平成30年度 春期 午前Ⅱ問題の解答と解説

2022年5月14日作成,2023年9月23日更新

試験時間は 10:50 ~ 11:30(40 分)である。

問1 プロジェクトマネジメントのプロセスグループ

ISO 21500:2012(プロジェクトマネジメントの手引き(英和対訳版))によれば,プロジェクトマネジメントのプロセスグループには,立上げ,計画,実行,コントロール及び終結の五つがある。これらのうち,"変更要求" の申請を契機に相互に作用するプロセスグループの組みはどれか。

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【答え】

"変更要求" の申請を契機に相互に作用するプロセスグループの組みは,実行,コントロールである。

問2 プロジェクト憲章

プロジェクトマネジメントにおけるプロジェクト憲章の説明として,適切なものはどれか。

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【答え】

PMBOK 第 5 版 によれば,「プロジェクト憲章は,プロジェクトの存在を正式に認可し,プロジェクト活動に組織の資源を適用する権限をプロジェクト。マネージャーに与えるための文書」とされている。

アはプロダクトベネフィットマネジメント計画書の説明,イはプロジェクトマネジメント計画書の説明,ウはプロジェクトスコープ記述書の説明である。

参考文献

問3 統合変更管理プロセス

PMBOK ガイド 第 5 版の統合変更管理プロセスにおいて,プロジェクトのプロダクト,サービス,所産,構成要素などの特性に対する変更と実施状況を記録・報告したり,要求事項への適合を検証するためのプロダクト,所産又は構成要素に対する監査を支援したりする活動はどれか。

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【答え】

コンフィギュレーション・マネジメント(Configuration Management)は構成管理といわれる。他には形態管理,変更管理といわれることもある。

問4 RACI チャート

プロジェクトマネジメントで使用する責任分担表(RAM)の一つである,RACI チャートで示す 4 種類の役割及び責任の組合せのうち,適切なものはどれか。

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【答え】

RACI チャートは,RAM(責任分担マトリックス)の一種で,二次元の表の各軸に要員名と作業を設定し,それぞれの要員が担う役割および負う責任を作業別に一覧にしたものである。プロジェクト内での責任を明確化するとともに,作業が適切に割り振られる手助けをする。

  • Responsible(実行責任)
  • Accountable(説明責任)
  • Consulted(相談対応)
  • Informed(報告先,情報提供)

問5 資源のコントロールプロセス

ISO 21500:2012(プロジェクトマネジメントの手引き(英和対訳版))によれば,資源サブジェクトグループのプロセスの目的のうち,資源のコントロールプロセスのものはどれか。

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【答え】

資源のコントロールプロセスでは,プロジェクト作業の実施に必要な資源を確保し,プロジェクト要求事項を満たせるように資源を配分する。

問6 ファストトラッキング

図 1 に示すプロジェクト活動について,作業 C の終了がこの計画から 2 日遅れたので,このままでは当初に計画した総所要日数で終了できなくなった。

図 1 プロジェクト活動(当初の計画)
図 1 プロジェクト活動(当初の計画)

作業を見直したところ,作業 I は作業 G の全てが完了していなくても開始できることが分かったので,ファストトラッキングを適用して,図 2 に示すように計画を変更した。

図 2 プロジェクト活動(変更後の計画)
図 2 プロジェクト活動(変更後の計画)

この計画変更によって,変更後の総所要日数はどのように変化するか。

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【答え】

開始当初の計画では直列に並んでいた作業を同時並行的に行い期間短縮を図る方法をファストトラッキングという。ただし,本来は順番通りになされるべきであった作業を並行して行うことになるので,順序や前後関係がより複雑になるなどの弊害もある。

次のような方法が,ファストトラッキングに該当する。

  • 作業の前後関係を組み直し,実施する順番を変える。
  • 作業を分析し,同時に実施できる部分を複数の作業に分割し,並行して実施する。
  • 先行作業の一部の成果物が完成した時点で,後続作業を開始する。

