネス価値を最大化させるITサービス活用の促進である。

CISO(Chief Information Security Officer : 最高情報セキュリティ責任者)

情報セキュリティ関係の役職。

CPO(Chief Privacy Officer : 最高プライバシー責任者)

情報セキュリティ関係の役職。

CFO (Chief Financial Officer)

企業経営のための財務戦略の立案と遂行を担う。

CTO (Chief Technology Officer)

企業の研究開発方針の立案と実施を担う。

CLO (Chief Legal Officer)

企業の法令遵守の体制の構築と運用を担う。

(4) 経営環境の変化

企業環境の内部化,IR(Investor Relations),ディスクロージャー,アカウンタビリティ, レピュテーションリスク, 持株会社, グループ経営, SRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資),環境経営,サテライトオフィス,在宅勤務,SOHO(Small Office Home Office),企業市民,ギグエコノミー
ディスクロージャ

ステークホルダ(利害関係者)に対して,経営や財務の状況など各種の情報を公開する。

アカウンタビリティ

企業が株主から委託された資金を適正な使途に配分し,その結果を説明する説明があるとすること。

SRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)

SRI は,社会的責任投資と訳され,企業への株式投資の際に,財務的分析に加えて,企業の環境対応や社会的活動(CSR 活動)などの評価,つまり企業の社会的責任の評価を加味して投資先企業を決定し,かつ責任ある株主として行動する投資手法である。

サテライトオフィス

本拠地から離れた場所に設置し,遠隔勤務を可能とする形態。

SOHO (Small Office Home Office)

自宅でビジネスを行う形態。

(5) 社会における IT 利活用の動向

① IT の進展とそれに伴う社会の変化

AI 言語モデルのスケーリング則

② 社会の変化と IT 利活用の動向

第4 次産業革命,Society5.0,超スマート社会,データ駆動型社会,デジタルガバナンス・コード2.0,アジャイル・ガバナンス,デジタルトランスフォーメーション(DX),コーポレートトランスフォーメーション(CX),グリーントランスフォーメーション(GX),GX リーグ基本構想,カーボンニュートラル,カーボントレーシング,国家戦略特別区域法(スーパーシティ法),スーパーシティ構想,データスペース,FFT(Data Free Flow with Trust:信頼性のある自由なデータ流通)

業務分析・データ利活用

  • 代表的な OR やIE の手法,データの利活用によって問題を解決するための手法を修得し,適用する。
  • データの収集,整理,分析,ビジュアル表現などの手法を修得し,適用する。

(1) OR・IE

オペレーションズリサーチ(OR : Operations Research)とは,数学的・科学的手法に基づいて,有限の資源を有効に活用し,最大限の利益を達成するための意思決定の支援を行うものである。

インダストリアルエンジニアリング(IE : Industrial Engineering)とは,企業が経営資源をより効率的・効果的に運用できるよう,作業手順,工程,管理方法などを分析・評価して,改善策を現場に適用できるようにする技術である。生産工学,経営工学などと訳される。

① 線形計画法

シンプレックス法,配分問題,輸送問題,DP(Dynamic Programming:動的計画法)

線形計画法は,最大の利益・効果(最適解)を得るために,資源(材料や時間など)をどのように配分するかを求める手法である。資源の使用条件(制約条件)が 1 次不等式で表せる場合に適用することができる。例えば,生産に使用する原材料に制限がある場合,利益を最大にするために原材料をどのような割合で使うかを決定する際に使用する。

② 在庫問題

安全在庫,発注費用,在庫費用,EOQ(Economic Ordering Quantity:経済的発注量),発注点,ABC 分析,季節変動
安全在庫

過少在庫が発生するのを防ぐために設定する。

過剰在庫も過少在庫も防ぐことが発注のポイントであるが,発注方式としては次のような考え方がある。

定期定量の発注
定期的に(例えば,決められた日,または,決められた曜日ごとに)一定量を発注する。
不定期定量の発注
いつ発注するか決められていないが,発注時に一定量を発注する。
定期不定量の発注
定期的に発注するが,発注量はその都度,変動する。
不定期不定量の発注
発注時期と発注量が予め決められていない。
発注費用

発注費用とは,発注計画から支払いまでの発注にかかるすべての費用で,人件費,電話代,伝票代などである。

在庫費用

在庫費用(在庫管理費用)とは,在庫から出庫に至る過程で発生するもので,人件費,倉庫料,光熱費などである。在庫金額に対する在庫費用の割合が在庫管理費用率である。

在庫管理費用率 = 年間在庫管理費用 ÷ 在庫金額
EOQ(Economic Ordering Quantity:経済的発注量)

定量発注方式は,在庫を維持するための費用(在庫費用),発注に必要な費用(発注費用)のいずれもが最小であることが好ましい。

1 回当たりの発注量を多くすれば,発注回数が少なくても在庫が増えるが,在庫が増えれば在庫費用(在庫管理費用)がかかる。しかし,在庫管理費用を抑えるために在庫数量を少なくすれば発注回数を増やす必要があり,かえって発注費用がかさむという問題が生じる。

そこで,在庫費用と発注費用をできるだけ低く抑えようとした発注量とはどんなものであるかを示したのが,在庫費用と発痛費用の総費用が最小となる経済的発注量 (EOQ : Economic Ordering Quantity) である。

