平成23年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問題の解答と解説

2022年11月20日作成,2023年2月24日更新

試験時間は 10:50 ~ 11:30(40 分)である。

問1 UML を使ったクラスの定義

UML を使って図のクラス P を定義した。このクラスの操作のうち,公開可視性(public)をもつものはどれか。

UML を使ったクラスの定義
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問1 の解答と解説

【答え】

クラスはクラス名,属性,操作の 3 要素で構成される。個々の操作を定義する際にその公開度も決める。+ の操作はどのクラスからでもアクセス可能となり,- の操作はクラス内からのみアクセス可能,# の操作はクラス内とその回の階層のサブクラスからのみアクセス可能となる。

問2 トップダウンアプローチとボトムアップアプローチ

論理データモデル作成におけるトップダウンアプローチ,ボトムアップアプローチに関する記述のうち,適切なものはどれか。

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【答え】

論理データモデル作成においては,トップダウンアプローチとボトムアップアプローチのどちらのアプローチも利用できるが,どちらのアプローチを用いたとしても,最終的な論理データモデルは正規化され,かつ,業務上の属性はすべて備えていなければならない。

トップダウンアプローチは,企業の業務の現状や問題点を調査・分析して,その企業のあるべき姿を定義したうえで,企業活動に必要なデータを洗い出し,モデルを作るアプローチであり,ボトムアップアプローチは,現在のシステムの画面・帳票・業務書類をもとに必要なデータを洗い出し,正規化の作業を行って,データモデルを作るアプローチである。

ア)トップダウンアプローチでは,現状業務を概要から詳細なレベルへと調査を進めていく。したがって,現状業務の分析は行えないということはない。

ウ)利用者が使用する現状の画面や帳票を素材として分析を行うのは,ボトムアップアプローチである。

エ)現在実施している業務に対して新規システムを構築することもある。この場合,利用している帳票などを用いてボトムアップアプローチを行うことも,有効な手法である。

問3 BPMN (Business Process Modeling Notation) を導入する効果

要件定義フェーズにおいて BPMN (Business Process Modeling Notation) を導入する効果として,適切なものはどれか。

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【答え】

BPMN (Business Process Modeling Notation) は,業務プロセスの記述を目的に策定された図式表現である。BPMN は,業務の流れを統一的な表現方法で表現する。

BPMN (Business Process Modeling Notation)
図 BPMN (Business Process Modeling Notation)

問4 コミュニケーション図

ソフトウェア方式設計時の "ソフトウェア構造とコンポーネントの方式設計" において,機能要求を実現するための各オブジェクトの作業分担を記述するのに適した図はどれか。

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問4 の解答と解説

【答え】

コミュニケーション図は,シーケンス図と同様にオブジェクト同士の相互作用を表す図式表現である。シーケンス図がメッセージのやりとりを時系列に記述することを重視しているのに対して,コミュニケーション図ではクラス図のようなオブジェクト構造を重視している。

コミュニケーション図
図 コミュニケーション図

問5 モジュール結合度

モジュールの独立性を高めるには,モジュール結合度を弱くする必要がある。モジュール間の情報の受渡し方法のうち,モジュール結合度の最も弱いものはどれか。

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【答え】

モジュール結合度の強い順に,内部結合,共通結合,外部結合,制御結合,スタンプ結合,データ結合に分類できる。入出力に必要なデータ項目だけをモジュール間の引数として渡すのは,データ結合であり,モジュール結合度が最も弱い。

ア)共通域に定義したデータを関係するモジュールが参照するのは,共通結合である。

イ)制御パラメタを引数として渡し,モジュールの実行順序を制御するのは,制御結合である。

エ)必要なデータを外部宣言して共有するのは,外部結合である。

参考文献

問6 ソフトウェア開発における分析・設計技法

ソフトウェア開発における分析・設計技法と,その技法における着目点の説明のうち,適切なものは。

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【答え】

ソフトウェア開発における分析・設計技法と,その技法における着目点の説明は,以下のとおり。

DFD
DFD を用いた分析・設計技法では,データの流れに着目する。
E-R 図
E-R 図 を用いた分析・設計技法では,対象となるオブジェクトの関連に着目する。
HIPO (Hierarchy plus Input Process Output)
HIPO を用いた分析・設計技法では,処理機能に着目する。
ペトリネット
ペトリネットを用いた分析・設計技法では,事象と状態の変化に着目する。
DFD (Data Flow Diagram)
図 DFD (Data Flow Diagram)