計画変更前の総所要日数は 33 日だったが,計画変更後の総所要日数は 34 日となる。

図 ファストトラッキングの例

問7 作業配分モデル

過去のプロジェクトの開発実績から構築した作業配分モデルがある。システム要件定義からシステム内部設計までをモデルどおりに進めて 228 日で完了し,プログラム開発を開始した。現在,200 本のプログラムのうち 100 本のプログラム開発を完了し,残り 100 本は未着手の状況である。プログラム開発以降もモデルどおりに進捗すると仮定するとき,プロジェクトの完了まで,あと何日掛かるか。ここで,プログラムの開発に掛かる工数及び期間は,全てのプログラムで同一であるものとする。

[作業配分モデル]
システム要件定義 システム外部設計 システム内部設計 プログラム開発 システム結合 システムテスト
工数比 0.17 0.21 0.16 0.16 0.11 0.19
期間比 0.25 0.21 0.11 0.11 0.11 0.21
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【答え】

システム要件定義からシステム内部設計までをモデルどおりに進めて 228 日で完了している。また,システム要件定義からシステム内部設計までの作業配分モデルは 0.17 + 0.21 + 0.16 = 0.57 であり,プロジェクト全体の工数は次式で求められる。

228 日 ÷ 0.57 = 400 日

一方,プログラム開発は 200 本のプログラムのうち 100 本のプログラム開発を完了(進捗 50 %)であるから,プログラム開発(進捗 50 %),システム結合,システムテストの期間比は,次式で求められる。

0.11 × 0.5 + 0.11 + 0.21 = 0.375

よって,プログラム開発以降もモデルどおりに進捗すると仮定するとき,プロジェクトの完了までの日数は,次式で求められる。

400 日 × 0.375 = 150 日

問8 COCOMO

COCOMO には,システム開発の工数を見積もる式の一つとして次式がある。

開発工数 = 3.0 × (開発規模)1.12

この式を基に,開発規模と開発生産性(開発規模/開発工数)の関係を表したグラフはどれか。ここで,開発工数の単位は人月,開発規模の単位はキロ行とする。

平成30年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ問題 問8
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【答え】

COCOMO の式より,曲線の式を求める。

開発生産性 = 開発規模/開発工数 = 開発規模 /(3.0 × (開発規模)1.12) = 0.33 × 開発規模-0.12

上式に基づき,開発規模と開発生産性の関係を下図に示す。開発規模が大きくなるにつれて,開発生産性は減少していく。

開発規模と開発生産性の関係
図 開発規模と開発生産性の関係

問9 EMV(期待金額価値)

プロジェクトにどのツールを導入するかを,EMV(期待金額価値)を用いて検討する。デシジョンツリーが次の図のとき,ツール A を導入する EMV がツール B を導入する EMV を上回るのは,X が幾らよりも大きい場合か。

平成30年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ問題 問9
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【答え】

ツール A を導入する EMV を求める。

X × 0.60 + 90 × 0.40 - 120 = (0.6X - 84) 万円

一方,ツール B を導入する EMV を求める。

120 × 0.60 + 60 × 0.40 - 60 = 36 万円

ツール A を導入する EMV がツール B を導入する EMV を上回る X を求める。

0.6X - 84 > 36
X > 200

問10 リスク対応戦略

PMBOK ガイド 第 5 版のプロジェクト・リスク・マネジメントにおけるリスク対応戦略に関する記述のうち,適切なものはどれか。

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【答え】

リスク対応の例を次表に示す。

表 リスク対応
対応策 内容
リスク回避 プロジェクトの計画を変更するなどによってリスクの発生要因を取り除き,リスクの発生を防ぐ。
リスク転嫁(リスク移転) 保険加入など,リスクの発生時の対応責任を第三者へ移す。
リスク低減 リスク発生の確率や影響を低減させる対策を実施する。
リスク保有(リスク受容) リスク発生の影響が小さい場合にリスクを受け入れ,コンティジェンシー計画を策定する。
リスクファイナンス リスクが顕在化した場合に備えて,保険をかけるなどにより対策のための資金確保を講じる。
  • 強化は,プラスのリスクとマイナスのリスクのどちらにも使用される戦略である。
  • 共有は,マイナスのリスクに対して使用される戦略である。
  • 受容は,プラスのリスクとマイナスのリスクのどちらにも使用される戦略である。
  • 転嫁は,マイナスのリスクに対して使用される戦略である。

