平成28年度 春期 午前Ⅱ問題の解答と解説

2022年5月21日作成,2023年9月23日更新

試験時間は 10:50 ~ 11:30(40 分)である。

問1 SPA(Software Process Assessment)

情報システムの企画,開発,運用,保守作業に関わる国際標準の一つである SPA(Software Process Assessment)の説明として,適切なものはどれか。

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【答え】

SPA(Software Process Assessment)は,ソフトウェアプロセス評価と日本語訳されるように,ソフトウェア開発や保守などのソフトウェアプロセスが,どの程度の能力水準にあり,どのようにして継続的に改善されているのかの評価・判定するものである。

問2

誤りにより問題として成立しないため掲載しない。

問3 プロジェクトのライフサイクルに共通する特性

PMBOK によれば,多くのプロジェクトのライフサイクルに共通する特性はどれか。

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【答え】

プロジェクトライフサイクルとは,プロジェクトのフェーズの集合である。プロジェクトの規模や複雑さは様々なであるが,① プロジェクト開始,② 組織編成と準備,③ 作業実施,④ プロジェクト終結の 4 段階で表現することができる。

プロジェクトライフサイクルにおける典型的なコストと要員数は,プロジェクト開始時に少なく,作業を実行するにつれて頂点に達し,プロジェクトが終了に近づくと急激に落ち込む。

また,ステークホルダの影響力,リスク,不確実性は,プロジェクト開始時に最大であり,プロジェクトが進むにつれて徐々に低下する。変更コストは,プロジェクトが終了に近づれて大幅に増加していく。

図 プロジェクトライフサイクル
図 プロジェクトライフサイクル

問4 プロジェクトの開始を公式に承認する文書の作成

プロジェクトの開始を公式に承認する文書の作成を依頼された者の行動として,適切なものはどれか。

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問4 の解答と解説

【答え】

PMBOK 第 5 版 によれば,「プロジェクト憲章は,プロジェクトの存在を正式に認可し,プロジェクト活動に組織の資源を適用する権限をプロジェクトマネージャーに与えるための文書」とされている。

参考文献

問5 スコープコントロールの活動

プロジェクトマネジメントにおけるスコープコントロールの活動はどれか。

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問5 の解答と解説

【答え】

プロジェクトを実行している間,プロジェクトスコープと成果物スコープの状況を監視し,スコープの差異や変更が,WBS やスコープ記述書に適切に反映されるように管理するプロセスである。具体的な活動として,連携する計画であった外部システムのリリースが延期になったので,この外部システムとの連携に関わる作業は別プロジェクトで実施すること,が挙げられる。

問6 RACI チャート

プロジェクトマネジメントで使用する責任分担表(RAM)の一つである,RACI チャートで示す 4 種類の役割及び責任の組合せのうち,適切なものはどれか。

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【答え】

RACI チャートは,RAM(責任分担マトリックス)の一種で,二次元の表の各軸に要員名と作業を設定し,それぞれの要員が担う役割および負う責任を作業別に一覧にしたものである。プロジェクト内での責任を明確化するとともに,作業が適切に割り振られる手助けをする。

  • Responsible(実行責任)
  • Accountable(説明責任)
  • Consulted(相談対応)
  • Informed(報告先,情報提供)

問7 資源カレンダー

PMBOK によれば,アクティビティの所要期間を見積もる際の資源カレンダーの用途として,適切なものはどれか。

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【答え】

PMBOK によれば,アクティビティの所要期間を見積もる際の資源カレンダーの用途として,アクティビティが必要とする資源を利用できる作業日及びシフトを取得する。

問8 EVM (Earned Value Management)

プロジェクトの進捗管理を EVM (Earned Value Management) で行っている。コストが超過せず,納期にも遅れないと予測されるプロジェクトの状況を表しているはどれか。ここで,それぞれのプロジェクトの今後の開発生産性は現在までと変わらないものとする。

EVM (Earned Value Management)
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【答え】

EVM(Earned Value Management)は,プロジェクトにおける作業を金銭の価値に置き換えて,コストスケジュールの 2 つを定量的に管理する進捗管理手法である。PV,EV,AC という 3 つの指標を用いることが特徴である。