経済的発注量 = ((2 × 年間販売量 × 1 回当たりの発注費用) ÷ (単価 × 在庫管理費用率))1/2
発注点

発注点(発注の時期)が最適であれば,在庫の過剰,過少の問題は解決する。

最適な発注点の考え方は,理屈の上では,在庫量が最小在庫量に達してしまう時点よりも,リードタイムの分だけ早い時期になる。

ABC 分析

ABC 分析とは,重要度の高い項目を重点的に管理するため,どの項目の重要度が高いかを分析する手法で,多品目の製品・商品に対しての効率的な管理を行う手法として用いられる。

在庫品を A,B,C の 3 つのグループに分けて管理することから ABC 管理とも呼ばれる。また,たくさんの在庫品の中の 20 % の数量で全体の金額の 80 % 前後を占める,つまり,数量全体の 80 % 前後の在庫品は,金額では全体の 20 % にしかならないという傾向から「20 : 80」の法則とも呼ばれている。

季節変動

季節商品を中心に,商品によっては特定の月に売上高が伸びたり低くなったりする傾向がある。この売上高の変更の傾向を数字でとらえたものが季節変動指数である。

特に,季節商品は,商品の特性や流行を見極めて短期間に販売を行う必要があるため,在庫管理が重要なポイントになるが,季節による荷動きの違いがわかる季節変動指数を活用すると効果的である。

過去 3 年の売上高から季節変動指数を求める手順を以下に示す。

  1. 過去 3 年間の各月の合計を求める。
  2. 各月の合計を 3 で割って平均を出す。
  3. 3 か年の平均を 12 か月合計し,12 で割って年間の平均値を出す。
  4. 年間の平均値を各月の平均値で割って百分比を求めると季節変動変数が求められる。
定量発注方式

在庫量が,あらかじめ計算によって求められた基準量である発注点を下回った時点で発注を行う方式で,発注点方式という。定量発注方式における発注量は,次式で求める。

定量発注方式の発注量 = 調達期間 × 予定出庫量 + 安全在庫量

定量発注方式は,ABC 分析の結果で B ランクとされた,調達期間が短い品目,消費量が安定している品目などを対象とすることが多い。

定期発注方式

発注時点の在庫量に関わらず,一定の期間(発注サイクル)ごとに発注を行う方式で,需要予測を行って毎回発注量を求める。定期発注方式における発注量は,次式で求める。

定期発注方式の発注量 = (調達期間 + 発注間隔) × 予定出庫量 - 現在在庫量 - 発注残 + 安全在庫量

定期発注方式は,需要量の変化が大きい品目や,ABC 分析の結果で A ランクとされた重要在庫を対象とすることが多い。

二棚法(2 ビン法,ダブルビン方式)

在庫を 2 つのまとまり A,B に区切っておいて,A の在庫を使い終わった時点で B を使い始め,その間に A を補充するということを A → B → A と交互に行う方式。

管理が簡便でコストが低くおさえられるため単価が安い品目や,ABC 分析の結果で C ランクとされた品目を対象とすることが多い。

ダブルビン方式の特徴は,発注点と発注量が等しく,都度の在庫調査の必要がない。

③ 日程計画

日程計画,プロジェクトスケジューリング,フローショップ,ジョブショップ,アローダイアグラム,クリティカルパス

④ ゲーム理論

選択基準,戦略型ゲーム,純粋戦略,混合戦略,展開型ゲーム,ペイオフ行列(利得表),ゼロ和2 人ゲーム,非ゼロ和 2 人ゲーム,マクシミン原理,ミニマックス定理,ナッシュ均衡,デシジョンツリー,決定理論,期待値原理,安定性原理,最尤未来の原理,要求水準原理,ラプラスの原理,ベイジアン理論

ゲーム理論(Game Theory)は,複数の人間による合理的な意思決定の方法を考える理論である。この問題のように将来の起こり得る状態は予想できても,その発生確率が不明である場合の意思決定の判断基準として用いられる。

純粋戦略

ある一つの選択肢を確定的に選ぶ戦略である。ジャンケンでいえばグー・チョキ・パーのいずれかを出し続けるということになる。絶対優位・絶対劣位の状況でとられる戦略である。

混合戦略

利得を最大化しようとするために,各選択肢をある比率で選ぶ戦略である。ジャンケンでいえばグー・チョキ・パーを組み合わせて使うということになる。

マクシマックス原理

各戦略を選択した場合に得られる最大利得が最も大きくなる戦略を選ぶ楽観的な考え方である。

マクシミン原理

マクシミン原理は,各戦略を選択した場合に得られる最小利得が最も大きくなる戦略を選ぶ保守的な考え方である。

ベイジリアン理論

ベイズ統計は,事前分布・事後分布といった確立に関する考え方に基づいて体系化されたものであり,ディープラーニング,迷惑メールフィルタなどに利用されている統計理論である。

演習問題

いずれも時価 100 円の株式 A ~ D のうち,一つの株式に投資したい。経済の成長率を高,中,低の三つに分類したときのそれぞれの株式の予想値上がり幅は,表のとおりである。マクシミン原理に従うとき,どの株式に投資することになるか。

表 株式の予想値上がり幅(単位 円)
経済の成長
株式 A 20 10 15
株式 B 25 5 20
株式 C 30 20 5
株式 D 40 10 -10
  1. A
  2. B
  3. C
  4. D
(出典)令和3年 秋期 応用情報技術者試験 午前 問75

正解は,1. A である。

⑤ IE(Industrial Engineering : 経営工学)分析手法

サーブリック,作業分析,標準時間,余裕時間,稼働分析,オペレーションスケジューリング

⑥ 検査手法

検査特性曲線,不良率,消費者危険,生産者危険,非破壊検査,故障率曲線(バスタブ曲線),モンテカルロ法,実験計画法
検査特性曲線

抜取検査方式の特性を表わすため,ロットの不良率に対してその抜取検査で合格となる確率を示した曲線は,検査特性曲線(OC 曲線)といわれ,OC 曲線はロットの不良率が 0 [%] のとき,ロットの合格する確率は 100 [%] となる。