上記をまとめると次表になる。

表 リスク対応戦略
リスク対応戦略 プラスのリスク マイナスのリスク
強化
共有
受容
転嫁

問11 定性的リスク分析

PMBOK ガイド 第 5 版によれば,プロジェクト・リスク・マネジメントでは,定性的リスク分析でリスクの優先順位を査定し,定量的リスク分析でリスクがプロジェクト目標全体に与える影響を数量的に分析する。定性的リスク分析で使用されるものはどれか。

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【答え】

定性的リスク分析で使用されるものは,発生確率・影響度マトリックスであり,リスクの発生確率と影響度をマトリックス状に視覚化したデータの表現方法である。

PMBOK では発生確率・影響度マトリックスを「各リスクの発生確率とリスクが発生した場合のプロジェクト目標に及ぼす影響度を格子状に位置づけたもの」としている。

問12 "満足性" に対するリスク

システム開発のプロジェクトにおいて,リスク識別を効率よく行うための手段として,"JIS X 25010:2013(システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)-システム及びソフトウェア品質モデル)" が規定する利用時の品質特性を用いてソフトウェアの品質に関するリスクを分類することにした。"満足性" に対するリスクとして分類される,リスクとその評価の事例はどれか。

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【答え】

"満足性" に対するリスクとして分類される,リスクとその評価の事例は「操作に習熟していない利用者が,誤った使い方をしたときの対処方法が分からずに困惑し,快適でないと評価される」である。

問13 プロジェクトで発生している品質問題

プロジェクトで発生している品質問題を解決するに当たって,図を作成して原因の傾向を分析したところ,発生した問題の 80 % 以上が少数の原因で占められていることが判明した。作成した図はどれか。

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【答え】

パレート図では,現象別に層別してデータをとることにより,重要な不良や問題点を見つけ出す。

問14 プロジェクト品質マネジメント

PMBOK ガイド 第 5 版によれば,プロジェクト品質マネジメントは,品質マネジメント計画,品質保証,品質コントロールの三つのプロセスで構成されている。品質マネジメント計画プロセスのアウトプットであって,品質保証プロセス及び品質コントロール・プロセスのインプットになるものはどれか。

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【答え】

PMBOK ガイド 第 5 版によれば,プロジェクト品質マネジメントは,品質マネジメント計画,品質保証,品質コントロールの三つのプロセスで構成されている。品質マネジメント計画プロセスのアウトプットであって,品質保証プロセス及び品質コントロール・プロセスのインプットになるものは品質尺度である。

問15 プロジェクト調達マネジメント

PMBOK ガイド 第 5 版によれば,プロジェクト調達マネジメントにおける調達作業範囲記述書に記載すべき項目はどれか。

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【答え】

PMBOK ガイド 第 5 版によれば,プロジェクト調達マネジメントにおける調達作業範囲記述書に記載すべき項目は,プロジェクト完了後の調達品の運用サポートの内容である。

問16 システム適格性確認テスト

共通フレーム 2013 におけるシステム開発プロセスのアクティビティであるシステム適格性確認テストの説明として,最も適切なものはどれか。

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【答え】

共通フレーム 2013 におけるシステム開発プロセスのアクティビティであるシステム適格性確認テストでは,システム要件について実装の適合性をテストし,システムの納入準備ができているかどうかを評価する。

問17 テスト駆動開発

エクストリームプログラミング(XP : eXtreme Programming)における "テスト駆動開発" の特徴はどれか。

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【答え】

テスト駆動開発では,求める機能を明確化するため,テスト対象コードを実装するよりも前に単体テストを作成する。

問18 リーンソフトウェア開発

リーンソフトウェア開発の説明として,適切なものはどれか。

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【答え】

リーンソフトウェア開発は、トヨタ生産方式が生んだ「7 つのムダ」の基本理念を発展させたリーン生産方式を、ソフトウェア開発に適用した手法である。ソフトウェア開発に潜む ムラ(ばらつき)・ムリ(不合理・過負荷)・ムダ(付加価値のない作業) を排除することを中核に据え、生産効率と品質の最適化を追求することを目的としている。リーン(lean)は、痩せていて脂肪のないこと、無駄がなく引き締まっていることなどを意味する。

