令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問題の解答と解説

2022年10月15日作成,2023年2月11日更新

試験時間は 10:50 ~ 11:30(40 分)である。

問1 アジャイル開発

アジャイル開発の初期段階において,プロジェクトの目的,スコープなどに対する共通認識を得るために,あらかじめ設定されている設問と課題について関係者が集まって確認し合い,その成果を共有する手法はどれか。

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【答え】

インセプションデッキは 10 個の質問と答えから構成される。10 個の質問は,顧客(ステークホルダ)と開発チーム間で認識を合わせるべき重要な項目といえる。

  1. 我々はなぜここにいるのか(Why 1)
  2. エレベータピッチを作る(Why 2)
  3. パッケージデザインを作る(Why 3)
  4. やらないことリストを作る(Why 4)
  5. 「ご近所さん」を探せ(Why 5)
  6. 解決案を描く(How 1)
  7. 夜も眠れなくなるような問題は何だろう(How 2)
  8. 期間を見極める(How 3)
  9. 何を諦めるかをはっきりさせる(How 4)
  10. 何がどれだけ必要なのか(How 5)

インセプションデッキ(Inception Deck)を直訳すると「最初のデッキ(カードの束)」という意味であり,アジャイルプロジェクトにおけるプロジェクト憲章に近い意味である。

問2 GoF のデザインパターン

ソフトウェアパターンのうち,GoF のデザインパターンの説明はどれか。

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【答え】

デザインパターンとは,典型的な課題に対する効果的な設計パターンのことで,代表的なデザインパターンに,GoF (Gang of Four) がある。四人の男性が持ち寄ったデザインパターンを体系化したことから,こう呼ばれる。23 種類のデザインパターンからなり,それらは,オブジェクトの生成に関するパターン,オブジェクトの構造に関するパターン,オブジェクトの振る舞いに関するパターンの三つに分類される。

問3 POSA のアーキテクチャパターン

Pattern-Oriented Software Architecture(POSA)のアーキテクチャパターンのうち,ソフトウェアをメタレベルとベースレベルの二つのレベルに分割し,ソフトウェアの構造と振る舞いとを動的に変更できる仕組みを提供しているものはどれか。

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【答え】

POSA のアーキテクチャパターンのうち,ソフトウェアをメタレベルとベースレベルの二つのレベルに分割し,ソフトウェアの構造と振る舞いとを動的に変更できる仕組みを提供しているものは Reflection である。

問4 インプロセスデータベース

組込みシステムで DBMS を用いるときには,通信のオーバヘッド,通信負荷の発生を防ぐこと,必要なメモリ容量をリソース制限内に抑えることなどを目的として,インプロセスデータベースを用いることがある。このインプロセスデータベースの説明として,適切なものはどれか。

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【答え】

インプロセスデータベースは,データ管理機能をライブラリとして提供し,アプリケーションに組み込まれる形で実装される。アプリケーションとデータベースが同じプロセスで動作するため,クライアント・サーバ型データベースと比べフットプリント(データベースの稼働に必要なメモリサイズ)が数十 kbytes からと小さいのが特長で,また SQL によるアクセスプログラムがあらかじめコンパイルされて実装されるため高速に処理を行うことができる。

一方,サイズと引き換えになった機能制限がデメリットといえる。インプロセスデータベースは,サイズを小さくするため DBMS としての機能を最低限にとどめており,例えば動的 SQL やストアドプロシージャ/トリガに対応していなかったり,SQL の使用制限がある。また,インプロセス型の特性上,1 プロセスが 1 DB を利用する作りになっており,複数処理の同時実行や複数のアプリケーションからの DB アクセスを行うには,アプリケーション側のプログラムで補う必要がある。

そのためインプロセスデータベースは,システムのリソースが限られていて,比較的単純な処理のみを行う場合(制御系システムなど)やアプリケーションが固定で機能追加・変更やデータ構造の変更をあまり行わない場合などの使用に適しているといえる。

