平成22年度 春期 午前Ⅱ問題の解答と解説

2022年6月27日作成,2023年10月7日更新

試験時間は 10:50 ~ 11:30(40 分)である。

問1 プロジェクト憲章

PMBOK のプロジェクト憲章は,何のために発行するのか。

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問1 の解答と解説

【答え】

PMBOK において,プロジェクト憲章は,プロジェクトを公式に認可させるため作成する。

参考文献

問2 COCOMO

COCOMO にはシステム開発の工数を見積もる式の一つに

MM = 3.0 × (KDSI)1.12

がある。開発規模(KDSI)と開発生産性(KDSI/MM)の関係を表したグラフはどれか。ここで,MM は開発工数(人月),KDSI は開発規模(注釈を除いたソースコードの行数,単位は k 行)である。

平成22年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ問題 問2
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問2 の解答と解説

【答え】

COCOMO の式より,曲線の式を求める。

開発生産性 = 開発規模/開発工数 = 開発規模 /(3.0 × (開発規模)1.12) = 0.33 × 開発規模-0.12

開発規模が大きくなるにつれて,開発生産性は減少していく。

開発規模と開発生産性の関係
図 開発規模と開発生産性の関係

問3 プロジェクトスコープ記述書

PMBOK のプロジェクトスコープマネジメントにおいて作成するプロジェクトスコープ記述書の説明のうち,適切なものはどれか。

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【答え】

プロジェクトスコープ記述書とは,プロジェクトの最終状態を定義することによって,プロジェクトの目標,成果物,要求事項及び境界を含むプロジェクトスコープを明確にした文書である。

問4 ガントチャート

工程管理図表の特長に関する記述のうち,ガントチャートの特徴はどれか。

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【答え】

ガントチャート(Gantt chart)とは、プロジェクトの工程管理などで用いられる図表の一つで、縦に並んだ棒グラフの列で計画や進捗を視覚的に表したもの。1910年代にアメリカの機械エンジニア、経営コンサルタントのヘンリー・ガント(Henry L. Gantt)が考案した。

ガントチャート
図 ガントチャート

問5 クリティカルチェーン法

クリティカルチェーン法の説明はどれか。

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【答え】

クリティカルチェーン法(CCM : Critical Chain Method)は,TOC(制約理論)で有名なゴールドラット博士が 1997 年に発表した "Critical Chain" の中で提唱した概念である。TOC の考え方をプロジェクトマネジメントに取り入れたもので,クリティカルパス法(CPM : Critical Path Method)では考慮していなかった「資源の制約(資源の競合)」,すなわち "人(要員)" や "機械(開発サーバや開発端末)" などの依存関係を加味してスケジュールを作成する。

プロジェクトのスケジュール管理で使用する "クリティカルチェーン法" の実施例として,限りある資源とプロジェクトの不確実性に対応するため(クリティカルパスを守るため),合流バッファとプロジェクトバッファを設ける。

問6 トレンドチャート

システムを開発するときの費用管理と進捗管理を同時に行うために,トレンドチャートを用いる。マイルストーンの予定の位置から実績の位置に結んだ矢印が垂直に下に向かっているときの費用と進捗に関する状況説明として,適切なものはどれか。

トレンドチャート
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【答え】

システムを開発するときの費用管理と進捗管理を同時に行うために,トレンドチャートを用いる。マイルストーンの予定の位置から実績の位置に結んだ矢印が垂直に下に向かっているとき,進捗が予定どおりで,費用が予算を下回っている。

問7 進捗管理

プロジェクト期間の 80 % を経過した時点での進捗率が 70 %,発生したコストは 8,500 万円であった。完成時総予算は 1 億円であり,プランドバリューはプロジェクトの経過期間に比例する。このときの適切な分析結果はどれか。

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【答え】

アーンドバリューは,進捗 70 % まで割り当てられていた予算で 1 億円 × 0.7 = 7,000 万円である。一方,実コストは,8,500 万円であり,コスト差異は -1,500 万円である。

問8 作業配分モデル

過去のプロジェクトの開発実績から構築した作業配分モデルがある。要件定義からシステム内部設計までをモデルどおりに 228 日で完了してプログラム開発に入り,200 本のプログラムのうち 100 本のプログラム開発を完了し,残り 100 本は未着手である。プログラム開発以降もモデルどおりに進捗するとき,プロジェクト全体の完了まで,あと何日かかるか。

要件定義 システム外部設計 システム内部設計 プログラム開発 システム結合 システムテスト
工数比 0.17 0.21 0.16 0.16 0.11 0.19
期間比 0.25 0.21 0.11 0.11 0.11 0.21
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【答え】

システム要件定義からシステム内部設計までをモデルどおりに進めて 228 日で完了している。また,システム要件定義からシステム内部設計までの作業配分モデルは 0.25 + 0.21 + 0.11 = 0.57 であり,プロジェクト全体の工数は次式で求められる。