OC 曲線(Operating Characteeristic curve)とは,製品の製造過程などで抜き取り検査を行う際に,製造ロットの不良率と検査合格率の関係を表したグラフのこと。検査の方式や基準によって異なる曲線となり,どのような検査方式にすべきかを検討する際などに利用される。

OC 曲線の縦軸にはロットの合格率を,横軸には製品の不良率を取る。不良率が低ければ合格率は高まり,不良率が高ければ合格率は下がるため,グラフは左上から右下へ緩やかなカーブを描く。

OC 曲線
図 OC 曲線

抜取検査方式において,不合格品質のロットが合格する確率は,消費者危険(consumers' risk)といわれ,合格品質のロットが不合格となる確率は,生産者危険(producers' risk)といわれる。

故障率曲線(バスタブ曲線,bathtub curve)

故障率が時間の伴って減少,一定,増加の順になっている曲線で,非修理系アイテムの故障曲線として用いられる。

バスタブ曲線の偶発故障期間は,故障率がほぼ一定とみなせる期間であり,アイテムの通常の使用期間に相当する。この期間の長さは,一般に,耐用寿命といわれる。

バスタブ曲線の磨耗故障期間は,アイテムの老朽化による故障が多く発生する期間である。そのため,この期間においては予防保全によるアイテムの取替えが効果的である。

バスタブ曲線
図 バスタブ曲線

ちなみに,縦軸に故障率,横軸に時間を取ったときの形状が西洋の浴槽の断面に似ているのでこのように呼ばれている。船底形曲線ともいう。

モンテカルロ法

モンテカルロ法は,数値解析の分野において,確率を近似的に求めるために使われる手法である。乱数による $n$ 回のシミュレーションを行い,ある事象が $m$ 回起これば,その事象の起こる確率は $m/n$ で近似できる。試行回数 $n$ が大きくなるほどよりよい近似値を得ることができる。

⑦ 品質管理手法

品質特性,品質機能展開,不良率推定,時系列分析,管理水準,品質保証,QC 七つ道具(層別管理,ヒストグラム,パレート図,散布図,特性要因図,チェックシート,管理図),新QC 七つ道具(親和図法,連関図法,系統図法,マトリックス図法,マトリックスデータ解析法,PDPC(Process Decision Program Chart:プロセス決定計画図)法,アローダイアグラム法),$\bar{X}$-R 管理図,p 管理図,管理状態,群内変動と群間変動,群分け
品質特性
品質機能展開

品質機能展開は,製品開発の際に用いられ,表の行に目的とする品質を,列に直接管理可能な要素を記入した 2 元表を用い,互いの関係付けから重要性の高い品質要素は何かを明らかにする手法である。

不良率推定
時系列分析

欠陥は,混入した工程で全て摘出することが利用である。特に設計・製造の各工程で,十分に欠陥を摘出せずに後工程に進むと,後工程の工数を増大させる要因となり,最終的にプロジェクトに悪影響を及ぼす可能性もある。

管理水準
品質保証
QR 七つ道具

QC 七つ道具は,データを定量化して分析するための 7 つの手法で,これにより様々な問題や現象を具体的な数値として把握できる。

表 QC 七つ道具
手法 概要
パレート図 現象別に層別してデータをとることにより,重要な不良や問題点を見つけ出す。例として,品質改善策の立案に際し,原因別の不良発生件数を分析し,優先取組みテーマを選択する。
特性要因図 結果とそれに影響を及ぼすと思われる要因との関連を整理し,体系化して,魚の骨(フィッシュボーンチャート)のような形にまとめる。
グラフ データの比較が目で見てわかりやすくなる。データの全体像がわかりやすくなる。
管理図 工程が安定しているのか見ることができる。自然なバラツキと異常原因のバラツキを区別,管理することができる。
チェックシート データの分類や項目別の分布や出現状況を把握することができる。例として,新製品の発表会に際し,会場の準備や関係者への連絡などに落ち度がないような計画を立てるために用いられる。
ヒストグラム データをいくつかの区間にわけてその区間のデータを集める。データのバラツキを把握することができる。
散布図 2 つのデータの間にどんな関係があるのか,特性の関係(相関関係)を見ることができる。
層別 データをグループ別に分けて問題点を把握する。
新 QC 七つ道具

定量的(数値的)な分析を行う QC 七つ道具に対して,印象や感覚などの定性的データの分析を行う技法が新 QC 七つ道具である。

表 新 QC 七つ道具
種類 説明
PDPC 未経験の活動や試行錯誤が困難な活動について,実行過程における不測の事態をあらかじめ想定した活動計画を立案する手法。例として,ライフサイクルの短い商品の販売計画の策定に際し,競合他社の出方を想定して,幾つかの代替策を準備する。
親和図法 アンケートや討議によって得られたキーワードを記入したカードを関連性によってグループ化して,課題の構造を明らかにする手法。事実,意見,発想を小さなカードに書き込み,カード相互の親和性によってグループ化して,解決すべき問題を明確にする。
連関図法 原因と結果,目的と手段の関係が複雑に込み入った課題について,それぞれの関係を図式化することで,課題の構造を明らかにする手法。解決すべき問題を端か中央に置き,関係する要因を因果関係に従って矢印でつないで周辺に並べ,問題発生に大きく影響している重要な原因を探る。
系統図法 目的と手段を分析し,さらにその手段の実施に必要な手段を明らかにしていきながら,目的を達成するための具体的な手段を分析する手法。目的を達成するための手段を導き出し,更にその手段を実施するための幾つかの手段を考えることを繰り返し,細分化していく。
マトリックス図法 行と列で表される 2 次元のマトリックス表を用いて,複数項目の関連性を分析する手法
マトリックスデータ解析法 マトリックス図法によって得られた分析結果を基に,主成分分析や重要度による重み付けなどによって数値的な解析を行う手法
アローダイヤグラム法 アローダイヤグラムを用いて最適な作業計画を立案する手法
$\bar{X}$-R 管理図