問7 データ中心アプローチ

データ中心アプローチに関する記述のうち,最も適切なものはどれか。

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【答え】

企業の業務活動は環境の変化に合わせて刻々と変化しているが,システムで取り扱われているデータは企業の経営内容が変わらない限りほとんど変化しない。データ中心アプローチは,この安定したデータ基盤を共有資源として先に設計し,そのデータに基づいてソフトウェアを設計するという方法論である。

問8 限界値分析によるテスト

出力帳票の 1 ページごとにヘッダと 30 件分のレコードを出力するプログラムをテストしたい。このプログラムを限界値分析によってテストするための最少のテストデータを用意するとき,レコード件数の組合せとして,適切なものはどれか。

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【答え】

限界値分析とは,入出力仕様をもとに正常処理と異常処理の条件判定の境界付近における値を,テストケースとして設計する技法である。プログラムのエラーは条件判定の境界に潜むことが多いため,エラーを検出するのに有効なテストである。

問題のプログラムでは,レコード件数の同値クラスとして,0 件,1 ~ 30 件,31 件以上の三つが設定されることになるので,限界値分析による最少のテストデータ値は,0,1,30,31 が適している。

問9 並列処理プログラミング

並列処理プログラミングの特徴を説明したものはどれか。

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【答え】

並列処理プログラミングは,複数の処理装置を用いて,一つのプログラムで行う処理内容を複数に分けて,それぞれの処理装置で実行する。各処理装置で得られた結果は,最終的に一つの結果にまとめる。単一の処理装置だけでは実現できない高速な処理を実現する。

問10 ペアプログラミング

アジャイルソフトウェア開発などで導入されている "ペアプログラミング" の説明はどれか。

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【答え】

ペアプログラミンは二人一組で実装を行い、一人が実際のコードをコンピュータに打ち込み、もう一人はそれをチェックしながら補佐するという役割を随時交代しながら作業を進める。

問11 ソフトウェア開発手法の特徴

ソフトウェア開発手法の特徴に関する記述のうち,適切なものはどれか。

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【答え】

スパイラルモデル(Spiral Model)とは,システム開発手順の一つで,ユーザからのフィードバックや要望に対応しながら,精査や改善を重ねつつ,設計とプロトタイピングを繰り返して完成させる手法のことをいう。

問12 現在価値法

投資効果を現在価値法で評価するとき,最も投資効果の大きい(又は損失の小さい)シナリオはどれか。ここで,期間は 3 年間,割引率は 5 % とし,各シナリオのキャッシュフローは表のとおりとする。

単位 万円
シナリオ 投資額 回収額
1 年目 2 年目 3 年目
A 220 40 80 120
B 220 120 80 40
C 220 80 80 80
投資をしない 0 0 0 0
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【答え】

現在価値法は,将来回収される利益を現在の価値に割り引いて,投資効果を評価する方法である。回収額を現在価値に割り引いたものから投資額を引いた金額が投資効果となる。割引率が 5 % の場合,1 年目の回収額を 1.05 で割った金額が現在価値となる。2 年目の回収額を 1.052 で割った金額と,3 年目の回収額を 1.053 で割った金額が,それぞれ 2 年目,3 年目の利益の現在価値となる。

各シナリオの回収金額を現在価値に換算すると,シナリオ A は 214.3 万円,B は 221.4 万円,C は 217.9 万円,D は 0 万円である。シナリオ B の投資効果は,回収額の現在価値から投資額 220 万円を引いた 1.4 万円である。

問13 BABOK

BABOK の説明はどれか。

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【答え】

BABOK は,ビジネスアナリシス活動を六つの知識エリアに整理している。さらに,基礎コンピテンシを加えて「七つの知識エリア」とすることも多い。

参考文献
  • Masassiah Web Site, "BABOK"