228 日 ÷ 0.57 = 400 日

一方,プログラム開発は 200 本のプログラムのうち 100 本のプログラム開発を完了(進捗 50 %)であるから,プログラム開発(進捗 50 %),システム結合,システムテストの期間比は,次式で求められる。

0.11 × 0.5 + 0.11 + 0.21 = 0.375

よって,プログラム開発以降もモデルどおりに進捗すると仮定するとき,プロジェクトの完了までの日数は,次式で求められる。

400 日 × 0.375 = 150 日

問9 SPA(Software Process Assessment)

情報システムの企画,開発,運用,保守作業に関わる国際標準の一つである SPA(Software Process Assessment)の説明として,適切なものはどれか。

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【答え】

SPA(Software Process Assessment)は,ソフトウェアプロセス評価と日本語訳されるように,ソフトウェア開発や保守などのソフトウェアプロセスが,どの程度の能力水準にあり,どのようにして継続的に改善されているのかの評価・判定するものである。

問10 ソフトウェアの品質特性

JIS X 0129-1 で定義されたソフトウェアの品質特性の説明のうち,適切なものはどれか。

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【答え】

JIS X 0129-1「ソフトウェア製品の品質―第1部:品質モデル」で定義されたソフトウェアの品質特性は,以下のとおり。

機能性
ソフトウェアが,指定された条件の下で利用されるときに,明示的及び暗示的必要性に合致する機能を提供するソフトウェア製品の能力。
信頼性
指定された条件下で利用するとき,指定された達成水準を維持するソフトウェア製品の能力。
使用性
指定された条件の下で利用するとき,理解,習得,利用でき,利用者にとって魅力的であるソフトウェア製品の能力。
効率性
明示的な条件の下で,使用する資源の量に対比して適切な性能を提供するソフトウェア製品の能力。
保守性
修正のしやすさに関するソフトウェア製品の能力。修正は,是正若しは向上,又は環境の変化,要求仕様の変更及び機能仕様の変更にソフトウェアを適応させることを含めてもよい。
移植性
ある環境から他の環境に移すためのソフトウェア製品の能力。

イは使用性,ウは効率性,エは信頼性である。

問11 ソフトウェアの保守性の評価指標

品質の定量的評価の指標のうち,ソフトウェアの保守性の評価指標になるものはどれか。

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【答え】

アは信頼性の評価指標,ウは移植性の評価指標,エは機能適合性の評価指標である。

問12 マクレガーの Y 理論

マクレガーの Y 理論の考え方はどれか。

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【答え】

XY 理論は,ダグラス・マグレガー(Douglas Murray McGregor)が人間に対する 2 つの対立的な考え方を「権限行使による命令統制の X 理論」と「統合と自己統制の Y 理論」と提唱したものである。

X 理論は,「人間は本来なまけたがる生き物で,責任をとりたがらず,放っておくと仕事をしなくなる」という考え方。この場合,命令や強制で管理し,目標が達成できなければ懲罰といった,「アメとムチ」による経営手法となる。

Y 理論は,「人間は本来進んで働きたがる生き物で,自己実現のために自ら行動し,進んで問題解決をする」という考え方。この場合,労働者の自主性を尊重する経営手法となり,労働者が高次元欲求を持っている場合有効である。

問13 データのグラフ化

データのグラフ化のうち,適切なものはどれか。

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【答え】

散布図は,2 つのデータの間にどんな関係があるのか,特性の関係(相関関係)を見ることができる。

問14 PMBOK のリスクマネジメント

PMBOK のリスクマネジメントでは,定性的リスク分析でリスク対応計画の優先順位を設定し,定量的リスク分析で数値によるリスクの等級付けを行う。定性的リスク分析で使用されるものはどれか。

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【答え】

PMBOK のリスクマネジメントでは,定性的リスク分析でリスク対応計画の優先順位を設定し,定量的リスク分析で数値によるリスクの等級付けを行うとき,定性的リスク分析で使用されるものは,発生確率・影響度マトリックスである。

PMBOK では発生確率・影響度マトリックスを「各リスクの発生確率とリスクが発生した場合のプロジェクト目標に及ぼす影響度を格子状に位置づけたもの」としている。

問15 BPMN (Business Process Modeling Notation)

要件定義フェーズにおいて BPMN (Business Process Modeling Notation) を導入する効果として,適切なものはどれか。

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【答え】

要件定義フェーズにおいて BPMN (Business Process Modeling Notation) を導入することで,業務の流れを統一的な表記方法で表現できる。

問16 論理データモデル

論理データモデル作成におけるトップダウンアプローチ,ボトムアップアプローチに関する記述として,適切なものはどれか。

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【答え】

論理データモデル作成におけるトップダウンアプローチでもボトムアップアプローチでも,最終的な論理データモデルは正規化され,かつ,業務上の属性はすべて揃えていなければならない。

問17 クラス図

次のクラス図におけるクラス間の関係の説明のうち,適切なものはどれか。

クラス図
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【答え】

"バス","トラック" などのクラスの共通部分を抽出し "自動車" クラスとして定義することを,汎化という。

問18 SOA (Service Oriented Architecture)