$\bar{X}$-R 管理図(X-R Chart)は,工程の状態について最も多くの情報が得られる管理図で,例えば寸法,硬度,感度,時間,温度,抵抗,電流,抗張力などの品質特性を計量値で管理する場合に多く用いられる。$\bar{X}$ 管理図は,分布の平均値の変動によって製造工程を管理し,R 管理図は,ばらつきの変動によって製造工程を管理するためのものである。通常,この 2 つの管理図は,$\bar{X}$-R 管理図として一緒に用いられる。

7 の法則(The Rule of Seven)は,ある値を定期的に観測している場合に,同じ結果が 7 回連続で記録されたときには,偶然ではなく何らかの原因があるとみなす品質管理の考え方である。平均を間に上振れする確率と下振れする確率がいずれも 50 % だとすると,上振れまたは下振れが連続で 7 回発生する確率は 50 % → 0.781 % となり,単なる偶然である可能性は極めて小さくなるからというのが連続 7 回の根拠である。

p 管理図
管理状態
群内変動と群間変動
群分け

プロジェクト群の特性の例を次表に示す。

表 抽出したプロジェクト群の特性
分類 K 社基準でのプロセス品質とプロダクト品質の評価 最終的なプロダクト品質 進捗の状況
α 群 全工程を通じて,おおむね安定的に推移 良好 全工程を通じて順調
β 群 テストの一部の工程で欠陥の摘出が多いが,その他の工程は良好,又は,若干の課題があるものの良好 良好,又は,若干の課題があるものの良好 テスト工程で多くの欠陥が摘出されて納期遅れが発生,又は,多くの欠陥への対処に計画外のコストを投入してリカバリ
(出典)平成30年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ問題 問2「システム開発プロジェクトの品質管理」
TRIZ

特許を分析して生まれた問題解決技法であり,問題(矛盾)を創造的・発明的に解決するための弁証法的な思考法を具体的にまとめたもの。

⑧ 需要予測

最小二乗法,決定係数,相関係数,移動平均法,指数平滑法

⑨ 業務分析・業務計画

パレート分析,G-P 分析(Good-Poor Analysis),フォーカスグループ,質問紙法,観察法,ブレーンストーミング,ブレーンライティング,クラスタ分析法,指数平滑法,デルファイ法,モンテカルロ法,決定木,モデル化(確定モデル,確率モデル)
パレート分析

プロジェクトの状況を把握するために使用するパレート図の用途として,項目別に層別して出現度数の大きさの順に並べるとともに累積和を示した図であり,主要な原因を識別するために用いる。

パレート図
パレート図は,項目別に層別して,出現頻度の大きさの順を並べるとともに,累積和を示した図である。
パレート図は,改善すべき事項(問題)の全体に及ぼす影響の確認,及び改善による効果の確認に使用する。この技法によって,“多数の些細な事項”ではなく“少数の重要な事項”が明確になり,対策を集中することができる。パレート図による分析を実施する前に,問題の状況に関連するデータを収集するための最も一般的な技法として,後述のチェックシートがある。また,パレート図によって,実際に解決すべき“少数の重要な事項”を示した後,後述の特性要因図によって原因を見いだすことができる。

パレート図の作成手順を次に示す。

  1. データの分類項目を決定する(不適合項目,欠点項目,材料,機械,作業者など)。
  2. 期間を定め,データを収集する。
  3. 分類項目別にデータを集計する。
  4. 分類項目ごとに累積数を求め,全体のデータ数に対する % 百分率を計算する。
  5. 項目の大きい順に棒グラフにする。
  6. 項目の累積 % 百分率を折れ線グラフにする。
  7. 必要事項を記入する(目的,データ数,期間,作成者など)。
クラスタ分析法

観測データを類似性によって集団や群に分類し,その特徴となる要因を分析する手法。

デルファイ法

デルファイ法(delphi method)は,技術開発戦略の立案に必要となる将来の技術動向の予測などに用いられる技法であり,1. 複数の専門家からの意見収集,2. 得られた意見の統計的集約,3. 集約された意見のフィードバックを繰り返して最終的な意見に収束させていくものである。

デルファイ法
図 デルファイ法
決定木

ある企業での例として,顧客データについて,顧客を性別・年齢別・職業・年収など複数の属性を組み合わせてセグメント化し,蓄積された大量の購買履歴データに照らして商品の購入可能性が最も高いセグメントを予測することに,決定木分析は活用される。

ワークサンプリング法

ワークサンプリング法は,ある時点での観測対象が作業内容のどの状態にあったかという瞬間観測を何回か行い,観察記録の回数の割合から各作業時間がどのくらいであるかを統計学的に推定する方法である。

PTS 法(規定時間標準法)

作業動作を基本動作にまで分解して,基本動作の時間標準テーブルから,構成される基本動作の時間を合計して作業時間を求める。

実績資料法

作業票や作業日報などから各作業の実績時間を集計し,作業ごとに平均して標準時間を求める。

ストップウォッチ法(時間観測法)