PV (Planned Value)
プロジェクト開始当初、現時点までに計画されていた作業に対する予算
EV (Earned Value)
現時点までに完了した作業に割り当てられていた予算
AC (Actual Cost)
現時点までに完了した作業に対して実際に投入した総コスト

コストが超過せず,納期にも遅れないと予測されるプロジェクトの状況は,プランドバリュー(PV)よりアーンドバリュー(EV)が大きく,実コスト(AC)が小さい「ウ」の EVM (Earned Value Management) である。

問9 傾向分析

プロジェクト管理で使用する分析技法のうち,傾向分析の説明はどれか。

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【答え】

プロジェクトマネジメントで使用する分析技法のうち,傾向分析では,時間の計画に伴うプロジェクトのパフォーマンスの変動を分析する。

傾向分析は,プロジェクトの実績を定期的に分析することで,時間経過に伴うプロジェクトのパフォーマンスの変動を調べる手法である。傾向を視覚的に把握するために「ランチャート」と呼ばれる,データを発生順に打点し,それを直線で結んだ折れ線グラフが用いられることがある。

問10 コミュニケーション

社員が週に 40 時間働くソフトウェア会社がある。この会社が,1 人で開発すると 440 人時のプログラム開発を引き受けた。開発コストを次の条件で見積もるとき,10 人のチームで開発する場合のコストは,1 人で開発する場合のコストの何倍になるか。

[条件]
  1. 10 人のチームでは,コミュニケーションをとるための工数が余分に発生する。
  2. コミュニケーションはチームのメンバが総当たりでとり,その工数は 2 人 1 組の組合せごとに週当たり 4 人時(1 人につき 2 時間)である。
  3. 社員の週当たりコストは社員間で差がない。
  4. 1. ~ 3. 以外の条件は無視できる。
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【答え】

コミュニケーションはチームのメンバが総当たりでとり,その工数は 2 人 1 組の組合せごとに週当たり 4 人時(1 人につき 2 時間)であるので,一週間のコミュニケーションの時間は次式で求められる。

10C2 × 4 = 45 × 4 = 180 [時間]

1 週間のうちプログラム開発に当てられる時間は,次式のとおり 220 時間である。

40 時間/人 × 10 人 - 180 時間 = 220 時間

一方,1 人で開発する場合はコミュニケーションが不要なので 400 時間プログラム開発に当たられるが,10 人で開発する場合は 220 時間しかプログラム開発に当てられない。すなわち,1 人で開発する場合のコストに比べ,は次式のとおり 1.8 倍になる。

400 時間 ÷ 220 時間 = 1.818 [倍]

問11 COCOMO

COCOMO には,システム開発の工数を見積もる式の一つとして次式がある。

MM = 3.0 × (KDSI)1.12

この式を基に,開発規模(KDSI)と開発生産性(KDSI/MM)の関係を表したグラフはどれか。ここで,MM は開発工数(人月),KDSI は開発規模(注釈を除いたソースコードの行数,単位は k 行)である。

平成30年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ問題 問8
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問11 の解答と解説

【答え】

COCOMO の式より,曲線の式を求める。

開発生産性 = 開発規模/開発工数 = 開発規模 /(3.0 × (開発規模)1.12) = 0.33 × 開発規模-0.12

開発規模が大きくなるにつれて,開発生産性は減少していく。

開発規模と開発生産性の関係
図 開発規模と開発生産性の関係

問12 EMV(期待金額価値)

プロジェクトにどのツールを導入するかを,EMV(期待金額価値)を用いて検討する。デシジョンツリーが次の図のとき,ツール A を導入する EMV がツール B を導入する EMV を上回るのは,X が幾らよりも大きい場合か。

平成30年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ問題 問9
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問12 の解答と解説