問5 ストラテジパターン

デザインパターンの中のストラテジパターンを用いて,帳票出力のクラスを図のとおりに設計した。適切な説明はどれか。

ストラテジパターンを用いた帳票出力のクラス
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【答え】

ストラテジパターン(Strategy パターン)はデザインパターンの一つで,アルゴリズムだけを切り出して別クラスとして作成したものである。したがって,新規フォーマット用のアルゴリズムが追加しやすい。

ア)クライアントが,それぞれのフォーマットに対応した帳票出力ストラテジクラスを意識する必要がある。

ウ,エ)フォーマットと帳票出力アルゴリズムは,PDF 帳票出力ストラテジおよび HTML 帳票出力ストラテジに記述する。

問6 モジュール間のデータの受渡し方法

モジュール間のデータの受渡し方法のうち,最も低いモジュール結合度となるものはどれか。

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【答え】

モジュール結合度は,モジュール同士の関連の強さを示す尺度である。モジュール結合度が低いほど,モジュールの独立性は高くなる。モジュール結合度には,大きく以下の関係がある。モジュール結合度を低くするためには,モジュール間インタフェースに引数を用いることが望ましい。

直接参照 > 外部(大域)データ共有 > 引数

問7 DFD 作成の手順

既存システムを基に,新システムのモデル化を行う場合の DFD 作成の手順として,適切なものはどれか。

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【答え】

物理モデルには,システムや業務の現状を表す現物理モデルと,将来の状態を表す新物理モデルに分類できる。同様に,論理モデルも,現物理モデルと新物理モデルに分類できる。各モデルの関係は,下図のようになる。

物理モデルと論理モデル
図 物理モデルと論理モデル

問8 探索的テスト

ある購買システムの開発において,開発者が行った探索的テストの例として,適切なものはどれか。

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【答え】

探索的テスト(Exploratory Testing)とは,テスト担当者がテスト対象のプロダクト及び欠陥の学習・テストの計画・テストの内容の設計実行を並行して行う,ソフトウェアテストの 1 つのスタイルである。

事前にテストケースを設計せず,テスト実行の過程や結果を通じてテストの目標や内容を動的に調整し,積極的に質の高い新しいテストケースを設計していくという特徴がある。

問9 バグ管理図

ソフトウェアのテスト工程において,バグ管理図を用いて,テストの進捗状況とソフトウェアの品質を判断したい。このときの考え方のうち,最も適切なものはどれか。

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【答え】

バグ管理図は,検出したバグの累積数や未消化のテストの項目数をテスト時間に伴ってプロットしたグラフである。テストが順調に進んだ場合の予測に対し,実績をプロットすることで,テスト工程によって生じる様々な問題を把握することができる。

テスト項目消化の累積件数,バグ摘出の累積件数及び未解決バグの件数の全てが変化しなくなった場合は,停滞型に分類される。この場合,解決困難なバグに直面している状況が考えられるが,単にテスト担当者が不慣れでテストが進んでいないという状況も考えられる。

問10 FMEA

故障の予防を目的とした解決手法である FMEA の説明はどれか。

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【答え】

故障の予防を目的とした解決手法である FMEA (Failure Mode and Effect Analysis) は,個々のシステム構成要素に起こり得る潜在的な故障モードを特定し,それらの影響度を評価する。

FTA (Fault Tree Analysis) がトップダウン手法であるのに対し,FMEA はボトムアップ手法という違いがある。

問11 廃棄プロセスのタスク

JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,廃棄プロセスのタスクのうち,アクティビティ "廃棄を確実化する" において実施すべきタスクはどれか。

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【答え】

JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,廃棄プロセスのタスクのうち,アクティビティ "廃棄を確実化する" において実施すべきタスクにおいて,廃棄後の,人の健康,安全性,セキュリティ及び環境への有害な状況が識別されて対処されていることを確認する。

問12 ライフサイクルプロセス

JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,ライフサイクルモデルの目的及び成果を達成するために,ライフサイクルプロセスを修正するか,又は新しいライフサイクルプロセスを定義することを何というか。