実際の作業動作そのものをストップウォッチで数回反復測定して,作業時間を調査する。

データ利活用

① データの収集

調査データ,実験データ,人の行動ログデータ,機械の稼働ログデータ,ソーシャルメディアデータ,GIS データ,量的データ,質的データ,1 次データ,2 次データ,メタデータ,構造化データ,非構造化データ,時系列データ,クロスセクションデータ,オルタナティブデータ,Web クローリング,スクレイピング,データレイク,データのサイロ化

② データの加工・分析

データ結合,名寄せ,外れ値・異常値・欠損値の処理,ストップワード除去,標準化,二値化,離散化,対数変換,アノテーション,季節調整,移動平均,周期性,BI(Business Intelligence),データマイニング,テキストマイニング,コレスポンデンス分析,アソシエーション分析,アドホック分析,リフト値,ビッグデータ,オープンデータ,パーソナルデータ,CDP(Customer Data Platform:カスタマーデータプラットフォーム),データサイエンスのサイクル(課題抽出と定式化,データの取得・管理・加工,探索的データ解析,データ解析と推論,結果の共有・伝達,課題解決に向けた提案),機械学習を用いたデータ分析,シミュレーション,シミュレーションのデータ同化,パターン発見,最適化,データサイエンティスト,データドリブンマーケティング

③ データ分析における統計的手法

母集団,標本抽出(国勢調査,アンケート調査,全数調査,単純無作為抽出,層別抽出,多段抽出),精度と偏り,統計的バイアス(選択バイアス,情報バイアス,交絡バイアス),認知バイアス(ハロー効果,バンドワゴン効果,正常性バイアス,確証バイアスなど)

④ 図表やグラフによるデータの可視化

棒グラフ,折れ線グラフ,箱ひげ図,ヒートマップ,レーダーチャート,モザイク図,クロス集計表,分割表,相関係数行列,散布図行列,デンドログラム,複合グラフ,2 軸グラフ,ロジックツリー,コンセプトマップ,シェープファイル,共起キーワード

会計・財務

  • 企業活動と会計,財務会計と管理会計を修得し,適用する。
  • 財務諸表の分析手法を修得し,適用する。
  • キャッシュフロー会計,資金計画と資金管理,資産管理,経済性計算を修得し,適用する。

(1) 企業活動と会計

① 売上と利益の関係

販売量,機会損失,利益図表,限界利益図表,目標利益売上高,費用分解原価計算,原価制度,原価分析,原価構成,原価管理,変動損益計算書,損益分岐点

費用には,売上高の増減に関わらず常に一定の金額が発生する固定費と,売上高の増減に応じて金額が変動する変動費がある。売上高が費用を上回ると,差額が利益になる。反対に,売上高より費用が上回ると赤字になり,差額が損失となる。

利益(損益) = 売上高 - 費用 = 売上高 - (固定費 + 変動費)

売上高と費用が一致する金額を損益分岐点売上高(損益分岐点)と呼ぶ。損益分岐点を境に,売上高のほうが大きくなれば利益となり,売上高よりも費用が大きくなれば損失になる。損益分岐点売上高は,次式で求めることができる。

変動費率 = 変動費 / 売上高
損益分岐点

損益分岐点分析で使用される主な指標とその計算式を示す。

損益分岐点売上高は,売上高と費用(固定費と変動費の和)の合計が等しく利益が 0 となる売上高を示す。

損益分岐点売上高 = 固定費 / (1 - 変動費率)

上式より,固定費または変動費率が小さいほど,損益分岐点売上高は低くなる関係にある。

損益分岐点比率は,実際の売上高に対する損益分岐点の割合を示し,この値が低いほど収益性が高く,かつ売上減少に耐える力が強いことを意味する。

損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 売上高 × 100

安全余裕率は,実際の売上高と損益分岐点の差がどれくらいあるかを示し,この値が高いほど経営に余裕があることを意味する。

(売上高 - 損益分岐点売上高) ÷ 売上高 × 100

限界利益率は,売上高に対する限界利益の割合を示す。

(売上高 - 変動費) ÷ 売上高 × 100
演習問題

A 社と B 社の比較表から分かる,A 社の特徴はどれか。

単位 億円
A 社 B 社
売上高 1,000 1,000
変動費 500 800
固定費 400 100
営業利益 100 100
  1. 売上高の増加が大きな利益に結び付きやすい。
  2. 限界利益率が低い。
  3. 損益分岐点が低い。
  4. 不況時にも,売上高の減少が大きな損失に結び付かず不況抵抗力は強い。
(出典)平成27年 秋期 IT ストラテジスト試験 午前2 問20

正解は,1. である。

売上高を X 億円とすると,A 社と B 社の利益は,それぞれ次式で求められる。

A 社利益 = 売上高 - 変動費 - 固定費 = X - 0.5X - 400 = 0.5X - 400
B 社利益 = 売上高 - 変動費 - 固定費 = X - 0.8X - 100 = 0.2X - 100

上式より,A 社は B 社と比べて,売上高の増加が大きな利益に結び付きやすい。

A 社と B 社の損益分岐点は,それぞれ次式で求められる。

A 社の損益分岐点 = 固定費 / (1 - 変動費率) = 400 億円 / (1 - 0.5) = 800 億円
B 社の損益分岐点 = 固定費 / (1 - 変動費率) = 100 億円 / (1 - 0.8) = 500 億円