【答え】

ツール A を導入する EMV を求める。

X × 0.60 + 90 × 0.40 - 120 = (0.6X - 84) 万円

一方,ツール B を導入する EMV を求める。

120 × 0.60 + 60 × 0.40 - 60 = 36 万円

ツール A を導入する EMV がツール B を導入する EMV を上回る X を求める。

0.6X - 84 > 36
X > 200

問13 デルファイ法

プロジェクトのリスクを,デルファイ法を利用して抽出しているものはどれか。

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【答え】

デルファイ法(delphi method)は,技術開発戦略の立案に必要となる将来の技術動向の予測などに用いられる技法であり,1. 複数の専門家からの意見収集,2. 得られた意見の統計的集約,3. 集約された意見のフィードバックを繰り返して最終的な意見に収束させていくものである。

デルファイ法
図 デルファイ法

問14 定性的リスク分析

PMBOK によれば,プロジェクトリスクマネジメントにおける定性的リスク分析で実施することのうち,適切なものはどれか。

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【答え】

PMBOK ガイド 第 5 版によれば,プロジェクト・リスク・マネジメントでは,定性的リスク分析でリスクの優先順位を査定し,定量的リスク分析でリスクがプロジェクト目標全体に与える影響を数量的に分析する。

問15 リスク対応戦略の適用

PMBOK のリスクマネジメントにおけるリスク対応戦略の適用に関する記述のうち,適切なものはどれか。

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【答え】

脅威への戦略

プロジェクトにマイナスの影響を与えるリスク(脅威)への対応戦略には,回避,転嫁,軽減,受容の 4 種類がある。

回避
リスクそのものを取り除いたり、プロジェクトに影響がないようにスコープや目標を縮小・変更する方策。
転嫁
リスクによるマイナスの影響を第三者へ移転する戦略。リスクのある業務・作業のアウトソーシングや、損害保険の契約によってリスクの影響を自社から他社に移転する。
軽減
リスクの影響範囲を狭くしたり、発生確率を低減するような方策。
受容
リスクが現実化した時の影響が許容可能範囲内である時やリスクの除去が困難である場合に、特段対策をせずにそのままにしておくこと。対策費用が予想される損失金額を上回っているときなどに採られる方策。
好機への戦略

プロジェクトにプラスの影響を与えるリスク(好機)への対応戦略には,活用,共有,強化,受容の 4 種類がある。

活用
好機が確実に到来するように、現実化の不確実性を取り除くための戦略
共有
好機を得られる能力の高い第三者にプロジェクトの実行権限の一部、または全部を与える戦略
強化
好機のプラスの影響を増加させたり、その発生確率を高めたりする戦略
受容
積極的な利用はしないが、好機が現実化したときにはその利益を享受しようとする戦略

問16 JIS X 0160

JIS X 0160 において,"開発者は,ソフトウェア結合のために暫定的なテスト要求事項及びスケジュールを定義し,文書化する。" というタスクを実施するプロセスはどれか。

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【答え】

ソフトウェア方式設計プロセスでは,次のタスクを実施する。

  • ソフトウェア品目の外部インタフェース,及びソフトウェアコンポーネント間のインタフェースについて最上位レベルの設計を行う。
  • データベースについて最上位レベルの設計を行う。
  • ソフトウェア結合のために暫定的なテスト要求事項及びスケジュールを定義する。

問17 フェールセーフの考えに基づいて設計したもの

フェールセーフの考えに基づいて設計したものはどれか。

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【答え】

フェイルセーフとは,機器やシステムの設計などについての考え方の一つで,部品の故障や破損,操作ミス,誤作動などが発生した際に,なるべく安全な状態に移行するような仕組みにしておくこと。

アはフールプルーフ,ウはフォールトトレランスである。

問18 CMMI

CMMI の目的として,最も適切なものはどれか。

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【答え】

CMMI(Capability Maturity Model Integration,能力成熟度モデル統合)とは,組織がプロセス改善を行う能力を評価する手法および指標。ソフトウェア開発プロセスの成熟度を図る CMM を元に複数の同種の手法を統合した汎用的な手法で,米カーネギーメロン大学 CMMI 研究所が開発,公表している。

レベル 状態
1 初期状態(initial)
2 管理された(managed)
3 定義された(defined)
4 定量的に管理された(quantitatively managed)
5 最適化している(optimizing)