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【答え】

JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,ライフサイクルモデルの目的及び成果を達成するために,ライフサイクルプロセスを修正するか,又は新しいライフサイクルプロセスを定義することを修整(Tailoring)という。

問13 KPI

IT 投資に対する評価指標の設定に際し,バランススコアカードの手法を用いて KPI を設定する場合に,内部ビジネスプロセスの視点に立った KPI の例はどれか。

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【答え】

バランススコアカードは,企業のビジョンと戦略を実現するために,「財務」「顧客」「内部ビジネスプロセス」「学習と成長」という4つの視点から業績を評価・分析する手法である。

内部ビジネスプロセスの視点に立ち,財務的目標の達成や顧客満足度を向上させるために,優れた業務プロセスを構築するための目標を設定する。KPI の例として,注文受付から製品出荷までの日数を 3 日短縮とする,が当てはまる。

アは「学習と成長」,イは「財務」,ウは「顧客」の視点に立った KPI である。

問14 LSI 製造の外部委託

組込みシステム開発において,製品に搭載する LSI を新規に開発する。LSI 設計を自社で行い,LSI 製造を外部に委託する場合の委託先として,適切なものはどれか。

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【答え】

ファウンドリ(foundry)とは,半導体チップの製造を専門に行う企業・サービスのこと。ファブレスやファブライトの半導体メーカが設計・開発した半導体チップを設計データに沿って製造する。主に台湾メーカに多い。ファウンドリを利用することで半導体メーカは設備投資を抑えられ,半導体の設計・開発に注力できるメリットがある。

問15 ラボ契約

ラボ契約の特徴はどれか。

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【答え】

ラボ契約とは,オフショア開発におけるメジャーな契約形態の一つで,オフショア開発センター(ODC)とも呼ばれている。依頼元は,契約に基づきスキルや人数などの基準を満たすように要員を確保することをベンダ企業に求めるかわりに一定以上の発注を約束する。

問16 e シール

e シールの説明はどれか。

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【答え】

e シール (Electronic seal) とは,電子文書等の発行元の組織等を示す目的で行われる暗号化等の措置であり,当該措置が行われて以降当該文書等が改ざんされていないことを確認できる仕組みである。

問17 マルチベクトル型 DDoS 攻撃

マルチベクトル型 DDoS 攻撃に該当するものはどれか。

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【答え】

攻撃対象の Web サーバ 1 台に対して,多数の PC から一斉にリクエストを送ってサーバのリソースを枯渇させる攻撃と,大量の DNS 通信によってネットワークの帯域を消費する攻撃を同時に行うことは,マルチベクトル型 DDoS 攻撃に該当する。

問18 暗号方式

暗号方式に関する記述のうち,適切なものはどれか。

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【答え】

共通鍵暗号方式では,暗号化及び復号に同一の鍵を使用する。

共通鍵暗号方式では通信の組合せの数だけ異なる鍵が必要になる。$n$ 人と暗号化通信を行う場合には,それぞれの相手と鍵を安全に共有し,$n$ 個の鍵を厳重に管理しなくてはならない。

問19 CRYPTREC

CRYPTREC の役割として,適切なものはどれか。

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【答え】

電子政府推奨暗号の安全性を評価・監視し,暗号技術の適切な実装法・運用法を調査・検討するプロジェクトであり,総務省及び経済産業省が共同で運営する暗号技術検討会などで構成される。

問20 ファイアウォールの NAPT 機能

インターネットとの接続において,ファイアウォールの NAPT 機能によるセキュリティ上の効果はどれか。

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【答え】

インターネットとの接続において,ファイアウォールの NAPT 機能によるセキュリティ上の効果として,内部ネットワークからインターネットにアクセスする利用者 PC について,インターネットからの不正アクセスを困難にすることができる。