A 社と B 社の売上と利益の関係を下図に示す。

図 売上と利益の関係
図 売上と利益の関係

② 企業会計の手順

仕訳帳,現預金出納帳,総勘定元帳

③ 決算の仕組み

中間決算,四半期決算,試算表,精算表,貸借対照表,損益計算書,キャッシュフロー計算書,株主資本等変動計算書,連結貸借対照表,連結損益計算書,連結キャッシュフロー計算書,連結株主資本等変動計算書,支配力基準,有価証券報告書,会計監査,決算公告,決算短信,のれん,IFRS
賃借対照表(B/S)

賃借対照表(B/S : Balance Sheet)は,一定時点(たとえば決算日)に,会社としてどれくらいの資産と負債及び純資産があるかを示す。

損益計算書(P/L)

損益計算書(P/L : Profit & Loss)は,一定期間(通常は 1 年間)にあげた売上とかかった費用,差し引いた利益がどれくらいかを示す。

日本の会計方式では,損益計算書は原則として発生主義が適用される。

現金主義
売上が入金された時点で売上に計上する,仕入先に代金を支払った時点で費用に計上する,というように現金の出入りに基づいて損益計算を行う方式。日本では,青色申告を行っている小規模事業者である個人事業主についてのみ認められている。
連結賃借対照表
演習問題

連結賃借対照表作成に関する相殺消去について,適切なものはどれか。

  1. 持分法適用会社相互間の債権と債務は,相殺消去しなければならない。
  2. 持分法適用会社に対する投資は,当該会社の資本と相殺消去しなければならない。
  3. 連結会社相互間の債権と債務は,相殺消去しなければならない。
  4. 連結会社相互間の売買取引に基づく棚卸資産の期末残高は,売上と相殺消去しなければならない。
(出典)平成25年度 秋期 IT ストラテジスト試験 午前2 問24

正解は,3. である。

連結損益計算書

我が国における,連結の対象となる子会社の範囲を決定する基準は,支配力基準である。

演習問題

次の条件において A 社の連結損益計算書を作成した場合の連結売上高は何億円か。

条件
  • A 社は,B 社の株式の 80 % を取得している。
  • B 社は,C 社の株式の 60 % を取得している。
  • B 社は,D 社の株式の 20 % を取得している。ただし,役員の派遣などはない。
  • A 社の売上高は,7,000 億円であり,その 10 % は,B 社に対するものである。
  • B 社の売上高は,3,500 億円であり,その 20 % は,D 社に対するものである。
  • C 社の売上高は,2,500 億円である。
  • D 社の売上高は,2,000 億円である。
  • A 社と B 社,B 社と D 社以外の相互間取引はない。
(出典)平成28年 秋期 IT ストラテジスト試験 午前2 問22

正解は,12,300 である。

連結売上高は,A 社,B 社,C 社の売上高を合計し,A 社と B 社の相互間取引を差し引く。

7,000 + 3,500 + 2,500 - 700 = 12,300 [億円]
有価証券報告書

証券取引所に上場している会社は,金融商品取引法に基づき,財務諸表を作成しており,その全容が「有価証券報告書」の形で情報公開されている。金融庁の Web ページ「EDINET (Electronic Disclosure for Investors' NETwork)」より,そのすべてをダウンロードできる。

IFRS(International Financial Reporting Standards : 国際財務会計報告基準)

独立民間非営利の基準設定機関である IASB が世界共通で利用できる会計基準を目指して設定している基準であり,2017 年現在,オーストラリアやカナダ,ユーロ圏,韓国など世界 110 か国以上で利用されている。

④ 財務諸表

流動資産,固定資産,有形固定資産,無形固定資産,繰延資産,流動負債,固定負債,純資産,株主資本,費用,収益,販売費及び一般管理費,営業損益,営業外損益,特別損益,発生主義,保守主義
流動資産

1 年以内に現金化される資産である。つまり,何にでもできる流動的な資産を意味し,現金は究極的な流動資産と言える。流動資産に計上される科目は,次のとおりである。

  1. 現金及び預金
  2. 受取手形及び売掛金(売上債権)
  3. 有価証券
  4. 商品,製品,仕掛品,原材料(棚卸資産)
  5. 繰延税金資産
  6. その他流動資産
固定資産

1 年以上会社にとどまって利用される資産のことで,有形固定資産,無形固定資産,投資その他固定資産がある。

固定比率は,自己資本に対する固定資産の割合を示す指標である。固定資産に投資した資金が,どの程度自己資本でまかなわれているかを表し,この数値が低いほど財務の健全性は高いと判断される。

固定比率 = 固定資産 ÷ 自己資本
有形固定資産

目に見る形の資産のことで,具体的には,建物,機械・装置,土地,車両運搬具,建設仮勘定などがあげられる。

有形固定資産は取得したときの価額で計上され,土地を除いて,資産価値の減少を費用として計上する減価償却が行われることが特徴である。

無形固定資産

無形固定資産とは,お金を支払って獲得した法律上または営業上の権利のことをいい,文字通り目に見えない資産のことをいう。代表的なものには,特許権や借地権などの法律上の権利,ソフトウェア,のれんがある。

投資その他の資産

現金によって回収されるまでに長期間を要する金融資産が中心である。投資有価証券,関連会社株式,出資金,長期貸付金,破産更生債権などがある。

繰延資産

当期に支出した特定の費用で,その効果が将来の期間に影響するものであるため,当期の費用とはせずに資産として計上し,効果が発現する期間に渡って償却していくものである。具体的には,以下のようなものがある。