問14 システムの非機能要件

システムの非機能要件となるものはどれか。

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【答え】

ア,イ,エはシステムの機能要件,ウはシステムの非機能要件である。

問15 情報システム・モデル取引・契約書

経済産業省の "情報システム・モデル取引・契約書" によれば,ユーザとベンダ間で請負型の契約を推奨しているフェーズはどれか。

ユーザとベンダ間で請負型の契約を推奨しているフェーズ
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問15 の解答と解説

【答え】

経済産業省の "情報システム・モデル取引・契約書" では,システム内部設計フェーズからシステム結合フェーズまでは,請負型の契約を推奨している。なお,システム外部設計フェーズおよびシステムテストフェーズは,請負型または準委任型の両タイプを併記しており,要件定義やそれ以前のフェーズおよび導入・受入支援フェーズでは,準委任型を推奨している。

問16 機能情報関連図(DFD)

エンタープライズアーキテクチャにおいて,ビジネスアーキテクチャの成果物である機能情報関連図(DFD)を説明したものはどれか。

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【答え】

機能情報関連図(DFD)は,対象業務の処理過程と情報の流れを統一記述規則に基づいて表現したものである。企業の業務やシステムの全体最適化を目的としたエンタープライズアーキテクチャ(EA : Enterprise Architecture)の最上位層のビジネスアーキテクチャの策定時に,機能構成図(DMM)をもとに作成される。

ア)情報システム関連図の説明である。情報システム関連図は,業務・システムの処理過程において,情報システム間でやりとりされる情報の種類および方向を図式化したものである。アプリケーションアーキテクチャ策定の成果物として作成される。

イ)ビジネスアーキテクチャの成果物である機能構成図の説明である。

ウ)データアーキテクチャの成果物である E-R 図の説明である。

DFD (Data Flow Diagram)
図 DFD (Data Flow Diagram)

問17 BCP 策定に際しての目標復旧時間

BCP 策定に際して,目標復旧時間となるものはどれか。

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【答え】

BCP (Business Continuity Plan) とは,事業停止というリスクに対して事業活動が継続できるように準備しておく計画のことであり,事業継続計画ともいう。企業活動に重大な影響を及ぼす事業や業務の優先順位を設定して,どの事業や業務をいつまでに復旧させるかという目標時間を定めたうえで,そのために必要な復旧作業を計画する。この時間のことを目標復旧時間という。

問18 グリッドコンピューティング

グリッドコンピューティングの説明はどれか。

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【答え】

グリッドコンピューティング (grid computing) とは,ネットワークを介して多数のコンピュータを連携させ,全体として高性能な並列システムとして利用する方式。特に,インターネットなどを通じて広域的に,あるいは様々な機種のコンピュータを束ねて処理を分散する方式のこと。

問19 プロジェクタ

光源からの光を微小な鏡に反射させ,その反射光を拡大投影する動作方式をとるプロジェクタはどれか。

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【答え】

DLP

DLP (Digital Light Processing) とは,壁面に映像を投影するプロジェクタの方式の一つで,光源からの光を数百万の極微細な鏡を内蔵したマイクロチップに通し,映像を形成する方式。このチップを「DLP チップ」あるいは「DMD」 (Digital Micromirror Device) という。

CRT

CRT (Cathode Ray Tube) とは,蛍光物質に電子線を照射すると発光する現象を利用して,ガラスの面に光の像を映し出す装置。また,そのような原理を応用したテレビ受像機(ブラウン管テレビ)やコンピュータのディスプレイ装置(CRT ディスプレイ)のこと。

LCD

液晶ディスプレイ (LCD : Liquid Crystal Display)とは,コンピュータの操作画面を映し出す画面表示装置(ディスプレイ装置)の一種で,物質の特殊な状態の一つである液晶 (liquid crystal) の性質を利用して光を制御し,像を映し出すもの。テレビ受像機としての機能を持つものは「液晶テレビ」と呼ばれる。

PDP

プラズマディスプレイ (PDP : Plasma Display Panel) とは,画像や映像を電気的に表示するディスプレイ装置の一つで,ガラス板の間に封入した希ガスに高い電圧をかけてプラズマ放電を起こし,周辺に塗布された蛍光体を発光させる原理のもの。