問21 平均アクセス時間

容量が $a$ M バイトでアクセス時間が $x$ ナノ秒の命令キャッシュと,容量が $b$ M バイトでアクセス時間が $y$ ナノ秒の主記憶をもつシステムにおいて,CPU からみた,主記憶と命令キャッシュとを合わせた平均アクセス時間を表す式はどれか。ここで,読込みたい命令コードが命令キャッシュに存在しない確率を $r$ とし,キャッシュ管理に関するオーバヘッドは無視できるものとする。

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【答え】

容量が $a$ M バイトでアクセス時間が $x$ ナノ秒の命令キャッシュと,容量が $b$ M バイトでアクセス時間が $y$ ナノ秒の主記憶をもつシステムにおいて,CPU からみた,主記憶と命令キャッシュとを合わせた平均アクセス時間は,次式で求められる。ここで,読込みたい命令コードが命令キャッシュに存在しない確率を $r$ とし,キャッシュ管理に関するオーバヘッドは無視できるものとする。

$(1-r)\cdot x+r\cdot y$

問22 シェアードエブリシング

データベースサーバのクラスタリング技術の特徴のうち,シェアードエブリシングはどれか。

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【答え】

データベースサーバのクラスタリング技術の特徴のうち,シェアードエブリシングは,負荷を分散し,全てのサーバのリソースを有効活用できることに加えて,データを共有することによって 1 台のサーバに故障が発生したときでも処理を継続することができる。

問23 システムの信頼性

幾つかのサブシステムから成るシステムの信頼性に関する記述のうち,適切なものはどれか。

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【答え】

フォールトが発生したあるサブシステムを切り離して,待機系のサブシステムに自動で切り替えるフェールオーバは,システムの MTBF は変化させないが,MTTR の短縮につながる。

MTBF と MTTR は,次式で表される。

MTBF = 稼働時間の合計 ÷ 故障した回数
MTTR = 故障時間の合計 ÷ 故障した回数

問24 トランザクションの待ちグラフ

t1 ~ t10 の時刻でスケジュールされたトランザクション T1 ~ T4 がある。時刻 t10 で T1 が commit を発行する直前の,トランザクションの待ちグラフを作成した。a に当てはまるトランザクションはどれか。ここで,select(X) は共有ロックを掛けて資源 X を参照することを表し,update(X) は専有ロックを掛けて資源 X を更新することを表す。これらのロックは,commit された時にアンロックされるものとする。また,トランザクションの待ちグラフの矢印は,Ti → Tj としたとき,Tj がロックしている資源のアンロックを,Ti が待つことを表す。

[トランザクションのスケジュール]
時刻 トランザクション
T1 T2 T3 T4
t1 select(A) - - -
t2 - select(B) - -
t3 - - select(B) -
t4 - - - select(A)
t5 - - - update(B)
t6 select(C) - - -
t7 - select(C) - -
t8 - update(C) - -
t9 - - update(A) -
t10 commit - - -
トランザクションの待ちグラフ
図 トランザクションの待ちグラフ
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問24 の解答と解説

【答え】

問25 既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網

図は,既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網を,IP ネットワークに統合する場合の接続構成を示している。図中の a ~ c に該当する装置の適切な組合せはどれか。

既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網を,IP ネットワークに統合する場合の接続構成
a b c
PBX VoIP ゲートウェイ ルータ
PBX ルータ VoIP ゲートウェイ
VoIP ゲートウェイ PBX ルータ
VoIP ゲートウェイ ルータ PBX
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問25 の解答と解説

【答え】

既存の電話機を使用した企業内 PBX の内線網を,IP ネットワークに統合して,IP 電話として使用する場合の接続構成である。

まず,電話機に接続する a は PBX となる。次に,PBX の音声データを IP パケットに変換して IP ネットワークに送出したり,受信した IP パケットを連続した音声データに復元したりする機能をもつ VoIP ゲートウェイが b に該当する。さらに,IP ネットワークとのインタフェースに位置して,IP パケットの IP アドレスを識別してルーティングを行うルータが c に該当する。

既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網を,IP ネットワークに統合する場合の接続構成は,下図で表される。

既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網を,IP ネットワークに統合する場合の接続構成
図 既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網を,IP ネットワークに統合する場合の接続構成
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