  1. 株式交付金
  2. 社債発行費等(社債発行費,新株予約権発行費)
  3. 創立費
  4. 開業費
  5. 開発費
流動負債

1 年以内に返済する負債で,以下のようなものがある。

  1. 支払手形及び買掛金(買入債務)
  2. 短期借入金
  3. 前受金
  4. その他(未払法人税等,未払金,未払費用,賞与引当金)
固定負債

決算日から 1 年以後に返済する広い意味の借金のことで,社債,新株予約権付社債,長期借入金,退職給付金に係る負債(退職給付引当金)などがあげられる。

純資産

純資産の部は,株主資本,その他の包括利益累計額,新株予約権および少数(非支配)株主持分に区分される。

株主資本

純資産の主要項目である株主資本は,さらに資本金,資本剰余金,利益剰余金などに分類される。

資本金
会社を設立したときや増資をしたときに,会社に払い込まれたお金のこと。
資本剰余金
株主から払い込まれたお金のうち,資本金にしなかった金額をいう。
利益剰余金
会社自らが獲得した利益のうちの社内留保分である。損益計算書で計算された当期純利益(親会社株主に帰属する当期純利益)は,ここに加えられる。
費用

収益を得るためにかかったお金のこと。いわゆる,コスト,原価などのことである。

収益

企業の経済活動の結果として生じた代価の受け取り分のことで,売上高がその代表的なもの。その他の収益としては受取利息や配当,為替差益などがある。

営業損益

営業損益は,損益計算資料の項目を用いて,次式で求められる。

営業損益 = 売上高 - 売上原価 - 販売費及び一般管理費
発生主義

現金の出入り収支にかかわらず,売上や費用が確定した時点で収益・費用とする方式。発生から決済までの間は,売掛金,買掛金,未収金/未払費用,前払金/未払金などの勘定科目で管理する。期間損益計算上の基本原則である「費用収益対応の原則」に即した方式である。


  • 1 年基準(ワン・イヤー・ルール):決算日の翌日から 1 年以内に回収可能な資産を流動資産に,1 年以内に支払期限が到来する負債を流動負債として,固定資産または固定負債と区別する。

(2) 財務会計と管理会計

会計基準,国際会計基準,税効果会計,ソフトウェア会計,減損会計,時価会計,退職給付会計,リース会計,企業会計原則,財務諸表等規則,連結財務諸表規則,原価計算,個別原価計算,総合原価計算,標準原価計算,直接原価計算,ABC(Activity Based Costing:活動基準原価計算),原価企画
標準原価計算

実際に必要となった実際原価ではなく,統計などに基づいて算定した標準原価によって製品原価を計算する方式である。標準原価と実際に掛かった原価を比較することで,その原因を分析し,原価管理を効率的に行うことを目的とした原価計算方式である。

標準原価計算の手順は,以下の通り。

原価標準の設定
原価標準とは,製品 1 単位あたりの標準原価である。各原価要素ごと(直接材料費,直接労務費,製造間接費)に製品 1 単位あたりの標準原価を算出し,それらを合計することにより設定する。
標準原価の計算
原価計算期間の製品生産量に基づいて,完成品の標準原価(原価標準 × 完成品数量)を算出する。
実際原価の計算
実際に完成品を作るのに要した金額を計算する。
標準原価差額の計算
標準原価と実際原価の差額を計算する。
原価差異分析
差額がどの要素に起因するものなのかを分析する。原価差異は直接材料費差異,直接労務費差異,製造間接費差異に大別される。
原価報告
以上の計算結果を書式に記述し報告する。
直接原価計算方式

製品の製造に関する費用の中で変動費だけを製造原価に含め,固定費については他の費用と同様に発生した時点で費用として認識する方式。

ABC(Activity Based Costing:活動基準原価計算)

活動基準原価計算 (Activity-Based Costing) を導入して実現できることは,間接費を発生要因と結び付けて把握することである。

全部原価計算方式

製品の製造に関する費用は全て製品原価に含め,それ以外の費用は発生した時点で費用として認識する方式。

(3) 財務諸表の分析

内部分析,外部分析,趨勢法,構成比率,関係比率,静態分析,動態分析,収益性指標,資本利益率,売上高利益率,資本回転率,ROA(Return On Assets:総資産利益率), ROE( Return On Equity:自己資本利益率),ROI( Return on Investment:投資利益率),ROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益率),PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率),安全性指標,流動性,流動比率,自己資本比率,付加価値,生産性,資本生産性,労働生産性,分配率,EVA(Economic Value Added:経済的付加価値)
ROA(Return On Assets:総資産利益率)

ROA は,純資産に対して,どれだけ利益を生んだかという指標である。基本的には高い方が良いが,純資産で計算されるため分母には借金も含まれる。つまり,大きな借金をして利益を生んでいる場合もあるので,判断の際には別の指標と合わせて使う。

ROA [%] = 当期純利益 ÷ 純資産 × 100
ROE(Return On Equity:自己資本利益率)

ROE は,自己資本に対してどれだけ利益を生んだかという指標である。基本的には ROA と似た指標であるが,分母に他人資本(つまり,借金)が含まれるか否かが異なる点である。

ROE [%] = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

ROE を分解すると,自己資本比率,売上高当期純利益率,および総資本回転率となる。

自己資本比率 = 自己資産 ÷ 総資産
売上高当期純利益率 = 当期純利益 ÷ 売上高
総資本回転率 = 売上高 ÷ 総資産
演習問題

ROE (Return On Equity) を減少させるものはどれか。

  1. ROA の増加
  2. 自己資本比率の増加
  3. 総資本回転率の増加
  4. 当期純利益率の増加
(出典)平成26年度 秋期 IT ストラテジスト試験 午前2 問22

正解は,2. である。自己資本比率が増加すると,ROE は減少する。

ROE [%] = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 = 当期純利益 ÷ (自己資本比率 × 総資産) × 100
流動比率