問19 XP (eXtreme Programming) のプラクティス

XP (eXtreme Programming) のプラクティスの一つに取り入れられているものはどれか。

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【答え】

エクストリームプログラミング(XP : eXtreme Programming)とは、迅速で柔軟性の高いソフトウェア開発手法の一つ。いわゆるアジャイル開発手法と総称される軽量で柔軟な手法の先駆けとなったもので、1999年に米著名プログラマのケント・ベック(Kent Beck)氏らが提唱した。

XP には年々いくつかのプラクティスが追加されているが,基本となった 12 のプラクティスは次の通り。

計画ゲーム
求める機能のコンセプトを短い文章で記したストーリーカードを作成する。そのカードをもとに、開発者・管理者を含めたチームとのミーティングを行い詳細を決定する。
短期リリース
動くソフトウェアを 1~3 ヶ月というできるだけ短い時間間隔でリリースする。
共通の用語
開発メンバ・顧客・管理者全員でイメージや理解を共有するため、用語集や図表を作成する。
単純さ優先
品質低下のもとと複雑な実装の組込みを避け最も単純な実装を優先する。
テスト駆動開発
求める機能を明確化するため、テスト対象コードを実装するよりも前に単体テストを作成する。
リファクタリング
完成済みのものでもソフトウェアの機能を変えずにソースコードの品質を良くすることを随時行う。
ペアプログラミング
これは二人一組で実装を行い、一人が実際のコードをコンピュータに打ち込み、もう一人はそれをチェックしながら補佐するという役割を随時交代しながら作業を進める。
ソースコードの共同所有
開発チーム全員がどのコードに対しても改善処置を行えるようにするため、ソースコードの所有者を決めない。
常に統合
あるコードが単体テストをパスする度にすぐに結合テストを行い問題点や改善点を探す。
週 40 時間労働
集中力を高め、開発効率を高めるためには心身の健康を保つ必要があるため残業を認めない。
顧客も一緒
顧客は開発チームと同室(または近く)で開発の見守りを行う。
コーディング規約
上記を実現するためのにコーディング規約を決めて遵守する。

問20 サービストランジション段階

ITIL で定義されるサービスのライフサイクルにおける,サービストランジション段階の説明はどれか。

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【答え】

ITIL で定義されるサービスのライフサイクルにおける,サービストランジション段階では,規定された要件と制約に沿って,サービスを運用に移行し,確実に稼働させる。

なお,トランジションとは,「移行」「変化」「過渡」の意味であり,ある段階から次の段階へと移行する時期をさす。

問21 フェールソフトの考え方を適用した例

情報システムの設計のうち,フェールソフトの考え方を適用した例はどれか。

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【答え】

フェールソフトとは,機器やシステムの設計などについての考え方の一つで,事故や故障が発生した際に,問題の個所を切り離すなどして被害の拡大を防ぎ,全体を止めることなく残りの部分で運転を継続すること。

問22 ROI

IT 投資効果の評価に用いられる手法のうち,ROI によるものはどれか。

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【答え】

ROIは,Return on Investment の略で,投資利益率のことである。

問23 就業規則に係る使用者の義務

労働基準法及び労働契約法が定める,就業規則に係る使用者の義務の記述のうち,適切なものはどれか。

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問23 の解答と解説

【答え】

労働基準法及び労働契約法が定める,就業規則に係る使用者は,就業規則の基準に達しない労働条件を労働契約で定める場合には,使用者が労働者から個別に合意を得ることが義務付けられている。

問24 シャドー IT

シャドー IT に該当するものはどれか。

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問24 の解答と解説

【答え】

シャドー IT とは、企業などの組織内で用いられる情報システムやその構成要素(機器やソフトウェアなど)のうち、従業員や各業務部門の判断で導入・使用され、経営部門やシステム管理部門による把握や管理が及んでいないものである。

問25 DNSSEC

DNSSEC の機能はどれか。

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問25 の解答と解説

【答え】

DNSSEC(DNS Security Extensions)は,DNS における応答の正当性を保証するための拡張仕様である。DNSSEC ではドメイン応答にディジタル署名を付加することで,正当な管理者によって生成された応答レコードであること,また応答レコードが改ざんされていないことの検証が可能になる。具体的には,公開鍵暗号方式によるディジタル署名を用いることによって,正当な DNS サーバからの応答であることをクライアントが検証できる。

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