問20 キャパシティプランニング

キャパシティプランニングを行うことはどれか。

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【答え】

情報システムを開発・改修する際に,機材の台数や処理性能,記憶容量,回線容量などの計画を立てることをキャパシティプランニングという。俗に「キャパプラ」と略されることもある。

利用者数や利用頻度,処理の内容,扱うデータの種類や容量,必要とされる信頼性,予算などからシステムのハードウェアやネットワークの構成を検討し,機材の種類や性能,台数,配置などの具体的な計画を作成する。

問21 射影

次数が n の関係 R には,属性なし(φ)も含めて異なる射影は幾つあるか。

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【答え】

射影は,表の中から条件に合致した列を取り出す操作である。

それぞれの属性に対して,取り出す,または,取り出さないという二つの可能性が考えられるので,n 個の属性が存在する表では 2n 通りの異なる射影の組合せがある。

問22 ストレージ技術

磁気ディスク装置や磁気テープ装置などのストレージ(補助記憶装置)を,通常の LAN とは別の高速な専用ネットワークで構成する方式はどれか。

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【答え】

磁気ディスク装置や磁気テープ装置などのストレージ(補助記憶装置)をネットワーク上に配置する方式として,DAS,NAS,SAN などがある。これらのうち,SAN (Strorage Area Network) はファイバチャネルなどを用いて LAN とは別の高速な専用ネットワークを構築し,そのネットワーク上にストレージを接続する方式である。通常の LAN に大きな負担をかけることなくデータにアクセスすることができる。

DAFS (Direct Access File System)
高スループット,低遅延を実現するファイル共有プロトコル
DAS (Direct Attached Storage)
ストレージを接続したサーバやホストコンピュータをネットワークに接続し,ネットワーク上で共有利用できるようにする方式
NAS (Network Attached Storage)
専用のストレージをネットワークに直接接続し,ネットワーク上で共有利用できるようにする方式。SAN のように専用のネットワークを用意する必要がなく,ネットワーク上からは通常のファイルサーバのように見える

問23 既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網

図は,既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網を,IP ネットワークに統合する場合の接続構成を示している。図中の a ~ c に該当する装置の適切な組合せはどれか。

既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網を,IP ネットワークに統合する場合の接続構成
a b c
PBX VoIP ゲートウェイ ルータ
PBX ルータ VoIP ゲートウェイ
VoIP ゲートウェイ PBX ルータ
VoIP ゲートウェイ ルータ PBX
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問23 の解答と解説

【答え】

既存の電話機を使用した企業内 PBX の内線網を,IP ネットワークに統合して,IP 電話として使用する場合の接続構成である。

まず,電話機に接続する a は PBX となる。次に,PBX の音声データを IP パケットに変換して IP ネットワークに送出したり,受信した IP パケットを連続した音声データに復元したりする機能をもつ VoIP ゲートウェイが b に該当する。さらに,IP ネットワークとのインタフェースに位置して,IP パケットの IP アドレスを識別してルーティングを行うルータが c に該当する。

既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網を,IP ネットワークに統合する場合の接続構成は,下図で表される。

既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網を,IP ネットワークに統合する場合の接続構成
図 既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網を,IP ネットワークに統合する場合の接続構成

問24 共通鍵暗号方式

暗号方式のうち,共通鍵暗号方式はどれか。

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【答え】

AES(Advanced Encryption Standard)は,アメリカ合衆国の標準暗号規格として制定された共通鍵暗号方式である。暗号化と復号に同じ鍵を使用する。

アメリカの旧国家暗号規格であった DES(Data Encryption Standard)の鍵長が 56 ビットであったのに対して最大 256 ビットの鍵長を利用することが可能で強度が高くなっている(128 ビット,192 ビット,256 ビットから選択する)。日本でも「電子政府推奨暗号リスト」に掲載されているほか,無線 LAN の暗号化規格 WPA2 の暗号化方式としても採用されている。

問25 有効期間中に失効となったディジタル証明書の一覧を示すデータ

何らかの理由で有効期間中に失効となったディジタル証明書の一覧を示すデータはどれか。

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問25 の解答と解説

【答え】

CRL(Certificate Revocation List : 証明書失効リスト)

CRL には,有効期限内のディジタル証明書のうち失効したディジタル証明書のシリアル番号と失効した日時の対応が提示される。

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