SOA (Service Oriented Architecture) の説明はどれか。

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【答え】

SOA (Service Oriented Architecture) は,業務機能を提供するサービスを組み合わせることによって,システムを構築する考え方である。

問19 リバーシエンジニアリング

リバーシエンジニアリングの説明はどれか。

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【答え】

リバースエンジニアリング(Reverse engineering,直訳すれば逆行工学という意味)とは,機械を分解したり,製品の動作を観察したり,ソフトウェアの動作を解析するなどして,製品の構造を分析し,そこから製造方法や動作原理,設計図などの仕様やソースコードなどを調査することを指す。

問20 フェールソフト

情報システムの設計において,フェールソフトが講じられているのはどれか。

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【答え】

フェールソフト(fail soft)とは,機器やシステムの設計などについての考え方の一つで,事故や故障が発生した際に,問題の個所を切り離すなどして被害の拡大を防ぎ,全体を止めることなく残りの部分で運転を継続すること。

問21 変更管理プロセス

ITIL v3 における変更管理プロセスの考え方のうち,適切なものはどれか。

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【答え】

ITIL v3 における変更管理プロセスの考え方として,変更諮問委員会(CAB)だけではなく,緊急時の決定を下す権限を有する小規模な組織を特定しておくことも必要である。

問22 システムの非機能要件

システムの非機能要件はどれか。

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【答え】

非機能要件とは,システム利用者が機能を利用する時に補助的に必要なシステムの特性や性能のことである。

非機能要件を整理した例を次表に示す。

表 非機能要件
大項目 小項目 メトリクス(指標)
可用性 継続性
耐障害性
性能 業務処理量
性能目標値
セキュリティ アクセス制限
データの秘匿
Web 対策

なお,IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が提唱する「非機能要求グレード」の中では,非機能要求を以下の 6 大項目に分類している。

可用性
システムやサービスを継続的に利用可能とするための要求
性能・拡張性
システムの性能,および,将来のシステム拡張に関する要求
運用・保守性
システムの運用と保守のサービスに関する要求
移行性
現行システム資産の移行に関する要求
セキュリティ
情報システムの安全性の確保に関する要求
システム環境・エコロジー
システムの設置環境やエコロジーに関する要求

問23 情報システム・モデル取引・契約書

経済産業省の "情報システム・モデル取引・契約書" によれば,ユーザとベンダ間で請負型の契約を推奨しているフェーズはどれか。

平成22年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ問題 問23
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【答え】

経済産業省の "情報システム・モデル取引・契約書" によれば,ユーザとベンダ間で請負型の契約を推奨しているフェーズは,システム内部設計フェーズからシステム結合フェーズまでである。

問24 労働者派遣法

プロジェクトマネージャの P 氏は,A 社から受託予定のソフトウェア開発を行うために,X 社から一時的な要員派遣を受けることを検討している。労働者派遣法に照らして適切なものはどれか。

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【答え】

労働者派遣契約に関わる,派遣先事業主,派遣労働者および派遣元事業主の間には,下図のような関係がある。

  • 派遣元事業主と派遣先事業主の間には,労働派遣契約が生じる。
  • 派遣元事業主と派遣労働者の間には,雇用契約が生じる
  • 派遣先事業主と派遣労働者の間には,指揮命令関係が生じる。
労働者派遣法に基づく派遣先企業と労働者との関係
図 労働者派遣法に基づく派遣先企業と労働者との関係

問25 プライバシー保護ガイドライン

OECD の "プライバシー保護ガイドライン" の原則を適切に説明したものはどれか。

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【答え】

OECD プライバシーガイドラインは,8 項目からなる原則によって成り立っている。この原則は,世界各国の個人情報やプライバシー保護に関する法律の基本原則として取り入れられている。

原則1「収集制限の原則」
個人データを収集する際には、法律にのっとり、また公正な手段によって、個人データの主体(本人)に通知または同意を得て収集するべきである。
原則2「データ内容の原則」
個人データの内容は、利用の目的に沿ったものであり、かつ正確、完全、最新であるべきである。
原則3「目的明確化の原則」
個人データを収集する目的を明確にし、データを利用する際は収集したときの目的に合致しているべきである。
原則4「利用制限の原則」
個人データの主体(本人)の同意がある場合、もしくは法律の規定がある場合を除いては、収集したデータをその目的以外のために利用してはならない。
原則5「安全保護の原則」
合理的な安全保護の措置によって、紛失や破壊、使用、改ざん、漏えいなどから保護すべきである。
原則6「公開の原則」
個人データの収集を実施する方針などを公開し、データの存在やその利用目的、管理者などを明確に示すべきである。
原則7「個人参加の原則」
個人データの主体が、自分に関するデータの所在やその内容を確認できるとともに、異議を申し立てることを保証すべきである。
原則8「責任の原則」
個人データの管理者は、これらの諸原則を実施する上での責任を有するべきである。
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