流動比率は,企業の安全性を示す指標である。短期的な資産と,短期的な負債の割合で,支払い能力を示している。140 ~ 200 % 以上であることが望ましく,100 % 以下である場合,支払い能力に問題がある可能性が考えられる。

流動比率 [%] = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
固定資産回転率

固定資産回転率は,社内の設備をどれだけ効率よく使用できているかという指標である。高ければ高いほど,生産効率が高く,生産性が高い企業と判断することができる。

固定資産回転率 = 売上高 ÷ 固定資産
固定長期適合率

固定長期適合率とは,固定資産が,長期資金でどれだけまかなわれているかを表す指標であり,次式で求められる。

固定長期適合率 [%] = 固定資産 ÷ (固定負債 + 自己資本) × 100

設備投資を行うと,固定資産と固定負債が増加する。

EVA(Economic Value Added : 経済的付加価値)

利益から資本費用(投資額 × 資本コスト)を引いて金額を求める。

(4) キャッシュフロー経営

キャッシュフロー経営,営業活動によるキャッシュフロー,投資活動によるキャッシュフロー,財務活動によるキャッシュフロー,フリーキャッシュフロー

キャッシュフロー計算書は,日本の会計基準における財務諸表であり,一会計期間における資金(現金及び現金同等物)の増減,つまり収入と支出を,営業活動・投資活動・財務活動に区分して表示する会計書類である。現金の流入出を示すので,キャッシュフロー計算書と呼ばれます。

営業活動によるキャッシュフロー

商品・サービスの販売による収入や仕入・管理による支出など,企業の本業に係る事項を記載する区分。

投資活動によるキャッシュフロー

固定資産の取得・売却,有価証券の取得売却など,企業が行った投資活動に係る事項を記載する区分。

財務活動によるキャッシュフロー

株式や社債の発行,自己株式の取得,社債の償還および借入金の返済および支払利息など,資金調達や返済に係る項目を記載する区分。

表 キャッシュフロー計算書(例)
No. 項目 CF 説明
1 営業活動によるキャッシュフロー 185
2 投資活動によるキャッシュフロー △ 45
3 財務活動におけるキャッシュフロー △ 100
4 現金及び現金同等物の増減額 40 No. 1 + No. 2 + No. 3
5 現金及び現金同等物の期首残高 260
6 現金及び現金同等物の期末残高 300 No. 4 + No. 5

(5) 資金計画と資金管理

キャッシュマネジメント,資金繰り表,社債,増資,企業間信用,自己金融,ネッティング

(6) 資産管理

棚卸資産評価,先入先出法,総平均法,移動平均法,資産運用,ファイナンスリース,オペレーションリース,オフバランス
棚卸資産評価

棚卸とは,棚に置かれた商品を卸して,在庫の数を正確に数えることである。在庫を管理する上では避けては通れない,手間のかかる作業であるが,次の目的で行われる。

  1. 損益計算書に必要な売上原価を計算する
  2. 賃借対照表の中の棚卸資産の金額を確定する
  3. 在庫の保管状況や管理の方法をチェックする
先入先出法

棚卸資産の評価方法の一つである先入先出法は,先に仕入れたものから順次払い出されたと想定して棚卸資産を評価する方法である。

後入先出法

後入先出法は,先入先出法とは逆に,一番新しく仕入れたものから先に払い出され,一番古いものが最後に出ていくものとして評価する方法で,先入先出法とともによく用いられている。

総平均法

総平均法とは,期首在庫と期中の仕入分をすべて合計して,単かを計算するやり方である。平均原価法の中でも,在庫の総金額を在庫の総数量で割るという点で単価の実体に則しており,先入先出法と後入先出法の中間的な方法といえる。

ただし,この方法は計算は簡単であるが,在庫期間の終了時点でしか計算できず,その前後に手間がかかるため,他の評価法に比べて計算が遅れてしまうという欠点がある。

移動平均法

移動平均法は,入庫があるたびに単価を計算するやり方であるが,商品の数が多く,入出庫が頻繁な場合は,従来の人間の手による在庫管理方式では困難である。コンピュータの導入が一般化し,データ処理が容易になった今日においては,この方法が最も望ましい方法である。

(7) 経済性評価

NPV(Net Present Value:正味現在価値)法,DPP(Discounted Pay-Back Period:割引回収期間)法,コーポレートファイナンス,事業価値評価,採算比較,WACC(Weighted Average Cost of Capital:加重平均資本コスト)
NPV(Net Present Value : 正味現在価値)法

NPV(Net Present Value : 正味現在価値)法は,投資効果を“投資から得られるキャッシュフローの現在価値”の合計で評価する方法である。

キャッシュフローの現在価値の算出には,DCF(Discounted Cash Flow : 割引現金収入価値)法を用いることがある。DCF 法は t 年後の年間キャッシュフローを Ct とすると,割引率を r とした複利計算で表される。

初期投資額を I,想定期間を n 年間とすると,NPV は次の式で表される。

\[ \text{NPV} = \sum_{t=1}^{n}{\frac{C_\text{t}}{(1+r)^n}}-I \]
内部収益率法(IRR 法)

投資から回収される現金収入(収益額)の現在価値が投資額に等しくなるような割引率を求め,基準の割引率よりも大きければ有利と評価する方法である。

本稿の参考文献

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