リーンソフトウェア開発を支える 7 つの原則は,次のとおり。

  1. ムダをなくす
  2. 品質を作り込む
  3. 知識を作り出す
  4. 決定を遅らせる
  5. 速く提供する
  6. 人を尊重する
  7. 全体を最適化する

問19 イベント管理プロセス

ITIL 2011 edition によれば,インシデントに対する一連の活動のうち,イベント管理プロセスが分担する活動はどれか。

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【答え】

インシデント管理は、サービスに対する計画外の中断、サービスの品質の低下、あるいは顧客へのサービスにまだ影響していない事象が報告された時に、サービスの中断時間を最小限に抑えて速やかに回復することを目指すプロセスである。

問20 サービスマネジメントシステムの監視及びレビュー

JIS Q 20000-1:2012(サービスマネジメントシステム要求事項)の "サービスマネジメントシステムの監視及びレビュー" の要求事項のうち,適切なものはどれか。

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【答え】

JIS Q 20000-1:2012(サービスマネジメントシステム要求事項)の "サービスマネジメントシステムの監視及びレビュー" の要求事項として,「監査員は,自らの仕事を監査してはならない」がある。

問21 機密漏えいなどの情報セキュリティ事故防止

システム開発を請負契約でベンダに委託する場合,ベンダに起因する,機密漏えいなどの情報セキュリティ事故を防止するために,委託する側がとるべき手段として,適切なものはどれか。

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【答え】

システム開発を請負契約でベンダに委託する場合,ベンダに起因する,機密漏えいなどの情報セキュリティ事故を防止するために,委託する側がとるべき手段として,適切なものは「委託業務に関する情報セキュリティレベルを取り決め,情報セキュリティ対策実施状況の定期的な報告を義務付け,適時に監査を実施する」である。

問22 就業規則に係る使用者の義務

労働基準法及び労働契約法が定める,就業規則に係る使用者の義務の記述のうち,適切なものはどれか。

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【答え】

労働基準法及び労働契約法が定める,就業規則に係る使用者は,就業規則の基準に達しない労働条件を労働契約で定める場合には,使用者が労働者から個別に合意を得ることが義務付けられている。

問23 RoHS 指令

基準値を超える鉛,水銀などの有害物質を電気・電子機器に使用することを制限するために,欧州連合が制定し,施行しているものはどれか。

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【答え】

RoHS 指令(ローズ指令)とは,電気・電子機器(EEE)などの特定有害物資の使用制限に関する EU の法律である。2003 年 2 月に最初の指令(通称 RoHS1)が制定され 2006 年 7 月に施行。2011 年 7 月に改正指令(通称 RoHS2)が施行されている。RoHS(ローズ)とは,Restriction of Hazardous Substances の頭文字をとったもので,日本語では,有害物質使用制限指令とも呼ばれている。

問24 公開鍵暗号方式を使った暗号通信

公開鍵暗号方式を使った暗号通信を $n$ 人が相互に行う場合,全部で何個の鍵が必要になるか。ここで,一組の公開鍵と秘密鍵は 2 個と数える。

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【答え】

公開鍵暗号方式で暗号化通信を行う場合は、送信者が受信者の公開鍵でデータを暗号化し、受信者は自身の秘密鍵でデータを復号する。受信者は復号鍵を秘匿にし、暗号化鍵を公開する。

n 人が相互に暗号を使って通信する場合,秘密鍵を保持する受信者は n 人なので,必要となる秘密鍵は n 個である。さらに,これらの秘密鍵に対応する公開鍵が n 個必要になるため,鍵の総数は 2n 個となる。

問25 テンペスト攻撃

テンペスト攻撃の説明とその対策として,適切なものはどれか。

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【答え】

テンペスト攻撃とは,ディスプレイなどから放射される電磁波を傍受し,表示内容を解析する攻撃であり,その対策として,電磁波を遮断する。

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